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August 05, 22
スライド概要
2022年Progress in Orthodontics に投稿された論文の紹介です。クリアアライナーで治療される叢生に対して、スペースを得るなどのために行われるIPRにおいて、クリンチェック上でプログラムされた量と実際に行われた量を歯牙ごとに比較検討を行った研究です。
矯正歯科の海外最新論文をPubMedから紹介します。特にマウスピース型矯正(インビザライン)論文中心にお届けします。
マウスピース型矯正(インビザライン)論文紹介 Evaluation of interproximal reduction in individual teeth, and full arch assessment in clear aligner therapy : digital planning versus 3D model analysis after reduction Amirtha Hariharan, Sarah Abu Arqub , Vaibhav Gandhi, Lucas Da Cunha Godoy, Chia-Ling Kuo and Flavio Uribe Progress in Orthodontics (2022) 23:9 https://doi.org/10.1186/s40510-022-00403-w 紹介者:矯正歯科海外論文紹介サイト https://kyousei-kaigaironbun.com
目次 導入 方法 分析 結果 考察 結語 文献 • IPRとは・先行研究・研究目的 • 患者概要・測定方法 • 統計的分析 • 図1・表1・表2・図3 • まとめ・IPRに及ぼす要因 • 結語 • 引用文献・記事監修
目次 導入 方法 分析 結果 考察 結語 文献 • IPRとは・先行研究・研究目的 • 患者概要・測定方法 • 統計的分析 • 図1・表1・表2・図3 • まとめ・IPRに及ぼす要因 • 結語 • 引用文献・記事監修
導入 IPRとは ・永久歯の隣接面の表面の縮小、解剖学的再形成、保護を含む補助的な臨床処置 [5]のことを指し、歯の隣接面の 外側のエナメル質を約0.3~0.5mm除去する方法である[6]。 【利点】 ・抜歯が望ましくない場合に、叢生を緩和し、歯の移動と整列を促進するためのスペースを得ることが出来る [7]。 ・治療時間の短縮 [6]、接触面積が増えるため安定性が増す [8]、歯間孤形空隙(ブラックトライアングル)が減る [7]。 ・Bolton Indexの不調和を軽減し [9]、歯周組織や歯科組織の健全性を損なわずに治療目的を達成するのに役立つ[10]。 【問題点】 ・摩耗したエナメル質はう触になりやすいという証拠がないにもかかわらず[11]、スペースを確保する手段と してのIPRはその概念に妨げられている。 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
IPRの現状と問題点、本研究の目的 【現状】 臨床的に実施されるIPR(以下I-IPRとする)の量は望ましい歯の動きを実現し、3D治療計画を正確に実施する ために、クリンチェック®上 でプログラムされるIPR (以下P-IPRとする)と一致する必要がある[14]。 しかし、実際のエナメル質削合は、ディスク、ストリップ、バーなど様々な技法を用いて行われ、臨床家の スキルや快適性に大きく依存している[6,11,15]。 したがって、P-IPRを臨床的に実施する際の精度は、様々なIPRテクニックと術者のスキルに影響される 可能性がある。P-IPRを臨床的に実施する際の精度を評価することは非常に重要であるが、I-IPR と P-IPR の定量的評価について報告した研究はほとんどない。 【本研究の目的】 I-IPR と,P-IPR の対応と精度を評価することを目的とした。 帰無仮説は、I-IPR とP-IPR の量に差はない、というものであった。 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
目次 導入 方法 分析 結果 考察 結語 文献 • IPRとは・先行研究・研究目的 • 患者概要・測定方法 • 統計的分析 • 図1・表1・表2・図3 • まとめ・IPRに及ぼす要因 • 結語 • 引用文献・記事監修
方法 倫理審査 ・UCONN Health の機関審査委員会から承認を得た(20X-048- 2)。 対象者 ・UCONN Health-Division of Orthodontics で Invisalign® 治療を完了、治療中の 129 名 包括基準 ・抜歯を必要としない軽度から中等度の叢生(2~6mm) ・IPRの治療計画であること ・智歯を除く完全な永久歯列であること ・予備的なシミュレーション治療計画に続いて、少なくとも1回のリファインメントまたは 最終スキャンが存在すること 除外基準 ・抜歯を必要とする症例 ・Invisalign® non Comprehensive Package治療である症例 ・埋伏歯,欠損歯,過剰歯,補綴物を装着している症例 患者概要 ・平均年齢38歳±15歳 ・75名(男性30名、女性45名) 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
方法 1歯あたりのI-IPRは、 T0とT1の近遠心幅の差で計測した。 1歯あたりのP-IPR量は、 ClinCheck® 上に図示されたデジタル P-IPR が両隣の歯で等しく減少して いると仮定して,ClinCheck® 上の 各近遠心領域の計画 IPR 量を 2 で割って算出した(近心歯 50%, 遠心歯 50%)。 各歯の近心と遠心の P-IPR を算出し, 1 歯あたりの P-IPR の合計を求めた。 各歯のI-IPRとP-IPRの差は,以下の 式で算出した。 IPR difference = (P - IPR) − (I - IPR) (Hariharan et al.,2022)より 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
目次 導入 方法 分析 結果 考察 結語 文献 • IPRとは・先行研究・研究目的 • 患者概要・測定方法 • 統計的分析 • 図1・表1・表2・図3 • まとめ・IPRに及ぼす要因 • 結語 • 引用文献・記事監修
分析 ・相互信頼性はクラス内相関係数で評価し,p 値が 5%未満を統計的に有意とした. ・サンプルサイズ決定のためにパワー分析を行った。 ・G*power ソフトウェアを用いると,75 名の被験者で,5%の有意水準で 85%の検出力で,実施時と計画時 の IPR の平均差 0.07mm(very minimal differences)を検出することができた。 ・記述統計には平均値と SD を用いた。 ・I-IPRとP-IPRの個体間平均の差を評価するために、paired t -testを用いた(表1)。 ・独立t 検定は、歯群の比較を評価するために用いた(表2)。 ・歯のグループは、前歯(切歯と犬歯)、後方歯(小臼歯)、上顎(上顎歯)、下顎(下顎歯)と定義された。 ・P-IPRとI-IPRの歯牙レベルでの差は,被験者ごとにランダム切片を設定した線形混合効果モデルを用いて 関連付けた(図.3)。 ・統計解析はすべてRバージョン4.1.0を用いて行った。 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
目次 導入 方法 分析 結果 考察 結語 文献 • IPRとは・先行研究・研究目的 • 患者概要・測定方法 • 統計的分析 • 図1・表1・表2・図3 • まとめ・IPRに及ぼす要因 • 結語 • 引用文献・記事監修
結果 75名の患者において、 43名は上顎のみ、53名は下顎のみ、21名は上下顎 にIPRが実施された。 IPRの対象となったのは 上下顎ともに第二小臼歯から反対側の第二小臼歯 までの間であった。 下顎は362本、上顎204本にIPRが実施され、 その結果を分析した。 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
結果 上下顎ともにP-IPRとI-IPRにおいて 統計的な有意差が認められた。 【上顎】 I-IPR (M=0.15±0.15mm)は、 P-IPR(M=0.28±0.16mm)より低い ことが示された。 【下顎】 I-IPR(M=0.17±0.16mm)は、 P-IPR(M=0.31±0.17mm)より低い ことが示された。 I-IPRは部位に関係なくP-IPRよりも 低いことが示唆された。 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
結果 I-IPRとP-IPRの不一致は、上顎前歯よりも下顎前歯の方が顕著であり、また、下顎後方歯よりも上顎後方歯 の方が顕著であった。 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
結果 P-IPRの増加は、 P-IPRとI-IPRとの間の不一致の増加 と関連していたことが示された。 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
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考察 今回の75名の患者を評価したところ、下顎では合計362/566本(64%)、上顎では204/566(36%)に IPRを実施しており、IPRは下顎で多くの場合実施されていることが明らかになった。 これは過去の知見とも一致する。 上下歯合計566本を分析した結果、実際に実施されたIPRは、左下第二小臼歯を除き、クリンチェッ ク®でプログラムされた量より有意に少ないことが明らかになった(表1)。 先行研究によると、IPRの精度は上顎で約46%、下顎で37%であることが示されている[14]。 本研究は1歯あたりのP-IPRとI-IPRの差(0.14±0.18mm(p<.0001))を検討したが、相反する結果も 示されている。Laganaら[17]の研究によると、P-IPRとI-IPRは差がないことを報告している。 これはIPRの量を評価する測定ツールの違いや先行研究の少ないサンプル数によるものだと 考えられる。 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
考察:IPRに及ぼす要因 ① 技術的要因 IPRの方法によって精度はばらつきがあることが報告されている[16,22,23]。 メタルストリップやエアローターのIPRと比較して、オルソストリップを使用した場合のエナメル質の削除量が 少ない[22]。本研究では、様々なIPRを用いたため、I-IPRがP-IPRよりも低くなってしまった可能性がある。 ② オペレータ―要因 幅の狭い歯や叢生の歯では、過剰な削除、知覚過敏、歯髄刺激に関する副作用を避けるために無意識的に控え めな量で削除する。左下第二小臼歯のIPRの差の少なさは、本研究でのIPR実施者が右利きであり、右側よりも 左側にアクセスしやすかった可能性がある。 ③ 患者関連要因 IPRの実施精度は、患者個人によってエナメル質の厚さが異なることも関与している可能性が高い[24,25]。 IPRの差は、下顎後歯よりも上顎後歯で大きな不一致があった(p=0.0059) ⇒上顎の臼歯部は下顎臼歯部に比べてIPRは困難である[16]。 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
目次 導入 方法 分析 結果 考察 結語 文献 • IPRとは・先行研究・研究目的 • 患者概要・測定方法 • 統計的分析 • 図1・表1・表2・図3 • まとめ・IPRに及ぼす要因 • 結語 • 引用文献・記事監修
結語 クリアアライナー治療におけるI-IPRの実施量は、 ほとんどの歯においてデジタルでプログラムされたものよりも少なかったことが明らかになった。 部位に関係なく、I-IPRはプログラムされたものよりも一貫して低い値であった。 下顎前歯と上顎後歯は、上顎前歯と下顎後歯に比べ、P-IPRとI-IPRの間に大きな乖離が 認められた。 IPRの臨床的な実施精度に影響を与える要因や、I-IPRの著しい低下がクリアアライナーの 治療結果の精度に与える臨床的な影響について、さらなる前向き研究を実施する必要がある。 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
目次 導入 方法 分析 結果 考察 結語 文献 • IPRとは・先行研究・研究目的 • 患者概要・測定方法 • 統計的分析 • 図1・表1・表2・図3 • まとめ・IPRに及ぼす要因 • 結語 • 引用文献・記事監修
引用文献 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献
記事監修 導入 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献