アライナー交換タイミング

700 Views

June 04, 22

スライド概要

2021年Angle orthodontistに投稿されたマウスピース型矯正(インビザライン)のアライナー交換の最適なプロトコルについて検証した海外論文紹介です。アライナー交換を無作為に割り当てられた7日間、10日間、14日間のグループ間で治療の精度を比較検討した研究です。

profile-image

矯正歯科の海外最新論文をPubMedから紹介します。特にマウスピース型矯正(インビザライン)論文中心にお届けします。

Docswellを使いましょう

(ダウンロード不可)

関連スライド

各ページのテキスト
1.

マウスピース型矯正論文紹介 Effect of clear aligner wear protocol on the efficacy of tooth movement: A randomized clinical trial Mays Al-Nadawi; Neal D. Kravitz; Ismaeel Hansa; Laith Makki; Donald J. Ferguson; Nikhilesh R. Vaid Angle Orthodontist, Vol 91, No 2, 2021, 157-163. DOI: 10.2319/071520-630.1 紹介者:矯正歯科海外論文紹介サイト https://kyousei-kaigaironbun.com

2.

目次 01 02 03 04 05 06 07 • 導入:アライナー装着のプロトコル、本研究の目的 • 材料および方法:研究デザイン、フローチャート(図1)、解析方法、統計方法 • 結果:患者分布(表1)、予測/達成値の違い(表2) • 考察 • 本研究の限界 • 結語 • 引用文献・記事監修

3.

目次 01 02 03 04 05 06 07 • 導入:アライナー装着のプロトコル、本研究の目的 • 材料および方法:研究デザイン、フローチャート(図1)、解析方法、統計方法 • 結果:患者分布(表1)、予測/達成値の違い(表2) • 考察 • 本研究の限界 • 結語 • 引用文献・記事監修

4.

Introduction:アライナーの装着プロトコル ・アライナーの装着は14日間が以前推奨されていたが、現在は1日20~22時間、7日ごとの 交換がプロトコルになっている。 ・先行研究では、どちらの装着スケジュールも支持する証拠が得られている。 ・最適なアライナーの装着プロトコルを調査した臨床研究は2件しかない(以下示す)。 Bollenら(8) ・アライナーの素材(ソフト/ハード)と装着時間がアライナー矯正治療の 精度に及ぼす影響を比較した。 ・14日間の装着は7日間の装着と比較して治療精度はほぼ2倍であった。 ・Peer Assessment Rating (PAR)スコアの高さと抜歯は治療精度を大幅に 低下させる。 ・小臼歯の抜歯を必要としない場合、14日間の装着時間が推奨される 傾向であった。 Clementsら(19) ・PARスコアと歯列弓の叢生度(Irregularity Index)で測定された治療精度と アライナーの素材の硬さと装着時間の影響を検討した。 ・7日間と14日間装着による有意差はなかったことを明らかにした。 導入 方法 結果 考察 限界 結語 引用文献

5.

Introduction:本研究の目的 異なるアライナー装着のプロトコル(7日、10日、14日)による歯牙移動の 有効性を評価した研究はない。 現状 本研究の目的 異なるアライナー装着のプロトコルにおいて歯牙移動の有効性を、 治療の予測値と実際の結果を比較することによって評価、比較する。 帰無仮説 アライナーを7日、10日、17日ごとに交換しても、歯列矯正の効果に 差はない。 本研究の貢献 最適なアライナー装着のプロトコルを深く理解することは、 臨床家と患者双方にとって歯列矯正の効率を向上させるのに役立つ。 導入 方法 結果 考察 限界 結語 引用文献

6.

目次 01 02 03 04 05 06 07 • 導入:アライナー装着のプロトコル、本研究の目的 • 材料および方法:研究デザイン、フローチャート(図1)、解析方法、統計方法 • 結果:患者分布(表1)、予測/達成値の違い(表2) • 考察 • 本研究の限界 • 結語 • 引用文献・記事監修

7.

Materials and Methods 研究デザイン 3群無作為化比較臨床試験 バランス配分比(1:1:1) European University College (Dubai Healthcare City, United Arab Emirates) のInstitutional Review Board (IRB番号 EUC-IRB-17.2.12)により承認された。 導入 患者 米国バージニア州サウスライディングにある単一の 矯正歯科診療所の患者120人であった。 治療計画者 歯列矯正医Dr. Kravitz、Tier-Level Diamond Plus Providerで あり高い技術と経験を持つ。 インフォームド・ コンセント 研究参加者に研究の趣旨と治療プロトコルが説明され、 研究参加のインフォームド・コンセントが得られた。 方法 結果 考察 限界 結語 引用文献

8.

Figure 1. Consolidated Standards of Reporting Trials flow chart 包括基準 インビザライン治療の不正咬合の患者、 合計17~25枚のアライナーの使用、永久歯列、 口腔衛生状態が良好、非抜歯 除外基準 補助器具の使用、口腔手術歴、矯正治療歴、 歯科修復物がある A群:7日間 80人 B群:10日間 C群:14日間 *1:1:1の配分比率で無作為化した データ収集が不十分な5人の患者は除外、 最終的に75人を分析対象とした Nadawi et al(2021)より 導入 方法 結果 考察 限界 結語 引用文献

9.

Materials and Methods:解析 治療の予測 治療計画のSTLファイルはClin Checkを介してエクスポートした。 実際の治療結果 治療最終時に撮影した3次元口腔内スキャン(Itero Element, Align Technology, San Jose, Calif)を用い、eModel 9.0 Compare software (GeoDigm Corporation, Falcon Heights, Minn) にインポートした。 Compare software 2つのモデル間の個々の歯の位置や、角度の差を計算することが可能である。 再現性が検証されており20)、先行研究でも用いられている3,16,21-24)。 解析手順 1)Clin Checkモデルと口腔内スキャンモデルを対応歯列弓に位置を重ねあわせ、 歯牙の位置間を測定した。 2)2つのモデルにおける各歯の位置の差は、近/遠心、頬/舌側、廷出/圧下、傾斜、 トルク、捻転の6次元で定量化された(図2)。 3)歯列データは、上顎と下顎の前歯群/後方歯群の4カテゴリーに分類した。 閾値の選択基準 導入 American Board of Orthodontics (ABO) model grading systemを参考に閾値を選択した。 本研究では、臨床的に重要な不一致は、垂直/水平的なズレ0.5mm、角度では2°に 設定した。 方法 結果 考察 限界 結語 引用文献

10.

Statistical Analysis 統計ソフト Excelで収集・保存された。 SPSSソフトウェア(バージョン15.0.1,IBM,Armonk,NY)を 用いて分析した。 記述統計量 6方向それぞれにおける予測値と達成値位置の差について 計算した。 区間データ Shapiro-Wilk検定を用いて,グループ内の正規分布について検定した。 グループ内の差異の評価 独立 t 検定を用いた。 グループ間の差異の評価 分散分析及び、多重比較Scheffe法を用いた。 統計的有意 P 値=.05は統計的有意とみなした。 導入 方法 結果 考察 限界 結語 引用文献

11.

目次 01 02 03 04 05 06 07 • 導入:アライナー装着のプロトコル、本研究の目的 • 材料および方法:研究デザイン、フローチャート(図1)、解析方法、統計方法 • 結果:患者分布(表1)、予測/達成値の違い(表2) • 考察 • 本研究の限界 • 結語 • 引用文献・記事監修

12.

Table 1. Sample Distribution Nadawi et al(2021)より 導入 方法 結果 考察 限界 結語 引用文献

13.

Results 上顎後方歯群では、 14日群は7日群と比較して 圧下(0.3mm vs 0.4mm) 遠心傾斜(2.88 vs 3.98) 頬側トルク(2.88 vs 4.48) と有意に高い精度であった。 下顎後方歯群では、 14日群は7/10日群と比較して 圧下(0.3 vs 0.4) 挺出(0.2 va 0.3) と有意に高い精度であった 上/下顎ともに 3群とも前/後の垂直/水平の ズレの臨床的な差(0.5)は なかった。 Nadawi et al(2021)より 導入 方法 結果 考察 限界 結語 引用文献

14.

目次 01 02 03 04 05 06 07 • 導入:アライナー装着のプロトコル、本研究の目的 • 材料および方法:研究デザイン、フローチャート(図1)、解析方法、統計方法 • 結果:患者分布(表1)、予測/達成値の違い(表2) • 考察 • 本研究の限界 • 結語 • 引用文献・記事監修

15.

Discussion 全体 3つのグループ間で歯牙移動の正確さに差は見られなかった 平均治療期間 7日間のアライナー交換は14日間のアライナー交換と比較して、ほぼ半分の 治療期間であった(5カ月;9ヵ月)。 前歯群 垂直/水平、傾斜移動のすべてにおいて統計的な差は見られなかった。 後方歯群 上顎:14日間のアライナー交換は、圧下、遠心傾斜、 頬側傾斜において統計的により正確であった 下顎:14日間のアライナー交換は、圧下、挺出において統計的により正確であった 10日交換または14日交換と比較して臨床的な差が見られなかったことから、一般的に7日間のプロトコルで 十分であることが示唆された。 また、7日間のプロトコルは治療期間を著しく短縮することが示された。 しかし、臼歯部の複雑な移動を必要とする症例では、14日間のアライナー交換が有効であることが示唆された。 将来的に、アライナー効率を高めるために、個人ごとのアライナー交換プロトコルが使用される可能性がある 26,27)。 導入 方法 結果 考察 限界 結語 引用文献

16.

目次 01 02 03 04 05 06 07 • 導入:アライナー装着のプロトコル、本研究の目的 • 材料および方法:研究デザイン、フローチャート(図1)、解析方法、統計方法 • 結果:患者分布(表1)、予測/達成値の違い(表2) • 考察 • 本研究の限界 • 結語 • 引用文献・記事監修

17.

Limitation 比較ソフトウエアの限界 3Dスーパー・インポジションは、ClinCheckからエキスポートしたファイルと 仮想歯肉しか含まれていないため予測モデル上に安定した解剖学的構造が ないことである。 オーバーバイト、オーバージェット、咬合接触などのアーチ間の関係を測定する ことが出来なかった。 Clin Checkの限界 最終的な歯の位置を正確に予測するのではなく、フォース・システムを単に 視覚的に表現したものであり、予測された歯の位置が実際に希望した位置では なかった可能性がある16)。 患者側の限界 コンプライアンスの問題、 比較的簡単な症例であった(アライナー17~25枚、治療期間短い)。 矯正医側の限界 アッタチメント装着等の不正確さがある。 一人の矯正医の臨床的判断に依存する(歯の移動順序、アッタチメントデザイン、 過矯正の程度)。 導入 方法 結果 考察 限界 結語 引用文献

18.

目次 01 02 03 04 05 06 07 • 導入:アライナー装着のプロトコル、本研究の目的 • 材料および方法:研究デザイン、フローチャート(図1)、解析方法、統計方法 • 結果:患者分布(表1)、予測/達成値の違い(表2) • 考察 • 本研究の限界 • 結語 • 引用文献・記事監修

19.

Conclusions ◆グループ内では、すべての直線運動の違いは臨床的に重要でない差(0.5mm)を示した。 一方、すべての角度運動の違いは臨床的に有意であった(2度)。 ◆14日間装着プロトコルでは、上顎の圧下、遠心クラウン・チップ、頬側クラウンのトルク、 下顎の圧下、挺出といった後方歯の動きに対して、統計的に高い精度が示された。 ◆しかし、いずれも臨床的に有意な閾値(0.5mmまたは,0.28)を超えていない。 7日間装着プロトコルは14日間プロトコルと比較して、半分の治療期間で臨床的に同等の精度 を達成したことは、7日間のプロトコルが許容できる治療プロトコルであることが示唆された。 ◆しかし、困難な後方歯の動きや角運動(すなわち、トルク、チップ、回転)が必要な場合は、 14日間プロトコルを検討する必要がある。 導入 方法 結果 考察 限界 結語 引用文献

20.

目次 01 02 03 04 05 06 07 • 導入:アライナー装着のプロトコル、本研究の目的 • 材料および方法:研究デザイン、フローチャート(図1)、解析方法、統計方法 • 結果:患者分布(表1)、予測/達成値の違い(表2) • 考察 • 本研究の限界 • 結語 • 引用文献・記事監修

21.

References 導入 方法 結果 考察 限界 結語 引用文献

22.

References 導入 方法 結果 考察 限界 結語 引用文献

23.

記事監修 Dr. 堀井和宏 (Kazuhiro Horii) 日本矯正歯科学会 臨床指導医(旧専門医)・ 認定医 日本舌側矯正歯科学会 American Association of Orthodontists 〒520-0832 滋賀県大津市粟津町4-7 https://www.horii-kyousei.com 導入 方法 結果 考察 限界 結語 引用文献