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December 26, 23
スライド概要
Z社 広島ワークセッション2024開催決定を記念して、一部内容をアップデートした更新版です。DICフレームを用いた中核能力定義が、経営資源開発の検討にもたらす効果について概説します。
株式会社ブランドデザイン 代表取締役。食品会社、広告会社を経て、2003年に名古屋工業大学大学院 産業戦略工学専攻 准教授に着任。その後、名古屋工業大学 産学官金連携機構 特任教授、厚労省所管 職業能力開発総合大学校 教授を経て2019年6月より現職。デミング賞審査委員会委員、日本品質奨励賞審査委員、㈱安川電機 社外取締役、㈱ジェイテクト 社外取締役を務める。専門はブランドマネジメント、主戦場は「事業開発」。企業の事業価値創造プロジェクトや幹部人財育成など企業指導多数。主な著書として『日本品質管理学会選書9 ブランドマネジメント:究極的なありたい姿が組織能力を更に高める』(日本規格協会)、『理想追求型QCストーリー』(日科技連出版社)など。
【概説】 DICフレーム 中核能力表現の基本的枠組み 加藤雄一郎 BRAND DESIGN: Chance Discovery for The Brand 1
中核能力を規定する新たな枠組み DICフレーム 事業が 目指す理想 企業固有の 価値基準 中核能力 中核能力 帰納的 アプローチ 経 営 資 演繹的 アプローチ 源 BRAND DESIGN: Chance Discovery for The Brand 2
競争力強化に向けて内部資源に着目することの重要性 競合他社から真似されない持続的な差別化を実現し 企業が継続的な業績を獲得するためには、 経営資源やケイパビリティ(能力)を最良かつ最適に積み上げる必要がある (D.J.Collis and C.A.Montgomery, 2009: 延岡, 2006) 競争優位を考える上で最も貴重な資源は 単独の資源ではなく、資源の束・資源の集合体(スーパー・リソース)である (藤本, 2004; D.J.Collis and C.A.Montgomery, 2008) 企業の持続的成長と利益獲得に向けて重要なことは 具体的にどのようなケイパビリティやリソースを選択し、構築するか という資源の戦略的選択と構築 (G.Stalk, P.Evans and L.E.Shulman, 2008; 青島・加藤, 2003) <疑問> 新たな経営資源を創造する際の拠り所は何か? BRAND DESIGN: Chance Discovery for The Brand 3
先行研究レビュー 裏の競争力を鍛え上げて表の競争力を高めることの重要性 表層的 市場シェア・売上 (収益力) × 市場 パフォーマンス (表の競争力) 顧客の評価に基づくパフォーマンス 例) 顧客の知覚した品質、価格(QCD)等 組織 パフォーマンス (裏の競争力) 組織が製品・サービスを生み出すためのパフォーマンス 例) 生産性や開発スピード等 ○ 深層的 顧客が評価した結果の表れ 例) 売上高、市場シェア、株価等 統合化された経営資源 (組織能力) 藤本(2004)、延岡(2006)を参考に発表者作成 ・組織全体が持っている様々な仕組みが 非常に複雑に絡み合ったシステム ・企業が固有に持つ有形無形に資源と、 それを活用する能力やプロセス 例) ジャストインタイム、リーン生産システム等 表の競争力から裏の競争力を考えるアプローチは わが国製造業、さらには技術経営に馴染まない (藤本,2004; 延岡,2006) BRAND DESIGN: Chance Discovery for The Brand 4
問題意識 ボトムアップアプローチの偏重は 能力蓄積の歴史に囚われて事業発展機会を自ら失う恐れはないか? 表層的 市場シェア・売上 (収益力) 表層的 ありたい姿 × 市場 パフォーマンス (表の競争力) 市場 パフォーマンス (表の競争力) 組織 パフォーマンス (裏の競争力) 組織 パフォーマンス (裏の競争力) 統合化された経営資源 (組織能力) 統合化された経営資源 (組織能力) ○ 深層的 事業が目指す 深層的 表の競争力と裏の競争力を繋ぐ接点を開発することによって 既有能力を尊重しつつ、新たな経営資源の示唆を得られないか? BRAND DESIGN: Chance Discovery for The Brand 5
競争力向上に向けた新たな着想 ステークホルダーのうち、企業価値向上に最も寄与する存在は「顧客」と「従業員」 企業価値向上は、長期的展望に立った彼らとの良好な顧客関係性によって齎される 【これまでの考え方】 表層的 表層的 市場シェア・売上 企業価値 (収益力) 市場 パフォーマンス (表の競争力) 組織 パフォーマンス (裏の競争力) 深層的 【新たな着想】 事業が目指す ありたい姿 市場 パフォーマンス (表の競争力) 顧客や従業員など 「企業価値向上に寄与 する利害関係者」が 将来期待と共創欲求を 喚起することの重要性 統合化された経営資源 (組織能力) 組織 パフォーマンス (裏の競争力) 深層的 統合化された経営資源 (組織能力) 顧客と共に自分達は“どうありたいのか”という観点から 深層レベルのあり方を考える新たな着想 BRAND DESIGN: Chance Discovery for The Brand 6
競争力向上に向けた新たな着想 両者の接近が示唆する新たな枠組み 【これまでの考え方】 表層的 深層的 【新たな着想】 表層的 市場シェア・売上 企業価値 (収益力) 事業が目指す ありたい姿 市場 パフォーマンス (表の競争力) 市場 パフォーマンス (表の競争力) 組織 パフォーマンス (裏の競争力) 組織 パフォーマンス (裏の競争力) 統合化された経営資源 (組織能力) 統合化された経営資源 (組織能力) 深層的 それが・・・ BRAND DESIGN: Chance Discovery for The Brand 7
中核能力を規定する新たな枠組み DICフレーム 事業が 目指す理想 企業価値 市場 パフォーマンス (表の競争力) 総力を結集して発揮すべき 中核的な総合能力 企業固有の 価値基準 中核能力 組織 パフォーマンス (裏の競争力) 各 種 統合化された経営資源 経 (組織能力) 営 資 源 表の競争力と裏の競争力を繋ぐ接点の開発 BRAND DESIGN: Chance Discovery for The Brand 8
中核能力を規定する新たな枠組み DICフレーム 事業が 目指す理想 企業固有の 価値基準 中核能力 帰納的 アプローチ 各 種 経 営 演繹的 アプローチ 資 源 Deductively-Organized & Inductively-Generated Capability BRAND DESIGN: Chance Discovery for The Brand 9
DICフレーム 【事業が目指す理想】 理想Aを叶える鍵は 要求期待Bを実現すること 【価値基準】 要求期待Bの鍵は 要件Cを満たすこと 【中核能力】 理想Aの実現に向けて 我々は要件Cを満たす 中核能力を発揮する 【経営資源】 要素技術やノウハウ、システム、知識など 上記の要件Cを満たす中核能力発揮に寄与する各種要素 Deductively-Organized & Inductively-Generated Capability BRAND DESIGN: Chance Discovery for The Brand 10
実際に起きること BRAND DESIGN: Chance Discovery for The Brand 11
実際に起こること 【事業が目指す理想】 事業が目指す理想 【価値基準】 価値観 【現在の中核能力】 いま発揮中の 中核能力 ≠ 【望ましい中核能力】 発揮すべき 中核能力 【経営資源】 要素技術やノウハウ、システム、知識など 上記の要件Cを満たす中核能力発揮に寄与する各種要素 「演繹的に導かれた中核能力」と「帰納的に導かれた中核能力」は 往々にして一致しない BRAND DESIGN: Chance Discovery for The Brand 12
だから、新たな資源が示唆される BRAND DESIGN: Chance Discovery for The Brand 13
中核能力のギャップを埋める動機こそが重要 【事業が目指す理想】 事業が目指す理想 【価値基準】 価値観 【現在の中核能力】 いま発揮中の 中核能力 = 【望ましい中核能力】 【経営資源】 要素技術やノウハウ、システム、知識など 上記の要件Cを満たす中核能力発揮に寄与する各種要素 発揮すべき 中核能力 新規資源 の必要性 だからこそ、両者を一致させるべく 新たな経営資源の必要性に気づく BRAND DESIGN: Chance Discovery for The Brand 14
DICを用いた資源蓄積の考え方 いま発揮している 中核能力 現在発揮中の 理想実現に向けて 発揮すべき中核能力 理想 中核能力 価値基準 経営 資源 経営 資源 経営 資源 今後発揮すべき 中核能力 <ギャップを解消するための方策> 1) 現行資源のどれをどれだけ高めるか? 2) 新規にどのような経営資源を蓄積するか? 「問題解決」の枠組みで経営資源開発の示唆が得られる BRAND DESIGN: Chance Discovery for The Brand 15
DIC構築の手続き BRAND DESIGN: Chance Discovery for The Brand 16
<アプローチ1> 中核能力を帰納的に定める BRAND DESIGN: Chance Discovery for The Brand 17
Step1.特徴的な経営資源を選定する 【経営資源】 当事業が保有する特徴的な経営資源 【解説】 当事業が保有する主要な経営資源をリストアップし、その中から特徴的なものを転記します。 なお、ここでいう経営資源は、技術やノウハウ、システム、知識など各種シーズがすべて該当します。 BRAND DESIGN: Chance Discovery for The Brand 18
Step2.帰納法で中核能力を定める 中核能力 【経営資源】 当事業が保有する特徴的な経営資源 【解説】 DICフレームに転記した「当事業が保有する特徴的な経営資源」をもとに 帰納的に中核能力を定めます BRAND DESIGN: Chance Discovery for The Brand 19
<アプローチ2> 中核能力を演繹的に定める BRAND DESIGN: Chance Discovery for The Brand 20
Step3.ビジョンを定める 【ビジョン】 事業が目指す 社会の理想 【潮流】 PEST分析に基づく 今後の時代変化 中核能力 【解説】 ビジョンはいわば、御社が描く「物語」です。物語には、複数の登場人物がいます。「主人公」と「主人公に関わる様々な脇 役」がいます。当事業が最も喜ばせたい主人公を設定し、その主人公にどう在ってほしいのかを描いてください。主人公になりう るのは、「生活者」、「企業」、「産業界」、「国・地域社会」などの、人(あるいは人々)です。写真やイラストなどを添付していた だくとより一層深みが増します。自著の推奨になってしまい恐縮ですが、もしよろしければ「ブランドマネジメント―究極的なありた い姿が組織能力を更に高める」に詳述されていますので第8章をご参考になさってください。 BRAND DESIGN: Chance Discovery for The Brand 21
Step4.潮流を読む 【ビジョン】 事業が目指す 社会の理想 【潮流】 PEST分析に基づく 今後の時代変化 中核能力 【解説】 前出のビジョンを掲げるみなさんは、これからの時代をどう読んでいますか?ビジョン実現までの道のりは非常に長いです。その 間に潮流の大きな変化がありえます。P(法規制など)、E(経済)、S(社会動態)、T(技術革新展望)など広い視点から、今 後の潮流として当事業が着目すべきことをリストアップしてください。また、単に項目を並べるだけでなく、それら項目から導かれる ポイントを必ず付記してください。マインドマップを用いて検討すると効果的です。 【注】 本来、当該ボックスは当該事業が組織として有する「価値基準(物事を解釈する際のルール)」を記すのですが、価値基準そのものを記そうと すると思考停止に陥るケースが散見されるため、初回トライアルでは「価値基準という名のフィルター」を介した着目事項を記すことにいたしましょう。 BRAND DESIGN: Chance Discovery for The Brand 22
Step5.演繹法で中核能力を定める 【ビジョン】 事業が目指す 社会の理想 【潮流】 PEST分析に基づく 今後の時代変化 中核能力 【解説】 ビジョンからみた今後の潮流をふまえ、当事業が発揮すべき能力を演繹的に定めます。すでにStep2で帰納的に中核能力が 定められていますが、その表現内容はあくまで現有経営資源に基づき帰納的に定めたものにすぎず、当該ステップ(Step5)の 演繹的な中核能力の表現としてそのまま使用できるものではありません。むしろ、「帰納的な中核能力設定」と「演繹的な中核 能力設定」はそれぞれ異なる表現になってしかるべきです。本ステップはアプローチ1「帰納的な中核能力設定」とは切り離して ご検討ください。 BRAND DESIGN: Chance Discovery for The Brand 23
<アプローチの統合> 2つの中核能力表現を統合します BRAND DESIGN: Chance Discovery for The Brand 24
Step6.アプローチ違いによる中核能力表現の差異を認識する 【ビジョン】 事業が目指す 社会の理想 【潮流】 帰納的に定めた 中核能力 ≠ PEST分析に基づく 今後の時代変化 演繹的に定めた 中核能力 【経営資源】 当事業が保有する特徴的な経営資源 【解説】 ここまでのところで「帰納的アプローチ」と「演繹的アプローチ」という2つのアプローチから中核能力設定を試みました。 前者は「有力パラメータに基づき、帰納的に設定された中核能力」であり、後者は「ビジョンからみた今後の潮流をふまえ、当 事業が発揮すべき能力」です。どちらも論理的な解釈が施されているわけですが、解釈に用いる材料はそれぞれのアプローチ によって異なるため、解釈結果としての中核能力表現は当然異なります。そこで、「帰納的な中核能力」と「演繹的な中核能 力」を左右に明示的に並べ、双方が異なる表現内容になっていることを確認してください。 BRAND DESIGN: Chance Discovery for The Brand 25
Step7.2つの中核能力表現の接近を図る 【ビジョン】 中核能力表現の接近を図る 事業が目指す 社会や産業界の理想 【潮流】 PEST分析に基づく 今後の時代変化 帰納的に定めた 演繹的に定めた 中核能力 中核能力 【経営資源】 当事業が保有する特徴的な経営資源 【解説】 前述のとおり、「帰納的な中核能力表現」と「演繹的な中核能力表現」はほとんどすべてのケースにおいて異なる表現になっ ています。ここからの検討がいよいよ本丸です。2つの中核能力表現の接近を図ります。両者のバランスを取った表現は、「ビ ジョンを起点に潮流を読み、当社の有力パラメータを用いて、当事業は具体的にどのような新たな達成事項を目指すか?」と いう問いの答えこそ、両者のバランスを取ったDIC(演繹的かつ帰納的に導出された中核能力)なのです。 BRAND DESIGN: Chance Discovery for The Brand 26
Step8.DICフレームの完成 【ビジョン】 事業が目指す 社会の理想 【価値基準】 PEST分析に基づく 今後の時代変化 中核能力 【経営資源】 当事業が保有する特徴的な経営資源 【解説】 DICは考え続けるためのフレームです。 1か所を修正すれば、芋づる式に別箇所の修正必要性が生じます。 そうして修正を繰り返していくうちに、全体構造が洗練化されていきます。 BRAND DESIGN: Chance Discovery for The Brand 27
Step9.新・中核能力に基づく新製品・サービスの考案 <製品名 又は サービス名> <製品・サービスの概要> <着目した顧客のDoニーズ> <中核能力を応用して、どのような新たな機能を考案したか> 【解説】 構築されたDICフレームが「単に表すことが目的化した内容に留まっているか」あるいは「今後の更なる事業の発展に示唆をも たらす内容になっているか」を見極めてみましょう。中核能力の更新がもたらす最大の効用は、「再定義された中核能力に基づ く、今までにない新たな機能の考案」です。どのような機能を搭載したハード・ソフトをひらめくか試してみてください。せっかく中核 能力を定めたにもかかわらず、考案した新製品・サービスのアイディアが現行製品の延長線上の発想に留まっている場合、構 築されたDICは残念ながら「単に表現してみただけ」ということになります。再定義された中核能力を応用して、新たな機能を備え た製品・サービスを考案してみてください。 BRAND DESIGN: Chance Discovery for The Brand 28
【番外編】 企業紹介への応用 BRAND DESIGN: Chance Discovery for The Brand 29
DIC記入シート ビジョン ビジョン追求に求められる要件 (当事業が堅持すべき価値基準) 中核能力 当事業が保有する特徴的な経営資源(中核的な技術シーズを特に重視) BRAND DESIGN: Chance Discovery for The Brand 30
企業PRとしての活用 ビジョン: 事業が目指す理想 私たちが事業を通して見据える未来、 それは、・・・・ PEST分析に基づく未来課題 上記のビジョンをもつ我々は、未来の潮流を以下のように読んでいます。たとえば、・・・、・・・・・・が挙げられrます。ま た、・・・・・という観点から見た場合は、・・・・、・・・・・・・・・といったことも、ビジョンの実現に向けて着目すべき潮流といえ るでしょう。以上の問題意識に基づき、我々は自らが取組むべき未来課題として次のことを考えています。 未来課題の達成に求められる中核能力 上記の未来課題を達成する上で、決定因となる中核能力は「○○を、●●●する」能力であると我々は考えています。 なぜなら、・・・・・だからです。 中核能力の根拠しての当事業保有資源 上記の中核能力を発揮するために、我々は、・・・・・、・・・・、・・・・・・・・ といったシーズを蓄積してまいりました。上述の 中核能力は、これら我々のシーズに裏打ちされたものなのです。 DICに記載した内容を用いると企業PR情報になります。 企業ウェブサイトやパンフレット等にご活用ください。 BRAND DESIGN: Chance Discovery for The Brand 31