スクラムは「健康診断」だった —ビジネスチームに導入して見えた認知負荷と、スクラムの外にあった処方箋

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October 24, 26

スライド概要

スクラム祭り2026 福井トラックの登壇資料
https://confengine.com/conferences/scrummatsuri-2026/proposal/50602

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井手 拓夢(Takumu Ide) スクラムマスター / 神奈川

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1.

スクラム祭り2026 福井トラック スクラムは 「健康診断」だった ビジネスチームに導入して見えた認知負荷と、スクラムの外にあった処方箋 井手 拓夢 イデー / @idee_tm

2.

これまでの登壇 スクラム祭り2025 金沢トラック 井手 拓夢 / イデー Agile Studio ウェビナー 株式会社リコー X: @idee_tm スクラムフェス 金沢2026 02

3.

スクラムって、チームに 何をしてくれるものだと 思いますか? 03

4.

4か月やってみて、たどり着いた答え スクラムは 「みんなでやれば成果が出る仕組み」 ではなく、チームの健康診断だった 04

5.

CHA PTE R 01 越境 開発チームからビジネスチームへ 05

6.

プ ロジ ェ ク ト 社内スタートアップのような組織で、 営業支援SaaSの事業を展開していた プロダクト開発領域 ビジネス領域 スクラムチーム 2チーム体制 4領域・6名 チームA チームB エンジニア・PO・デザイナー データ分析 プロモーション Web運用 CS 開発のスクラムマスターから、ここへ異動 少人数で、事業のすべてを回す体制 06

7.

事 業の 流 れ と、 自 分 の役 割 フェーズが変わるたびに、自分の役割も変わってきた 0→1 ローンチ グロース α版・β版の開発 スクラムで開発 開発は2チーム体制に 売上を立てるフェーズへ ビジネスチームに越境 エンジニア スクラムマスター セールス兼スクラムマスター ▲ 今日の話 07

8.

入 って み た チー ム それぞれが「個人商店」で動くチーム データ分析 プロモーション Web運用 CS 4領域のうち3領域が1名体制。全員が担当業務そのものの初心者 領域どうしは分断されていて、改善のサイクルも優先順位もはっきりしていなかった 08

9.

ヒ アリ ン グ メンバー6名全員に1on1でヒアリングした 「振り返りが 「情報共有が できていない」 できていない」 個人の問題ではなく、構造の問題だと考えた 09

10.

ヒ アリ ン グ で見 え た 課題 個人の能力ではなく、構造の問題が4つあった 1名体制で、領域が分断されている 外部パートナーに依存している 1人休むと止まる。互いの施策も見えない 判断待ちで止まり、ノウハウが残らない 仮説検証が回っていない 優先順位が決まらない ふりかえる相手がいず、同じやり方を繰り返す 各自の判断で、リソースが分散する 10

11.

改善のフィードバックループが 回っていない スクラムで解決できるのでは? 11

12.

提 案し た 体 制 施策を足すのではなく、体制ごと変えることにした 1チームに統合する 段階的に権限を移す 仕事を見える化して、スキルを共有する チームで判断できるようにする 1週間スプリントで回す 事業責任者が判断軸を示す 仮説検証とふりかえりを毎週やる それをもとに、チームで優先順位を決める 最初の1〜2か月は体制づくりの投資期間で、すぐにはスピードは上がらない前提で始めた 12

13.

CHA PTE R 02 導入 13

14.

導 入ま で の 流れ いきなり始めず、ヒアリングと合意から入った まず 次に そして 直前に その翌週 全員に 1on1ヒアリング 運営方針書を つくる 1チームで スクラムをやると合意 アジャイル勉強会 1時間 全体設計の議論、 スプリント開始 上期はまず全員が業務全体を知る。下期から得意分野ごとにリードを置く、という計画にした 14

15.

ア ジャ イ ル 勉強 会 導入前に、1時間のアジャイル勉強会をした Complex やってみないとわからない Complicated グロースの仕事はここ Chaotic Clear ソフトウェア開発に限った話じ ゃない。 ビジネス領域にどう適用して考 えられるか? この観点で、チーム全員の共通認識をつくりたかっ た 15

16.

導入 クロスファンクショナルなスクラムを導入 ● 4領域を1チームに統合 ● 1週間スプリントと、毎朝15分の 1つのスクラムチーム デイリースクラム ● 事業責任者が優先順位の判断軸 を示す 1つのゴール ● 誰が何をやっているかは、見え るようになった 16

17.

CHA PTE R 03 違和感 17

18.

違 和感 1 スプリントゴールに向かっていたのは、3人だけ 自分の担当タスク スプリントゴール 自分の担当タスク 情報共有の場はあるのに、把握できていないメンバーも出てきた 18

19.

違 和感 2 ふりかえりが、業務連絡の場になっていった 「やることが多い」 「時間が足りない」 「施策がこんがらがってきた」「計画ばかりで実行が足りない」という声も出ていた レトロスペクティブ 業務連絡の場 チームの進め方をふりかえる場 報告して終わり 19

20.

違 和感 3 15分のはずのデイリースクラムが、50分かかっていた 0分 50分 ゴールの作戦会議 「全体を通して話したいこと、ありますか?」から始まる議論 15分 35分 どれも大事な話ではあった。 ただ、スプリントゴールとは関係のない、並行して進めている仕事の話だった 20

21.

観察 あえてイベントを休んで、チームを外から見てみた 起きていたこと そのとき思ったこと 誰もファシリをしなかった 「みんな、全然 追えてないじゃん」 KPIやファネルの話が出てこなかった タスクの整理はうまくなってきていたのに 整理して見せていたつもりだった。 このギャップはなんなんだろう 21

22.

そのとき考えていたこと メンバーの実力不足か、 自分のファシリテーションの問題か。 そのくらいにしか、思っていなかった 22

23.

CHA PTE R 04 転機と打ち手 23

24.

社 外イ ベ ン ト AG ILE I NF US E のOS T Agile InfuseのOSTで聞いた、ある非開発チームの話 「最初に計画をがっつり立てて、 あとはサブチームに分かれて動く」 24

25.

「あ、これだ」 チーム・トポロジーの考え方が、OSTの事例をきっかけに、目の前の チームの問題とつながった 25

26.

チーム・トポロジーのゴールは、コラボレーシ ョンが必要な場所やタイミング、実行に集中し てコミュニケーションのオーバーヘッドを減ら すべき場所やタイミングを、組織が適応しなが ら動的に見つけられるようなアプローチとメン タルツールを提供することだ Matthew Skelton, Manuel Pais『チーム・トポロジー』 26

27.

チ ーム ・ ト ポロ ジ ー チーム・トポロジーの認知負荷の考え方 ● チームが一度に扱える認知負荷に は上限がある 範囲が広すぎる 範囲を切る あふれた仕事 ● だから、チームの責任範囲を、扱 える認知負荷に合わせて切る ● 人を増やしたり頑張ったりしても 、上限を超えた分は処理されない チーム それぞれ上限に収まる 参考:Matthew Skelton, Manuel Pais『チーム・トポロジー』 27

28.

チ ーム ・ ト ポロ ジ ー 責任範囲が広すぎると、内発的動機付けが失われる 自律 熟達 目的 複数チームの要求や優先順位を いろいろ抱えすぎて、どれ 責任範囲が広すぎて、何のため 、絶えず調整し続けることで失 も深まらない。多芸は無芸 のチームかがぼやける われる ダニエル・ピンクが提唱する内発的動機付けの3要素(『チーム・トポロジー』より) 28

29.

自 分の チ ー ムに 当 て はめ る と 担当業務だけで、扱える上限に近かった 担当業務(初心者なので重い) 扱える上限 全体の把握・連携 自分の領域だけで手いっぱいのところに 、スクラムが認知負荷を上乗せしてい た Web プロモーション CS / パートナー 29

30.

型 と現 実 現実と型が、合っていなかった 現実 スクラムの型 ≠ Web プロモ CS ゴール・納期 ゴール・納期 ゴール・納期 1つのチーム、1つのゴール 型に現実を合わせようとしていた 30

31.

タスクを取らないのは、その人の実力不足? 人の問題ではなく、 仕組みの問題だった 31

32.

チ ーム ・ ト ポロ ジ ー のア プ ロ ーチ で コラボレーションする場と、実行に集中する場を分けた 実行に集中する場 コラボレーションする場 全体で方向を合わせる 方向を決めて、分かれる サブチームで進める ・最初に全体で計画を立てる ・レビュー(毎週) ・リファインメント(月1) ・ふりかえりの共有 週に1回、持ち寄る Web セールス プロモ パートナー CS デイリーも日々の判断も、ここで完結 32

33.

打 ち手 抱えきれる範囲で、3つのサブチームに分けた 最初に全体で計画を立てる Web セールス・プロモーション リード 自分たちのゴールとイベント リード 自分たちのゴールとイベント パートナー・CS リード 自分たちのゴールとイベント 各サブチームに、担当領域を引っ張るリードを立てた。全体で持つのはレビュー(毎週)・リファイ ンメント(月1)・レトロの共有だけ 33

34.

変 えた 結 果 会議が減り、作業する時間が増えた 分 ける 前 分 けた 後 全員で全施策を見る 日々はサブチーム、全体は週1のレビュ デイリースクラム 50分 ふりかえりの主題は「タスク出し」 ファシリテーションは自分 ーに絞る → デイリースクラム 15分以内 ふりかえりの主題は「仕事の進め方」 ファシリテーションは各領域のリード 34

35.

し ばら く し て 自分が介入しなくても、改善が回るようになっていた ● 各領域のリードが、KPIを起点に自分で判断する ● サブチームが自分たちで改善策を決めて動く 例:集中して作業する日をつくる、有識者を入れた定例を始める ● 「非同期でやりませんか」「期日を決めませんか」と、進め方の提案がメン バーから出る ● 各自が担当領域に集中できて、意思決定が速くなった 全員が担当業務の初心者だったチームには、この形が合っていた 35

36.

CHA PTE R 05 学び 36

37.

「スクラムとは問題を発見する フレームワークであり、 その問題を解決するのは人だ」 スクラム道関西の座談会記事で、スクラムマスダーこと増田謙太郎さんが研修講師の言葉として紹介 Agile Journey「スクラムの「うまくいかない」はなぜ? 組織や関係性に隠れた課題を探る」(2026/07/23) https://agilejourney.uzabase.com/entry/2026/07/23/103000 37

38.

AG ILE JOUR N EY / ス クラ ム 道 関西 問題が次々と見えるのは、スクラムが機能している証 健康 診断 治療 問題を発見する 問題を解決する スクラム 人・組織設計 38

39.

学び 問題を見つけるところと、解決するところは別だった スクラムの中 スクラムの外 発見する 原因がわかる 治療する スクラムで問題が見えた 問題は認知負荷だった 体制の見直し スクラム道関西の言葉 チーム・トポロジー サブチーム分割 39

40.

うまくいかなかった理由 スクラムが見せてくれた問題を、 人の問題だと考えていた 「メンバーが追えていない」「自分の進め方が悪い」 見つけることも解決することも、スクラムの中でやろうとしていた 40

41.

ま とめ 持ち帰ってほしいこと チームが抱えられる認知負荷から考える 全員が初心者のチームに、いきなり1チームのスクラムは重い うまくいかないときは、体制を変える選択肢を持つ イベントを工夫するより先に、抱えきれる範囲に分ける うまくいかないのは、誰かのせいじゃない スクラムが見せてくれた問題として、何が見えたのかを考える 41

42.

スクラムがうまく回らないとき、 人のせい(自分も含めて)にする前に 「チームの何が見えたのか」を考える 42

43.

みなさんのスクラムは、 何を診断していますか? 43

44.

井手 拓夢 / イデー 株式会社リコー い まの 役 割 ビジネスデザイナー X: @idee_tm 44

45.

Thank you!!