4-1 抗がん薬 抗がん薬の種類、作用機序
抗がん薬 ü 基本的な注意事項 ü 作⽤機序
抗がん薬/基本的な注意事項 「抗がん薬は毒性がある」という認識のうえ、 正しい 患者 正しい 治療法 正しい 量 正しい スケジュール 正しい 安全管理
反 応 ⽤量-反応曲線の考え⽅ 効果 100% 毒性 用量を増やすほど、 効果が得られる人の割合は増える 80% ひろい 50% 用量を増やすほど、 毒性が出る人の割合も増える Effective dose ED50 =A g A g 薬を A Bg g 投与すると、50% の⼈に効果がでる ⽤量
反 応 ⽤量-反応曲線の考え⽅ 効果 100% 毒性 80% せまい 50% 薬を B g 投与すると、 ・80% の⼈に効果がでるが ・20% の⼈に毒性がでる 「せまい」=効果と同時に副作⽤の可能性⼤ Ag Bg ⽤量
抗がん薬/基本的な注意事項 正しい 量 ü 抗がん薬は、治療域と中毒域が近い ü 体表⾯積で補正する Du Bois 式 =⾝⻑0.725×体重0.425×0.007184 ⽇本⼈平均=男性︓1.78m2、⼥性︓1.44m2 (冨⽥1999) ü 最新の⾝⻑・体重で計算する
抗がん薬/基本的な注意事項 正しい 治療法 レジメン 量 量 投与速度 スケジュール ルート ü 薬剤の⽤量・⽤法・治療期間を明記し た治療計画 ü 抗がん薬だけでなく、⽀持療法も細か く決められている ü 制吐薬・抗アレルギー薬・輸液など ü 院内の委員会で審議した上で採⽤される 順番
抗がん薬/基本的な注意事項 正しい 安全管理 l 有害事象 ü 適切な⽀持療法 曝露︓さらされること l 抗がん薬曝露防⽌対策 ü なぜ必要か︖ ü 細胞毒性があるため(発がん性・催奇形性) 閉鎖式薬物混合システム ü 職業的曝露の対策 ü 防護︓⼿袋・マスク・ガウン・ゴーグル・キャップ ü 在宅化学療法の対策 ü 排泄物・汚染リネンの取扱、こぼれた時の対処
抗がん薬 ü 基本的な注意事項 ü 作⽤機序
抗がん薬の分類 ② ① 分⼦標的薬 がん細胞が持つ標的 を攻撃する がん化 正常細胞 攻撃 分裂・増殖を⽌め、 細胞死に導く がん細胞の特徴 • 殺細胞性抗がん薬 • 細胞障害性抗がん薬 未成熟のまま 分裂・増殖 し続ける と⾔われる 攻撃 しないで がん細胞の命令で 免疫がサボっている ③ 化学療法 ホルモン感受性 がん細胞に作⽤して 細胞増殖を促す 免疫チェックポイント阻害薬 腫瘍に対する免疫反応を働かせる 性ホルモン ④ がん細胞の特徴 転移する ホルモン療法 ホルモンによる細胞増殖 促進を阻害する
抗がん薬の有害事象の機序 化学療法 殺細胞性抗がん薬 細胞障害性抗がん薬 分⼦標的薬 免疫チェック ポイント阻害薬 ホルモン 療法 薬理作⽤ 有害事象 細胞増殖が盛んな 細胞増殖が盛んな がん細胞 正常細胞 分裂・増殖を⽌め、 • 造⾎幹細胞 ‥易感染, 貧⾎, 易出⾎ 細胞死に導く • 消化管粘膜 ‥⼝内炎, 下痢 • ⽑⺟細胞 ‥脱⽑ • ⽣殖細胞 ‥不妊 標的がある がん細胞を攻撃 がん細胞に 免疫が働く ホルモン感受性 がん細胞を (内分泌療法) ※⻑期服薬 増殖させない 標的がある 正常細胞を攻撃 ※それぞれに特有の有害事象 正常細胞に 免疫が働く ※多彩な副作⽤ irAE 通常のホルモンの 働きを阻⽌
抗がん薬の分類 化学療法 分⼦標的薬 アルキル化薬 抗体薬 代謝拮抗薬 低分⼦化合物 免疫チェック ポイント阻害薬 ホルモン 療法 抗腫瘍性 抗⽣物質 微⼩管阻害薬 DNAトポイソメラーゼ 阻害薬 ⽩⾦製剤 「化学療法」とは︖ 化学物質の選択毒性を利⽤して、 疾患の原因の微⽣物やがん細胞の増殖を抑制する 「抗⽣物質」とは︖ 微⽣物が産⽣する物質で、他の微⽣物や細胞に 作⽤して、その発育を抑制する物質
作⽤機序/アルキル化薬 細胞が ⽣きるためには DNA 複製 DNA DNA 増殖 翻訳 転写 RNA タンパク質 ⽣命活動 Ø 作⽤機序/アルキル化薬‥DNA に⼊り込んで、複製を阻害する (休⽌期の細胞に有効) 架橋形成etc アルキル化薬 DNA 複製障害 ↑ 複製
作⽤機序/代謝拮抗薬 原料 プリン ピリミジン 塩基 塩基 糖 リン酸 塩基 グアニン アデニン シトシン チミン (ウラシル) Ø 作⽤機序︓ ⽣理的基質に拮抗して 代謝を阻害する (分裂中の細胞に有効︓DNA合成期) • 葉酸拮抗薬 • ピリミジン拮抗薬 • フッ化ピリミジン系 • シチジン系 • チミジン系 複製 • プリン拮抗薬
作⽤機序/微⼩管阻害薬 微⼩管とは︖ ・細胞分裂で重要な役割を果たす →複製した DNA を両極に引っ張る 他にも、細胞運動や軸索輸送などにも関与 Ø 作⽤機序︓ 微⼩管に作⽤し、細胞分裂を⽌める (分裂中の細胞に有効︓有⽷分裂期) 微⼩管 微⼩管阻害薬 ・ビンカアルカロイド系 ・タキサン系 ‥ビンクリスチン ‥パクリタキセル 等 等
作⽤機序/DNA トポイソメラーゼ阻害薬 DNA トポイソメラーゼとは︖ ・DNA の「ねじれ」や「からまり」を解消する酵素 複製 DNA トポ イソメラーゼ ねじれ・からまり Ø 作⽤機序︓ DNA トポイソメラーゼを阻害することで、 DNA のねじれが解消できず、細胞分裂が⽌まる (分裂中の細胞に有効︓DNA 合成期)
作⽤機序/⽩⾦製剤 Ø 作⽤機序/⽩⾦製剤‥DNA に⼊り込んで、複製を阻害する (休⽌期の細胞に有効) DNA 複製障害 ↑ 複製 ⽩⾦製剤 【おまけ】なぜ、“⽩⾦”︖ Cl ⽩⾦(Pt)が構造中に含まれているから シスプラチン 「プラチナ」 Cl Pt H N H H N H H H
細胞周期⾮特異的 アルキル化薬 レジメン ・作⽤機序が異なる薬 ・異なるタイミングで効く薬 細胞周期特異的 抗腫瘍性 抗⽣物質 代謝拮抗薬 ⽩⾦製剤 トポイソメラーゼ 阻害薬 G0期 休⽌期 組み合わせる 微⼩管阻害薬 S期 G2期 M期 G1期 DNA合成 準備期 有⽷分裂 準備期 細胞周期(増殖サイクル) 増殖指令
作⽤機序/分⼦標的薬 分⼦標的薬‥体内の特定の 標的分⼦ を制御する薬 ・抗体薬 「標的分⼦」を持っているか 事前に調べる ・低分⼦化合物 バイオマーカー 信 号 伝 達 がん細胞 新⽣⾎管 未分化・増殖 し続ける細胞 がん細胞を養うため ⾎管を作り出す 細胞増殖 遺伝⼦変異のため 常に増殖指令ON 抗体薬 モノクローナル抗体 低分⼦化合物 酵素(キナーゼ)阻害など 細胞増殖の指令伝達の過程 どこかを阻害する 信 号 伝 達 細胞増殖 がん細胞が 指令をだす
作⽤機序/免疫チェックポイント阻害薬 免疫作⽤が働かないため、がん化促進 樹状細胞 通常の状態 抑制 B7 PD-L1 CTLA-4 PD-1 免疫作⽤ がん化抑制 免疫作⽤ がん化 抑制
作⽤機序/免疫チェックポイント阻害薬 免疫作⽤が働かないため、がん化促進 樹状細胞 通常の状態 抑制 抗 CTLA-4 抗体 B7 PD-L1 CTLA-4 PD-1 免疫作⽤ がん化抑制 免疫作⽤ がん化 抑制 抗 PD-L1 抗体 抗 PD-1 抗体 免疫抑制の命令が 届かないように するよ! 免疫反応の抑制を解除し、免疫作⽤によって抗腫瘍作⽤を発揮
ホルモン療法(内分泌療法) ホルモン感受性 Ø ⼥性ホルモン 卵胞ホルモン 乳がん エストロゲン 卵巣がん ⼦宮体がん Ø 男性ホルモン アンドロゲン 前⽴腺がん ホルモン感受性陽性 ‥ER陽性(Liminal 型) ホルモン療法 (内分泌療法) ホルモン感受性陽性(タイプ1) ホルモン感受性陰性(タイプ2) ホルモン療法 (内分泌療法) ホルモン 腫瘍 →増殖
4-1 抗がん薬 抗がん薬の種類、作用機序
抗がん薬の分類 ② ① 分⼦標的薬 がん細胞が持つ標的 を攻撃する がん化 正常細胞 攻撃 分裂・増殖を⽌め、 細胞死に導く がん細胞の特徴 • 殺細胞性抗がん薬 • 細胞障害性抗がん薬 未成熟のまま 分裂・増殖 し続ける と⾔われる 攻撃 しないで がん細胞の命令で 免疫がサボっている ③ 化学療法 ホルモン感受性 がん細胞に作⽤して 細胞増殖を促す 免疫チェックポイント阻害薬 腫瘍に対する免疫反応を働かせる 性ホルモン ④ がん細胞の特徴 転移する ホルモン療法 ホルモンによる細胞増殖 促進を阻害する
抗がん薬の有害事象の機序 化学療法 殺細胞性抗がん薬 細胞障害性抗がん薬 分⼦標的薬 免疫チェック ポイント阻害薬 ホルモン 療法 薬理作⽤ 有害事象 細胞増殖が盛んな 細胞増殖が盛んな がん細胞 正常細胞 分裂・増殖を⽌め、 • 造⾎幹細胞 ‥易感染, 貧⾎, 易出⾎ 細胞死に導く • 消化管粘膜 ‥⼝内炎, 下痢 • ⽑⺟細胞 ‥脱⽑ • ⽣殖細胞 ‥不妊 標的がある がん細胞を攻撃 がん細胞に 免疫が働く ホルモン感受性 がん細胞を (内分泌療法) ※⻑期服薬 増殖させない 標的がある 正常細胞を攻撃 ※それぞれに特有の有害事象 正常細胞に 免疫が働く ※多彩な副作⽤ irAE 通常のホルモンの 働きを阻⽌
作⽤機序/分⼦標的薬 分⼦標的薬‥体内の特定の 標的分⼦ を制御する薬 ・抗体薬 「標的分⼦」を持っているか 事前に調べる ・低分⼦化合物 バイオマーカー 信 号 伝 達 がん細胞 新⽣⾎管 未分化・増殖 し続ける細胞 がん細胞を養うため ⾎管を作り出す 細胞増殖 遺伝⼦変異のため 常に増殖指令ON 抗体薬 モノクローナル抗体 低分⼦化合物 酵素(キナーゼ)阻害など 細胞増殖の指令伝達の過程 どこかを阻害する 信 号 伝 達 ⾎管を作れ がん細胞が 指令をだす
作⽤機序/免疫チェックポイント阻害薬 免疫作⽤が働かないため、がん化促進 樹状細胞 通常の状態 抑制 B7 PD-L1 CTLA-4 PD-1 免疫作⽤ がん化抑制 免疫作⽤ がん化 抑制
作⽤機序/免疫チェックポイント阻害薬 免疫作⽤が働かないため、がん化促進 樹状細胞 通常の状態 抑制 抗 CTLA-4 抗体 B7 PD-L1 CTLA-4 PD-1 免疫作⽤ がん化抑制 免疫作⽤ がん化 抑制 抗 PD-L1 抗体 抗 PD-1 抗体 免疫抑制の命令が 届かないように するよ! 免疫反応の抑制を解除し、免疫作⽤によって抗腫瘍作⽤を発揮
ホルモン療法(内分泌療法) ホルモン感受性 Ø ⼥性ホルモン 卵胞ホルモン 乳がん エストロゲン 卵巣がん ⼦宮体がん Ø 男性ホルモン アンドロゲン 前⽴腺がん ホルモン感受性陽性 ‥ER陽性(Liminal 型) ホルモン療法 (内分泌療法) ホルモン感受性陽性(タイプ1) ホルモン感受性陰性(タイプ2) ホルモン療法 (内分泌療法) ホルモン 腫瘍 →増殖
抗がん薬の有害事象の機序 化学療法 殺細胞性抗がん薬 細胞障害性抗がん薬 分⼦標的薬 免疫チェック ポイント阻害薬 ホルモン 療法 薬理作⽤ 有害事象 細胞増殖が盛んな 細胞増殖が盛んな がん細胞 正常細胞 分裂・増殖を⽌め、 • 造⾎幹細胞 ‥易感染, 貧⾎, 易出⾎ 細胞死に導く • 消化管粘膜 ‥⼝内炎, 下痢 • ⽑⺟細胞 ‥脱⽑ • ⽣殖細胞 ‥不妊 標的がある がん細胞を攻撃 がん細胞に 免疫が働く ホルモン感受性 がん細胞を (内分泌療法) ※⻑期服薬 増殖させない 標的がある 正常細胞を攻撃 ※それぞれに特有の有害事象 正常細胞に 免疫が働く ※多彩な副作⽤ irAE 通常のホルモンの 働きを阻⽌
4-2 支持療法 化学療法薬の有害事象に対する支持療法 等
抗がん薬の有害事象の機序 化学療法 殺細胞性抗がん薬 細胞障害性抗がん薬 分⼦標的薬 免疫チェック ポイント阻害薬 ホルモン 療法 薬理作⽤ 有害事象 細胞増殖が盛んな 細胞増殖が盛んな がん細胞 正常細胞 分裂・増殖を⽌め、 • 造⾎幹細胞 ‥易感染, 貧⾎, 易出⾎ 細胞死に導く • 消化管粘膜 ‥⼝内炎, 下痢 • ⽑⺟細胞 ‥脱⽑ • ⽣殖細胞 ‥不妊 標的がある がん細胞を攻撃 がん細胞に 免疫が働く ホルモン感受性 がん細胞を (内分泌療法) ※⻑期服薬 増殖させない 標的がある 正常細胞を攻撃 ※それぞれに特有の有害事象 正常細胞に 免疫が働く ※多彩な副作⽤ irAE 通常のホルモンの 働きを阻⽌
有害事象の評価⽅法 Ø 重症度を客観的に評価するための尺度 • 「有害事象共通用語規準v5.0日本語訳JCOG版」 (CTCAE v5.0 - JCOG) • Grade 1‥軽症 • Grade 2‥中等症 • Grade 3‥重症または医学的に重大 (ただちに生命に危険があるわけではない) • Grade 4‥生命を脅かす、緊急処置を要する • Grade 5‥有害事象による死亡 Ø 患者⾃⾝が主観的に評価する尺度 • PRO-CTCAE TM • 7日間における症状を、5段階評価 ⽇本臨床腫瘍グループ http://www.jcog.jp/index.htm
化学療法 有害事象/⾻髄抑制 ⾚⾎球‥【減少】貧⾎ ⽩⾎球‥【減少】感染症 ・好中球 ・好酸球 ・好塩基球 ・単球 ・リンパ球 ⾎⼩板‥【減少】出⾎傾向 ⾚⾎球 ⽩⾎球 ⾎⼩板 発現時期 回復時期 投与後2w〜1m 緩やかに減少 ー 投与後 1w〜2w 1w〜2w 投与後 2w〜3wに 最低値 寿命が違うので、発現時期も違う かけて回復 3w〜4w かけて回復
化学療法 有害事象/⾚⾎球減少 貧⾎のアセスメント項⽬ ⾃覚症状 他覚症状 検査 原則 ⽇常⽣活 顔⾊が悪い、めまい、息切れ ⽉経の状態・量・期間 など ⾎液検査データ(RBC、Hb、Hct) 眼瞼結膜⾊調 など ⽣活での⼯夫・早期発⾒ ※定期的に⾎液検査 症状が強い時は安静にする • ⼗分な休息・睡眠 • だるい時は、無理をしない • 体のだるさや⽴ちくらみからの転倒に注意 対策 輸⾎
化学療法 有害事象/⽩⾎球減少 症状 発熱・ふるえ・咳・⼝内炎 腹痛・下痢・排尿時痛 など 原則 予防 体調管理 ※定期的に⾎液検査 体温測定、体調不良の⼈との接触を避ける 外出 マスク着⽤、紫外線防護、うがい・⼿洗い、無理をしない ⾷事 新鮮なものは新鮮なうちに、よく洗って⾷べる 調理器具を清潔に ※⽣物(刺⾝・乳酸菌)禁⽌の指⽰がある場合は、その通りに 清潔 ⼿洗い、⼊浴、トイレ(ウォシュレット、優しく拭く) ⼟には直接触らない、性交渉は避ける 外傷 怪我・⾍刺されに注意、電気式髭剃りを使⽤ ペット 噛まれたり引っかかられないように注意 マスク・⻑袖、触れ合った後に⼿洗い
化学療法 内服薬 対策 有害事象/⽩⾎球減少 1. 抗菌薬 • シプロフロキサシン錠 1⽇3回 1回400mg どちらか • レボフロキサシン錠 1⽇1回 1回500mg 2. 解熱薬 • アセトアミノフェン錠 あらかじめ、薬が処⽅される 指導内容を確認する 正しく理解されているか • 熱が出た時に服⽤してください • 37.5℃以上の熱は、服薬し、病院に電話してくだ さい • 3⽇服薬しても熱が下がらない場合は、病院に電 話してください
化学療法 有害事象/⾎⼩板減少 出⾎傾向のアセスメント項⽬ ⾃覚症状 検査値 原則 ⽇常⽣活 ⻘あざ・⿐出⾎・⻭茎から出⾎・ 下⾎・⾎痰 など ⾎液検査データ(Plt、PT/APTT)など ⽣活での⼯夫・早期発⾒ 出⾎予防のための対策 ※定期的に⾎液検査 • ⽖は短く • 怪我に注意する • 圧迫⽌⾎ • ⿐を強くかまない • ⻭ブラシは柔らかいものを 対策 輸⾎
有害事象/⼝内炎 化学療法 がん治療にともなう⼝内炎 粘膜障害 免疫抑制 放射線治療 対策 治療前から 歯科との 連携を! ‥抗がん薬が発⽣させたフリーラジカルが、⼝腔粘膜を障害する 【発現時期】治療開始後7〜10⽇後︔2週間程度で改善 ‥抗がん薬による免疫抑制に伴う⼆次感染 ・カンジダ性⼝内炎 ・ヘルペス性⼝内炎 ‥⼝腔内への放射線照射に伴う 放射線治療終了後1〜2週間は症状が継続 ⼝腔内の清潔・保湿・鎮痛 • 含嗽薬 • 鎮痛薬 • 感染対策︓抗真菌薬、抗ウイルス薬 • 副腎⽪質ステロイド⼝腔⽤軟膏 ⼝内炎のアセスメント項⽬ ⾃覚症状 化学療法薬による⼝内炎︓40〜70% ⼝内の痛み、乾燥感、 ⼝⾓炎 広範な⼝内炎、 経⼝摂取が困難 経⼝摂取・飲⽔の状況
化学療法 指導のポイント 有害事象/⼝内炎 清潔 柔らかい⻭ブラシ・痛くない⻭磨き こまめにうがいする(ブクブクうがい) ・⽔ ・⽣理⾷塩⽔ ‥⽔がしみる場合 ・洗⼝剤(アルコール⾮含有) ・含嗽薬︓アズレンスルホン酸Na うがい液‥炎症を鎮める ※⾷事がとれなくても、うがい・⻭磨きをしてください 保湿 • ⼈⼯唾液 • 保湿ジェル・保湿スプレー • ⼝腔保護剤︓エピシル 唾液マッサージ クライオセラピー 鎮痛 抗がん薬急速静注前 氷を⼝に含む →⼝腔粘膜の⾎流を減少 させ薬物移⾏を減らす ことで⼝内炎予防 処⽅された鎮痛薬を、⾷前に服⽤ ⾷事 刺激が少ない⾷物(味・温度・硬さ) 局所⿇酔薬を混合したうがい薬を使うことも
有害事象/下痢 化学療法 化学療法薬でおこる下痢の機序 腸管運動刺激 粘膜障害 ※多い 蠕動運動が刺激されて、活発になるため、腸管が内容物が ⼗分吸収されないうちに排出されるため、下痢がおこる 【発現時期】治療開始⽇〜数⽇後 腸管粘膜が障害されたり、⽩⾎球減少のための腸管感染か ら下痢がおこる 分⼦標的薬 【発現時期】治療開始後10〜14⽇後 免疫チェックポイント薬 の下痢 特に下痢を起こしやすい化学療法薬 イリノテカン →発現時期はさらに遅い 代謝拮抗剤 プラチナ系 ※早発性・遅発性下痢の両⽅ 5-FU、S-1、カペシタビン など 下痢のアセスメント項⽬ ⾃覚症状 他覚症状 検査 便の性状・回数、⾎便 ⾷事の状況 腸⾳↑ 脱⽔(ツルゴール) ⽔分摂取不可、頻回、⾎便・ ⿊⾊便・⽩⾊便、 随伴症状(激しい腹痛・嘔 吐・発熱・めまい・⼝渇)
化学療法 有害事象/下痢 化学療法薬でおこる下痢 治療薬 腸管運動刺激 抗コリン薬 粘膜障害 収斂薬 ‥腸粘膜に⽪膜を作って、 分泌や刺激を抑える 吸着薬 ‥過剰な粘液や⽔分を吸着して 排除する ‥腸管運動を抑制する 早発性 激しい腹痛、流涎、流涙などコリン様症状も併発 遅発性 抗コリン薬 ロペラミド コデイン 整腸薬 半夏瀉⼼湯 ‥腸管運動抑制薬 腸管壁に直接作⽤する ‥ オピオイド/副作⽤(腸管運動を 抑制し便秘)を利⽤ ‥腸内細菌叢の正常化 ‥イリノテカンによる下痢に
化学療法 有害事象/ 脱⽑ 指導のポイント 準備 前もって短くしておく ウィッグ・帽⼦の準備 清潔 脱⽑中も頭⽪を洗う 低刺激 ⽑髪への影響︓ 脱⽑ ちぢれ カール ⽑量減少 灰⾊化 シャンプーは薄めに・低刺激 指の腹で優しく洗う ドライヤーは低温 パーマ・脱⾊・⽑染めはしない 治療薬 ない ※育⽑剤は無効 マッサージ 有効性は不明 ※⻑崎県内でウィッグ購⼊の助成⾦制度がある⾃治体︓平⼾市
妊孕性 化学療法 ⼿ 術 が ん 治 療 薬物療法(化学療法) にんようせい 妊孕性にダメージを与える Q. 「にんようせい」とは︖ A. 「妊娠する⼒」のこと 薬物療法(ホルモン療法) がん治療で妊孕性が失われたり、 低下する可能性がある 放射線療法 薬剤の影響 • 〔⼥性〕無⽉経 • 〔男性〕無精⼦症 • 性腺機能低下 胎児への影響︓治療中・ 治療後⼀定期間は避妊が必要 ⽀援 原則 • 治療薬によってリスクは異なる →治療の妊孕性への影響の有無 • 挙児希望 • 妊孕性温存療法が可能か →適切な⽅法を選択 がん・⽣殖医療に携わるチームで⽀援 適切な情報提供と、意思決定の⽀援 がんの衝撃や⽣活のことで精⼀杯で、治療後の妊娠・出産まで考えられないことも多い
化学療法 有害事象/悪⼼・嘔吐 がん患者の悪⼼・嘔吐‥40〜70%に⾒られる がんによるもの • 消化管の閉塞・圧迫 • 脳転移 など がん治療によるもの • 抗がん薬治療 化学療法薬 • 放射線治療 • オピオイドの副作⽤ がん以外によるもの • 胃炎・胃潰瘍 • 精神的 • ⼼理的 シスプラチン 【基本⽅針】発現予防 制吐薬 ・レジメンの催吐リスクに応じて、適切な制吐薬を選択 ・悪⼼・嘔吐のリスクがある期間、最善の予防を⾏う アセスメント項⽬ 悪⼼・ 嘔吐 指⽰通りに制吐薬の使⽤を促す(⾷事不可の時も服⽤) ⾷事の⼯夫(少量ずつ、やわらかく、冷ますetc) 症状︓⽔分摂取は可能か、内服は可能か l 制吐薬を服⽤しても改善しない、⽔分摂取不能 l 頭痛・めまいなどの随伴症状がある
制吐薬 制吐薬の作⽤機序 前クールの記憶 ⼤脳⽪質 オピオイド 前庭 抗がん薬 CTZ オピオイド 抗がん薬 抗がん薬・ オピオイド と嘔吐機序 化学受容器引き⾦帯 サブスタンスP→NK1受容体 セロトニン→5-HT3 受容体 ドパミン→D2受容体 直接細胞障害 消化器 セロトニン→5-HT3 受容体 サブスタンスP→NK1受容体 直接細胞障害 デキサメタゾン NK1 受容体拮抗薬 5-HT3 受容体拮抗薬 D2 受容体拮抗薬 (抗精神病薬) 嘔吐 中枢 急性嘔吐 遅発性嘔吐 悪⼼・ 嘔吐 D2 受容体拮抗薬 (消化管運動亢進薬)
抗がん薬誘発性悪⼼・嘔吐 0 抗 が ん 薬 投 与 Day 1 急性 Day 7 遅発性 悪⼼・嘔吐 悪⼼・嘔吐 抗がん薬投与後 抗がん薬投与後 24時間以内 約1週間持続 突発性 悪⼼・嘔吐 制吐薬の予防投与をしていても、 突然起こる 予測性 悪⼼・嘔吐 抗 が ん 薬 投 与
制吐薬 制吐薬の作⽤機序 前クールの記憶 ⼤脳⽪質 オピオイド 前庭 抗がん薬 CTZ オピオイド 抗がん薬 抗がん薬・ オピオイド と嘔吐機序 化学受容器引き⾦帯 サブスタンスP→NK1受容体 セロトニン→5-HT3 受容体 ドパミン→D2受容体 直接細胞障害 消化器 セロトニン→5-HT3 受容体 サブスタンスP→NK1受容体 直接細胞障害 デキサメタゾン NK1 受容体拮抗薬 5-HT3 受容体拮抗薬 D2 受容体拮抗薬 (抗精神病薬) 嘔吐 中枢 急性嘔吐 遅発性嘔吐 悪⼼・ 嘔吐 D2 受容体拮抗薬 (消化管運動亢進薬)
症状は適切な制吐薬選択の助けに 予期悪⼼ 「また吐くのでは」という不安 →ベンゾジアゼピン系抗不安薬 体動時に悪⼼・嘔吐がでる めまいを伴う悪⼼・嘔吐 前庭が刺激され、嘔吐中枢を刺激 →抗ヒスタミン薬(動揺病) 悪⼼・嘔吐が持続する ドパミン遊離を促進し、嘔吐中枢を刺激 →中枢性 D2 拮抗薬(抗精神病薬) ⾷後に悪⼼・嘔吐がでる 胃内容物停滞のため嘔吐が刺激される →D2 拮抗薬(消化管運動亢進薬) あくまでも⼀例です
化学療法 分⼦標的薬 有害事象/⼿⾜症候群 ⼿⾜症候群(hand foot syndrome, HFS) 抗がん薬によって起こる⼿⾜の⽪膚に⾒られる⼀連の症状 ・重症化すると⽇常⽣活に⽀障を⽣じる ・休薬(Grade2以上)などの処置により、速やかに軽快する →早期診断と、適切な初期対処が重要である 化学療法 好発薬剤 フッ化ピリミジン系 (代謝拮抗薬) 分⼦標的薬 キナーゼ阻害薬 発症時期 1〜2ヶ⽉⽬まで 3週⽬までに多い 部位 びまん性 限局性 初期症状 知覚異常(しびれ、ちくちく、 ピリピリ)、広範な発⾚・紅斑 限局性の斑状の発⾚ ⼿掌・⾜底に紅斑、腫脹、過⾓化、⾊素沈着などを⽣じる.知覚異常や圧痛を 訴える.⽖甲の変化を伴うこともある.
化学療法 分⼦標的薬 有害事象/⼿⾜症候群 指導のポイント 保湿 • 保湿剤を使⽤ • こまめに・適量を塗布 清潔 • 常に清潔を⼼がける • やさしく洗う 低刺激 <⼆次感染予防> 物理的刺激‥⼿⾜を締め付けたり、圧⼒がかかる動作に注意 • ⼿⾜に⼒がかかる作業は短時間・できるだけ避ける • ⽔仕事は、綿⼿袋+ビニール⼿袋 • ⾜にあった柔らかい靴を履く(×ハイヒール) 熱刺激 • 熱い⾵呂やシャワーを避ける • 家事の時の温湯にも注意 • 紫外線を避ける ⽪膚症状に伴う苦痛のアセスメント、 ⽇常的なセルフケアの指導(個々の⽣活にあった内容) 軽度の症状でも教えてもらう 毎⽇(⼊浴後など)⼿⾜を観察してもらう
分⼦標的薬に特徴的な有害事象 EGF EGFR 上⽪成⻑因⼦ 受容体 ⾎管を 作れ︕ “細胞の増殖・成⻑” 信号伝達 EGFR の遺伝⼦変異 →常に「ON」 → 異常な細胞増殖 EGFR が存在する場所 ⾎管新⽣ VEGF ⾎管内⽪ 増殖因⼦ VEGF が働いている場所 がん細胞 →抗腫瘍効果 がん細胞 →抗腫瘍効果 ⽪膚組織 →⽪膚障害 正常組織 ⾎管新⽣が障害 →けがが治りにくい ※抗腫瘍薬として効いている ほど、⽪膚障害も出やすい →対策が重要
分⼦標的薬 EGFR 上⽪成⻑因⼦ 受容体 有害事象/⽪膚障害 EGF EGFR 阻害薬 “細胞の増殖・成⻑” 信号伝達 EGFR の遺伝⼦変異 →常に「ON」 → 異常な細胞増殖 ざ瘡様⽪疹 乾燥 ⾓化・⻲裂 ⽖囲炎 対策︓ 共通する原則 スキンケア (丁寧な洗浄と保湿) 好発時期に応じた対策 EGFR が存在する場所 EGFR 阻害薬の作⽤ がん細胞 →抗腫瘍効果 ⽪膚組織 →⽪膚障害 ※抗腫瘍薬として効いている ほど、⽪膚障害も出やすい →対策が重要 引⽤元) 「EGFR 阻害薬に起因する⽪膚障害の治療⼿引き」
分⼦標的薬 ざ瘡様⽪疹 発症時期 部位 初期症状 有害事象/⽪膚障害 治療開始後 1〜4 週間⽬ 顔⾯を中⼼に、頭部・体幹・四肢 ⽑⽳に⼀致したニキビ様の⽪疹 スキンケア 予防・治療 抗炎症作⽤がある抗菌薬 ・テトラサイクリン系 ・マクロライド系 予防 治療 外⽤ステロイド K Potthof, Annal of Oncology, 22, 524- (2011) https://doi.org/10.1093/annonc/mdq387
分⼦標的薬 有害事象/⽪膚障害 ⽖囲炎(そういえん) 発症時期 部位 初期症状 治療開始後 6〜8 週間⽬ ⽖ ⽖の周りの発⾚・腫れ・⾁芽 治療 保湿剤 外⽤ステロイド ミノサイクリン 対策 テーピング 巻き⽖防⽌ ⾁芽を離すように 引っ張りながら K Potthof, Annal of Oncology, 22, 524- (2011) https://doi.org/10.1093/annonc/mdq387
化学療法 しびれ 有害事象/末梢神経障害 ⼿⾜がピリピリとしびれる、ジンジン痛む、感覚が なくなる、⼒が⼊らない、物がつかみにくい、歩⾏ 時につまづくことが多い ビンカアルカロイド系・⽩⾦製剤など末梢神経障害を引き起こす抗悪性腫 瘍薬はいくつかあるが、オキサリプラチンは特徴的 オキサリプラチン 低温で誘発・悪化 →寒冷刺激を避けることが⼤切 発現時期︓(急性症状)投与直後〜1, 2⽇以内 →85〜95%︓ ⼿・⾜・⼝周囲部の異常感覚 1〜2%: 呼吸困難や嚥下障害を伴う咽頭喉頭感覚異常 投与中 指導内容 冷たいものに触れない 冷たいものを飲まない 冬季や冷房の効いた部屋では、肌の露出を避ける ※エルリプラットを含むレジメン︓ ⼿⾜症候群のため、⼿指の発⾚・疼痛→冷やしてはいけない
化学療法 有害事象/⼼毒性 アントラサイクリン系 ⼼毒性のアセスメント項⽬ 累積使⽤量 検査 ⾃覚症状 ⼼筋細胞のミトコンドリア機能を障害し、 ⼼不全を引き起こす (※)⼼筋ではミトコンドリアが発達しており、 収縮に必要なATPエネルギーを供給している ⽣涯累積使⽤量の管理、他院からの転院に注意 頻回に⼼機能検査 労作時の息切れや動悸、易疲労感 主な適応 総投与量 ⼒価 ドキソルビシン 乳がん、⼦宮体がん、膀胱がん、悪性 ⾻・軟部腫瘍(⾁腫)、悪性リンパ腫 500 mg/m2 1 エピルビシン 乳がん 900 mg/m2 0.5 ダウノルビシン ⽩⾎病 25 mg/kg 0.75 イダルビシン ⽩⾎病 120 mg/m2 - 複数の使⽤歴があれば、⼒価で換算して合算
分⼦標的薬 有害事象/⼼毒性 ⼼不全 ⼼機能低下 発症時期 投与数週間〜数ヶ⽉以内に発症 HER 2 抗HER2抗体 “細胞の増殖・成⻑” 信号伝達 HER2 が過剰に発現 →細胞増殖の指令↑ HER2 が存在する場所 抗 HER2 抗体の作⽤ がん細胞 →抗腫瘍効果 胃がん、乳がん、肺がん、⼤腸がん ⼼臓 →⼼毒性 ⼼機能低下→⼼不全 特徴 事前確認 検査 可逆性 アントラサイクリン系 タキサン系 使⽤歴 頻回に⼼機能検査 ⾃覚症状 労作時の息切れや動悸、 易疲労感
化学療法 有害事象/ ⾎管外漏出 細胞障害の強さによる薬剤の分類 壊死起因性抗がん薬 (ビシカント) 炎症性抗がん薬 (イリタント) アントラサイクリン系、アントラキノン系、 ビンカアルカロイド系、タキサン系 アルキル化薬、⽩⾦製剤、DNA トポイソメラー ゼ阻害薬、分⼦標的薬 ⾮壊死性抗がん薬 ⾎管外漏出のアセスメント項⽬ 事前 投与中 治療開始前にチームでリスク因⼦をアセスメント 「些細な感覚の変化でも、すぐに教えてください」 15分おき・点滴交換のたびに、点滴速度・刺⼊部の ⽪膚の変化の有無を確認する 投与部位の発⾚、違和感、疼痛、腫脹、灼熱感、 点滴のスピードが遅くなっていないか 投与、数⽇〜数週間後に遅延性の⽪膚障害の可能性あり→異常があったら連絡を
抗体薬 インフュージョンリアクション インフュージョンリアクション (infusion, 点滴; reaction, 反応) • 原因薬︓抗体薬 • 投与中、または投与後24時間以内 (多くは2時間以内)に多く現れる抗 体薬の有害反応の総称 抗ヒスタミン薬 症状︓ 前投薬 発熱、悪寒、悪⼼、頭痛、 解熱鎮痛薬 レジメンで決められている 速度 投与速度厳守 薬物毎に、遅くするよう投与速度の制限がある 説明 「違和感があったら、すぐ に連絡してください」 疼痛、掻痒、発疹、咳、虚 脱感、⾎管浮腫など 重篤︓ アナフィラキシー様症状、 肺障害、⼼障害 要注意︓ 腫瘍量が多い、脾腫を伴う、 ⼼機能・肺機能障害