平安の文様_有職文様デザイン解剖

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July 07, 26

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うさうさ研修工房 文様と色彩の分析ノート 平安の文様 有職文様に見る王朝の美意識と設計思想 デザインは感性ではなく設計である— 平安貴族が築いた文様と色彩の秩序を、構造として読み解く 2026

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CONTENTS 目次 文様とは何か 01 有職文様の定義と役割 代表文様の図解 05 起源と伝来 02 古代オリエントから王朝日本へ 色彩文化と禁色 06 有職故実と位階 03 文様・色を秩序づけた制度 平安の文様 幾何文様と事物文様 かさねの色目とカラーコード 現代への継承 07 文様の分類体系 04 立涌・菱・亀甲・七宝 ほか きもの・家紋・デザインへ データ構造( YAML) 08 文様体系の構造化まとめ 02

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01 ― DEFINITION 文様とは何か 主な使用場面 束帯・十二単 貴族男女の正装 有職文様(ゆうそくもんよう) 平安時代以降の公家社会で、装束・調度・輿車・建築などに用いられ た伝統的な文様の総称。 調度品 硯箱・棚などの装飾 「有職」とは朝廷の儀式・先例に関する知識のことで、名称自体は近 世以降に定着した呼び方である。 輿車・牛車 起源は日本ではなく大陸文化にあり、隋・唐から奈良時代に移入され た文様が土台になっている。 乗り物の意匠 建築内装 御所・社殿の装飾 文様とは何か 03

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02 ― ORIGIN 起源と伝来 ― 古代オリエントから王朝日本へ 有職文様の直接的ルーツはササン朝ペルシャとされ、 さらに遡ると立涌文様は古代エジプト由来の「パルメット文様」に行き着くという説がある。 文様はアジア大陸を経て唐風文化として奈良時代の日本に伝来し、平安中期の遣唐使停止を機に、国風化しながら独自の様式へと再編され ていった。 古代オリエント ササン朝ペルシャ 隋・唐(中国) 奈良時代 平安時代中期以降 メソポタミア/エジプト文明 パルメット文様の誕生 文様の様式化と シルクロード伝播 唐風文様として 体系化 遣唐使を通じ 正倉院文様として移入 国風化・和様化し 「有職文様」として確立 起源と伝来 04

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03 ― ORDER & RANK 有職故実と位階 ― 文様・色を秩序づけた制度 天皇 禁色(黄櫨染・黄丹) 有職故実 朝廷の儀式・先例を重んじる価値観。「先例では〇〇であった」という判 断基準が、貴族社会の秩序の拠りどころとなった。 上級貴族(摂関家) 深紫・青色など格式高い色目 律令制のもと、公家・文官の装束の色や文様は位階・官職によって区分 けされ、平安中期以降さらに厳密化。やがて家柄ごとに使用文様が固 定化されていった。 藤原氏を中心とした摂関政治の隆盛期に、貴族文化の “最先端モード ” 中級貴族・官人 位階に応じた当色 として有職文様は様式化されていく。 地下官人・庶民 許された色(聴色)のみ 有職故実と位階 05

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04 ― CLASSIFICATION 文様の分類体系 ― 幾何文様と事物文様 有職文様は大きく、円・菱などの幾何学的要素からなる「幾何文様」と、動植物・自然物を意匠化した「事物文様」に分けられる。両者はしばしば 組み合わされ、連続文様や定型文様として様式化された。 幾何文様 事物文様 ― 動物 ● 丸文 ● 菱文 ● 鳳凰 ● 襷文(斜線) ● 鴛鴦(おしどり) ● 亀甲文(六角形) ● 鶴 ● 霰文(市松) ● 蝶 ● 立涌(波線) ● 尾長鳥 ● 七宝(連続円) 文様の分類体系 事物文様 ― 植物・自然 ● 桐・竹・菊 ● 松・梅・桜・藤 ● 牡丹・唐草 ● 雲・波 06

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05 ― PATTERN GALLERY 1/3 幾何文様図鑑 ― 立涌・菱・襷 立涌(たてわく) 菱(ひし) 襷(たすき) 水蒸気が立ち上る様を文様化。曲線の膨らみに雲や花を配 すことも多く、上皇・親王など高位の装束に用いられた。 水生植物ヒシをモチーフとする幾何文様。繁殖力の強さから 子孫繁栄・無病息災を願う吉祥柄とされる。 斜めに交差する線の文様。三本の斜線からなる三重襷な ど、装束の下地文様として広く使われた。 幾何文様図鑑 1/3 07

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05 ― PATTERN GALLERY 2/3 幾何文様図鑑 ― 亀甲・七宝・霰 亀甲(きっこう) 七宝(しっぽう) 霰(あられ) 六角形を隙間なく連ねた文様。内側に花菱を収めた亀甲花 菱も多く、長寿・吉祥の意味を持つ。 同じ大きさの円を四分の一ずつ重ねて連続させる文様。仏 教の七つの宝に由来する縁起の良い柄。 現代でいう市松模様。正方形を交互に配した文様で、『源氏 物語』にも登場する。 幾何文様図鑑 2/3 08

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05 ― PATTERN GALLERY 3/3 事物文様図鑑 ― 唐草・小葵・鳥獣文 小葵(こあおい) 冬葵をモチーフとした小花文。有職文様の地文様として最も広く使われる。 浮線綾(ふせんりょう) 唐花や蝶を円形に構成し、浮き織りで表した格調高い丸文。 唐草(からくさ) 八つ藤の丸 蔓草が伸び絡み合う様を意匠化した文様。生命力・繁栄 十字の花文を、対の藤文様4組で囲んだ丸紋。指貫などに用いられた。 の象徴とされ、有職文様の中でも最も頻出するモチーフ の一つ。 尾長鳥(おながどり) 尾の長い鳥を2羽ずつ斜めの襷状に配した文様。現代の格の高い帯にも見られる。 事物文様図鑑 3/3 09

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PATTERN CLOSE-UP 立涌(たてわく)を読み解く 起源 波状唐草が原型とされ、さらに遡ると古代エジプト・ギリシャの「パルメット文様」に由 来するという説がある。 構造 膨らみと括れを繰り返す 2本の曲線で構成される連続文様。膨らみの中に雲・花・菊な どを入れるバリエーションが多数存在する。 格式 運気上昇を意味するとされ、天皇・上皇・親王など高位の貴族の装束に用いられた。 有名な変奏 歌人・藤原定家が愛用したとされる「定家立涌」は、植物が水に流れるような意匠で知 られる。 立涌 ― パターン解剖 10

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06 ― COLOR CULTURE 色彩文化 ― かさねの色目 襲(かさね)の色目 十二単のように衣を何枚も重ねて着る際の配色。表地と裏地の2色を合わ せる「重ね色目」、複数枚の重ね着による「襲色目」、経糸緯糸の配色によ 今様色 深紫 浅縹 いまよういろ こきむらさき あさはなだ #D0576B #493759 #84B9CB る「織色目」の3種がある。 薄い絹地から裏の色がほのかに透け、微妙な色調が生まれる。貴族たち は四季の花や葉になぞらえて配色に固有の名を与え、季節に応じて着用 する色を競った。 浅緑 梔子色 唐紅 色と色を組み合わせ、名前を付けて配色そのものを楽しむ文化は世界的 あさみどり くちなしいろ からくれない にも珍しく、「世界最古の配色便覧」とも評される。 #9BCF97 #FFD768 #EA0032 かさねの色目 11

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06 ― FORBIDDEN COLORS 禁色(きんじき) ― 位階が定めた色の壁 禁色は皇族・上位の公卿にのみ着用が許された色で、使用には天皇による「禁色勅許」が必要だった。律令に基づく当色(位階ごとの正式な色)は、平 安中期以降さらに厳密に運用された。 禁色 対象 色名 説明 天皇 黄櫨染(こうろぜん) 袍の色。平安初期に定められた天皇専用色。 皇太子 黄丹(おうに) 紅花と梔子で染める、皇太子専用の当色。 上位貴族 深紫・深緋・深蘇芳 禁色七色に数えられる、許可がなければ使えない濃色。 蔵人(年功者) 青色(麹塵) 天皇の袍色に准じる色として特別に着用が許された。 一般貴族・庶民 聴色(ゆるしいろ) 薄く染めた紅など、使用を許された淡色。 12

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07 ― LEGACY 現代への継承 礼装のきもの・帯 家紋デザイン 有職文様は現代でも「みやび」で縁起の良い柄として、婚礼や礼装 菱文様は武田菱など武家の家紋、三菱グループのシンボルの源流 用の着物・帯に用いられる。 にもなっている。 祭礼行事 現代デザインへの応用 京都・葵祭や時代祭では、十二単や束帯に有職文様をまとった行列 幾何学的な連続文様は、和柄・ロゴ・パッケージなど現代グラフィック が今も再現されている。 の基調にもなっている。 現代への継承 13

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08 ― DATA STRUCTURE 文様体系の構造化( YAML) heian_monyou: name: 有職文様 era: " 平安時代( 8c後半〜12c末)〜" origin: [" 古代オリエント ", "ササン朝ペルシャ ", "唐"] categories: geometric: - {name: 立涌, reading: たてわく , motif: 蒸気・波線 } - {name: 菱, reading: ひし, motif: 水生植物 } - {name: 亀甲, reading: きっこう , motif: 六角形} - {name: 七宝, reading: しっぽう , motif: 連続円} - {name: 霰, reading: あられ, motif: 市松} - {name: 襷, reading: たすき, motif: 斜線交差 } figurative: - {name: 唐草, category: 植物, meaning: 繁栄} - {name: 小葵, category: 植物, meaning: 吉祥} - {name: 尾長鳥, category: 動物, meaning: 格式} - {name: 浮線綾, category: 複合, meaning: 高貴} color_system: kasane_no_irome: description: " 表裏・重ね着・織で作る配色文化 " kinjiki_forbidden: - {rank: 天皇, color: 黄櫨染} - {rank: 皇太子, color: 黄丹} - {rank: 上位貴族 , color: 深紫/深緋/深蘇芳} palette_hex: imayoiro: "#D0576B" kokimurasaki: "#493759" asahanada: "#84B9CB" asamidori: "#9BCF97" kuchinashiiro: "#FFD768" karakurenai: "#EA0032" データ構造(YAML) 14

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CLOSING まとめ ● 有職文様は、大陸から伝来した古代文様を平安貴族が国風化し、位階・儀礼と結びつけて体系化したデザインである。 ● 幾何文様(菱・亀甲・七宝・立涌など)と事物文様(唐草・小葵・鳥獣文など)の2系統に大別できる。 ● 「かさねの色目」と「禁色」は、色彩そのものを制度化・記号化した、世界的にも稀な設計思想である。 ● その構造は、現代のきもの・家紋・グラフィックデザインにまで一貫して受け継がれている。 主な参考情報源 – きものレンタリエ「有職文様(ゆうそくもんよう)とは?」 – Highlighting Japan(政府広報オンライン)「日本の文様の源流『有職文様』」 – – – – きもの備忘録/きものおもひ/雅online「有職文様」関連記事 コトバンク(世界大百科事典・日本国語大辞典 各項目)「有職文様」 irocore.com/ateitexe.com/i-iro.com「日本の伝統色・かさねの色目」 綺陽装束研究所 kariginu.jp「色彩と色目」