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April 21, 22
スライド概要
地理院地図ファンクラブ2022年4月定例会で発表した内容に、一部の修正と追加をしたものです。
1ユーザーの地理院地図の更新についての所感を述べました。
専門家ではないため、誤解に基づく部分や、無理難題の意見もあるかもしれません。
地理院地図の発展のためのたたき台になれば幸いです。
地図・地理、道路が好物です。Twitterやってます。
地理院地図ファンクラブ2022年4月定例会 地理院地図の “更新” に思いを巡らせて はり た あら いし 治田 洗礫
目 次 • 更新とは • 「地図は新しいほうが良い」が… • 修正・更新からみた地図の諸相 • 陸測~国土地理院の地形図の「図歴」 • 地理院地図の更新と「図歴」 • 紙地図でも… • 地図の更新にまつわる国土地理院への要望 • 地理院地図 更新前後の比較ギャラリー • まとめ
更 新 とは 電子国土基本図の地図情報(NTX)を 新しい状態に修正することを指し、 それに基いて数値地図(国土基本情 報)・地理院地図や地形図などを修正 することも更新という 面的更新 迅速更新 資料・指摘修正 の3つに大別 以前 “修正測量” “改測” などと呼ばれていたことに相当
面的更新 都市計画基図及び空中写真を活用して対象地域内の地物 を面的に修正・更新 NTX(電子国土基本図(地図情報))データと、最新の公共 測量成果を照合比較し、抽出した変化情報をNTXデータに面 的に反映させていく更新方法 迅速更新 公共施設の整備・管理者と連携して行政面・防災面で利用 ニーズの高い道路等を優先的に更新 道路等の特定の地物(主として線状の地物)を対象として、 更新ニーズ、更新優先度及び情報入手方法に応じ、更新費 用を踏まえた優先度を設定し、道路管理者等の施設管理者 から詳細な資料を入手して迅速な更新を行う更新方法 資料・指摘修正 注記・地図記号、及び地図上の表現にかかわる軽微な修正
「地図は新しいほうが良い」が… 地図(一般図)は通常、新しいことに価値がある。 ← 現地・現状を正しく表していることが求められる “現在性” 地図=「最新版」をうたうが、できた瞬間(あるいはすでに作ってい る最中)から古くなってゆくもの。 = ある時点の情報として正しいことが必要 → 作成・更新の時期が記載されていることが重要 “記録性” 一方、「最新」の状態が載っているのは果たして「地図」なのか、 という疑問 ex: アメダスやグーグルマップの交通状況図など =「地図」の上に一瞬のうちに変化する情報が乗っかっている “リアルタイム性” 一瞬の後には古くなる〝リアルタイム性″ ↔ その時点の情報を記載した〝記録性″
修正・更新からみた地図の諸相(1) 作成・・・その時点で得た最新(と思われる)情報をもとに作成 =測量/編集、調製、初版発行 全面的な更新(再作成)=改測、改版etc. 面的更新 変化した部分の修正=修正測量etc. ごく一部の修正=部分修正etc. 迅速更新 誤記の修正での再(印刷)発行 ・・・ 以前は“刷”数などで… 資料修正・指摘修正
修正・更新にかかわる諸相(2) 一般的な民間の市販地図 → 作成後は必要部分のみ訂正 国土地理院(またその前身)の紙地図(測量図、編集図) → 定期的に全面改訂(改測 など) 地理院地図 民間のネット地図 ? OSM “常に未完成”という新しい境地 どうあるべき なのかなぁ?
修正・更新にかかわる諸相(3) 一般的な民間の市販地図 国土地理院(またその前身)の紙地図(測量図、編集図) 紙地図時代は、ある程度情報が古いのが宿命と、 みんなが認識。 地理院地図 民間のネット地図 OSM ネット時代になって、ユーザーの意識変化 → 本来は地図に備わっていない〝リアルタイム性” を求めるようになってきたのではないか…
陸測~国土地理院の地形図の「図歴」 紙地図時代= 図幅ごとに、作成・更新の“履歴”が明示 測量(測図)、改測 修正測量 部分修正測量 応急修正 資料修正 etc. 1万分1地形図 芦屋北部 昭和31年7月発行 2万5千分1地形図 若松 昭和22年12月発行 2万5千分1地形図 鳥島 昭和56年4月発行 2万5千分1地形図 田万里市 平成7年11月発行 2万5千分1地形図 長岡 昭和27年6月発行 2万5千分1地形図 浅茅野台地 平成9年12月発行 5万分1地形図 竹波 昭和52年3月発行 5万分1地形図 鳴門海峡 昭和61年10月発行
地理院地図の更新と「図歴」(1) ★更新は、図郭やタイル単位ではない 公共測量成果を利用しているため、測量(更新)の時期(“図歴”) が市町村境界などを境目として異なることになる さらに、図上では更新の範囲や時期が分からない 付記 : 時期だけではなく、境界を挟んで表示物の記載方法が異なることも。 = 商店街のアーケードや農地の温室・ビニールハウスの表現、道路等の取捨選択など = 作成自治体ごとの図式の解釈・考え方に違いがあるため ★面的更新でも“改測レベル”と“修正測量レベル”があるよう =おそらく、自治体の公共測量の“修正・更新”のレベルによる (“改測”のような100%再作成の例はほとんどないよう) ★迅速更新では、同じ地図の中に新旧が入り乱れるが、どこが新 しく、どこが古いのかがまったくわからない (あえて継ぎ目もわからないように“調製”されている) 図の中での“新旧混在”は古くからの宿命ではあるが…
紙地図でも… 近年は履歴が“曖昧”化 =“調製” “更新” ・・・・実際の測量時期が不明 ← 図幅単位で測量や調査がされているわけではない 5万分1地形図 屋久島西南部 平成21年1月発行 2万5千分1地形図 砺波 平成28年6月発行
地理院地図の更新と「図歴」(2) ★ 地図上から容易にアクセスできる情報からは、詳しい測量・ 更新履歴がわかりにくい(下記URL等から調べることは可能だが) https://www.gsi.go.jp/kibanjoho/kibanjoho40044.html https://maps.gsi.go.jp/#9/36.595684/139.671936/&base=std &ls=std%7Cjin202203%7Cjin202202%7Cjin202201%7Cm en202203%7Cmen202202%7Cmen202201&disp=1111111& lcd=men202201&vs=c1g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1&d=m 「基盤地図情報ダウンロードサービス」や「公共測量検索サイ ト」でダウンロードしたファイルを解読すれば詳細にわかる? https://fgd.gsi.go.jp/download/menu.php https://geolib.gsi.go.jp/node/2363
地図の更新にまつわる国土地理院への要望 地図には、歴史的な記録としての役割もあり、少なくとも測量(面的 更新)時点の情報は、きちんと保存して状況に応じて取り出せるよう にしておくべきかと思う。 “記録性”の担保 地理院地図のようなWeb地図を利用する側は、紙地図とは異なり、 なんとなく「最新」であると勘違いする人が多いと思われる。 →地図上の任意の点をクリックするとその部分の測量や更新時期が 表示されるとか、あるいはあるアイコンをクリックすると表示範囲全体 について更新時期が色別に表示されるとかができるとよい。 “現在性”の明示 “リアルタイム性”は時代の要請だが、とらわれすぎずに適切な 対応が望まれるかと思います。 上記によって、いかに地図の作成や更新が大変なことなのか、ということなど、 かえって一般の方々の地図についての認識が高まるのではないか、とも思います。
地理院地図 更新前後の比較ギャラリー
まとめ 1. 地図の“リアルタイム性”という“新しさ”の側面 が、ネット時代において生じており、その対応 については一考を要する 2. 図内の新旧混在は不可避だが、 表示された 地図情報の時期が分かりにくいことは問題で あり、改善が望まれる(“現在性”の明示) 3. 面的更新でパッチワーク的な更新が進むうえ、 迅速更新で限局的な修正がなされ、地図の “記録性”に危機感をもつ。 面的更新時の情報(データ)はアクセス可能な 状態で永久保存すべきである
地理院地図ファンクラブ2022年4月定例会 地理院地図の “更新” に思いを巡らせて ・・・・ 1ユーザーからの提言 おわり はり た あら いし 治田 洗礫