AIを使いこなす企業の、価値・業務・判断の設計力 - AI時代のアーキテクチャと開発プロセスを考える

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September 27, 26

スライド概要

2026/9/15ー16に開催された「インプレス AI Days 2026」における D-2 エキスパート講演 「AIを使いこなす企業の、価値・業務・判断の設計力 - AI時代のアーキテクチャと開発プロセスを考える」の資料です。

概要:
AIにコードを書かせることが、現実になっています。しかし、優れたAIモデルを選べばいいわけではありません。
重要なのは、自社がどのような価値を生み出すのかを設計し、ハーネスとして定義できているかです。
顧客にとっての価値、提供すべき体験、変えるべき業務、守るべき制約が曖昧なままでは、AIの生成物は自社の競争力につながりません。
本講演では、LLMとAI駆動開発の本質を整理し、DevOpsにおける役割変化も手がかりにしながら、企業がAIを使いこなすために必要な能力や仕組みを考えます。
AI時代には、企業の、価値・業務・判断の設計力がアーキテクチャと開発プロセスの前提になるのです。

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グロース・アーキテクチャ&チームス株式会社 組織とチームを“仕組み”でつなぎエンタープライズDXを実現する

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関連スライド

各ページのテキスト
1.

インプレスAI Days 2026 AIを使いこなす企業の、価値・業務・判断の設計力 AI時代のアーキテクチャと開発プロセスを考える 2026/9/16

2.

自己紹介 鈴木雄介 • Graat(グラーツ) » 正式名称:グロース・アーキテクチャ&チームス(株) » 代表取締役社長 • (株)アイムデジタルラボ » 三越伊勢丹グループ DX推進機能子会社 » 取締役 • JACK » 正式名称:ジャパンアジャイルコラボレーションカーネル » 代表理事 • 日本Javaユーザーグループ » 社団法人CCC協会 代表理事 • SNS » @yusuke_arclamp » http://arclamp.hatenablog.com/ 1

3.

アジェンダ AI駆動開発とは 組織とAI駆動開発 • 組織とハーネス • 組織と人材 • 組織の構造とプロセス まとめ 2

4.

AI駆動開発とは

5.

AI駆動開発とは AIエージェントとは • AIモデルとAIハーネスを組み合わせたもの » AIモデル:LLMなど、入力に基づいて確率的に推論・生成を行う » AIハーネス:特定の目的・組織・業務に合わせて望ましい形で働かせるために 、その周囲に設計・維持する仕組みと設定の総体 • ソフトウェア開発に特化したのがコーディングエージェント AIモデル AIハーネス + AIエージェント = 4

6.

AI駆動開発とは AI駆動開発の現在位置 • 仕様駆動開発(Spec-driven Development /SDD) » ビジネス要求を人間とAIで分析してSpecに具体化し、そのSpecを基準にAIが 設計・実装計画を立て、実装・検証まで進める開発手法 ▸ 良いSpec:要求が明示的・構造的に表現され、人間とAIの双方が同じ意味として解釈できる ✓ 従来の「良い仕様書」と本質的には同じものだが、AIにとって読みやすいことが重要 計画の立案 AIと要求分析 ビジネス要求の理解 評価と調整 生成 Spec (仕様) 6

7.

AI駆動開発とは ハーネスの整備が重要 • Spec:今回、何を作りたいか • AIハーネス:毎回、どんなやり方・制約の中で生成させるか » ハーネスが適切にメンテナンスされていないと適切な生成物にはならない 1.エンジニアリング規約 コーディングルール、命名、エ ラー処理、ログ、テスト規約、API 規約 2. 業務・システム知識 ドメイン知識、既存仕様、既存シ ステム知識、用語、データの意味 3.開発プロセス・作業方法 調査→計画→実装→テスト→レ ビュー、デバッグ手順、レビュー 方法、Skills / Runbooks 4.アーキテクチャ システムアーキテクチャ、モ ジュール境界、依存方向、設計パ ターン、技術スタック 5.ガードレール 利用可能ツール、アクセス権、編 集禁止領域、セキュリティポリ シー、データ境界、操作上限 7

8.

AI駆動開発とは ハーネスエンジニアリング • AIエージェントを、意図した品質・制約・進め方で安定して働かせ るために、ハーネスを設計・調整・改善すること • ハーネスがチームや組織の資産となる(多少は製品依存するが) AIプロダクトベンダー ハーネス基盤の購入 Anthropic、OpenAI… Claude Code、Codex AIモデルの選択と、 ハーネスの組み上げ どんな道のり なのか 誰が乗るのか どんな特性の 馬なのか 前回の実行結果 からの改善は? 8

9.

AI駆動開発で何が変わるのか

10.

AI駆動開発で何が変わるのか クラウド、DevOps、プラットフォーム • 2010年代にインフラ構築や運用作業がツール+設定に » それらの基盤を整備、管理するための職種が登場 ▸ プラットフォームエンジニア:開発者向け開発・運用基盤を整備する役割 ▸ SRE:本番サービスの信頼性を維持するための基盤を整備・運用する役割 運用監視 設計 実装 ビルド デプロイ インフラ構築 監視ツール (オブザーバビリティ) 設計 実装 CI/CDツール プラットフォームエンジニア SRE IaCツール 14

11.

AI駆動開発で何が変わるのか AI駆動開発による変化 • 手作業による設計と実装を不要にした » 設計から実装の流れが「人間+AIエージェント」に置き換えられる • AI駆動開発エンジニアとAI基盤エンジニアという職種が登場する ※職種名は揺れているので、今後、一般化されるものは違うかも 設計 実装 AI駆動開発エンジニア AI基盤エンジニア 15

12.

AI駆動開発で何が変わるのか 補足:AI駆動開発で登場する職種 • どちらもハーネスエンジニアリングには関わる » 外側(共通)のハーネスと内側(個別)のハーネス AI基盤エンジニア AI駆動開発エンジニア 主目的 AI駆動開発の共通基盤を整備する AIを使ってプロダクトを開発する 主な仕事 コーディングエージェント環境、共通 要求分析、設計、AIによる実装、検証、 ツール、権限、ガードレール、知識基 レビュー 盤、標準設定などの設計・運用 対象 開発環境・開発基盤 対象ハーネス 組織・チーム共通部分を整備・改善す プロジェクト固有部分を開発の中で整 る 備・改善する 一言で AI駆動開発の土台を作る人 プロダクト・サービス AIを使って実際に開発する人 16

13.

組織とAI駆動開発 17

14.

組織とAI駆動開発 • 組織とハーネス • 組織と人材 • 組織の構造とプロセス

15.

組織とAI駆動開発 組織とハーネス

16.

組織とハーネス ハーネスは「資本」になりえる • 資本:将来の生産や価値創出に使える蓄積物 » 資本を所有し、そこから利益や価値を生み、その利益を さらに再投資して資本を増やしていく » 金融資本、物的資本、人的資本、知的資本… • 「トークン資本」 by サティア・ナデラ » 企業が自ら構築し、所有するAI能力 ▸ 企業固有の知識・判断・評価基準・仕事の進め方などを、 AIが利用できる形で資産化したもの » AI駆動開発では広義のハーネスにあたる 21

17.

組織とハーネス トークン資本は人的資本から生まれる • 人的資本:人の中にある知識、判断基準、関係性、 創意工夫、パターン » 人の中の暗黙知を、AIが利用できる形に変換する • 「学びのループ」を回す » 暗黙知を形式化する » 既存のハーネスに組み込んで、AIが利用できるようにする » それを実際に利用してみて学びを得る » その結果を、新たな形式知としてAIに組み込む • 人的資本とトークン資本は複利的に増える 22

18.

組織とハーネス ハーネスは「負債」にもなりえる • 何度も来た道ですよね » 統制されない資産は、陳腐化し、維持コストが増加し、 リスクを生み、容易に負債となる ▸ レガシーシステム、技術的負債… • AIのセキュリティリスク » プロンプトインジェクション » サプライチェーンアタック » 過度な権限委譲 • とはいえ、過度な抑制は時代遅れになる危険 23

19.

組織とハーネス ハーネスのプラットフォーム化 • 現時点で実証が進んでおり、今後、重要になっていく » どこまで共通化すべきかは、まだ曖昧 » まずは統制(セキュリティ、認証、認可、監視、承認など)が中心 » ツール間の標準化、チーム同士の共有方法などは急速に整備が進んでいる » 1年後ぐらいを目指して準備をしているといいかも? 特定のシステムに依存する部分 個別ハーネス AI駆動開発エンジニア 企業として共通する部分 共通ハーネス ツール ハーネス AI基盤エンジニア コーディングエージェント基盤が提供する部分 24

20.

組織とAI駆動開発 組織と人材

21.

組織と人材 AIがもたらす人材育成の問題 • ワークスロップ問題 » それっぽいが、実際には役に立たないAI生成物 ▸ 企業では半数近くの人が受け取った経験がある ▸ 他の誰かが修正作業をすることで組織としての生産性が低下する » 成果物に対する適切な理解と知識がなければAIを使いこなせない • 成果物に習熟する機会をAIが奪っている » 成果を生み出すプロセスそのものが、人材を育成する仕組みになっていた ▸ AIは過去の知的成果物から、いきなり成果を出してしまう » AIがいきなり成果を出してしまうと、その意味を理解することをサボりがち ▸ 実はジュニア人材だけの問題ではないかもしれない 27

22.

組織と人材 熟練者とジュニア人材とAI • 仮説:AIを通じて育成を加速できるのは? » 熟練者の「仕事の仕方」をAIエージェントに埋め込む » ジュニア人材がAIエージェントを使って実践 ▸ そこでジュニア人材は実践知を得る ▸ わからないことは熟練者に聞くことで「暗黙知」を認識する AIハーネス AIモデル • 事例:要件定義支援エージェント » 要件定義工程を支援するためのシステム ▸ au PAY開発を支える、EBAADによるAIエージェント活用 ✓ https://www.graat.co.jp/case-study/ebaad-aupay 28

23.

組織とAI駆動開発 組織の構造とプロセス

24.

組織の構造とプロセス チームの成果を組織の成果にする • チームの実装だけが早くなっても、 業務 設計 組織の価値創出サイクルは早くならない • ボトルネックが移動するだけ » ビジネス側:企画、業務の変更… » IT側:品質保証… • これもいつか来た道 企画 実装 運用 » アジャイル、クラウド、マイクロサービス… » AI駆動開発は、さらにギャップを拡大する 30

25.

組織の構造とプロセス 構造的無能化 • 企業は合理的に構造化されてきた » 企画部門、開発部門、品質部門、管理部門… » 個別最適化されると全体最適化ができなくなる ▸ 個人が有能であっても、組織としては劣化し、適応力が落ちる ✓ 慢性疾患のように緩やかに死に向かっている状態 ✓ 急激な悪化状態になったら、もう間に合わない • AI駆動開発も同じ壁にあたる » AIが合理性を変えても、組織構造は簡単に変わらない » では、どうするべきか? 企業変革のジレンマ 「構造的無能化」 はなぜ起きるのか 宇田川元一 (著) 出版社 : 日経BP 日本経済新聞出版 発売日 : 2024/6/22 31

26.

組織の構造とプロセス 構造的無能化を乗り越える 意思 決定者 • チームの外側を整える » 横と縦のリズムがあっていないことが問題 » 大組織で現場への権限移譲は非現実的 ▸ むしろ、チームが欲しいタイミングで組織が意識 決定できるプロセスを作るほうがよい 顧客/ ユーザー 変革 リーダー 開発 チーム • 組織的意思決定プロセスを設計する » 部門を超えてプロセスを可視化する ▸ 他部門の問題に興味を持つ ▸ 全員にとって効率的な方法を考えることはできる ▸ 現状の中で始めて、段階的にルールを変えていく 社内 社内 社内 関係部署 関係部署 関係部署 資料公開:エンタープライズDXセミナー:アジャイル導入が止まる3つの壁 ―― 文化・他部門・組織プロセスをどう乗り越えるか https://www.graat.co.jp/blogs/cmkm2hbh4avkr07128zz9ua7x 32

27.

まとめ 33

28.

まとめ 組織とAI駆動開発 • ハーネスは「資本」にも「負債」にもなる » ハーネスを維持できなければ、負債になり、誰も使わなくなる » ハーネスのプラットフォーム化が進んでいく • AIが人材育成の機会を奪っている » 成果を作る過程が成長の機会だったが、AIがいきなり成果を作ってしまう » AIを利用して育成を高速化をしていくべき • AIによる新たな合理性に組織全体を適応させる必要がある » AI駆動開発で実装が早くなっても、組織の価値提供は早くならない » 部門を横断して、組織的な意思決定プロセスを設計する必要がある 36

29.

さいごに AI時代に適応する • 今日の講演は「AI時代の自社を考える視点の提供」にとどまる » どのように適応するのかは企業によって違う • 「我々は何を変えるのか?」という議論へ進んでほしい » どんな価値創出を実現したいのか » どの業務に、どうAIを使うのか・使わないのか » どんな判断基準が重要なのか » どう組織構造やプロセスを変えなくてはならないのか 37

30.

組織とチームを“仕組み”でつなぎ、 エンタープライズDXを実現する https://www.graat.co.jp/