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April 29, 22
スライド概要
クリアアライナー型矯正装置(インビザライン)は一般的に歯根吸収が起こりにくいとされているが、2次元の検査では過小評価につながるリスクがある。この研究では3次元の検査、歯科用CTを用いてクリアアライナー型矯正(インビザライン)の歯根吸収の発症率と重症度の評価を行った。さらに歯根吸収の発症の危険因子を特定するために重回帰分析を行った。
矯正歯科の海外最新論文をPubMedから紹介します。特にマウスピース型矯正(インビザライン)論文中心にお届けします。
インビザライン論文紹介 Volumetric cone beam computed tomography evaluation and risk factor analysis of external apical root resorption with clear aligner therapy Weu Liu, Juhua Shao, Shufang Li, Maher Ai-balaa, Lulu Xia, & Xianming Hua Angle Orthodontist, Vol 91, No 5, 2021 doi: 10.2319/111820-943.1 紹介者:矯正歯科海外論文紹介サイト https://kyousei-kaigaironbun.com
目次 導入 方法 分析 • EARRとは・先行研究・研究目的 • 患者基準・患者概要・測定方法図1・図2・図3 • 統計的分析 • 表1:臨床的特徴・表2:切歯の移動・表3:ICC・表4:歯根体積減少 結果 考察 結語 文献 • 表5:EARR重症度分類・表6:重回帰分析・EARRの予測式 • まとめ・結果の解釈-症例、診断の違い・EARRのリスク要因 • 結語 • 引用文献・記事監修
目次 導入 方法 分析 • EARRとは・先行研究・研究目的 • 患者基準・患者概要・測定方法図1・図2・図3 • 統計的分析 • 臨床的特徴表1・切歯の移動表2・ICC表3・歯根体積減少表4 結果 考察 結語 文献 • EARR重症度分類表5・重回帰分析表6・EARRの予測式 • まとめ・結果の解釈-症例、診断の違い・EARRのリスク要因 • 結語 • 引用文献・記事監修
EARRとは EARRとは External apical root resorptionの略で歯根吸収のこと 矯正治療によって引き起こされ、歯根硬組織の永久的な喪失と 定義される(1,2) 一般的に望ましくない合併症である 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
EARRの先行研究 固定式 クリアアライナー ほとんど固定式の研究である(2-5) 研究少ない 結果は一致していない 中等度の歯根吸収48~66% クリアアライナーは軽い力であることと、 重度の歯根吸収1~5% 治療期間が短いためEARRは少ない(11) 組織学的に明らかなEARR(90%以上)が 単純な症例を対象としているためにEARR 認められるが、X線検査を用いた研究では が少ない可能性がある EARRを認める割合は低い(6-9) 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
EARR評価の問題と研究目的 2次元のX線は過大/過小評価を生じさせる可能性が高い 問題 歯科用CT(3次元)はこれらの欠点を克服し、歯根長測定における 精度を向上させている(17,18) 目的 歯科用CTを用いてクリアライナー治療における EARRの発症率と重症度を調査すること EARRのリスク要因の特定すること 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
参加者基準 包含基準 除外基準 ・治療が完了した者 ・矯正治療の既往歴がある ・治療前と治療後のCBCTデータがある ・固定装置による追加の治療、 あるいは外科的治療を行った者 ・非成長期の患者である ・歯周炎、外傷歴、補綴歴、 歯内療法歴があるもの ・クラスⅡの不正咬合である ・治療後の切歯の近遠心的な傾きが 大きいもの ・非抜歯の患者は完全な永久歯列である、 抜歯の患者は小臼歯を4本の抜歯 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
目次 導入 方法 分析 • EARRとは・先行研究・研究目的 • 患者基準・患者概要・測定方法図1・図2・図3 • 統計的分析 • 臨床的特徴表1・切歯の移動表2・ICC表3・歯根体積減少表4 結果 考察 結語 文献 • EARR重症度分類表5・重回帰分析表6・EARRの予測式 • まとめ・結果の解釈-症例、診断の違い・EARRのリスク要因 • 結語 • 引用文献・記事監修
参加者概要 研究対象期間 2015年から2019年 研究場所 武漢大学口腔外科病院 研究対象者 アライナー治療813名のうち40名の患者である (320の切歯) 患者への教示 14日間、1日22時間以上の装着を義務付けた アッタチメント アッタチメントなし(265)、 最適アッタチメント(55) EARRのリスク要因 性別、年齢、抜歯の有無、アッタチメントの有無 歯の種類、根尖の動き 治療前(T0)と治療後(T1)の皮質骨に対する根の唇舌的位置 (sagittal root position : SRP) 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
Measurement of root volume(Figure 1.) Liu et al.(2020)から ソフトウエア Mimics software (version 20; Materialize, Leuven, Belgium(24) EARR T0からT1の歯根体積の減少 (歯根体積減少量/T0歯根体積量)×100 軽度~10%;中等度10%~20%;重度20%~ 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
SRP (Figure 2.) ClassⅠ ClassⅡ ClassⅢ ClassⅣ ClassⅤ Liu et al.(2020)から 【ソフトウエア】Dolphin Imaging software (version 11.8 premium; Dolphin Imaging & Management Solutions, Chatsworth, Calif) 【SRPの評価】正中矢状断面図で評価(Amanら(14) 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
apex movement (Figure 3.) Liu et al.(2020)から 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
目次 導入 方法 分析 • EARRとは・先行研究・研究目的 • 患者基準・患者概要・測定方法図1・図2・図3 • 統計的分析 • 臨床的特徴表1・切歯の移動表2・ICC表3・歯根体積減少表4 結果 考察 結語 文献 • EARR重症度分類表5・重回帰分析表6・EARRの予測式 • まとめ・結果の解釈-症例、診断の違い・EARRのリスク要因 • 結語 • 引用文献・記事監修
統計的分析 統計解析 Microsoft Excel (version 2019; Microsoft, Redmond, Wash) IBM SPSS Statistics (version 25.0; IBM, Armonk, N.Y.) 検査者内/検査者間の評価 Intraclass correlation coefficients (ICCs) ランダム誤差の評価 Bland-Altman method 正規性の検定 The Shapiro-Wilk test 分散の均一性の評価 Levene’s test T0とT1の平均歯根体積の比較 Paired t-tests Wilcoxon signed-rank tests 重回帰分析の変数 導入 方法 一変量解析における有意な変数を用いる 先行研究において関連性のある変数を用いる α 0.05以下を基準とし、α 0.1以上を除外 分析 結果 考察 結語 引用文献
目次 導入 方法 分析 • EARRとは・先行研究・研究目的 • 患者基準・患者概要・測定方法図1・図2・図3 • 統計的分析 • 表1:臨床的特徴・表2:切歯の移動・表3:ICC・表4:歯根体積減少 結果 考察 結語 文献 • 表5:EARR重症度分類・表6:重回帰分析・EARRの予測式 • まとめ・結果の解釈-症例、診断の違い・EARRのリスク要因 • 結語 • 引用文献・記事監修
患者の臨床的特徴(Table 1.) Variable Mean, n SD, % * Age(y) 24.1 5.8 Treatment duration(m) 21.45 7.24 Male 20 50 Female 20 50 Mild (≦3mm) 9 22.5 Moderate(4-7mm) 17 42.5 Severe(>7mm) 14 35 Deep overbite(>1/3) 27 67.5 Deep overjet(>3mm) 22 55 Extraction (yes) 20 50 Interproximal reduction (yes) 14 35 Continuous variables Categorical variables Sex Crowding 導入 方法 分析 結果 考察 結語 Liu et al.(2020)から 引用文献
図2 T0とT1の切歯移動 Movement of incisors between T0and T1(Table 2.) Parameter(mm) Mean SD Intrusion 1.13 0.86 Extrusion 0.92 0.63 Advancement 1.27 0.96 Retraction 1.13 0.78 Total displacement 1.68 0.97 Liu et al.(2020)から 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
表3 級内相関係数(ICC) Results of Brand-Altman Analysis for Interoperator and Intraoperator(Table 3.) Parameter Mean Difference Limits of Agreement Inter 0.121 -4.3277, 4.5698 Intra1 -0.3553 -4.4274, 3.7168 Intra2 0.5228 -3.7232, 4.7688 Inter -0.004212 -0.1671, 0.1586 Intra1 -0.00625 -0.1696, 0.1571 Intra2 0.001587 0.1570 Root volume (mm³) Displacement(mm) Liu et al.(2020)から 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
表4 治療後の歯根体積減少 Root Volume Loss of Individual Incisors During Orthodontic Treatment *(Table 4.) Root Volume, mm³ Tooth No. T0 T1 P Value Volume Loss, mm³ Volume Loss, % 11 189.13 ± 38.02 174.51 ± 36.56 < .001*** 14.62 ± 6.86 7.95 ± 3.58 12 152.17 ± 26.84 139.50 ± 26.10 < .001*** 12.66 ± 6.78 8.42 ± 4.64 21 188.97 ± 37.60 176.35 ± 35.67 < .001*** 12.62 ± 6.40 6.67 ± 2.92 22 153.63 ± 26.33 141.81 ± 25.17 < .001*** 11.82 ± 6.50 7.65 ± 4.22 31 107.29 ± 20.92 97.20 ± 19.11 < .001*** 10.09 ± 5.81 9.30 ±4.96 32 136.58 ± 23.02 126.40 ± 22.78 < .001*** 10.18 ± 7.28 7.43 ± 5.20 41 107.71 ± 21.25 98.70 ± 19.48 < .001*** 9.01 ± 5.52 8.30 ± 4.60 42 134.62 ± 23.79 123.77 ± 22.67 < .001*** 10.86 ± 7.17 8.00 ± 4.82 Liu et al.(2020)から * Date are presented as mean ± SD, *** P< .001 治療後、すべての歯で歯根体積の有意な減少が示された(11.48 ± 6.70 mm³) 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
表5 EARRの重症度分類 Classification of EARR Severity (Table 5.) Severity n Frequency, % Mild (< 10%) 227 70.9375 Moderate ( 10%-20%) 91 28.4375 Severe ( > 20%) 2 0.625 Liu et al.(2020)から 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
表6-1 重回帰分析 Results of Multiple Liner Regression Predicting the Amount of Root Resorption(Table 6.)-1 Independ Variable Regression Coefficient Standard Error Significance Constant -0.456 1.108 .681 Posttreatment SRP 0000: centered in alveolus 0 1000: touching labial cortex 3.104 0.842 < .001*** 0100: touching palatal or lingual cortex 11.003 0.942 < .001*** 0010: touching both cortices 4.506 1.356 < .001*** 0001: outside labial cortex 8.366 0.919 < .001*** Liu et al.(2020)から 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
表6-2 重回帰分析 Results of Multiple Liner Regression Predicting the Amount of Root Resorption(Table 6.)-2 Independ Variable Regression Coefficient Standard Error Significance 2.501 0.559 < .001*** 1: maxillary incisor 2.542 0.543 < .001*** Intrusion distance 1.269 0.356 < .001*** Extrusion distance 1.451 0.515 .005*** Extaction 0: no 1: yes Tooth type 0: mandibular incisor Liu et al.(2020)から 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
EARRの予測式 重回帰分析で予測されたモデルは有意(F=42.28, P < 0.001)であった。 R²(調整)=0.51、回帰係数はTable 6.の通り ステップワイズ分析からの除外変数 ⇒年齢、性別、治療期間、アッタチメント、治療前のSRP、 前方移動、後方移動、apex displacement EARRの予測式 Root volume change(mm³) =11.003(ClassⅢ SRP at T1)+8.336(ClassⅤ SRP at T1)+3.104(ClassⅠSRP at T1 ) +4.506(ClassⅣ SRP at T1) + 2.501(extraction)+2.542(maxillary) + 1.269(intrusion distance) +1.451(extrusion distance) 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
目次 導入 方法 分析 • EARRとは・先行研究・研究目的 • 患者基準・患者概要・測定方法図1・図2・図3 • 統計的分析 • 臨床的特徴表1・切歯の移動表2・ICC表3・歯根体積減少表4 結果 考察 結語 文献 • EARR重症度分類表5・重回帰分析表6・EARRの予測式 • まとめ・結果の解釈-症例、診断の違い・EARRのリスク要因 • 結語 • 引用文献・記事監修
まとめ ほとんどの切歯は軽度から中等度の歯根吸収を示し、重度は0.625%であった。 先行研究におけるCBCTを用いたEARRの重度のEARR発症率は、0%(12)と1.25%(14)で あった。 本研究におけるEARRの発症率は先行研究より高い (Kriegerら(13) 46%;Gayら(15)41.81%;Chang & Liu(25)48.28%;Liら(12)56.30%)。 この発症率の違いは、症例の特徴や測定方法に起因する。次に詳しく説明する。 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
結果の解釈 症例の違い 本研究 先行研究 全員ClassⅡの不正咬合、 その半数は小臼歯4本抜歯であった EARRの発症率において、 ClassⅠの不正咬合患者はClassⅡの不正咬合患者よりも低い(3,26)。 Kriegerら、Gayら、Chang&Liの患者は非抜歯症例である。 Kriegerら、Gayらのすべての患者とChang & Liの半分以上が ClassⅠの不正咬合であった(13-15,25)。 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
結果の解釈EARRの診断の違い X線撮影(2次元) ・診断の見落とし、EARRの重症度の過小評価に つながる可能性がある(19,28) ・中等度EARRの正しい分類率は、 近心70%、頬側12.5%であった(17)。 ・EARRの評価はCBCTと比較して20%以上の 過小評価(18,29)であった。 CBCT(3次元) ・EARR検出に高い感度を示した(17,29) *2D測定よりも3D測定の方が体積の定量的測定の精度が高い 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
EARRのリスク要因 ◆最終回帰モデルにおいて、 R²(調整済)は .51であり、 T1のSRP、抜歯、歯の種類、挺出、圧下が T1のSRP EARRのリスク要因であることが示され、先行研究 抜歯 よりも強い予測を示した。 ◆T1のSRPはEARRと最も強く関連、先行研究と EARR 歯の種類 一致している(14)。 ◆抜歯がEARRに影響を及ぼす理由は、 挺出の距離 抜歯スペースを閉じる際の歯の大きな移動が 影響している(3,8,26,31)。 圧下の距離 ◆挺出/圧下の距離がEARRに影響を及ぼすことは、 Chang & Liu(25)と一致しており、前歯の垂直移動は 図:回帰モデルイメージ @矯正歯科海外論文紹介サイト作成 EARRに影響する。 挺出力/圧下力は根尖に 最大のストレスを発生 させる(34)。 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
目次 導入 方法 分析 • EARRとは・先行研究・研究目的 • 患者基準・患者概要・測定方法図1・図2・図3 • 統計的分析 • 臨床的特徴表1・切歯の移動表2・ICC表3・歯根体積減少表4 結果 考察 結語 文献 • EARR重症度分類表5・重回帰分析表6・EARRの予測式 • まとめ・結果の解釈-症例、診断の違い・EARRのリスク要因 • 結語 • 引用文献・記事監修
結語 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
目次 導入 方法 分析 • EARRとは・先行研究・研究目的 • 患者基準・患者概要・測定方法図1・図2・図3 • 統計的分析 • 臨床的特徴表1・切歯の移動表2・ICC表3・歯根体積減少表4 結果 考察 結語 文献 • EARR重症度分類表5・重回帰分析表6・EARRの予測式 • まとめ・結果の解釈-症例、診断の違い・EARRのリスク要因 • 結語 • 引用文献・記事監修
引用文献 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
記事監修 Dr. 堀井和宏 (Kazuhiro Horii) 日本矯正歯科学会 臨床指導医(旧専門医)・ 認定医 日本舌側矯正歯科学会 American Association of Orthodontists 〒520-0832 滋賀県大津市粟津町4-7 https://www.horii-kyousei.com 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献