MaaSの発展とソフトウェア化するモビリティ

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December 10, 22

スライド概要

2022年12月9日に実施された静岡県など主催「MaaSビジネスマッチング交流会」における伊藤昌毅(東京大学 大学院情報理工学系研究科附属ソーシャルICT研究センター 准教授)による講演
講演動画:
https://youtu.be/HMlMAsf2opY

引用動画:
Drive Sweden - Our Vision - A new approach to mobility
https://youtu.be/WmYsWYDQxuI

朝日新聞社 【クルマ】完全自動運転の配車サービス「ウェイモ」記者が体験
https://youtu.be/sCP2on2Hb-Q

自動運転バス開始 きょうから 1日8便 町内巡る 境町 茨城新聞動画ニュース
https://youtu.be/PrkwrDyix_c

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伊藤昌毅 東京大学 大学院情報理工学系研究科 附属ソーシャルICT研究センター 准教授。ITによる交通の高度化を研究しています。標準的なバス情報フォーマット広め隊/日本バス情報協会

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関連スライド

各ページのテキスト
1.

2022年12月9日 静岡県掛川市 大日本報徳社 静岡県 MaaSビジネスマッチング交流会 MaaSの発展とソフトウェア化するモビリティ 東京大学 大学院情報理工学系研究科 附属ソーシャルICT研究センター 伊藤昌毅

2.

伊藤 昌毅 • 東京大学 大学院情報理工学系研究科 附属ソーシャルICT研究センター 准教授 • 専門分野 • • – – ユビキタスコンピューティング 交通情報学 – – – – – – – – 静岡県掛川市出身 2002 慶應義塾大学 環境情報学部卒 2009 博士(政策・メディア) 指導教員: 慶應義塾大学 徳田英幸教授 2008-2010 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特別研究助教 2010-2013 鳥取大学 大学院工学研究科 助教 2013-2019 東京大学 生産技術研究所 助教 2019-2021 東京大学 生産技術研究所 特任講師 2021-現在 現職 – 運行管理者(旅客) 経歴 資格 2

3.

掛川生まれ・掛川育ち

4.

伊藤×国土交通省 • • • • • • • 標準フォーマット関連 – – – – バス情報の効率的な収集・共有に向けた検討会 座長(H28年度) 標準的なバス情報フォーマット利活用検討会 座長(H29年度) バス情報の静的・動的データ利活用検討会 座長(H30年度) GTFS-JPに関する検討会 委員(R2年度) – 公共交通分野におけるオープンデータ推進に関する検討会 委員(H29年度-R3年度) – – 都市と地方における新たなモビリティサービスのあり方懇談会 委員(H30年度) 新モビリティサービス推進事業有識者委員会 委員(R1年度) – 交通政策基本計画小委員会 委員(R1年度-) – シェアサイクルの在り方検討委員(R1年度-) – 鉄道の混雑緩和に資する情報提供のあり方に関する勉強会 委員(R2年度) – 運行管理高度化検討会・ワーキンググループ(R2年度-) オープンデータ関連 MaaS関連 交通政策審議会 シェアサイクル 鉄道 点呼

5.

伊藤×経済産業省・総務省 • 経済産業省 オープンデータ関連 – 官民データの相互運用性実現に向けた検討会 座長(H29年度) – 情報共有基盤 利用促進ワーキンググループ 委員(H30年度) • 総務省 オープンデータ関連 – 地域情報化アドバイザー(R2年度〜R3年度)

6.

伊藤×地方自治体 • • • • • • • 沖縄観光2次交通の利便性向上に向けた検討委員会 座長(H30年度〜) 群馬県バスロケーションシステム実証実験 アドバイザー(R1年度) さいたま市 スマート駅広研究会 副会長(R2年度〜R3年度) 佐賀市 街なか未来技術活用モデルプラン策定業務有識者会議 委員(R2年度) 東京都 東京都における地域公共交通の在り方検討会 委員(R2年度〜R3年度) 熊本市 熊本版MaaS勉強会 有識者委員(R3年度〜) 杉並区地域公共交通活性化協議会 会長(R3年度〜) • その他自治体主催のイベントでの講演多数 – 静岡県掛川市、石川県能美市、群馬県、島根県安来市、沖縄県、富山県、岐阜県、北海道など

7.

モビリティは100年に一度の大変革の時代

8.

2018年3月5日号 2018年9月号 2019年4月29日号 2019年7月30日号

9.

車両目線で次のモビリティを考えるなら CASE

10.

CASE: 自動車産業が見据えている方向性 • C: Connected – 通信・ネットワーク化 • A: Autonomous – 自動運転 • S: Shared and Service – サービス化 • E: Electric – 電動化 • 2016年にダイムラーが提唱・一企業に留まらない自動車産業の方向性を示 すキーワードとなる https://www.daimler.com/innovation/case-2.html

11.

TESLA • イーロンマスク氏による電気自動車ベン チャー企業 – 2003年創業 • 自動運転に対応したハードウェアを標準 装備 – カメラや超音波、レーダーなどで周辺を認識 – オートパイロット機能を提供 – 現在は完全な自動運転ではないが、将来は完全自 動運転に対応? – ソフトウェアアップデートで機能追加 • 利用者の運転行動を通してアルゴリズム を進化 • Webでカスタマイズ・オーダー https://ja.wikipedia.org/wiki/テスラ・モデル3

12.

https://response.jp/article/2019/02/28/319596.html

13.

A: Autonomous 自動運転

14.

City of Tomorrow with Autonomous Vehicles (Drive Sweden) • 自動運転によって街がどう変わるかというビジョン – 街の空間を車のための場所から人のための場所へ • • • • • • 道路標識が不要に 道路を効率よく使えるようになり歩道が広がる 駐車場を街の中心に作らなくてよい 駅に到着したときに待たずに出迎え 自動運転トラックの隊列走行で効率よく 計画的に積み荷を処理することで駐車場削減 https://www.youtube.com/watch?v=WmYsWYDQxuI

16.

• x http://www.mlit.go.jp/common/001226541.pdf

17.

2020年!? • テスラは2020年に「完 全な自動運転」を実現 する – オートパイロット機能 – スマートサモン機能 https://wired.jp/2019/02/25/tesla-full-self-driving-promise/

18.

CES 2019 トヨタ・リサーチ・インスティテュート (TRI)ギル・プラットCEOスピーチ • レベル5の自動運転とは、いつどこで どんな環境でも、ドライバーなしで自 動運転が可能なシステムと定義されま す。 • これはすばらしい目標ですし、私たち もいつかは達成できるかもしれません。 • しかしながら、こうした自動運転シス テムが抱える、技術的・社会学的な難 しさを甘く考えてはいけないと思って います。 2019年01月08日 https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/26085185.html https://car.watch.impress.co.jp/img/car/docs/1161/181/html/001_o.jpg.html

19.

ウェイモ(Google)による無人タクシー(レベル4)がアリゾナ州フェニックスで実用化

20.

• x 官民 ITS 構想・ロードマップ 2019 より

21.

S: Shared and Service サービス化

22.

車両を売るビジネスからサービス化へ • 所有以外の方法で「移動」を実現する方法が多様化・高度化 • →顧客が欲しかったものはドリルではなく「穴」だった

23.

「公共交通」の可能性が 世界中で試されている

24.

Uber • 2010年 サンフランシス コで設立 • 2011年 NY、パリ進出 • 2013年 東京でタクシー 配車開始 • 2015年 CMUの研究者40 名を引き抜き • 2015年福岡市でライド シェア実証実験、国交省 が中止 • 2016年 トヨタと提携 • 2016年 京丹後市で「さ さえ合い交通」

25.

多くのライドシェア(ライドヘイリング) サービスが登場 2010年 サンフランシス コで設立 2013年 東京でタクシー 配車開始 2016年 トヨタと提携 2016年 京丹後市で「さ さえ合い交通」 2012年サンフランシス コで創業 2015年 楽天が出資 2017年 Googleが出資 2012年マレーシアにて創 業 2012年 中国で創業 東南アジア8ヶ国168都市 でサービス提供 2015年 Lyftと提携 2017年8月 トヨタ自動車 などと協業 2018年 Uberの東南アジ ア事業を買収 中国最大のライドシェア 2016年 Appleなどが出資 2016年 Uberの中国事業 を買収 2018年 日本で事業開始

26.

自動運転バス→大事だがモビリティサービス の構成要素の1つとも言える • NAVYA ARMA • – フランスのスタートアップ企業が開発した自 動運転バス • 15人乗り • 充電式で5時間から13時間走行可能 • 自動で障害物を検知し避けることができる 単に運転手なしで走るだけで無く、乗合で走らせる ための自律的なサービス実現技術が必要に EasyMile – 自動運転車EZ10を開発 • 定員12名(6名は立ち席)、走行速度20km/h、最 高40km/h • 最高で14時間走行 • 「メトロ」モード: 時刻表に従い各駅に停車 • 「バス」モード: 要求があった所にだけ停車 • 「オンデマンド」モード: スマホアプリで呼び出し

27.

自動運転バス @境町

28.

カーシェアリングの発展 • 世界的にはcar2goが大手 – ダイムラーの子会社 – 8ヶ国30都市でサービス提供中 – 乗り捨て型のカーシェアリング • 駐車可能な場所ならどこでも駐車可能 – 予約なしオンデマンドの利用、分単位の課金 • 日本では乗り捨て型カーシェアリングは発 展途上※ – 乗り捨て先の保管場所確保が必要なため ※ カーシェア「乗り捨て」、撤退相次ぐワケ 規制緩和から1年、実現に 行政裁量の壁(日経ビジネスオンライン 2015年10月) http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/102600116/

29.

Kutsuplus • 2013年に開始したヘルシンキ首都圏のための公営デマンド交通 – 市街地は駐車場が少ない • スマートフォンから出発バス停、到着バス停、5,10,45分以内を 指定して予約 – バスと違って路線や時刻を知ることなく利用可能 • 9人乗りのバスが最適ルートで走行 • 料金 – 3.5ユーロ+距離加算(タクシーより安価) – 速達性に応じて急行、普通、エコノミーの区分け • AALT大学(コンピュータサイエンス学部)の研究プロジェクトと してスタート

30.

• ああ http://www.muotoilutarinat.fi/en/project/kutsuplus/

31.

chariot • サンフランシスコのスタートアップ による次世代バスサービス – 通勤客対象 – 2014年創業 • 利用者からの「クラウドソーシン グ」で経路を作る仕組み – ユーザは出発地、目的地を投票 – 現在ベイエリアでは28のルートで100台が 走行中 • 2016年 Ford Smart Mobility が買 収 – 全米に

32.

マイクロモビリティの急速な普及 • 電動キックボードとシェアサイクルをマイ クロモビリティと総称 – ドックレス(どこでも乗り捨てられる)が流行 • Bird、Jump (Uber)、Lyft、Lime、 Skip、Spin (Ford)などが全米の都市で競 争

33.

ああ • Toyota and Softbank Stockholder of Uber (US), DiDi (China), Grab Taxi (Singapore), Ola (India) MONET設立

34.

MaaS (Mobility as a Service)

35.

MaaSとは? • ドア・ツー・ドアの移動に対し、 様々な移動手法・サービスを組み合わ せて1つの移動サービスとして捉えるものであり、ワンストップでシーム レスな移動が可能となる。 • 加えて、様々な移動手段・サービスの個々のサービス自体と価格を統合 して、 一つのサービスとしてプライシングすることにより、いわば「統 合一貫サービス」 を新たに生み出すものであり、価格面における利便性 の向上により利用者の移動行動に変化をもたらし、移動需要・交通流の マネジメント、さらには、供給の効率化も期待できる。 • 小売・飲食等の商業、宿泊・観光、物流などあらゆるサービス分野との 連携や、医療、福祉、教育、一般行政サービスとの連携により、移動手 段・サービスの高付加価値化、より一層の需要の拡大も期待できる。 (国交省 都市と地方の新たなモビリティサービス懇談会中間とりまとめより)

36.

MaaS Global社による定義 • あらゆる種類の移動手段を単一の 直感的なモバイルアプリにまとめ ます。さまざまな事業者が提供す る移動の選択肢をシームレスに組 み合わせて、旅行計画から支払い まですべてを取り扱います。オン デマンドで旅行を購入する場合で も、手頃な価格の月額パッケージ をサブスクライブする場合でも、 MaaSは最善の方法であなたの移 動のニーズに応えます。

37.

Whim by MaaS Global • • ヘルシンキ(フィンランド)でMaaSを実現 Whim というアプリを通して鉄道、バス、タ クシー、自転車などの組み合わせ検索や予約決 済を実現 https://whimapp.com

38.

https://note.mu/kakudosuzuki/n/n01c8ab0f9b84 Whimの利用 • xx

39.

Whimのプラン: 料金により交通行動を誘導

40.

変身するLA マイカーなしでも移動に不自由なし モビリティー革命進行する米国 • 牧村和彦氏(計量計画研究所) による現地レポート • 米国にて、車社会から新しいモ ビリティサービスによるまちづ くりが始まっていることを報告 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33296960T20C18A7000000/

42.

「全ての交通サービスが自分の ポケットの中にある」 という、 今までに感じたことのない 異次元の感覚

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日本におけるMaaSアプリの登場

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My route: トヨタ+西鉄によるMaaSアプリ • 日本初の本格MaaS実証実験 – 2018年11月〜2019年3月→延長 • バス・電車・タクシー・サ イクルシェア・ レンタカーの組み合わせ • 予約・支払がアプリで可能 • 2019年7月 ナビタイムと連 携発表

45.

小田急: MaaSアプリ EMot(エモット) • 観光: 箱根にて観光フリーパス実証実験 • 郊外: 新百合ヶ丘で公共交通へのシフト • 複合経路検索 – 鉄道+バス+タクシー+シェアサイクル等 • 電子チケットの発行 – 企画券、飲食チケット、無料モビリティチケット

46.

JR西日本のMaaS • 観光型MaaS setowa – 瀬戸内エリアの観光促進 • WESTER – 経路検索機能・駅混雑情報などを統合 – クーポン機能 • JR東日本アプリと連携予定 – 遅れを加味した検索

47.

モビリティのサービス化は ITの進化を土台にしている • ITを使わないと出来ない – 大量のデータ処理、最適化 – サービスのリアルタイム化 – スマホならではの親近感 • ITがやってきたこと、得意なことと重なる – 車両や道路の利用効率の最大化

48.

所有から利用へ(クラウドコンピューティング・XaaS) • オンプレミス・ホスティングは「サーバを使う」という意識 • クラウドでは、事実上無限のサーバ、ストレージ、ネットワークが あり、必要なときに必要なだけの資源を利用し、使っただけ支払え ばよい • コンピュータの管理が高度化され、Web操作で高度で柔軟な構成が 可能 • メリット – – – – 急激にアクセスが殺到しても自動的に多重化 災害があっても自動的にバックアップへ切り替え 一時的に必要になる計算処理のためのコンピュータ調達が容易 スタートアップ企業でも、驚異的に安価な初期費用で必要なコンピュータを揃えられる

49.

ハードウェアとしてのサーバ • ネットワークを通じてサービスを提供することに特化して設計 されたコンピュータ – 基本的な機能は個人用コンピュータ(PC)と同じ • サーバ用のプログラムも開発時はPCで開発されることが多い – より高性能、より高い信頼性、保守性 – ディスプレイ不要、密な設置のため規格化された独自の形態を取る HPE ProLiant DL20 Gen10 Server DELL PowerEdge R740 19インチラックの例

50.

これをモビリティに当てはめると・・・ • 移動が所有から利用になる世界 • 自動車、自転車などの移動手段は所有しない • 必要なときにスマホから必要なだけの移動手段を呼び出せる • 高額の初期購入費用が不要、少額の都度払い・定額制 • 移動のサービス化(MaaS) – ITの方法論が、サーバやスマホ画面に閉じず、実世界のサービスを巻き込む世界

51.

中心はハードから ソフト・データへ

52.

コンピュータの歴史(の一部) メインフレーム (1950年代〜) ワークステーション (1980年代〜) ラップトップ (1990年代〜) タブレットPC (2000年代〜) ミニコンピュータ (1970年代〜) IBM System/360 UNIX, インターネット などのはじまり パーソナルコンピュータ (1980年代〜) PDA (1990年代〜) スマートフォン (2000年代〜)

53.

ガラケー(通信機)からスマホ(コンピュータ)へ • 連続的な進化ではない – – – – 技術基盤の変化: 組み込みソフトウェアから現代的なOSヘ 事業構造の変化: キャリア主導からプラットフォーマー主導へ 国内多メーカーから国際的に集約へ ハードウェアの多様性からソフトウェアの多様性へ

54.

Software Is Eating the World • マーク・アンドリーセン氏によるウォールストリート ジャーナル紙への寄稿文(2011年8月) • さまざまな既存事業や業界が、ソフトウェア上に再構築され、オン ラインサービス化しつつある。 • 映画、農業から国防にいたるまで、このトレンドの勝者の多くはシ リコンバレー型起業家が経営するテクノロジー企業だ。 • こういった新興企業が既存の業界構造に襲いかかり、破壊しつつあ る。 • 今後10年、もっと多くの業界のビジネスモデルがソフトウェアに よって再編され、世界を席巻するシリコンバレー企業がさまざまな 分野で変革をもたらすことになるだろう。 https://trailblazing.hatenablog.com/entry/2015/05/27/インターネット:マーク・アンドリーセンの予

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自動車・自動車産業は どう変わるか?

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• xx トヨタの求人広告が話題に(2017年) https://adgang.jp/2017/10/151302.html

57.

もっと知りたい人は・・・ • 5年後のビジネス構造変化を読み解く、 最良の教材は自動車産業だった! ガソリン車の廃止 世界規模の再編 水平 分業の大波 そしてコネクテッド 日本経済の大黒柱は大丈夫か 世界の自動車産業を知り尽くすコンサル タント・ジャーナリストの描く未来 忖度なしに「自動車業界」の現状を描く https://www.amazon.co.jp/dp/4065235294/

58.

IT産業としての モビリティを構想する

59.

第5章 情報技術による再構築 2021年8月発行 • モビリティはIT産業になる × ITは地域モビリティにどう役立つの か? ○ IT企業としての地域モビリティ企業 を生み出す必要がある

60.

なぜモビリティはIT産業になるのか(ITの強み) • 供給の最適化が可能 – 移動したい人に速やかに最適な移動手段を提供 • 需要の喚起や制御ができる – TDMのようなことを、もっと自然に、気付かれずに出来る • 需要と供給の一体的制御 – プラットフォーマーを介して需要と供給がリアルタイムに調整される • 低熟練者の高付加価値化 – ITのサポートで運転や案内などが可能に – 人材不足に対応

61.

供給の最適化が可能 → 受け身の最適化 • 移動したい人に速やかに最適な移動手段を提供 • 自動運転、スマートシティにより更に加速が期待

62.

都バスのサービスレベルを把握するマップを作成

64.

サービスレベル可視化:中心地からの到達時間

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サービスレベル可視化:地域ごとの通える高校数

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需要の喚起や制御ができる • 移動したい人に速やかに最適な移動手段を提供 • TDMのようなことを、もっと自然に、気付かれずに出来る • 「需要は作り出すことが出来る」という発想は民間企業のほう が馴染みやすいのではないか?

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交通行動において デジタルツール(アプリ)への 依存が進む

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乗換案内サービス 駅すぱあと Yahoo!乗換案内 駅探 乗換案内 NAVITIME ジョルダン 乗換案内 Google Maps Apple Maps

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SEOでインターネットのトラフィックを集める

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経路検索の結果は意外とばらつく Yahoo! 高崎駅からのバスを 案内。朝ゆっくり出来る Apple Maps 前橋駅からバスという 直感的な経路 NAVITIME 前橋駅から23分も 炎天下を歩く Google Maps 新前橋駅から30分も 炎天下を歩く ジョルダン 新前橋駅から30分も 歩く。新幹線使わず。 自宅最寄駅→群馬県庁 11:25到着で検索(2017年8月) デフォルトの検索条件で出された第1経路

71.

交通事業者による検索エンジン最適化(SEO)的な発想 日経MJ 2015年10月19日 京阪電気鉄道社長インタビュー 鉄道に乗る際に利用者はスマホの 乗り換えサイトを利用します。 いくら沿線の良さをアピールしても大 半の方はサイトの上に表示された時 間が早いほうに乗ってしまう。先に 表示されないと選ばれない。鉄道を 選ぶ最大のポイントはサイトで上位 に表示されることになりつつある。 これは無視できない。だから1分でも 2分でも早くしようと努力しています 2015年10月25日 くらしの足をみんなで考える全国フォーラム2015 ラウンドテーブル インターネットやスマホはくらしの足にどう踏み込むのか 107 太田恒平氏スライドより

72.

低熟練者の高付加価値化 • ITのサポートで運転や案内などが可能に • 人材不足に対応(ギグワーカー)

73.

需要と供給の一体的制御 → 攻めの最適化 • プラットフォーマーを介して需要と供給がリアルタイムに調整 される • 「囲い込み」へ • これ、どこか出来いたことあるぞ??

74.

MaaSプラットフォーマー • 交通をまとめて、アプリを提供する事業者 経路検索 ダイヤ情報 鉄道 シェアサイクル カーシェアリング タクシー バス 予約・決済 リアルタイム運行情報 予約・決済・配車 地図情報 MaaS プラット フォーマー 周辺情報 利用実績情報

75.

世界はMaaSの覇権競争? • GAFAに匹敵する強大なプ ラットフォーマーが出る説 • 覇権は無理、複数プラット フォーマーが共存する説 https://business.nikkei.com/atcl/report/15/226265/112900306/ https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00150/00002/

76.

研究開発概要 行動変容と交通インフラの動的制御によるスマートな都市交通基盤技術の研究開発 • 「交通」という応用領域からB5Gの要素技術の具現化、社会実装への道筋を作る 項目2: 交通行動を導くセンシングとユーザインタフェース技術 項目1: 最適化された公共交通の動的供給技術 自由で円滑な移動 車両 データに基づく公共交通計 ダイナミックダイヤ: 需 画: 地域全体の長期的公共要に応じてバスを適切に運 交通計画を複数の交通モー 行 ドを跨いで最適化 特性を配慮した交 通制御 交通行動変容:心理学・行動 経済学・XR (Extended Reality)な どを活用した情報提示で、人 や車両の交通行動を誘導 人 道路 都市インフラの 負荷軽減 交通センシング:スマートフォン などで交通行動を推定 項目3: 個々の利用者を考慮したリアルタイム交通制御技術 交通可視化: 交通制御の影響 の可視化による社会受容の実 現 項目4: 交通インフラの管理や制御 を実現するプラットフォーム技術 MaaSデータ基盤技術: 視覚化・分析・制御 基盤 AI信号制御: リアルタ イムセンシングに基づき 交通信号制御 都市交通基盤通信技術: 車両、信号機、交通センサ、歩 行者などを同時接続 超低遅延 超安全・信頼性 超多数同時接続 自律性 121

77.

主要なメンバー 組織 東京大学(9研究室) 所属・役職 代表者 担当分野 情報理工学系研究科 准教授 伊藤昌毅 IT交通改善、AI交通信号 生産技術研究所 教授 大口敬 交通工学、道路信号 空間情報科学研究センター・生 瀬崎薫 産技術研究所 教授 情報ネットワーク、IoT、モ バイル空間センシング 情報理工学系研究科 准教授 塚田学 ITS通信技術 工学系研究科 教授 中尾彰宏 次世代サイバーインフラ 生産技術研究所 教授 中野公彦 機械生体システム制御工学 空間情報科学研究センター 講師 西山勇毅 モバイル・ウェアラブルセン シング 生産技術研究所 教授 ペニントン マイルス デザイン先導イノベーション 生産技術研究所 准教授 本間健太郎 空間デザイン数理 トラフィックブレイン 代表取締役 太田恒平 ダイヤ改善、IT交通改善 MaaS Tech Japan 代表取締役 日高洋佑 MaaSデータ基盤 122

78.

信号機をITで作ってみた 123

79.

DC信号灯器の開発 ・実物の信号灯器を改造してDC電源で動作する信号灯器を開発(三球電機) ・RS-232Cで接続したPC・Raspberry Piからの制御や明るさの調光が可能 テスト用 信号灯器全体 信号灯器内部 信号灯器外部IF 124

80.

IoT信号機を独自に開発 • DC12V, 5Vを供給 • ソーラー+蓄電池で安定した電源供給 • 省電力化により24時間駆動も視野に 横型灯器 ソーラー+蓄電池 • 自動車通行状況のセンシングに利用 • 画像認識と組み合わせ、リアルタイムで交差点へ進入する自動車 の位置や速度などを把握 IPカメラ 組込コンピュータ • 信号制御ロジックとして交通状態に最適な信号制御 • 画像認識として、カメラ画像から自動車を抽出、速度などを算出 • 通信機能として、複数の信号機同士を接続、情報交換 縦型灯器 NVIDIA Jetson Xavier NX Raspberry Pi 125

81.

実際に稼働する「交差点」を実現 • ソーラー電源装置 • (株)エル光源 • 信号機の開発、敷設工事 • 三球電機(株) • 組み込みコンピュータを制 御器ボックス内に設置 126

82.

通信はWi-Fiを利用・5GやBeyond 5Gへの拡張も想定 • 各ポールにWi-Fiルータを設置し相互に接続。 交差点内で完結したネットワークを構築 • Pub/Subモデルによる通信 • RabbitMQを利用 127

83.

交通センシング ーすべては測ることからはじまるが・・・ ー 超音波式車両感知器 路面からの反射で車が通過しているか どうかを連続的に判定 光ビーコン https://www.seiss.co.jp/products/its/sensor/ 130

84.

交通センシング ー機械学習の最新技術を応用 YOLO: ディープラーニングによって物体を検出、識別する最新手法 2016年に提案され改良が続いている 高速・高性能 高性能なPCで動画(1秒間30コマ)の認識が可能 Deep SORT: リアルタイム物体追跡の最新手法 前後のコマ同一の物体を認識、移動を検出 131

85.

低消費電力な小型組み込みプラットフォームに実装 • 「自動車の検出」という課題に向けたチュー ニング • NVIDIA製の小型組込プラットフォームJetson への実装 • • 機械学習を高速に処理するGPU搭載 消費電力15W、価格約5万円 132

86.

Step1: 信号ポールのカメラ(4台・4方向)から動画撮影 X 133

87.

Step2: 自動車の識別・追跡を高速に繰り返す 134

88.

Step3: 地図上に投影・車線上の位置や速度を推定 • 精度、速度はデモをご確認ください 135

89.

デジタルツインに交通シミュレータ SUMOを組み合わせて未来予測 136

90.

提案する信号制御ロジック • リアルタイムにその瞬間瞬間の最適な灯色を提示 • センサで交差点周辺の交通状況を正確に把握 • 「もしこの方向に青を出したらこの後どうなる?赤だったらどうなる?」というよ うな、数十秒後の近未来を網羅的に予測し評価 車1台1台の振る舞いを評価し、それを総合して最善手を決定 • • センサ技術+交通シミュレーション技術+小型高性能コンピュータが広く利用 出来る時代に可能になった信号制御ロジック 138

91.

制御ロジック1/2 : 「動線交錯」を考慮し選択肢を列挙 1: それぞれの方向で赤か青を選択 できるとして、交差点のすべて選 択肢を列挙 2: 導線の交錯を考慮し可能な 選択肢を選択 ◯ 交錯あり × 交錯なし B C A 交 錯 関 係 D 片側1車線4流入路の交差点の すべての選択肢|24 = 16 可能な選択肢|16 のうち 7 139

92.

制御ロジック2/2 : 各選択肢の際の交通を予測し最善のものを選択 • • 選択肢2 選択肢3 選択肢4 選択肢1 総遅れ|118秒 ⻘信号| 2 選択肢2 総遅れ|110秒 ⻘信号| 1 選択肢3 総遅れ|135秒 ⻘信号| 2 選択肢4 総遅れ|138秒 ⻘信号| 1 選択肢5 選択肢6 選択肢7 選択肢5 総遅れ|117秒 ⻘信号| 1 選択肢6 総遅れ|135秒 ⻘信号| 1 選択肢7 総遅れ|138秒 ⻘信号| 0 ➢シミュレータ で15秒後を予測 今の交通状況(交差点に進入する車の位置、速度、右左折)をセンシング 各選択肢に切り替えた場合の15秒後の姿を交通シミュレータで予測 • • • 選択肢1 制御器内でシミュレータソフトが7プロセス稼働している 遅れ時間(各車が制約なく走った場合との差)の合計がいちばん小さい候補を選択 5秒おきに15秒後を予測し制御を繰り返す 140

93.

提案手法を交通シミュレータSUMOを用いて検証 141

94.

142

95.

信号が状況を認識して動けばいいのに! 青なのに 右折が詰まり 進めない 143

96.

144

97.

柔軟な制御を実現した例 「右折の詰まり」に対して、状況に応じた最適な制御が行われた 継続時間 (s) 10 10 5 20 A B C D ★ 5秒だけ対向車を止めて「右折を通す」 10 10 10 10 A B C D ★ 10秒だけ右折を止めて「対向車を通す」 145

98.

領域の壁を越えた技術開発 • ハードとソフト – 信号機ハードウェアとAI・シミュレーションソフトウェアの融合 • 交通インフラと車両 – インフラは所与のものではなく交通流のために機能する • 情報工学と交通工学 – 複数の分野の研究者の共同研究

99.

いい街を作りましょう

100.

公共交通を活かしたまちづくりの成熟 • モータリゼーションが先行したヨーロッパにおいて、中心市街 地を公共交通によって活性化する施策が一般化 – 数十万人規模の都市でもトラムを整備、赤字前提の運営 • LRT導入、歩行者専用道路、トランジットモール… フランス オルレアン https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Rue_Jeanne_dArc_Tramw ay_Orleans.jpg フランス ストラスブール http://uemuraakifumi.com/machi/858 ドイツ カールスルーエ https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Heilbronn_Bah nhofsvorplatz_Stadtbahn01_2002-09-08.jpg

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日本やアメリカでも続く動き • 世界的にも自家用車から脱却し公共交通を中心としたまちづく りがすすめられている アメリカ ポートランド http://kcube.zouri.jp/potland-notoshikoutuseisaku.html 台湾 高雄 https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Kaohsiung_LRT_Circ ular_Line_at_Gate_of_Kaohsiung_Port_20180621.jpg 富山市 http://www.toyamashi-kankoukyoukai.jp/?tid=100846

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静岡(掛川)から次世代の 交通まちづくりを