矯正痛み比較 インビザライン矯正と従来固定式装置

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July 03, 22

スライド概要

Biology2021年に投稿された論文の紹介です。矯正の痛みは患者にとって矯正治療を開始するうえで重要な要因である。近年のマウスピース矯正装置インビザラインと従来型固定式装置(唇側・舌側)との比較検証した研究です。

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矯正歯科の海外最新論文をPubMedから紹介します。特にマウスピース型矯正(インビザライン)論文中心にお届けします。

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各ページのテキスト
1.

マウスピース型矯正論文紹介 Comparative Analysis of Periodontal Pain According to the Type of Precision Orthodontic Appliances : Vestibular, Lingualand Aligners. A Prospective Clinical Study Laura Antonio-Zancajo, Javier Montero , Daniele Garcovich , Mario Alvarado-Lorenzo , Alberto Albaladejo and Alfonso Alvarado-Lorenzo Biology 2021, 10, 379. https://doi.org/10.3390/biology10050379 紹介者:矯正歯科海外論文紹介サイト https://kyousei-kaigaironbun.com

2.

Simple Summary 矯正治療中の痛みなどのネガティブな体験は、 矯正治療に対する拒否反応を引き起こす原因となる。 私たち矯正医は、 患者さんにとって、より痛みの少ない、より快適な技術を適用できるようにするために痛みに 対する影響を知ることはとても重要である。 現在、矯正臨床の現場でクリアアライナーなどの新しいトレンドが活用されてきている。 従来の装置との痛みの比較検討を行う必要がある。 本研究は矯正治療の痛みに関して、 矯正装置の違いによる痛みの部位、強さ、種類を把握することを目的とする。

3.

目次 1. 2. 3. 4. 5. 6. • Introduction • Materials and Methods • Results • Discuusion • Conclusions • References

4.

矯正治療の痛み概観 矯正治療中の患者の77%が痛みを感じるという報告がある[1]。 通常、患者が矯正治療で経験する痛みは、軽度または中程度で持続時間も短いことが多い[5-12]。 痛みのピークは24時間後に起こり、治療開始7日後にはゼロに近い値まで減少することが明らかに なっている[13-15]。 痛みの感じ方には個人差があるが、患者によっては抜歯の際に経験する痛みよりも矯正治療の方が痛み を感じやすく重症度は大きいとされている[16-18]。 歯ぐきの痛みは65.7%の症例で現れ、局所的な痛みは39%との報告がある[19,20]。 痛みのタイプは、通常咀嚼時に起こり、自然発生的ではないことも明らかになっている[21-23]。 また、大きな矯正力はその分痛みも大きくなる[10,24]。 導入 方法 結果 考察 結論 文献

5.

本研究の目的 目的 矯正装置のタイプによって歯根膜痛の強さや種類に違いがあるかどうかを 検証する。 痛みの測定 McGill Pain Questionnaire (MPQ) 痛みの3次元(感覚的、感情的、評価的)を測定[32] 帰無仮説 異なる矯正装置の患者において、痛みの部位、強度、種類の点で歯根膜痛に は差がない。 導入 方法 結果 考察 結論 文献

6.

患者概要 患者 120名:女性66名(55%);男性44名(45%) 4つのグループに30名が割り当てられた 倫理規定 サラマンカ大学の委員会(USAL_16/060)で承認済みである(2020年) 分析 オンラインツールRaosoft(Raosoft Inc., Seattle, WA, USA) 誤差5%、信頼水準95%が適用された 矯正装置グループ 1:CON(従来型唇側ブラケット) (Victory Series®, 3M, Rogers, AK, USA) 2:LF(ロウフリクションブラケット) (Synergy®,Rocky Mountain Orthodontics.デンバー、CO、USA) 3:LO(リンガルブラケット) (STB®、Ormco、Orange、CA、USA) 4:INV(アライナー) (アラインテクノロジー社製インビザライン、米国カリフォルニア州サンノゼ) 導入 方法 結果 考察 結論 文献

7.

包括/除外基準 包括基準 ・18歳以上40歳未満の永久歯列を有するもの ・骨格クラスⅠ、Ⅱ、軽度Ⅲ(Ricketts法によるConvexity:2mm±2)で あること ・歯冠幅径-アーチレングスディスクレパンシー(TSALD)が -6mmと-3mmの間で あること[35] ・抜歯がないこと(智歯を除く)[36] ・矯正治療歴のないもの ・口腔内、全身状態が良好であること 除外基準 ・重度の形成異常歯であること ・外科的矯正が必要な者 ・鎮痛剤、抗うつ剤、抗けいれん剤を服薬中の者 *研究開始時の患者には歯周病ではなかったことを確認した。 導入 方法 結果 考察 結論 文献

8.

痛みの測定:McGill Pain 質問票(Ortho-SF-MPQ) 装置装着後、患者は上下顎歯列が描かれたMcGill Pain 質問票(Ortho-SF-MPQ)に記入した。 痛みのある個所に印をつけ、質問票に記入した。 痛みの種類は患者が記入した15%以上のものを対象として、残りの痛みはその他のタイプとして分析を行った [37,38]。 痛みの強さ 無痛(No pain)、軽度(Mild)、中等度(Moderate)、重度(Intense) 痛みの種類 無痛(No pain)、急性(Acute)、鈍い(Dull)、敏感(Sensitive)、ズキズキ(Throbbing) 穿刺痛(Stabbing)、その他の痛み(Other types of pain) [37,38] 痛みの部位 一か所あるいは上顎前/後方歯、下顎前/後方歯、全顎前/後方歯、口腔内全体、 下顎歯列弓 痛みの記入時間帯 4時間後(T4h)、8時間後(T8h)、24時間後(T1)、2日後(T2)、3日後(T3)、4日後(T4)、 5日後(T5)、6日後(T6)、7日後(T7) [22,39] データの分析 SPSS v. 20 ソフトウェア(SPSS Inc.、シカゴ、イリノイ州、米国) 2つ以上の名目変数、順序変数の比較はχ二乗検定を用いた 統計的有意水準はp < .05とし、p < .01を極めて有意とした。 導入 方法 結果 考察 結論 文献

9.

3.1. Characteristics of the Participants 120名の患者の平均年齢は30±7.5歳であった。 矯正装置の違いによる患者の叢生には統計的な有意差はなかった(Table 1.) Antonio-Zancajo et al(2021)より 導入 方法 結果 考察 結論 文献

10.

3.2. Analysis of the Periodontal Location of Pain 最も痛みが高い部位は、すべての矯正装置グループにおいて両顎前歯部であった。 最大値はT4hのLO群30%、INV群53.3%、T1のCON群56.7%、LF50%であった。 次に痛みの多い部位は上顎前歯部、下顎後方歯であった。 LO群は、T1の口腔全体で最大の13.3%、T8hの下顎歯列弓で最大の16.7%の痛みを報告している。 Antonio-Zancajo et al(2021)より 導入 方法 結果 考察 結論 文献

11.

3.2. Analysis of the Periodontal Location of Pain Antonio-Zancajo et al(2021)より 導入 方法 結果 考察 結論 文献

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3.2. Analysis of the Periodontal Location of Pain Antonio-Zancajo et al(2021)より 導入 方法 結果 考察 結論 文献

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3.2.1. Evolution of Pain in Both Anterior Arches LO群において、両顎前歯部の痛みを持つ人が他の3群と比較して少なかった。 また、治療開始4時間後から7日目まで徐々に痛みは減少していった。 しかし、他の3群において24時間で痛みを自覚する患者が増加し、7日間の間で減少していった(図1)。 Antonio-Zancajo et al(2021)より 導入 方法 結果 考察 結論 文献

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3.2.2. Evolution of Pain in the Anterior Maxillary Location LO群において、上顎前歯部の痛みを持つ人が他の3群と比較して少なかったが、全体的にこの部位に痛みを感じる割合は少 なかった。LF群では24時間後に痛みは減少し、7日後に痛みは増加した。CON群、INV群では24時間後に痛みは増加、 7日後には痛みは減少した(図2)。 Antonio-Zancajo et al(2021)より 導入 方法 結果 考察 結論 文献

15.

3.2.3. Evolution of Pain in the Anterior Mandibular Location 下顎前歯部において、どの群でも最初の24時間で痛みを感じる患者が増加しており、LO群では3日まで痛みの増加が続き最 大33%であった。その後急激に痛みは減少し4日目には10%となり、6日目までその値を維持し7日目には痛みを報告する患 者はいなかった。一方、CON群、LF群は10%、INV群は13.3%と7日目まで痛みを報告する患者がいた(図3)。 Antonio-Zancajo et al(2021)より 導入 方法 結果 考察 結論 文献

16.

3.3. Analysis of the Degree of Pain by Groups 治療4時間後、 CON群は軽度46.7%、中等度40.0%に対して、 LF群、LO群で軽度60.0%、 INV群で軽度66.7%であった。 Antonio-Zancajo et al(2021)より 導入 方法 結果 考察 結論 文献

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3.3. Analysis of the Degree of Pain by Groups 痛みの程度はすべての群で増加し、 治療4日目までには軽度・中等度の痛みへ 移行した。 治療5日目以降、 LO群の無痛患者の割合(63.3%)が他の3群に 比較して有意に高い。 Antonio-Zancajo et al(2021)より 導入 方法 結果 考察 結論 文献

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3.3. Analysis of the Degree of Pain by Groups Antonio-Zancajo et al(2021)より 導入 方法 結果 考察 結論 文献

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3.4. Analysis of the Type of Pain by Groups CON群において 敏感36.7%が最も多く、次にズキズキ 20.0%であった。 LF群において 急性26.7%が最も多かった。 LO群において 急性43.3%が最も多く、次に敏感26.7% であった 。 INV群において 敏感43.3%が最も多く、次に急性26.7% であった。 Antonio-Zancajo et al(2021)より 導入 方法 結果 考察 結論 文献

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3.4. Analysis of the Type of Pain by Groups Antonio-Zancajo et al(2021)より 導入 方法 結果 考察 結論 文献

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3.4. Analysis of the Type of Pain by Groups 3日目から7日目まで患者の痛みは減少していった。 特にLO群は痛みの減少は顕著であった。 Antonio-Zancajo et al(2021)より 導入 方法 結果 考察 結論 文献

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4. Discussion すべてのグループにおいて最も痛みを感じる部位は両顎前歯部であり、次いで上顎前歯部、下顎前歯部であっ た。リンガルブラケット群のみ口腔内全体と下顎歯列弓に痛みを感じるという報告があった。 前歯部の痛みの強さは、治療開始時で前歯が動くことと関係があるかもしれない。一般的に前歯部は叢生が大 きいことと関係がある可能性がある。 先行研究によると、治療開始1週間は軽度から中等度である[9-12,23]ことが示されており、本研究も同様の結 果が得られた。 アライナーによる矯正治療は固定式装置と比較して痛みが少なく[53-56]、このことは本研究と一致している。 リンガルブラケット群は無痛や軽度の痛みの報告が多く、比較的良好な結果が得られている。 この研究の限界の一つは、均質な患者集団を得ることである。年齢、性差、治療法などは痛みに影響を及ぼす。 しかし、これらの要因は短期間の研究においては痛みに差がないことも示されている[14,26,46,57,58]。 今後の研究において、サンプル数、解析時間の増加、サンプルの均質化を検討する必要がある。 導入 方法 結果 考察 結論 文献

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5. Conclusions ・痛みの部位 4つの異なる矯正装置グループにおいて、最も影響を受けた歯の部位は両顎前歯部であり、 次いで上顎前歯部、下顎であった。 ・痛みの程度 治療開始24時間後の従来型唇側ブラケット群は中等度の痛みであったのに対し、他の3群は軽度の痛みで あった。 ・痛みの種類 治療開始24時間後、最も多かった痛みはロウフリクション群、リンガルブラケット群は急性の痛みが多く、 従来型唇側ブラケット群、アライナー群は敏感痛であった。 ・アライナー(インビザライン)による治療の痛みの部位と種類は他の治療法と同様であった。 導入 方法 結果 考察 結論 文献

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6.References 導入 方法 結果 考察 結論 文献

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6.References 導入 方法 結果 考察 結論 文献

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6.References 導入 方法 結果 考察 結論 文献

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6.References 導入 方法 結果 考察 結論 文献

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記事監修 Dr. 堀井和宏 (Kazuhiro Horii) 日本矯正歯科学会 臨床指導医(旧専門医)・ 認定医 日本舌側矯正歯科学会 American Association of Orthodontists 〒520-0832 滋賀県大津市粟津町4-7 https://www.horii-kyousei.com 導入 方法 結果 考察 結論 文献