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September 08, 21
スライド概要
2018年にPMI Japan フォーラムで発表した講演をもとに2021年9月に講演したセッション資料です。
※再演承ります。
https://www.servantworks.co.jp/contact/
チームで 現場にあった マネジメントを探究する 長沢 智治 @tnagasawa v2021.09
はじめに
長沢 智治 • サーバントワークス株式会社 代表取締役 • Nota株式会社 アドバイザー • DASA (DevOps Agile Skills Association) Ambassador • 略歴: INTEC ▷ Rational Software ▷ IBM ▷ Borland ▷ Microsoft ▷ Atlassian • エンジニア、業務改善コンサルタント、エバンジェリスト • ソフトウェア開発現場および、ビジネス企画の業務改善コンサルタント/コーチ • ビジネス戦略および、マーケティング戦略のアドバイザー • 講演・執筆・翻訳・監訳
アジェンダ
正解のない時代
VUCA の時代 V U C A 変動性 不確実性 複雑性 曖昧性 Volatility Uncertainty Complexity Ambiguity 正解のない時代
複雑さを受け入れる指針 縦軸 何をするのか? 不確実 • ビジネスモデル 横軸 どうやるのか? WHAT • 要件定義 • テクノロジー • 考え方・やり方 確実 HOW 不確実 Stacy Matrix
複雑さを受け入れる指針 単純 WHAT JUST DO IT 不確実 煩雑 計画駆動 確実 HOW 不確実 Stacy Matrix
複雑さを受け入れる指針 複雑 WHAT 経験駆動 不確実 混沌 行動あるのみ 確実 HOW 不確実 Stacy Matrix
複雑さを知るところからはじめる 単純 煩雑 既知の既知 • 誰でも実行できる • 同じ結果になる 既知の未知 • 秩序がある / 予測できる • 専門家がいる 複雑 混沌 未知の未知 不可知の未知 • 流動的 / 予測できない • パターンを見い出す • 混乱 / 考える猶予もない • 正解を探しても無駄
複雑さによる闘い方が異なる 単純 既知の既知 把握 ▷ 分類 ▷ 対処 煩雑 既知の未知 把握 ▷ 分析 ▷ 対処 複雑 未知の未知 調査 ▷ 分析 ▷ 対処 混沌 不可知の未知 行動 ▷ 把握 ▷ 対処
クネビンフレームワークと問題領域の遷移 ジャストインタイムな移行 探索 複雑 煩雑 complex complicated 未知の未知 既知の未知 改善の積み重ね 無秩序 disorder 崩れる 混沌 明白 chaotic obvious 不可知の未知 既知の既知
ビジネスと IT の関係の変化 2000s 1990s IT 便利 IT 有効 IT はコストセンター ビジネス IT 2010s IT 不可欠 2020s IT コア IT はビジネス戦略
コストセンターとしての IT 1990s 2000s • 既存のビジネスモデル • 自社内で意思決定 IT 便利 IT 有効 IT はコストセンター • 守るプロダクト
ビジネス戦略としての IT 2010s 2020s • 新しいビジネスモデル • 市場が意思決定 • 攻めるプロダクト IT 不可欠 IT コア IT はビジネス戦略
テクノロジーが世界を変えた 直接タッチ 競争激化 デバイス AI クラウド IoT
VUCA の時代に導いたのはテクノロジーの進化 V U C A 変動性 不確実性 複雑性 曖昧性 Volatility Uncertainty Complexity Ambiguity 正解のない時代
従来型の考え方 正解主義 予測主義 自前主義 分業主義 従来の前提 計画主義 定義済みのプロセスモデル • • • 経験済み 安定している 調達可能になりつつある
従来型の考え方からの脱却 仮説 主義 共創 主義 経験 主義 専業 主義 これからの前提 経験主義(実証主義) 経験的プロセス制御 • • • 経験したことがない 試行することで見出す 価値の変化に適応
プロセスモデルの特徴 定義済みのプロセスモデル 経験的プロセス制御 ゴールが明確で変動しない ゴールが不確かで変動する 統制型マネジメント 自律型マネジメント 全体的な絶対値による見積もり 逐次的な相対的な見積もり 権限の一本化による統率 権限の委譲による規律 約束で期待値を管理 成果で期待値を管理 形式知を重視 集合知を重視
QCDSのコントロール
鉄の三角形 範囲 Scope 品質 Quality 費用 期日 Cost Delivery
従来のアプローチ 範囲 Scope 品質 Quality 費用 期日 Cost Delivery
従来のアプローチ C 費用 = 人月 D 期日 = 納期 S 範囲 = 要件
従来のアプローチ 定義した価値 定義した価値 計画した作業量 約束した期日 期日までの時間
アジャイルのアプローチ(右) <全体計画> <価値を計画> 範囲 費用 期日 Scope Cost Delivery 品質 Quality 品質 Quality 費用 期日 範囲 Cost Delivery Scope 従来の考え方 アジャイルの考え方
Ready でない 価値は先送り C 費用 = チーム固定 Ready な価値 アジャイルのアプローチ D 期日 = 反復 (タイムボックス) #1 #2 #3 #4 #5 S 範囲 = 価値
アジャイルのアプローチ 従来 アジャイル 価値が上がったか 常に調整する 時間固定(タイムボックス)で成果を出す アジャイルの考え方
タイムボックスの利点 活動 に集中 変更や中断 を制御 期待値 を制御 共通の 尺度や基準 を設け易く • タイムボックスの利点 • • • • 素早い検査と適応 小さな失敗、貴重な学習(経験) 価値を最大化するサイクルタイム チームによる経験的学習による予測可能性・リスク管理
タイムボックス(スプリント)の価値 ウォーター フォール • 全体計画 • 絶対値(人月)による見積もり 反復 (不定期) • 場当たり的な計画 • 絶対値(人月)による都度見積もり • 都度計画 • 相対的な見積もり (スプリント) スクラム 4 (ベロシティ) 4 2 2 3 3 33 33
アプローチの比較 定義した価値 価値が上がったか 常に調整する 計画した作業量 時間固定(タイムボックス)で成果を出す 期日までの時間 従来の考え方 アジャイルの考え方
不確実性コーン 確実な見積もりや予測はどのアプローチでも不可能に近い x4 x1.25 x0.8 x0.25
不確実性コーン下での現実的な戦術 確実な見積もりや予測はどのアプローチでも不可能に近い 提供できる価値を調整する 提供する時間を調整する 時間固定(タイムボックス)で成果を出す 従来 アジャイル
ROI を最大化する 従来 アジャイル 回収 投資
アジャイル
アジャイルソフトウェア開発宣言
アジャイルプロジェクトマネジメント宣言 継続的な価値の流れによる投資対効果 顧客との信頼関係と確かな成果 透明性による不確実性の予測 個人のチカラが発揮できる環境 責務を共有するチーム 状況に応じた戦略と改善 ©2005 David Anderson, Sanjiv Augustine, Christopher Avery, Alistair Cockburn, Mike Cohn, Doug DeCarlo, Donna Fitzgerald, Jim Highsmith, Ole Jepsen, Lowell Lindstrom, Todd Little, Kent McDonald, Pollyanna Pixton, Preston Smith and Robert Wysocki. 相互依存宣言 Declaration of Interdependence
アジャイル適用事例 • 新番組の企画開発(NPR) • 新しい機械の開発(ジョンディア) • 新しい戦闘機の生産(サーブ) • マーケティング(イントロニス) • 人事(C.H.ロビンソン) • ワインの生産、倉庫管理、上級幹部の運営(ミッションベル) • 全社的な変身(GE) 出典:『臨機応変のマネジメントで生産性を劇的に高めるアジャイル開発を経営に活かす6つの原則』(Embracing Agile, ダイアモンドハーバードビジネスレビュー, 2016)
アジャイルの特徴 中間成果物 output < • できるだけ頻繁に • できるだけ持続可能に • できるだけムリ、ムラ、ムダなく • 目的・自律・熟達 成果(価値) outcome
経験主義とリーン思考
仮説と検証 ビジネス 開発 BUILD LEARN MEASURE • 仮説と検証 • リーンスタートアップ • デザイン指向 • アジャイル (バリューアップ) • 検査と適応 • チーム
機会損失を減らす 映画 ドラマ 数年単位のサイクル 3ヶ月単位のサイクル 公開 or 中止 1週間単位の見直し 莫大な予算と準備期間 継続可能な予算と準備期間
共通認識と短いフィードバックループ 経験的プロセス制御(経験主義) 実際の経験 予測可能性の最適化 知識 既知に基づく判断 リスク管理 リーン思考 • ムダ取り • 本質に集中する 価値 ムダ
経験主義の柱とチームワーク チーム 透明性 適応 〜 同じ景色をみている 〜 検査 • 目的・価値観 • やり方を共有 • フォローして達成
経験主義に基づくフレームワークの例 戦略と計測 問題への対応 起業 LEARN EBM エビデンスベースド マネジメント BUILD MEASURE スクラム リーン スタートアップ
リーン思考の原則 • ムダを取る • 知識をつくり出す • 決定を先送りする • 早く提供する • 権限を委譲する • 全体を最適化する • 品質を作り込む
ムダ取り(ムリ・ムラ・ムダの原理) ムリ ムラ 過重労働 手戻り 高ワークロード 予測不能なフロー 安全性と品質 に影響 計画とリソース に影響 ムダ 7つのムダ すべてに影響
7つのムダ
チームを醸成する環境と リーダーシップ
糧となる失敗や間違いを素早く起こす 速い 非意図的 意図的 不注意による 失敗を避けるべき できる限り、 大部分の失敗を この領域にもってくる 計算できるやり方により 遅い 学ぶスキルを向上させる 小さな成功体験を積んでいく 責任がとれる 失敗のペースを向上し 学習を加速させる 『More Effective Agile 〜 “ソフトウェアリーダー”になるための28の道標』 「間違いの種類と許される間違いの分類」を基に作成
『司令官の意図』 熟達 目 的 の 明 確 さ 高い 強制的な成果 明確なビジョンに 基づく成果 低い 静的な成果 断片的な成果 低い 高い 自律性 『More Effective Agile 〜 “ソフトウェアリーダー”になるための28の道標』 「基本原則: 司令官の意図を使って目的を明確に表現する」を基に作成
マネジメントとチームの関係 • メンバーの満足度・エンゲージメントは成功へのドライバー 成果 熟達 評価 自律 マネージャー 問題 『司令官の意図』 意思決定・委譲 チーム指向 環境(土壌) を整え続ける 目的 ©Tomoharu Nagasawa, Servant Works Inc.
チームのブラックボックス化を促進 チーム 問題 • • • • 司令官の意図 権限の委譲 解決とチームの成長 環境づくり 支援 マネージャー • • 妨害を取り除く 組織の官僚主義の是正・ブロック
チームを固定する・成長段階を知る 形成期 混乱期 統一期 機能期 モラル タスク • 熱意 • 意見の相違・対立 • 規範の形成 • 目的の特定 • 不安・心配 • 不満 • 問題の解決 • 明確な責任 • 高い期待 • 否定的・反抗的 • 共通言語・認識 • 時間の管理 • リーダー依存 • 制御の課題 • 目的の明確化 • 規範の確立 • 迷い・懸念 • 困惑 • チームへの懸念 • 効果性の評価 「タックマンモデル」を基に作成
成功への道標|チームによる責任密度を高める 分業 協働 責任の密度が低い 責任の密度が高い 『More Effective Agile 〜 “ソフトウェアリーダー”になるための28の道標』 「基本原則: 個人のキャパシティを向上させることでチームのキャパシティを向上させる」を基に作成
協働が必要な例 不確実 WHAT 9つの点の問題 点を一筆書きするのに必要な 直線の本数は何本か? 確実 HOW 不確実 Stacy Matrix • 経験則が必要となる • 建設的相互作用が必要となる • 速いフィードバックループが必要となる
ペアワーク、モブワーク ペア モブ ドライバー プログラミング(作業)をする人 ナビゲーター プログラミングのアイデアを検討し、 ドライバーをガイドする人
フィードバックのコストに着目する x1 作業 x10 把握 レビュー x100 把握 分析 意思決定 対処 レビュー x1 x1.x レビュー 作業 レビュー 意思決定
フィードバックのコストに着目する 単純・明白な作業だと非効率 不確実性・複雑性による 1〜10 1 10 1〜10 1〜10 100+ ソロワーク • 良し悪しではない • 効率性と効果性を考えるべき • 状況に応じて選択できることが大事 モブワーク 1〜10
個人・チーム・組織のバランスが重要 組織 チーム 組織 チーム 組織 チーム 個人 個人 個人 成長しない 成果が出ない 発展しない ©Tomoharu Nagasawa, Servant Works Inc.
3つの組織文化 不健全な文化 官僚的な文化 創造的な文化 • 権力指向 • ルール指向 • パフォーマンス指向 • 消極的な協力体制 • 控えめな協力体制 • 主体的な協力体制 • 情報を遮断する • 情報を軽視する • 情報を活用する • 責任を転嫁する • 責任を限定する • リスクを共有する • 仲介を阻止する • 仲介を許容する • 仲介を奨励する • 失敗は責任転嫁へ • 失敗は制裁へ • 失敗は調査へ • 新規性を否定する • 新規性を問題化する • 新規性を受け入れる 『More Effective Agile 〜 “ソフトウェアリーダー”になるための28の道標』 「ウェストラムの3つの組織文化」を基に作成
複雑な問題への対応の進め方 ■よくある進め方: 複雑な問題 チーム (スクラム) ■あるべき進め方: アジャイル (スクラム) アジャイル チーム 複雑な問題 ©Tomoharu Nagasawa, Servant Works Inc.
問題へのよくある進め方の問題点 ■よくある進め方: 複雑な問題 チーム アジャイル (スクラム) 問題点: • 初動が遅れる • チームが立ち上がらない • 「複雑 複雑」(問題とスクラム実践)で問題を分解できない
問題へのあるべき進め方の恩恵 恩恵: • アジャイル(複雑な問題への対応方法)を事前に習得 • チームの立ち上がりが早い • 問題の複雑さに純粋に取り組める ■あるべき進め方: アジャイル (スクラム) チーム 複雑な問題
チームとワークグループ 効果性か効率性か
ワークグループ(WG)のメッシュ構造 統制型マネジメント WG QA部 WG WG プロジェクト プロジェクト WG 開発部 ※リソースの効率化を最優先とこのような組織構造になりやすい
チームとワークグループ(WG)は入子の関係 統制型マネジメント WG QA部 チーム チーム プロジェクト プロジェクト WG 開発部 ※リソースの効率化を最優先とこのような組織構造になりやすい
チームには成長が不可欠(再掲) 形成期 混乱期 統一期 機能期 モラル タスク • 熱意 • 意見の相違・対立 • 規範の形成 • 目的の特定 • 不安・心配 • 不満 • 問題の解決 • 明確な責任 • 高い期待 • 否定的・反抗的 • 共通言語・認識 • 時間の管理 • リーダー依存 • 制御の課題 • 目的の明確化 • 規範の確立 • 迷い・懸念 • 困惑 • チームへの懸念 • 効果性の評価 「タックマンモデル」を基に作成
チームを割り当てる 自律型マネジメント ステークホルダー チーム チーム チーム アジャイル チーム WG 複雑な問題 ※効果性を重視したチーム構成
経験的目標設定と計測 エビデンスベースドマネジメント
エビデンスベースドマネジメント 指標 仮説 戦略的ゴール 実験と計測 実験ループ 中間ゴール 適応 検査 現在の状態 即時戦術ゴール 開始の状態 時間
重要価値領域(KVA) 市場価値 実現できる 可能性のある 付加価値とは? 未実現の価値 UV 現在の価値 CV 現在、組織が どのような価値を 提供しているのか? アジリティ ビジネス価値 組織は価値の 改善にどれくらい 効果があるのか? イノベーション の能力 A2I 市場に出す までの時間 © 2020 Scrum.org. All Rights Reserved. 組織的な能力 T2M 新しい価値提供に どれくらいの時間が かかるのか?
市場価値と組織的な能力 市場価値と可能性(投資価値) 質とスピード 期待する機能 提供している機能 市場(顧客) 市場価値 組織として 応える能力 組織的な能力
まとめ
まとめ • マネジメント方法は、現場の状況に応じて選択すべき • Stacy Matrix • Cynefin Framework • マネジメント方法により、価値観・進め方・編成・指標も異なる • アジャイルは、特異なものではない • 有効な選択肢 • 経験主義・チームワーク・フィードバックループ
アジャイルのまとめ • 複雑な問題領域に対する実績のあるアプローチ • アジャイルの傘 • スクラム、カンバン、エクストリームプログラミング(XP)、他 • アジャイルリーダーシップ • チームを育成 • 経験主義とリーン思考の環境づくり • 実験文化と透明性 • エビデンスベースドマネジメント
提供 アジリティに関する導入・定着化支援サービス、研修サービスを提供いたします ご清聴くださり、誠にありがとうございました
のご支援サービスの特徴 STEP STEP 3 1 対処・学習・改善 STEP キックオフ 把握・調査・行動 サイクル #1 サイクル #2 1週間 1週間 サイクル #m 2週間 2 分類・分析・把握 サイクル #n 4週間