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May 24, 22
スライド概要
臨床疫学研究からみた 不適切かもしれない向精神薬使用 奥村泰之 一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究部 主任研究員 第8回日本不安症学会 2016/2/7 (日) 10:30~12:00 千葉大学医学部第1会議室
マスメディア,薬漬け NHK: クローズアップ現代 (http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3213_all.html) 朝日新聞: 2015年5月25日朝刊 2
「適切な」向精神薬の使用の推進 「不適切」な向精神薬使用が蔓延? 厚生労働省 (http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000102476.pdf) 3
研究者,不適切かもしれない向精神薬使用 Predictive Validity of the Beers and Screening Tool of Older Persons' Potentially Inappropriate Prescriptions (STOPP) Criteria to Detect Adverse Drug Events, Hospitalizations, and Emergency Department Visits in the United States Trends and interaction of polypharmacy and potentially inappropriate prescribing in primary care over 15 years in Ireland: a repeated cross-sectional study. Potentially inappropriate medication use at ambulatory care visits by elderly patients covered by National Health Insurance in Korea. 4
不適切かもしれない向精神薬使用に関する統計資料 薬剤使用の実態 対応策の有効性 対象薬剤を定義 適切性の基準を設定 基準越え対応策の検討 基準超えの程度を同定 5
発表の構成,4つの留意事項 不適切かもしれない向精神薬使用に関する統計資 料を解釈する際には... ①「向精神薬の成分」を確認 ②「薬剤使用の適切性」の設定過程を確認 ③「薬剤使用の実態」の研究法を確認 ④「対応策の有効性」の研究疑問等の履歴を確認 6
向精神薬,中枢神経系に作用する薬剤の総称 向精神薬 抗精神病薬 抗不安薬 抗うつ薬 睡眠薬 気分安定薬 抗てんかん薬 7
向精神薬,多様な分類法・異なる成分 日本標準分類 麻薬及び向精 神薬取締法 ATC分類 8
日本標準分類,中枢神経用薬≠向精神薬 11 中枢神経用薬 111 全身麻酔剤 112 催眠鎮静剤,抗不安剤 113 抗てんかん剤 114 解熱鎮痛消炎剤 115 興奮剤、覚醒剤 116 抗パーキンソン剤 117 精神神経用剤 118 総合感冒剤 119 その他の中枢神経系用薬 9
催眠鎮静剤,39剤=多種同効薬 催眠鎮静剤 (112) ベンゾジアゼピン受容 体作動薬...29剤 etizolam (デパス) は含まれない バルビツール酸系 睡眠薬...6剤 非バルビツール酸系 睡眠薬...4剤 10
公的調査で活用 調剤医療費の動 向調査 薬事工業生産動 態統計調査 11
不適切かもしれない向精神薬使用に関する統計資料 薬剤使用の実態 対応策の有効性 対象薬剤を定義 適切性の基準を設定 基準越え対応策の検討 基準超えの程度を同定 12
発表の構成,4つの留意事項 不適切かもしれない向精神薬使用に関する統計資 料を解釈する際には... ①「向精神薬の成分」を確認 ②「薬剤使用の適切性」の設定過程を確認 ③「薬剤使用の実態」の研究法を確認 ④「対応策の有効性」の研究疑問等の履歴を確認 13
薬剤使用の適切性の設定法 XXを使用すべきでない 系統的レビュー エビデンスの質: 非常に低~高 推奨度: 弱~強 薬剤使用の 研究疑問を定式化 診療ガイドライン 重要なアウトカムの選択 全体的な エビデンスの質の評価 アウトカムごとに,エビデ ンスの統合・質の評価 推奨の方向性と 推奨度の設定 相原守夫. 診療ガイドラインのためのGRADEシステム. 凸版メディア株式会社, 2015. Guyatt G et al: J Clin Epidemiol. 2011 Apr;64(4):383-94. 14
日本老年医学会,非BZ系薬使用の適切性 すべての高齢者において, 非BZ系を漫然と長期投与せず, 減量中止を検討すること エビデンスの質: 中 推奨度: 強 15
適切性の設定過程 GRADEではない! 系統的レビュー 2005~2013年の和文・英文 アウトカム:? デザイン:RCT? 研究数:? 水上勝義: 高齢者のうつ、不眠、認知症の薬物療法に関する研究. 平成25年度 総括・分担研究報告書 高齢者の薬物治療の安全性に関する研究 2014: 57-60. 16
不適切かもしれない向精神薬使用に関する統計資料 薬剤使用の実態 対応策の有効性 対象薬剤を定義 適切性の基準を設定 基準越え対応策の検討 基準超えの程度を同定 17
発表の構成,4つの留意事項 不適切かもしれない向精神薬使用に関する統計資 料を解釈する際には... ①「向精神薬の成分」を確認 ②「薬剤使用の適切性」の設定過程を確認 ③「薬剤使用の実態」の研究法を確認 ④「対応策の有効性」の研究疑問等の履歴を確認 18
高齢者に対するBzRAsの使用実態 適切性の基準 高齢者にBzRAsを長期使用すべきでない ①セッティング 2012年10月~2013年9月被用者保険の レセプト情報と被保険者情報 ②分母の定義 65~74歳の健康保険組合の加入者 17,863名 ③分子の定義 1年間に33剤の経口のベンゾジアゼピ ン受容体作動薬が1度以上処方 ④処方割合 19% 頓用が含まれ 長期使用ではない! Okumura, Y, Shimizu, S, Matsumoto, T: Drug Alcohol Depend 2016; 158: 118-25. 19
統合失調症に対する抗精神病薬の使用実態 適切性の基準 統合失調症に抗精神病薬を多剤処方すべきでない ①セッティング 2011年10月診療分における入院のレ セプト情報 ②分母の定義 入院精神療法の算定のある統合失調 症入院患者7,391名 ③分子の定義 1か月間に32剤の抗精神病薬が3剤以 上処方 ④処方割合 42% 奥村泰之, 野田寿恵, 伊藤弘人: 臨床精神薬理 2013; 16: 1201-15. 多剤処方の定義は 倹約的! 20
不適切かもしれない向精神薬使用に関する統計資料 薬剤使用の実態 対応策の有効性 対象薬剤を定義 適切性の基準を設定 基準越え対応策の検討 基準超えの程度を同定 21
発表の構成,4つの留意事項 不適切かもしれない向精神薬使用に関する統計資 料を解釈する際には... ①「向精神薬の成分」を確認 ②「薬剤使用の適切性」の設定過程を確認 ③「薬剤使用の実態」の研究法を確認 ④「対応策の有効性」の研究疑問等の履歴を確認 22
高齢者に対するBZ系薬の休薬法 27% vs. 5% リスク差: 22% P : I C O T 調剤薬局を利用する高齢者における ベンゾジアゼピン系薬剤の長期使用者 : 教育的介入 : 通常診療 : ベンゾジアゼピンの休薬率 : 介入6か月時点 Tannenbaum, C, Martin, P, Tamblyn, R et al: JAMA Intern Med 2014; 174: 890-8. 23
研究疑問や例数設計の履歴を把握 臨床試験登録 研究計画書 論文 3つの情報源に齟齬がない 24
統合失調症に対する抗精神病薬の減薬法 主要評価項目に差が認められない (非劣性試験) P : I C O T 統合失調症における抗精神病薬の多剤使 用者 : 減薬プログラム : 通常診療 : 精神症状と生活の質 : 介入終了12週時点 Yamanouchi, Y, Sukegawa, T, Inagaki, A et al: Int J Neuropsychopharmacol 2015; 18. 25
研究疑問や例数設計の履歴を把握 臨床試験登録 報告書 研究計画書 論文 4つの情報源に齟齬がある!! 26
失敗した臨床試験の粉飾法 (spin) Before After 非劣性を示す症例数が得られなかった 非劣性が示された 必要症例数: 400例 必要症例数: 142例 研究疑問①非劣性 精神症状が悪化しないか 研究疑問①非劣性 精神症状が悪化しないか 研究疑問②優越性 生活の質が改善するか 研究疑問②非劣性 生活の質が悪化しないか 27
Take Home Messages 不適切かもしれない向精神薬使用に関する統計資 料を解釈する際には... ①「向精神薬の成分」を確認 ②「薬剤使用の適切性」の設定過程を確認 ③「薬剤使用の実態」の研究法を確認 ④「対応策の有効性」の研究疑問等の履歴を確認 28