可変ピッチプロペラとベクツイン舵を⽤いた簡易DP 操船のための仮想ポッドスラスタの開発

360 Views

November 30, 23

スライド概要

令和5年度の日本船舶海洋工学会秋季講演会における発表資料です

profile-image

大阪大学 工学研究科 地球総合工学専攻 船舶海洋工学部門 船舶知能化領域です. 研究室の発表スライドなどを共有します. We are Ship Intelligentization Subarea, Dept. of Naval Architecture & Ocean Engineering, Div. of Global Architecture, Graduate School of Engineering, Osaka University.

シェア

またはPlayer版

埋め込む »CMSなどでJSが使えない場合

関連スライド

各ページのテキスト
1.

可変ピッチプロペラとベクツイン舵 を⽤いた簡易DP 操船のための 仮想ポッドスラスタの開発 ⼤阪⼤学 ⼩池 弘顕 ⼤阪⼤学 牧 敦⽣ ⼤阪⼤学 登尾悠平

2.

1 緒⾔ Dynamic Positioning System (DPS)の 需要が増加している 本研究で扱う課題 解決すべき課題  システムの冗⻑性確保、 船員の訓練にコスト  ⾃動で定点保持  新たな制御則の開発 など  簡易的なアクチュエータ (舵+プロペラ+バウスラ スタ)を⽤いて、ポッドス ラスタのような制御を実現  ポッドスラスタは⼀般的な 舵+プロペラに⽐べて⾼価  精密なDPSではなく簡易的 なDPS(以後簡易DPSと呼 ぶ) 簡易DPSは  ポッドスラスタ、アジマスス ラスタなど⾼価で複雑なアク チュエータを使⽤しない  精密に船位を保持するより、 沖待ちなど少し船位が動くよ うなDPを想定

3.

先⾏研究 DPSの研究は古くから多く⾏われている DPSの研究例  1970年代にBalchenら1)はExtended Kalman Filter (EKF)を⽤い たDPSシステムを発表  Sørensenら2)1996年にモデルベースのDPS制御則を発表  国内では三井造船などが製品化3, 4) (1) J. G. Balchen, et. al “A dynamic positioning system based on kalman filtering and optimal control,” Modeling, Identification and Control: A Norwegian Research Bulletin, vol. 1, no. 3, p. 135‒163, 1980. (2) A.J. Sørensen, S.I. Sagatun, T.I. Fossen, Design of a dynamic positioning system using model-based control, Control Engineering Practice, Volume 4, Issue 3, 1996 (3) 植⽊修次 , 井上和博 “⾃動船位保持装置 (dps),” ⽇本舶⽤機関学会誌, vol. 32, no. 9, pp. 649–661, 1997 (4) 村⽥航, “Dynamic positioning system ⾃動船位保持装置 ̶定点保持のための最新技術 ,” マリンエンジニアリング, vol. 53, no. 4, pp. 550–555, 2018 2

4.

先⾏研究 3 簡易DPSに関する研究もいくつか存在 簡易DPSに関する先⾏研究例  ⽯川ら5)によって、簡易的な船位保持の補助システムが提案  Rachmanら6)はベクツイン舵を⽤いたDPSシステムを活⽤した着桟 制御⼿法を提案  登尾ら7)はベクツイン舵を⽤いた簡易DPSを提案 (5) N. Ishikawa, H. Kashima, and T. Okazaki, “Development of a maneuvering support system for ships without dynamic positioning systems,” in 2020 IEEE International Conference on Systems, Man, and Cybernetics (SMC), pp. 1785–1790, 2020. (6) . M. Rachman, Y. Aoki, Y. Miyauchi, N. Umeda, and A. Maki, “Experimental low-speed positioning system with vectwin rudder for automatic docking (berthing),” Journal of Marine Science and Technology, pp. 1–15, 2023 (7)登尾悠平, ⼩池弘顕, and 牧敦⽣, “ベクツイン舵を⽤いた簡易 DPS の提案,” ⽇本船舶海洋⼯学会講演会論⽂集 No.. 36, pp. 21–29, ⽇本船舶海洋⼯学会, 2023

5.

簡易DPSの課題 4 過去に提案された⼿法では出⼒可能な⼒が限られる 簡易DPSのスラストアロケーション⼿法に起因  ⽯川らが提案したものは、あくまで⽀援ツール。操船パターンが限 られていた  Rachmanらや、登尾らの提案した⼿法はベクツイン舵のホバー⾓ まわりでの線形化を⽤いているため、使⽤できる舵⾓範囲が限定的

6.

5 研究⽬的 新たなスラストアロケーション⼿法の提案 本研究の内容  CFDや⽔槽試験結果から舵+プロ ペラの⼒を表現するモデルを導出  舵⾓ごとに発⽣する⼒を多項式で表現。 発⽣⼒曲⾯と以後呼ぶ。  スラストアロケーションの⽅法説 明  簡単なPIDコントローラを⽤いて DP制御に適⽤  数値実験にて本⼿法の適⽤性を検証 スラストアロケーション先⾏研 究例  Sørdalen8)は効率の良いスラストア ロケーション⼿法を提案  ⼤坪と梶原9)は、制約がある場合のア ジマススラスタの推⼒配分法を提案  五百⽊と梶原10)は、区分線形補間に よる最適推⼒配分法を提案 (8) O.J. Sørdalen, Optimal thrust allocation for marine vessels, Control Engineering Practice, Volume 5, Issue 9, 1997 (9) ⼤坪 和久, 梶原 宏之, アジマススラスタ⾸振⾓に制約がある場合の推⼒配分法について, ⽇本船舶海 洋⼯学会論⽂集, 2007, 6 巻, p. 177-182 (10) 五百⽊ 陵⾏, 梶原 宏之, 区分的線形補間による⾸振⾓制限付きアジマススラスタの最適推⼒配分 法, ⽇本船舶海洋⼯学会論⽂集, 2007

7.

6 対象船と座標系 1軸2舵の貨物船 外観と主要⽬ 座標系 Parameter 𝐿 m Value 3.0 𝐵 m 0.5 𝑑 m 0.2 Berth Berth

8.

7 アクチュエータ ベクツイン舵、Controllable Pitch Propeller (CPP)、 バウスラスタを使⽤ アクチュエータの構成 ベクツイン舵 CPP バウスラスタ 舵とプロペラの作動映像

9.

モデルの導出 (発⽣⼒曲⾯) 8 拘束模型試験、CFDの結果から舵+CPPモデルを導出 舵⾓ごとに発⽣する⼒を曲⾯で回帰  今回は、CFDで求めた結果11)を⽤いた  プロペラ回転数を7.45 rpsに固定  ボラード状態で計測  網羅的に舵⾓を取る (11)⻘⽊ 佑介, 宮内 新喜, 佐野 将昭, 有井 俊彦, 岡居 真菜美, 牧 敦⽣, 2021S-GS2-4 CFDを⽤いたVecTwin舵のRe数影響に関する研究, ⽇本船舶海洋⼯学会講演会論 ⽂集, 2021, 32 巻, 32, p. 279-285

10.

モデルの導出 (発⽣⼒曲⾯) 9 拘束模型試験、CFDの結果から導出 舵⾓ごとに発⽣する⼒を曲⾯で回帰  左右舵⾓𝜹𝐬 , 𝜹𝐩 に 関する三次の曲⾯ で回帰  この曲⾯はプロペ ラ翼⾓に⽐例して 変化すると仮定

11.

10 スラストアロケーション⼿法 スラストアロケーションは4ステップで実施 スラストアロケーション Controller ① コントローラによって船が出⼒すべき⼒、モー メントが指⽰される (𝑿𝐫𝐞𝐪 , 𝒀𝐫𝐞𝐪 , 𝑵𝐫𝐞𝐪 ) ② 指⽰された⼒の内、横⼒を舵とバウスラスタに 配分 ① Calculate bow-thruster rotation ③ Calculate pitch angle ④ X and Y curve ③ 指⽰値に応じてプロペラ翼⾓を調整 Ship ④ 舵⾓の決定 State ②

12.

11 スラストアロケーション⼿法① バウスラスタ・舵で出⼒する横⼒を決定 ② 指⽰された横⼒を舵とバウスラスタに分配 Controller Calculate bow-thruster rotation  指⽰値は舵とバウスラに分配  𝑌 ,𝑌 ,𝑁 ,𝑁  回頭モーメントと横⼒の関係 を𝑌 , 𝑁 で表現 ① ③ Calculate pitch angle ④ X and Y curve Ship State ②

13.

12 スラストアロケーション⼿法② CPP翼⾓を決定 ③指⽰値に応じてプロペラ翼⾓を調整  𝑓 に応じてグ ラフのように𝜃 ③ を変更する ④  𝑿, 𝒀, 𝑵それぞれ で計算して最も ⼤きい翼⾓に合 わせる 𝑓 は指⽰された⼒、𝜃はプロペラ翼⾓ Controller ① Calculate bow-thruster rotation Calculate pitch angle X and Y curve Ship State ②

14.

13 スラストアロケーション⼿法③ 舵⾓を決定 ④舵⾓の決定 Controller ① Calculate bow-thruster rotation  𝑿, 𝒀をプロペラ翼⾓と舵⾓に関する多項式で表現 ③ Calculate pitch angle ④ X and Y curve Ship  プロペラ翼⾓が決まると実質舵⾓に関する式 State ②

15.

14 スラストアロケーション⼿法③ ⾮線型⽅程式を解き舵⾓を決定 ④舵⾓の決定 Controller  舵⾓と⼒の関係を表す曲⾯ ① Calculate bow-thruster rotation ③  ニュートン法によ り⾮線型⽅程式を ④ 解き、舵⾓を求め る Calculate pitch angle X and Y curve Ship State ②

16.

本⼿法の適⽤例 15 簡単なPID制御のコントローラに適⽤した 状態空間モデル  𝒙, 𝒚⽅向に3m 移動  ⽅位⾓を180度 回頭

17.

今後の課題  適⽤例が数値実験のみにとどまっているので、模型船を ⽤いて実証する必要がある  発⽣⼒曲⾯を求めるために多くの実験、CFDの結果が必 要であるため、効率的な推定法があると導⼊が簡単にで きる 16

18.

結⾔ 17  ベクツイン舵、CPP、バウスラスタなど、⼀般的な商船が装備 しているアクチュエータを⽤いて、ポッドスラスタのように所 望の⽅向に対して⼒を出⼒するスラストアロケーション⼿法を ⽰した  従来提案されていた簡易DPSに⽐べて広範囲の出⼒が可能に なった  数値実験上で適⽤性を確認した