8.1K Views
August 19, 22
スライド概要
日本の研究力はV字回復が可能です。 そのためには、研究現場が現在どのようになってしまっているかを総合的、俯瞰的に明らかにし、行政によって適切な(場当たり的でない)政策課題設定がなされる必要があります。これには、研究力の向上阻害要因が発生するメカニズムの解明が必要です。 端的に言えば、大学の組織としての機能の減弱・喪失が大問題です。組織成員が協力しあって生産性を高め合う状態にはなく、連携を欠く、競合・競争する小型の研究室の集合体になってしまっています。 大学の問題は、財務省が指摘するような小さな問題ではなく、もっと総合的で複雑なものです。研究現場の問題が適切に認識されさえすれば、政策課題設定が適切になって研究力は急激に回復するはずです。 東北大学准教授
日本の研究力向上のための提案 東北大学大学院生命科学研究科 准教授大坪嘉行 [email protected] ・日本の研究力が低迷している。その原因・要因を明らかにし、効果的か つ総合的な解決策を実施する必要がある。 ・問題説明資料スライド1から6では、研究現場にある研究力向上の阻害要 因を説明する。また、解決方法提案スライド1から6では、改革案を説明 する。 ・本提案資料は、書籍「日本の研究力低迷問題と解決方法」の内容をもと に作成したものである。 著者: 東京大学農学部卒。東京大学農学部農学生命科学研究科で学 位取得後、理化学研究所にてポスドク(2年)、その後東北大学助手、 助教を経て現在准教授。研究現場に28年ほどいる。 https://www.amazon.co.jp/dp/B0B1YV43VQ
概要: 研究現場にある研究力向上を阻む要因 現状認識 研究現場には研究力を低迷させる様々な問題がある。これらを丁寧かつ詳細に拾い出 し、これら問題を生じさせる制度・政策を明らかにし、具体的な解決方法を策定する 必要がある。 研究現場の様々な問題 1. 組織内利害非共有問題 研究教育機関の組織機能不全問題とも言える。組織内の研究人材間の 協力関係が十分でなく、本来組織に期待される効果(成員が協力し合うことで生産性が高まる 効果)が出ていない問題。組織機能不全とも捉えられる。 2. 研究費配分の擬似成果主義問題 成果主義の研究費配分と見せかけて、期待成果主義とでも呼 ぶ方法で研究費配分をしている問題。根底には研究成果の「質」評価を実施せず量を評価し ている問題(成果の量・質問題)がある。 3. 予算獲得の目的化問題 予算獲得が目的化しており、予算の非効率的使用を招いている問題。 4. 技術軽視問題 技術立国を標榜しながら、技術が重要視されるようになる制度設計がなされて おらず、技術軽視と呼べる状態になっている問題。 5. 若手研究者の研究環境問題 若手を取り巻く研究環境が悪化している問題。 日本の研究活 動の構造的 課題* *財務省による問題認識: 「国際的な人的ネットワークや国際共著論 文の不足、内部からの人材登用の慣行を含 む人材流動性の低さなど、研究室や学部・ 学科内における閉鎖的な研究環境が、日本 の研究活動の構造的課題として従来から指 摘されている」 (歴史の転換点における財政運営p86)。 1、2、4の問題は財務省に従来から指 摘されている日本の研究活動の構造 的課題と深く関連している。 この構造的課題を解決しつつ、研究 力を向上させるには、研究現場の 様々な問題についての理解が必要。 6. その他の問題 技術職員の待遇問題、PDの研究室移動義務など自由な研究を阻害するさまざま な制約がある問題、査読有無の区別が日本語総説の減少を招いている問題、など 総合して日本の研究力低迷を招いている
問題説明
1. 組織内利害非共有問題 問題説明 派生する問題 研究教育組織が、お互いに連携を欠き、競合競争する小型の研究単位が組 織内に多数集まった「競合小型研究室集合体」となってしまっている。 1. 人事流動性の低下 「競合相手は弱い方がいい」の法則が働き、「優秀な人を採用し たい」というモチベーションが高まらない(教授人事)。 本来組織には、構成員が協力し合うことで生産性が高まる効果が期待され る(組織の基本機能)。ところが、さまざまな政策的制度的要因によって、 研究人材が組織内で競合・競争し合う関係になっており、この効果が出て いない。すなわち研究教育組織が機能不全に陥っている。これは組織内の 研究人材間の利害が共有されている程度が低い問題と捉えることができ、 この問題を組織内利害非共有問題と呼ぶ。 2. 機器共用が進まない 機器を貸すメリットがないため、機器を研究室で囲い込むこと になり、予算の無駄遣いになっている。 組織内利害非共有問題の原因 3. 拠点形成不全 「相互連携を欠く小型研究室の集団化」が起きている 4. 技術軽視の風潮増長 相互連携を基調としない組織では、技術が重要にならない 5. 研究室小型化 利害非共有によって研究室が小型化した。 ・組織の基本機能が忘れられている。 5-1. 研究者多忙 たくさんの雑務を少数のスタッフで処理することに ・研究機器購入予算を研究者に配分する制度によって、日本の研究室は組 織内で高い独立性を与えられており、研究教育組織は以前から多様すぎる 研究を実施するお互いに連携が少ない研究室の集合体となっていた。これ を背景に、任期制、選択と集中政策、職位規定の変更、予算流動性の低下 (運営費交付金からプロジェクト型資金への移行)といった様々な研究室間、 研究人材間を分断する効果を持った制度政策が導入され、IFや獲得資金額 に基づく人事によって、ますます研究組織内部の協力関係、連携が失われ た。 研 究 室 小 型 化 5-2. 研究意欲低下と研究離れ 周囲から好評価・「いいね」がもらいにくい 5-3. 研究不正・ハラスメントの増加 少人数で起こりやすい 5-4. 研究技術低下 小さすぎる集団には十分なノウハウが蓄積しない 5-5. 討論会ができない 良いアイデアを産むには大人数での討論会が必要 5-6. 研究機器 研究遂行に十分な機器が揃えられない場合もある 解決方法 「組織内利害共有促進」を政策課題として掲げ、以下の政策を実施 1. 機器共用に向く研究建屋への建て替え⑥ 利害共有はまず、生活スペースを近づけるところから。機器共用が進まないのは、 機器共用室の配置が悪いから。 2. 研究成果評価機構の設立③質に踏み込んだ成果評価の実施 (組織内相互協力を促進) 3. 成果主義による研究費配分の実施③ 成果評価に基づく研究費配分 (組織内相互協力を促進) 4. 利害共有を意識して階層的に組織を再編成① 階層的漸減質評価法(HQA法) による機関評価法改革(別途議論②)の実施 相互不干渉 競合小型研究室集合体 5. 組織から研究機器を購入する制度の創設④ 組織の成果評価に基づいて機器購入予算を配分 (利害共有が促進) 6. 近接連携研究者制度の創設 組織再編成の前に一過的に設けることを提案。計画書のテーマに関係なく、機器の相互利用許諾 を前提に、研究費を配分する仕組み。
2. 研究費配分の擬似成果主義問題 問題説明 科研費などの研究費は、一般に成果主義に則って配分されていると考えられている。とこ ろが、実際は期待成果主義(あるいは擬似成果主義)とでも呼ぶべきやり方、すなわち十分 に意義のある成果が見込めるか、研究成果が期待されるかどうかを判定するやり方で配分 されている。このため、研究者の注意は、研究成果を得ることよりも、成果が期待される 計画書を書くところに向けられてしまっている。 擬似成果主義が研究力に与える悪影響 1. 成果を得ようとするインセンティブが十分に働かない ... 良い成果を得ることではな く、成果が期待される計画書を書くことに注意が向けられている(「研究技術向上 セミナー」ではなく、「研究計画書書き方セミナー」が実施される)。 2. 技術軽視の風潮を増長 ... 採択に必要なのは研究技術よりも書類作成技術。研究技 術の重要性が高まらない。 3. 組織内の連携に悪影響 ... 成果が必要なら、組織内での研究相互協力が促進される 4. 研究計画審査には、以下のような問題点がある。 4-1. 研究アイデアの流出 ... 研究はアイデアが命。相手のわからない審査員に 計画段階のアイデアを開示するのは、優秀な研究者が好むことではなく トップレベルの研究者の足を引っ張っている。 議論 ・研究費配分に成果の「質評価」が用いられていないことに限らず、 成果の 「質評価」を実施していないのは極めて重大。日本の研究力を向上させる上 で、成果の質評価は重要なポイントである。 ・成果を出すのにまず資金が必要という問題、成果がまだ出ていない若手へ の研究費配分をどうするかという問題は別途議論が必要だが、「擬似成果主 義による研究費配分はさまざまな悪影響を発揮しており、「成果主義による 研究費配分」を実施すべきである。 ・計画を審査する方法のメリットほとんどない。研究の質を向上させる上で 具体的にどのようにしたらいいかについて、具体的にアドバイスができる審 査員が確保可能であり、コメントが研究計画に反映されるような、3回程度 以上の往復審査ができる場合に限られる。100億円超の大型のプロジェクト、 大掛かりな施設建造を伴うプロジェクトは、該当する可能性がある。 ・豊臣秀吉は、清洲城の修繕において、最も早く作業を終えたグループに褒 美を出すことを約束し、迅速に修繕を終えたという。良い修繕計画を立てた グループに褒美を出したのではない。秀吉の知恵を見習うべき。 解決方法 1. 現方式は、成果主義のやり方ではないことを確認する。 * 研 究 計 画 審 査 の 問 題 点 4-2. 審査員の疲弊 ... 実現するかわからない研究計画には学術的価値はなく、 審査員が疲弊する。 4-3. 予期不能性が考慮されない ... 計画できないような偶然の発見こそ重要 2. 研究成果を質に踏み込んで評価し研究費配分を実施する研究費制度創設③ 3. 研究成果の「質評価」を実施する「研究成果評価機構(仮)」の設立(別途議 論③) 4-4. 研究の自由度の低下 ... 立ててしまった計画に数年間縛られることになる 4-5. 新しいテーマへの取り組みを阻害 ... 新しいテーマでは計画書が書きにく い 4-6. 研究不正 ... 計画時の仮説や見込みは、多くの場合正しくない。PIがポスド クなどに「こうなるはず」と言ううちに、研究不正が起こることがある。 4-7. ピペド問題と研究離れ ... 計画の実行者(作業者)としてのポスドクが必要に なるという側面を生む。作業的色彩が強い研究では、研究者としての成長 が見込めず、若者が研究界を忌避する要因になっている。 「成果主義」は研究者が「成果」を求めるため に生産性が向上する。「擬似成果主義」ではこ の効果が十分には発揮されない。また現在「成 果の量」(論文数)を追うようになってしまって いる。成果の質評価に基づく研究費配分が必要。
3. 予算獲得の目的化問題 問題説明 解決方法 研究費は研究の遂行に必要ではあるが、これに加えて、ポスト獲得や所属機関 内の地位確保のために、研究費獲得額が大きいこと自体が重要となっている。 このようにして獲得した研究費は、必要性が高くない研究機器の購入などに充 てられて、小さい研究単位内に囲い込まれるなど非効率的に使用されている。 また、研究費獲得額がポスト獲得につながるやり方をしていると、多くの研究 資金を必要とする研究をする研究者の割合が増加し、単位資金当たりの成果が 減り続け、研究界が高コスト体質になってしまうだけでなく、研究のあり方自 体が資金を多く必要とする研究に偏ってしまう。 研究費獲得の目的化の抑制が必要である。 1. 研究者に通達 額面に見合った成果が得られることが期待されることを広く周知 する。 2. 人事公募書式の改善 外部資金獲得額記載を求めないように、また求める場合 は、額面が多いほど成果を割り引いて判断する旨を記載するように、研究機関 に通達。予算返還額があれば、その分を考慮するようにする。 3. 運営費交付金の増額 外部資金を獲得しないと全く研究ができない状況が、外部 資金を獲得できる研究者を採用する背景にある。 4. 組織から機器を購入する予算制度の創設④ ... 現在研究者に配分される予算の一 定程度が組織からの機器購入予算に振り向けられると、その分、予算獲得の目 的化問題の規模は小さくなる。 研究費獲得が目的化する理由 ポスト獲得においては、競争的資金の獲得実績を書かされることから、多け れば多いほど有利であると信じられている。 読者アンケートでも問題であるとの認識 「予算獲得の目的化問題」について伺います。こ の問題は、日本の研究力を低迷させている要因だ と思いますか? 5. 人事採用時の配慮 ... 人事採用時に、それまでの獲得資金額を考慮して、獲得資 金額が少ない場合、一定程度の資金を研究機関に配分する制度の創設(成果の 質評価の実施が前提)。 研究費とらないとポストにつけないぞ。たくさん とった方が有利だ。生き残りたいんだろ!研究に 必要とかそういうんじゃない。 13 7 0 0 1 こまったなあ。 余ったら機械を買っておくか... 研究者 文科省
4. 技術軽視問題 問題説明 我が国は科学技術立国を標榜しているが、実際には技術軽視の風潮が 蔓延している。技術が重要視されるようになる効果をもった制度政策 の策定が必要である。 技術軽視の風潮が蔓延する理由 1. 科研費計画書が研究技術開発を重視していない ... 技術開発を軽視 した応募様式が用いられている 4. の補足 現在 相互不干渉 競合小型研究室集合体 2. 擬似成果主義による研究費配分 ... 書類作成技術は高まるが、研究 技術の重要性が高まらない 獲得研究資金額、IFや論文数での人事採用。 保有技術による組織内連携が可能かどうか は考慮されない。 3. 積み上げ式の予算制度 ... 労力がかかる方法を選択した方が、予算 獲得額が大きくなる。本質的に、技術革新、効率化推進を抑制す る効果を持っている。 4. 現在の研究組織のあり方(相互不干渉、競合小型研究室集合体) ... 研 究室レベルでは、研究単位が小型化し、技術が入り込む余地が少 なくなっている。一方組織レベルでは、相互連携が基調となって いない組織であるため、技術が入り込む余地が少なく、保有技術 に着目した人事採用が行われていない。現在「良い技術を会得し たらポストにありつける」という技術会得インセンティブはほと んど働いていない(参考資料: アンケート実施結果)。 解決方法 「技術軽視の風潮の改善」を政策課題として設定 1. 科研費の名称変更と科研費研究計画調書の文言変更 ... 名称を「科 学・技術研究費」に変更し、研究の技術的側面が重要になるよう に計画調書の文言を変更 2. 成果主義による研究費配分の実施 ... 研究成果評価機構(仮)の設立と 成果の質評価に基づく研究費配分(別途議論③) 工作室がない、エンジニア不在 技術軽視 : 研究室 (PI 二人程度、全部で5人か ら30人程度) 理想 相互連携を基調とする組織 過去の実績よりも保有技術、採用後の組織内 連携が考慮される。 工作室があり、エンジニアがいる 技術重視 3. ゴール達成報酬型の研究費制度 ... 研究技術が重要になる。 : ユニット。100から150人程度を想定 PI 5から10人程度 4. 組織内の利害共有促進 ... 階層的に利害を共有した組織への再編成 とHQA法による研究機関評価(別途議論)。技術が重要になる。
5. 若手研究者の研究環境問題 問題説明 [参考] かつての望ましい研究環境 若手研究者を独立させる方策が取られている。ところが、独立に伴って、さま ざまな負荷が若手研究者に加わる状態となっている。若手の活躍を促進するに は、単に独立させるだけでなく、さまざまな研究環境に配慮する必要がある。 若手を取り巻く研究環境 現在の研究教育組織は相互不干渉の競合小型研究集合体と化しており、これを 背景として、研究がしにくい研究環境となってしまっている。 現在 相互不干渉 競合小型研究室集合体 かつては、若手研究者は、 (1) 多くの先輩や教員、研究者に囲まれて多様な価値観に接し、 (2) 研究費を自分で取る必要がなく、 (3) 報告書を自分で書く必要がなく、 (4) 周囲の多数の人員との協調関係(利害共有)があり、 (5) 任期の心配をする必要がなく、 (6) 研究に打ち込める、 という環境が与えられていた。 理想 階層的利害共有研究教育組織 独立するとこのような 環境に放り込まれるこ とになる。 : ユニット。100から150人程度を想定 : 研究室 問題点 1. 競合・競争相手に囲まれている 2. 授業や教育などの業務 中堅・シニア教員と同等の業務が与えられる 3. 多忙 予算申請書作成、報告書作成、 その他小型研究単位であることから生 じるさまざまな雑務に追われる。 4. 研究機器へのアクセスが不十分 さまざまな機器を揃えるには予算が足りず、 機器共用も進んでいない。 5. 技術を蓄えられない 小型研究グループには、十分な技術を蓄えられない。 6. 意欲低下 研究成果の内容を理解した上で肯定的に評価してくれる人が周囲 に少なく、意欲低下が起きる。 解決方法 階層的に利害を共有した組織への再編成を行う①。相互連携を基調とする組織の中 で、利害共有が図られた比較的大きい集団(ユニット: 100人から150人)の中で研究で きるようにする。 見込まれる効果 1. 多数の仲間や人の和に囲まれることになる。 2. 授業や教育などの業務については同ユニット内の中堅・シニアによる配慮を受ける ことになる。 3. 雑務の分担処理により多忙が解消する。 4. 十分な機器へのアクセスと集団内へのさまざまな技術へのアクセスが可能 5. 利害共有内の研究成果を理解する人からの評価によって意欲が向上する。 6. 集団内には複数のPIが所属するため、特定のPIの支配下に置かれることを免れる。
6. その他の問題 技術職員の待遇 制約過多 技術立国を標榜する我が国において、技術職員の待遇が良くない問題は深刻。技術 重視の風潮を醸成すれば、地位待遇は上昇していくと考えられる。 解決方法 1. 組織から機器を購入する予算制度の創設④ ... オペレーション責任者として登録 される。技術職員の安定確保が必要になる。 2. 研究成果を質に踏み込んで評価し研究費配分を実施する研究費制度創設③ ... 研 究技術が重要に。 3. 「研究成果評価機構(仮)」への帰属と定期研修(別途議論③) されることによる地位安定化と、研修による技能向上。 ... 機関外部へ登録 研究費申請などあらゆる側面で様々な制約があり、研究者の自由な研究発想を潰してしまっている。 制約としては、(1)意義のある成果が着実に見込まれなくてはならない、(2)学外(学内)との共同研究でな くてはならない、(3)海外の研究者が含まれなくてはならない、(4)不特定多数の審査員に研究アイデア を公開しなくてはならない、(5)学際的でなければならないといったものがある。どのような制約があ るか、詳細に調べ緩和措置をとることが必要。研究者の自由な発想による好奇心に基づく研究が可能 となる。 査読有無問題 研究費報告書や、人事応募書類にて、研究業績の「査読の有無」が問われている。このことによっ て、通常査読を受けない日本語の総説の価値が低下してしまった。査読の有無に加えて、日本語の 総説であるかどうかの分類を設けるか、「査読の有無」の区別をやめれば、問題は解決する。 4. 利害共有階層的組織再編成① 技術の重要性が高まる 本書のコンセプト 5. その他 裁量予算付与、教授会への出席待遇など 学振PDの研究室移動義務 2000年頃に始まった。制約の1つである。学振PDを受領できるような優秀な人ほど、学位取得後、論 文になっていないデータを多数残して、慌ただしく研究室を去ってしまうことになる。人つながりも できにくい。半年から1年程度の猶予期間をおけば、問題は改善する。 使用期限のある民間研究助成 政府会計における単年度主義における弊害は、科研費の一部基金化によって一部緩和されているもの の、年度開始前後での予算不安定性は依然問題である。民間の研究助成までもが、使用年限を設けて いるのが通例であり、民間の研究助成が使用年限を設定をやめれば、その分研究現場の研究環境が改 善する。 大学1、2年生の研究環境 SSHなどで高校生時より研究に取り組んでいた学生が、大学に入ると研究環境がなくなる問題。研究 意欲が特に高い学生が、大学1、2年生時より研究に携われる環境構築が重要。若者の主体的に研究 したいという意欲には全力で応える必要がある。 具体的な解決策の提示につながらないような原因を探しても意味がない。例え ば「研究者の意識の問題」「大学の慣習のせい」「意地悪な国民性のせい」と いった問題の捉え方は、有効な解決策の提示につながらない。 筆者は研究現場に長くいるが、本資料にあるような、さまざまな研究力低下要 因に気がつかされてきた。これら要因は、本提案で示すように、解決策の提示 につながる要因である。問題が解決していくには、まずはこれら要因・問題が 広くしっかり認識されることが必要である。 「歴史の転換点における財政運営」(財政制度等審議会 令和4年5月25日)では論文 生産の質の向上が大きな課題として取り上げられている。また、内部からの人 材登用の慣行を含む人材流動性の低さなど、研究室や学部・学科内における閉 鎖的な研究環境が日本の研究活動の構造的課題として指摘されている。本提案 は、これらの両課題を含むさまざまな課題の解決策を提案する。
解決方法の提案
階層的に利害を共有した組織への再編成 改革 1 現状の課題 ユニットの利点 研究教育組織が、お互いに連携を欠く小型の研究単位が組織内に多数集まった 「競合小型研究室集合体」となっており、本来組織に期待される「組織構成員 がお互いに協力し合うことで生産性が高まる」効果が出ていない。組織機能の 回復が必要。 1. 人事流動性の向上「仲間は強い方がいい」の法則が働き、「優秀な人を採用した い」というモチベーションが高まる。 2. 機器共用が進む ユニット内あるいはユニット間でも機器が供用され予算の有効活用 が可能 議論 集団が小型化すると研究力が低下するが、集団を大きくしすぎるとやはり組織 の良い効果が失われる。最適な集団サイズについての社会学的見地を踏まえた 議論に基づき、ダンバー数と呼ばれる150人程度が所属する集団(ユニットと呼 ぶ)を階層的に組み上げる形で研究教育組織を再編成することを提案する。ユ ニット内部の利害共有が図られるように十分に注意する必要があり、さらには HQA法による組織評価(別途議論)を行うなどして、組織全体の利害共有を図る必 要がある。また、改組の前段階として近接連携研究者制度を創設することが議 論されている。 3. 拠点形成 機器と実験技術を中心として、研究拠点が自発的に形成される 4. 技術重視の風潮促進 相互連携を基調とする組織では、技術が重視される 5. 研究単位の大型化 5-1. 研究者多忙の改善 雑務を多数のスタッフで分割処理 ユニットについて 研 究 室 大 型 化 1 ユニットには、5から10人程度のPIが所属することを想定。ユニット内部で利 害を密接に共有している点、機器共用が前提である点で従来の講座の規模を大 きくしたものと捉えて良い。ただし規模がずっと大きい点、特定のPIに助教な どが従属しない点で、従来の講座制とは異なる。ユニット内は機器共用が可能 な程度に研究多様性が抑制される。ユニット内はいわゆる「同じ釜の飯を食っ た仲」である。 研究科1 学部1 大学 5-3. 研究不正・ハラスメントの減少 集団が大きいと起こりにくい 5-4. 研究技術向上 ユニットには十分なノウハウが蓄積する 5-5. 討論会が可能 良いアイデアを産む大人数での討論会が可能 5-6. 研究機器 研究遂行に十分な機器が揃えられる 組織図の例 : ユニット1 5-2. 研究意欲向上 周囲の環境から「いいね」がもらいやすい ユニット2 ユニット3 ユニット1 研究科2 ユニット2 6 ユニット3 ユニット1 研究科3 ユニット2 ユニット3 省略 学部2 省略 学部3
機関評価方法改革案(HQA法の導入) 改革 2 現状認識 利点 研究成果の数を機関評価に用いており、研究成果の質を評価することができてい ない。top 10 %論文などは成果の質の代替指標に過ぎない。成果を質に踏み込ん で評価すれば研究の質が上がるが、膨大な数の成果を質に踏み込んで評価するの は困難だとして敬遠されている。 効果 課題 3. 大学の組織内の風通しを改善 毎年審査をするうちにお互いの研究内容が明確に。 階層的漸減質評価法(HQA法)を提案 4. 研究の質を向上 大学が、自身で「良い成果とは何か」を判断する仕組み(成果審査 会)を持つことになり研究の質が向上する(今の大学は成果の良し悪しを評価、議論 する仕組みを持っていない)。 組織の一番下の階層から提出された成果を、1つ上の組織階層で審査・評価し、 数を1/5から半分程度に減らして上の階層に送る。これを組織内で繰り返し、機 関から研究成果評価機構(仮)に提出し最終評価を受ける。成果の質を高めないと 上の階層に進めないことが、審査において厳密な質評価を実施するインセン ティブと、審査者と被審査者が協力して成果の質を高めるインセンティブを同 時に生む。 審査 3 審査 ユニット1 大学 学部1 3 2 2 研究科1 5. 研究者の研究意欲向上 想定では、研究成果評価機構でその年の日本ベスト10、ベス ト100などを選出して顕彰。大学も、候補となった成果を取りまとめて顕彰。選出 は栄誉であり、意欲が向上。やり方自体が加点式評価(出したらプラス評価)。 研究成果評価機構(仮)で審査 4 審査 6 2 審査 ユニット2 審査 ユニット3 審査 審査 2 6 審査 ユニット1 ユニット2 ユニット3 研究科2 6. 目利き人材の登場と産学連携促進 組織内の成果評価によって広い分野の研究を理解 できる人材が養成され、組織への人材リクルート、 4 3 審査 2 2 1. 組織内連携と学際的研究を促進 成果の質を高めるためには、組織の各階層での連携 が重要になる。「良い成果」を中心にして学内に連携が構築 2. 組織内利害共有と人事流動性を向上 成果がより上の階層に進んだときに、よりリ ソース配分が大きくなるような制度設計では、階層的な利害共有が確保(機関内は どこも利害を共有する関係)。 成果の「数評価」から「質評価」への転換が必要。また、他に議論するような さまざまな研究環境改善点を加味して、総合的に研究力を向上させる方法であ る必要がある。 実施例 : ・審査対象となる成果の数が限定されるため、成果の質をしっかり評価することがで きる。 ・同じ組織内の成果であるので、審査者は成果提出者の意見を直接聞くなどしてしっ かり成果の質の評価を行うことができる。 審査 ユニット1 4 審査 2 2 審査 2 審査 ユニット2 審査 ユニット3 研究科3 学部2 学部3 審査
改革 3 「研究成果評価機構(仮)」設立の提案 課題と提案 研究を活性化する目的は我が国を豊かにすることであって、大学などから出る論文数やtop 10%論文数を増やすことは、必ずしもこの目的にかなうものではない。この目的にとって重要 なのは、質の高い研究成果が出るようにすることであり、このためには研究成果の質の評価 の実施が必要である。また別に提案する「組織から実験機器を購入申請する制度」について、 機器のオペレーション計画の適切性を判断し、組織の既往成果の審査を実施する行政組織が 必要である。さらに、技術職員の不安定な地位が問題となっているが、技術立国にふさわし い高い技術を持った技術職員の安定確保が必要である。また昨今、日本では研究不正が横行 しているとして国際的な不名誉を受けており、日本の研究成果に対する信頼性の向上が必要 である。これらの必要性に鑑みて、成果の質の評価を実施する「研究成果評価機構(仮)」の設 立を提案する。 研究成果評価機構(仮)の業務 1. 研究成果評価の実施 ・研究者の成果の評価 ・評価用のWEBシステムの構築 匿名の評価を依頼 非匿名の評価を依頼 実施イメージ: 論文などの成果が出た研究者は、成果をウエブページに随時掲載。その際、成果の 意義がわかりやすいように著者らは解説をつける。匿名、および非匿名評価者を選定し、成果評 価を実施。コメントを公開する。また、コメントに対する評価(訪問者review)を実施する(誰がどの ように評価したかの記録は残すが非公開)。 2. HQA法による研究教育機関の評価の実施 ・各機関に提出を求める研究成果単位の数の決定 ・機関内部でのHQA法実施方法の指示と監督 ・機関から提出された成果の評価の実施と顕彰 ・成果評価に関するジャーナルの発行 HQA法: 組織の一番下の階層から提出された成果を、1つ上の組織階層で審査・評価し、数を1/5か ら半分程度に減らして1つ上の階層に送る。これを組織内で繰り返して、組織最上部に集まった成 果を評価する方法。成果の数が絞られるため質の評価が可能になるだけでなく多数のメリットが ある(別に議論)。メリットが十分位発揮されるには、実施手順の遵守と、ジャーナル発行を含む顕 彰制度が必要である。 3. 技術職員の技能研修 ・技術職員の登録と差配 ・技術職員の研修の実施 要点: 技術は研究実施の上で極めて重要である。技術職員に安定した地位を与え、技能の向上を図 るため、技術職員を登録し、一定機関ごとに研修を実施し、相互交流による切磋琢磨の場が必要 である。研修においては4. における実験再現性を得ることもその一環とする。 4. 研究不正防止の抑止力 ・技術職員による実験再現性の確認 要点: 国内研究グループが発表した研究成果について、抜き取り調査的に再現実験を実施する。再 現が難しい実験に関しては、研究グループを訪問して、生データの確認などを行う。研究不正に 対する一定の抑止力を発揮し、日本の研究成果の国際的な信頼を回復する。 5. 組織からの実験機器購入申請書の審査 ・申請書の審査の実施。機器オペレーション計画の適切性、機関の既往成果な どを審査。 効果 研究成果の質評価を実施することにより、研究現場に論文成果の数ではなく、成果の 質を追求する機運を向上させることができる。また各機関にHQA法による成果報告を求 めることにより、機関内の利害共有と相互連携の促進による組織機能向上と、研究者 の意欲向上を図ることができる。またジャーナル刊行により、税金がどのような研究 成果に結びついたかについて納税者に説明責任を果たすことになる。この際、単に成 果の数ではなく、具体的な研究成果が理解可能な形で、また多数の評価意見とともに 説明されることは納税者の税負担感を満足させる効果を持ち、次の科学技術への投資 を呼び込む前提が満たされる。さらに、技術職員の地位向上を伴う技術職員の能力向 上によって技術立国を支える人材を確保できる。また、実験成果の再現性取得を行う 組織は、研究不正の抑止力を発揮する。 「研究成果の質評価の実施」と「研究教育機関の組織機能回復」の中 核機能を果たす。日本の研究力回復の要となる機構
改革 4 組織から機器購入予算を申請する制度 課題 制度の効果 個々の研究者に機器購入予算を配分する制度は、研究に柔軟性を与える利点がある一方で、 さまざまな悪影響を発揮してきた(組織内利害非共有問題として別途議論)。 現状の課題として、(1)一つの研究組織に使用頻度が必ずしも高くない機器が複数あり、予算 の無駄遣いが生じていること、(2) 機器のオペレーターが不在であり機器の性能が十分に引き 出せていないこと、(3) 機器共用が進んでいないこと*、(4) 保有機器に縛られるために、助教 や准教授が転出しにくく人事流動性を損なっていること、が挙げられる。他にも、研究組織 の機能不全という形で、さまざまな問題が派生。 この状況を改善するため、組織から機器購入予算を申請する制度が必要である。「階層的に 利害を共有した組織への再編成」「研究成果の質評価の実施」も併せて行う必要がある。 *機器を保有管理しているのは、概して外部資金獲得額が大きく研究資金に余裕がある一方で多忙な研 究者である。このような研究者は、研究資金をインセンティブにしても、機器共用には消極的である。 利害非共有、相互不干渉を特徴とする競合小型研究室集合体では機器共用が進まない。 制度概要 組織から機器購入予算を申請する制度。組織単位で機器購入予算申請を行う。申請時 にはオペレーション計画を記載する。オペレーション計画には、オペレーション責任 者(技術職員あるいは研究者)の名前を記載し、機器のオペレーションが担保されるよう にする。また、申請書には、当該組織の過去の研究成果、組織所属員の過去の研究成 果について記載する。 申請書は、研究成果評価機構(仮)にて受理し、オペレーション計画の適切性と既往の研 究成果の審査を行う。取得機器は組織の共用機器に位置付けられる。 相互不干渉 競合小型研究室集合体 このような状態になっているこ との根底には「研究者に機器購 入予算を配分する制度」がある。 : 研究室 1. 組織機能の回復 ... 組織成員が機器購入という点で利害を共有することになり、 共働によって成果の質を向上させるインセンティブが生まれる。また優秀な 人材を採用するインセンティブが生まれ、人事流動性が向上する。 2. 機器共用が進む 組織内で同じ機器を重複して保有する無駄がなくなり予算の 有効活用が図られる。 3. 機器のオペレーションが担保される機器ごとにオペレーションが担保される ことになる。研究を効率良く実施する上で極めて重要である。 4. 技術職員の地位向上 技術職員がオペレーション責任者になれば、技術職員の 地位が向上、安定化する。 5. 研究拠点の形成 研究機器や技術を中核として、自発的な研究拠点の形成が誘 導される。 6. 転出入が容易に オペレーションが担保された研究機器が、研究組織に多数配 置されることになり、転出入が容易になる。 波及効果 組織機能の回復によって極めて大きな波及効果が見込まれる。人事流動性の向 上、 研究者多忙問題の緩和、研究意欲亢進、 拠点形成誘導、研究不正・ハラス メントの防止、技術軽視の風潮を緩和、ジェネラリスト育成体質から、スペ シャリスト育成体質への転換、理想的研究環境の構築と若手の研究への回帰な ど。 議論 研究機器購入予算を研究者に配分する制度は、研究に柔軟性を与える反面、研究室に組織 内において過度の独立性を与える作用を持っている。近年、研究人材間を分断する効果を 持った様々な制度政策を実施したことにより、研究室の小型化が進み、組織機能不全の悪 影響が顕在化している。研究組織が競合小型研究室集合体と化してしまった現在、当該制 度は限界に来ており、組織から機器を購入する制度の創設が必要である。 「研究教育機関の組織機能回復」に重要な制度
改革 研究教育組織の閉鎖性の解消 5 閉鎖性について 内部昇格人事が優先される理由 財務省資料「歴史の転換点における財政運営(p86)」には、「国際的な人的ネットワークや国際共 著論文の不足、内部からの人材登用の慣行を含む人材流動性の低さなど、研究室や学部・学科内に おける閉鎖的な研究環境が、日本の研究活動の構造的課題として従来から指摘されている」とある。 内部からの人材登用が抑制されて外から人が入れば、国際的な人的ネットワークや国際共著論文 の増加も増えると考えられる。したがってここでの「閉鎖的な研究環境」は、研究室内、学部内、 学科内における人材登用(内部昇格人事)問題を指すと考えられる。 1. 人事で「競合相手は弱い方がいい」の法則が働き、「優秀な人を 採用したい」というモチベーションが高まらない。 2. 連携を欠くので人事採用後の連携も見込みにくい。従って「優秀 な人を採用したい」というモチベーションが高まらない。 3. 成果の質を評価せず、数による評価がなされている。数による評 価なら、優秀な人は必ずしも必要ない。 4. 機器が研究室管理なので、助教、准教授が転出・転入しにくい。 現在の組織様態 研究人材を分断するさまざまな政策や制度 (任期制、職位制度、選択と集中、プロジェク ト研究の予算の壁、機器を購入する予算を研究者が配分される制度 *など)によって低利 害共有と非連携、相互不干渉を特徴とする組織機能不全状態にある。 * 研究室の独立性を過剰に高めている。閉鎖性の原点。 現状: お互いに競合・競争する 小型研究室集合体 解決方法 1. 研究単位を大型化、階層的利害共有組織に再編成① 2. 成果の質評価に基づく、組織から機器購入を行う予算制度の創設④ 3. 質に踏み込んだ成果評価の実施(研究成果評価機構の設立③) 4. 研究教育機関評価方法改革② (組織内+階層的漸減+質評価を特徴) 5. 機器共用に適した建屋への建替え⑥ : 研究室 優秀な人、技術を持った人の採用モチ ベーションが高まり、閉鎖性が解消 構造改革 波及効果 理想: 階層的利害共有研究教育組織 : ユニット。100から150人程度を想定 1. 研究者多忙問題の緩和、2. 研究意欲亢進、3. 拠点形成誘導、4. 技術 職員の地位向上、 5. 研究不正・ハラスメントの防止、6. オペレー ションが担保された機器が組織で利用可能に、7. 技術軽視の風潮を緩 和、8. ジェネラリスト育成体質から、スペシャリスト育成体質への転 換、9. 理想的研究環境の構築と若手の研究への回帰 これらの波及効果は「ガバナンス強化」では得られない。
改革 6 機器共用に向く研究棟への建て替え 課題 個々の研究者が研究している建物の形状が、組織として研究を遂行しやすい形状になっていない。研究組織を組織とし て機能させ、組織構成員の協力関係を引き出すには、研究棟のデザインを見直し、建て直す必要がある。理想的な建築 物の構造については、機器共用を原則としている諸外国の実態を参考にすべきである。 吹き抜け 共通実験室 交流スペース 生活動線が交わらないように建 物がデザインされている例。 相互不干渉、競合小型研究室集合 体では、このような建築デザイン 共通実験室 相互協力を重視する組織であれ ば、このような建築デザイン
「組織機能の喪失」と「成果の質評価の不実施」 「組織内利害非共有」と「擬似成果主義による研究費配分」は、より大きな枠組みで 捉えれば、「組織機能の喪失」と「成果の質評価の不在」とも言える。 技術軽視 組織機能の喪失 組織内利害非共有に よる様々な悪影響 成果の質評価の不実施 擬似成果主義による 研究費配分 人事流動性の低下 (日本の研究活動の構造的課題) 組織機能の喪失 本来、大学など組織には組織構成員が協力し合うことで生産性が高まる効果が期待される。現在の大学は、お互いに競 合・競争する小型研究室の集合体になってしまっており、この効果がほとんど出ていない。 成果の質評価の不実施 研究成果の質の評価を実施してない。大学に求められるのは質の高い研究成果を出すことによって、社会を良くすること である。成果の質の評価を実施することで、大学の生産性を向上させていく必要がある。
まとめ 現状 研 究 成 不果 実の 施質 の 評 価 の 組 織 機 能 低 下 施策案 効果 研究成果の質の向上 顕彰/成果 ジャーナル 刊行 技術職員の地位向上 技術重視の風潮の醸成 研究成果評価機構 の設立 技術職員 研修・登録 予算の有効活用 目利き人材の育成 研究機関 の 成果評価 (HQA法) 成果の質 評価 産学連携の促進 成果主義に よる 研究費配分 制度 組織から機器 購入予算申請 する制度の創 設 研究者多忙の改善 予算獲得の 目的化の抑制 組織内利害共有 促進策の実施 階層的組織 再編成と 研究単位の 大型化 若手の研究環境改善 機器共用に 向く研究棟 への 建て替え 研究室大型化 人事流動性の向上 研究制約の緩和 スペシャリスト養成 学振PD研 究室移動 義務の見 直し 問そ 題の 他 査読有無 問題の解 決 機器の共用化 学部1、2年 生の研究室 配属制度の 創設 研究者の意欲向上 民間研究 助成使用 期限撤廃 好奇心に基づく研究の推進 研究不正の減少 研 究 力 向 上
その他
読者アンケート資料 https://docs.google.com/forms/d/1a5CfUPAObobFUAeOrC4XuO8RDP1CvFWf0vwkZ1FdDLw 23人の読者アンケート結果 • 1. 研究組織内利害非共有問題 • 2. 擬似成果主義による研究費配分の問題 • 3. 予算獲得の目的化問題 • 4. 成果の量・質問題 • 5. 技術軽視の風潮問題 • 6. 若手研究者の研究環境問題 問題ではない 全く問題ではない わからない 多くの研究関連人材が、これら 問題を問題であると捉えている。 問題である 重大な問題である
ツイッターアンケート資料1 • 「ポストを得るためには新しい技術を身につけるとよい」 と言ったことも、言われたこともない人が8割以上。 • Twitterによるアンケートではあるが、技術軽視の風潮を裏 付けている。
ツイッターアンケート資料2 • 約半数の研究人材が、日常的にディスカッションする相手 が身近にいない • Twitterによるアンケートではあるが、組織内で研究者が孤 立していることを裏付けている。
ツイッターアンケート資料3 • 日常的にディスカッションする人がいない大学院生が31%。 1人しかいないのが27%。 • Twitterによるアンケートではあるが、研究単位の小型化、 組織機能喪失を裏付けている。