みんなJevの話してる。やってないの俺だけ 〜判断だけをするAI、System Oneモデルをざっくり理解する〜

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September 23, 26

スライド概要

Zennで書いた記事のダイジェスト版です。

▼みんなJevの話してる。やってないの俺だけ
https://zenn.dev/unsoluble_sugar/articles/jev-system-one-model-intro

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各ページのテキスト
1.

T E C H TA L K みんなJevの話してる。 やってないの俺だけ 〜判断だけをするAI、System Oneモデルをざっくり理解する〜 2026/09/22 @unsoluble_sugar

2.

今日話すこと 1 Jevとはなんぞや 2 聞けるのは3種類の質問だけ 3 なぜここまで騒がれたか 4 できること・できないこと・注意点 前提: Jevは2026年9月15日に出たばかり。性能の数字は開発元の発表で、執筆時点では新 規登録が止まっています 2

3.

CHAPTER 01 Jevとはなんぞや

4.

Jev=「判断だけをするAI」 サンフランシスコの TypeSafe AI という会社が作った、新しい種類のAI 文章は一切書かない。決められた形の答えだけを返す たとえば「この問い合わせは返金の依頼?」→「97%くらいの確からしさでYes」 答えを読むのは人間ではなくプログラム。アプリに組み込む部品だと思えばよい 創業者の言葉: 「フロンティア級の知能を持った関数呼び出し」。ざっくり言えば、すごく 賢い判断専用の部品 4

5.

名前の由来 Jev System One ジェヴォンズのパラドックス ファスト&スロー 19世紀の経済学者ジェヴォンズにちな 心理学の有名な本から。じっくり考えるの む。「安く効率的になると、かえって使う が「システム2」、パッと直感で決めるの 量は増える」という現象。判断が安くなれ が「システム1」。時間をかけて考える ば、もっといろんな場所で使われるはず、 LLMに対し、Jevは即断即決の側だという という期待を込めた 意味 5

6.

公開までの経緯 時期 出来事 〜2024 創業者がOpenAIで約4年、ChatGPTやGPT-4の開発に関わる 2024 OpenAIを辞め、仲間2人と TypeSafe AI を立ち上げる 〜2026 表に出さず開発。学習させたのは人工的に作ったデータだけ 9/15 招待制で公開。4,000万ドルの資金調達とDoomのデモも同時発表 9/20 順番待ちを撤廃。新規登録者に5ドル分の無料枠を配布 9/22 想定を超える人気で、新規登録を一時停止(利用中の人は継続) 6

7.

“ ボトルの中の稲妻を手に入れたのに 役に立っていない。 コンピュータは別の言葉を話すからだ — 創業者 Almeida氏。人と話すAIではなく「機械のためのAI」に向かった理由 7

8.

CHAPTER 02 聞けるのは 3種類の質問だけ

9.

聞き方は3パターンしかない 種類 はい / いいえ (noul) どれか選ぶ (choice) 段階で評価 (score) どんなときに使うか 返ってくる答え 「これは返金の依頼?」 0〜1の数字(例: 0.97 = ほぼYes) 「問い合わせの種類は?」 選ばれた1つと、候補ごとの確からしさ 「怒っている度合いは?」 段階のどのあたりか(2〜10段階) ポイント: 自由に文章を書く余地はゼロ。こちらが用意した選択肢の中からしか答えられな い 9

10.

聞き方(送るデータ) { "model": "jev-latest", "state": { 先週買った商品を返品して返金してほしい" state は判断の材料。ふつうの文章のま ま入れてよい "message": " }, questions は聞きたいこと。いくつ並べ "questions": { "is_refund_request": { "type": "noul", 返金を求めているか判定する" てもよい "instructions": " } } } 選択式で聞くときは、選択肢もここで一 緒に渡す 10

11.
[beta]
返り方(戻ってくるデータ)
0.97 は「97%くらいの確からしさで

{
"model": "jev-1.13.0",
"answers": {

Yes」という意味

"is_refund_request": {
"type": "noul",

選択式なら、選ばれた答えと候補ごとの

"noul": 0.97

確からしさがそろって返る

}
},
"usage": {
"input_tokens": 52,
"output_tokens": 20
}
}

プログラムはこの数字を見て、次にどう
するかを決める
入力と出力の文字数も記録される
11

12.

CHAPTER 03 なぜここまで 騒がれたか

13.

1 とにかく速くて安い 0.1 秒前後 $0.042 /100万字 $0 答えが返ってくるまで 入力(渡す文章)の料金 出力(返る答え)は無料 LLMと比べて 40〜200倍速く、入力の単価も数倍〜200倍以上安い ただし比べているのは仕分けや採点の場面。文章を書く速さの話ではない 出力が数字ひとつぶんしかないから、無料にできる 13

14.

2 「もっともらしい嘘」をつかない Jevは、こちらが用意した選択肢の外にある答えを返せない 「A・B・Cのどれ?」と聞けば、Dも、余計な文章も返ってこない 開発元はこれを「ハルシネーション0%」と表現している 注意: 保証されるのは答えの「形」だけ。中身が合っているかどうかは別の話 14

15.

3 Doomをプレイするデモ Step1 Step2 Step3 ゲームの状況を文字と数字に → Jevに「進む・撃つ、どれ?」 → 返答をキー操作に変え、これ 書き出す と聞く を高速で繰り返す 開発元のデモでは、1回の判断に Jev 0.114秒、GPT-5.6 Terra 8.566秒 Jevは画面を見ていない。画像は扱えず、文字にした情報だけを読んでいる 速さが命の場面は、これまでLLMでは遅すぎて手が出せなかった 15

16.

4 使ってみた企業の報告が早かった Vercel: 危険なコマンドかどうかの判定を交代。5〜18倍速くなり精度も上がった Bryo AI: メールの仕分けでGeminiと比較。精度はほぼ同じで10〜20倍安い LangChain: 公開2日後に、危ない操作を止める仕組みの作り方を公開 大手サービスの対応が早かったことも、話題が広がった一因 16

17.

CHAPTER 04 LLMとの違い

18.

「速くて安いLLM」ではなく別の道具 観点 LLM(ChatGPTなど) Jev 返すもの 文章 決められた形の答えと確からしさ 答え方 文字を1つずつ順番に書く 全部の答えをまとめて一度に出す 得意なこと 書く・考える 決める・仕分ける 学習の狙い 人間が好む答えを出すこと 確からしさの数字が正確なこと 自信の数字 自己申告なので当てにならない 実際の正解率とほぼ一致する 読み手 人間 プログラム 18

19.

いちばんの強みは「確率が正直」なこと ChatGPTに「自信は何%?」と聞いても、その数字はあてにならない Jevは「0.85」と答えたら、実際に約85%の割合で当たるように訓練されている だから「0.9以上なら自動で進める、それ未満は人が確認」と線を引ける ただし自分たちのデータでも成り立つかは、確かめる必要がある 19

20.

Jevにできないこと 文章が書けない → 要約や翻訳はLLMの仕事 画像や音声が読めない → 今は文字のデータだけ 計算ができない → 数えるのも苦手。先に計算 して渡す 回りくどい文に弱い → 二重否定など、ひねった言 い方は苦手 好きな言葉を抜き出せない → 候補を並べれば選べる 余計な情報に弱い → 関係ない話は先に取り除く 20

21.

LLMの置き換えではなく その周りで起きる 「判断」だけを任せる道具 21

22.

CHAPTER 05 どんな場面で使うのか

23.

代表的な使いどころ 問い合わせの振り分け: 請求・不具 1 合・購入相談に仕分け。迷ったときだ AIの安全装置: AIが危ない操作をしよ 2 け人に回す 3 大量データの仕分け: 10万件のレビュ ーを1件ずつ判定するような作業 うとしていないか、その都度チェック する 4 とっさの判断: ゲームや監視カメラな ど、一瞬で判断する必要がある場面 役割分担: 文章を書くのはChatGPTなどのLLM、細かい判断はJev 23

24.

コツは「まとめて聞く」 { "state": { "ticket": "..." }, "questions": { "is_urgent": { "type": "noul", 1つの材料について、聞きたいことを全 部まとめて渡す "instructions": "..." }, "category": { "type": "choice", "instructions": "...", 請求・支払い", "technical": "技術的な不具合", "sales": "購入前の相談" } }, "criteria": { "billing": " "sentiment": { "type": "score", "instructions": "...", "criteria": ["negative", "neutral", "positive"] } } 使うか分からない判断も、ついでに先に 聞いておく 答えは同時に作られるので、質問を増や しても待ち時間はほぼ同じ } 公式の実測では、13個をまとめて12.2倍 安く10倍速くなった 24

25.

CHAPTER 06 今後と気になる点

26.

気になる点 性能の数字は開発元の自己申告 中身が公開されていない → 公式も「実際より良く出ている」と注記 → 仕組みも論文も明かされていない ハルシネーション0%…? 人気に供給が追いつかない → 答えの形の保証で、正しさの保証ではない → 新規登録は停止中。本番利用はまだ先 26

27.

開発元がこれからやること 取材に対し「画像や音声など、扱えるデータを増やす」と答えている 実現すれば、防犯カメラや音声アシスタントの判断部分にも入ってくる 「我々が売りたいのは知能そのもの」と、汎用AIの競争とは距離を置く姿勢 登録再開の案内は公式X。CloudflareやVercel経由でも利用できる 27

28.

実際に使う前に確かめること 自分たちのデータでも、ちゃんと当たるか そもそも外部のサービスに送ってよい情報か 返ってくる確率が、実際の正解率と合っているか 何%以上なら自動で進めてよいか、線引きを決める 間違えたときに、途中で止められる作りになっているか 28

29.

まとめ 1 Jevは判断だけをするAI。決められた形の 答えを確からしさ付きで返す 3 強みは確率が正直なこと。「書くのは LLM、決めるのはJev」の分担 2 聞けるのは3種類の質問だけ。0.1秒前後 で返り、出力の料金は無料 4 性能は自己申告・中身は非公開・登録停 止中。自分のデータで検証してから 29

30.

参考 元記事: みんなJevの話してる。やってないの俺だけ zenn.dev/unsoluble_sugar/articles/jev-system-one-model-intro TypeSafe AI 公式ブログ(System Oneモデル / Jev 発表) typesafe.ai/blog/introducing-system-one-models-and-jev 30

31.

ご清聴ありがとうございました @unsoluble_sugar