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July 30, 26
スライド概要
2026-07-30に某所で発表したスライドです。
~~章立ては以下の通りで、第2章と断章は後日公開します。~~
→10/12に完全版として公開しました。
・第1章 リスクベースアプローチの基本
・[新規] 第2章 リスクベースアプローチの勘所
・[新規] 断章 脅威ベースアプローチと脅威モデリング
・第3章 生成AIのリスクに対しての向き合い方 ※一部加筆
AI時代の リスクベースアプローチの はじめかた haya 2026-10-12 Updated / 2026-07-30 Published Copyright © 2026 haya All rights reserved.
本資料の内容は個人的な見解です。所属する組織や団体とは無関係です。 また、本資料は作成者に事前の許諾を得ず、 営利目的で利用・再配布することを禁じます。 Copyright © 2026 haya All rights reserved.
第1章 リスクベースアプローチの 基本 Copyright © 2026 haya All rights reserved.
ふたつのアプローチ
リスクベースアプローチ ふたつのアプローチ ベースラインアプローチ
ベースラインアプローチ 業界標準の基準やガイドラインなどをベースにして、 自組織のギャップを埋める形で対策を講じる手法 よくチェックボックスの形で現れる PCI DSSや「サプライチェーン強化に向けたセキュリ ティ対策評価制度(SCS評価制度)」もこの1つ
リスクベースアプローチ 一言で言えば、 “リスクと向き合い、 受け入れるためのアプローチ”
リスクベースアプローチ
リスクベースアプローチ ただ無条件にリスクを受け入れる(放置する)のかと いうとそうではない コントロール下でリスクを受け入れる 『どこまでのリスクならビジネス上許容できるか』を 評価し、賢くリスクを受け入れる意思決定を行う →きちんと運用できている ISMSはこの形
高 リスク = 発生可能性 x 影響度 発 生 可 能 性 低 低 影響度 高
困ったことが起きてしまった場合の「被害の大きさ」 影響度 = 直接的な金銭的被害のほか、信用失墜、行政指導などの間接的な損害も含む
困ることが起こる「可能性」 発生可能性 = 外部攻撃者や内部犯の存在やモチベーション、脆弱性や抜け道の有無など
高 つまり、 リスク = 発生可能性 x 影響度 は 困ることが起こる可能性と、 起きた場合の影響度を 総合的に評価したもの 発 生 可 能 性 低 低 影響度 高
リスクのコントロール
リスクのコントロール リスクはコントロールができる そのために必要なのは「リスク対応」と いう考え方 リスク対応には大きく「リスク回避」「リスク低減」 「リスク移転(共有・転嫁)」「リスク保有(受 容)」という4つの考え方がある
リスクが高い行動そのものを辞める リスク回避 = 辞めることでリスクそのものが消滅する
対策を実施し、発生可能性または影響度を下げる リスク低減 = 発生可能性または影響度、その両方を低下させる対策を行うことでリスクを下げる 高 発 生 可 能 性 低 低 影響度 高
リスクを他者に移転・転嫁、または共有する リスク移転 = サイバー保険に加入するなどして金銭的被害を最小化してリスクを低下させる 高 発 生 可 能 性 低 低 影響度 高
リスクを受け入れる(リスクを許容する) リスク保有 = リスクを許容できる範囲まで低下させて、受け入れた上でビジネスを継続する 受け入れたリスクは「残存リスク」として管理することになる 高 発 生 可 能 性 低 リスクを 受け入れる 低 影響度 高
リスクを受け入れる
リスクゼロのほうが安心するけど リスクを受け入れる 組織や事業がそのリスクを許容できれば、 それ以上にリスクを低減しなくても良い 人も時間もお金も有限なので、効率的かつ効果的に これらのリソースを運用する
第1章 まとめ
第1章 まとめ リスクベースアプローチは、 “リスクと向き合い、 受け入れるためのアプローチ” 『どこまでのリスクならビジネス上許容で きるか』を評価し、適切にリスク対応を行 い、残存リスクを受容する意思決定を行う リスクをゼロにできることが理想だけど、ゼロにすることが目的ではない
第2章 リスクベースアプローチの 勘所 Copyright © 2026 haya All rights reserved.
どこから始める?
どこから始める? 網羅的に満遍なくやりたくなる気持ちはわかるけど それはいったん抑えて まずは組織の中核になっている事業から +それを支えている社内IT基盤 これがあるから組織の継続性が成り立っている
何から始める?
「何を守るのか(What)」 何から始める? 「なぜ守るのか(Why)」 まずは、この2つの観点を整理する
「何を守るのか(What)」 中核事業の源泉になっている情報・仕組み +顧客の個人情報など法的義務を負う情報や、 顧客に大きな金銭的・精神的被害を及ぼす情報・仕組み
「なぜ守るのか(Why)」 中核事業の事業継続が脅かされるから 前述の情報・仕組みが破壊されたり、漏洩したりすると 自組織の運営にも大きな損害・影響が出る
どのぐらいの粒度でやる?
どのぐらいの粒度でやる? 細かく精査してやりたくなる気持ちはわかるけど それはいったん抑えて 同じ目的・用途の情報・仕組みの塊で 細かくやりすぎるとそれだけで疲弊しちゃうし、 荒すぎてもその後のリスク評価が大味になっちゃう 足踏みせずに、先に進めることが重要
どのように評価する?
どのように評価する? 「情報が漏洩する可能性」と その「影響度」 「システムやデータが利用できな くなる・破損する可能性」と その「影響度」 まずは、この2つの軸で考えてみる いったんここまで評価できれば「リスクが高い箇所」がなんとなく見えてくる
「どのように守るのか(How)」
“リスクをゼロにする対策”一辺倒で考え 「どのように守るのか(How)」 ない 対策に必要なコストと残存するリスクのバランスで考 える 限られたリソースを効率的&効果的に使う &その対策は「発生可能性」「影響度」のどちらか(または両方)に 影響を与える対策なのかを意識する
評価はいつ見直す?
評価はいつ見直す? そもそもの話として、リスク評価は一度したら終わり ではなくて継続的に見直していく。そのタイミングは 自組織を取り巻く状況が変化したとき と、年1回など見直すタイミングを決めて定期的に。 実施済みの対策の「今も適切か?」の点検も併せて
第2章 まとめ
第2章 まとめ 網羅的でなくても良いのでまずは始めるこ とが重要 まずは中核事業の源泉になっている情報・仕組みから手をつける 運用のループの中で改善・網羅していけば 良い
断章 脅威ベースアプローチと 脅威モデリング Copyright © 2026 haya All rights reserved.
「何から守るのか(Threat)」 リスク評価をしていて迷うこと
「何から守るのか(Threat)」 = 脅威 リスク評価をしていて迷うこと
「脅威」とは
「脅威」とは 「発生すると困ること(組織や資産に被害 を与えるかもしれない事象のこと)」また は「発生源そのもの」 外部要因だけでなく、内部犯や悪意のないユーザーも脅威になりうる 「リスク」とは違い、脅威を考える上では「現実的に 発生するか?(発生可能性)」の考慮は不要
脅威ベースアプローチとは
脅威ベースアプローチとは “攻撃者の意図・能力・傾向といった外部 の攻撃情報や攻撃シナリオを基に、自組 織の重要資産や脆弱性と照らし合わせて セキュリティ対策の優先順位を決める手 法” 本気でやるなら「MITRE ATT&CK」や脅威インテリ ジェンスを活用することになる
とは言え、それをやるため には専門的な知識や予算が 必要になるので、、 まずは世の中で起きているセキュリティ インシデントやIPAの10大脅威、 OWASP Top10、ベンダが出しているレ ポートから始めてもよい これらを脅威主体・モチベ・攻撃手法として仮置きし て、自組織で発生しうる現実性のある脅威シナリオを 組み立て、それに対して対策を講じていく
脅威モデリングという手法 近年、よく名前を聞くようになった手法
近年の「脅威モデリング」は大きく2つに分類される 脅威モデリングという手法 1つが 「組織内で脅威に対する共通認識と合意 形成を促進させるための使い方」 もう1つが 「実装レベルで脅威を機械的かつ網羅的 に洗い出そうとする使い方」 ※今回は説明するのは前者の使い方
脅威モデリングに対する幻想 と注意点 脅威モデリングは「万能薬」「銀の弾 丸」ではない すべての脅威を特定できるわけではないし、脅威に対する知識は別途必要 「目的」と「ゴール」を決めずに、脅威 モデリングを行うのはNG まず「何を達成したいのか」を定義すること 脅威モデリングすることを目的にしない 「目的」「ゴール」を達成するための手段の1つであって、達成するための手段 は別の方法でも良い
脅威モデリングの進め方
脅威モデリングの進め方 ホワイトボードにデータフローダイアグ ラムなどの図を書いて、脅威と発生可能 性、影響度についてディスカッションを 行う このディスカッションには、セキュリティ担当者だけ ではなく、設計者や開発者などのエンジニア、プロダ クトマネージャーなどビジネス側の人間もいることが 望ましい 様々な立場の人間がディスカッションに参加すること で、それぞれの立場の関心事やコンテキストを全体で 共有できる
以下の4つの問いに答える形で進行していく 脅威モデリングの進め方(続き) What are we working on? / 私たち は何に取り組んでいるのか? What can go wrong? / 何が問題にな るのか? What are we going to do about it? / 私たちはどのように対処するのか? Did we do a good enough job? / 私 たちは良い仕事ができたか?(良かっ た点、改善したい点)
以下の4つの問いに答える形で進行していく 脅威モデリングの進め方(続き) システム構成やデータを整理して、 What are we working on? / 私たち 図を書く は何に取り組んでいるのか? What can go wrong? / 何が問題にな 図上に脅威をマッピングしていく るのか? リスク評価を行い、優先度が高いものか What are we going to do about it? / ら対策を検討する 私たちはどのように対処するのか? Did we do a good enough job? / 私 最後に振り返りを行う(継続的に実施する たちは良い仕事ができたか?(良かっ ためのループを作る) た点、改善したい点)
以下の4つの問いに答える形で進行していく 脅威モデリングの進め方(続き) システム構成やデータを整理して、 What are we working on? / 私たち 図を書く は何に取り組んでいるのか? What can go wrong? / 何が問題にな 図上に脅威をマッピングしていく このプロセスで得た各立場の関心事や るのか? コンテキストを踏まえて、リスク評価 や対応の解像度をあげていく リスク評価を行い、優先度が高いものか What are we going to do about it? / ら対策を検討する 私たちはどのように対処するのか? Did we do a good enough job? / 私 最後に振り返りを行う(継続的に実施する たちは良い仕事ができたか?(良かっ ためのループを作る) た点、改善したい点)
脅威モデリングの手法で よく紹介されるフレームワーク
「2. What can go wrong? / 何が問題に なるのか?」で役立つフレームワーク STRIDE 脅威を6つに分類している Spoofing(なりすまし)、Tampering(改ざん)、Repudiation(否認)、Information Disclosure(情報 漏洩)、Denial of service(サービス拒否)、Elevation of privilege(権限昇格) 他にもSTRIDEを拡張したSTRIDE-LMや、プライバ シーに特化したLINDDUNなどがある。これらも2.で 役立つフレームワーク
「3. What are we going to do about it? / 私たちはどのように対処するのか?」 で役立つフレームワーク DREAD リスクを評価するための5つの観点 Damage potential(被害の大きさ)、Reproductivity(再現性)、Exploitability(悪用のしやすさ)、 Affected users(影響を受けるユーザー数)、Discoverability(発見のしやすさ) 第1章の「リスク=発生可能性 x 影響度」の式に当てはめると以 下の通り 発生可能性 Reproductivity(再現性)、Exploitability(悪用のしやすさ)、 Discoverability(発見のしやすさ) 影響度 Damage potential(被害の大きさ)、Affected users(影響を 受けるユーザー数)
STRIDEやDREADとは異なり、脅威モデ リング全体のプロセスに関するフレーム ワーク PASTAは「Process for Attack Simulation and Threat Analysis / 攻撃のシミュ PASTA レーションと脅威分析のプロセス」の略 プロセスを7つのステップに分けている Defining Objectives(目的の定義) Defining the Technical Scope(技術的範囲の定義) Application Decomposition and Analysis(アプリケーションの分解と分析) Threat Analysis(脅威分析) Weakness / Vulnerability Analysis(弱点と脆弱性分析) Attack Modeling & Simulation(攻撃のモデリングとシミュレーション) Risk and Impact Analysis(リスクと影響の分析)
OCTAVE こちらも脅威モデリング全体のプロセス に関するフレームワーク OCTAVEは「Operationally Critical Threat, Asset, and Vulnerability Evaluation」の略 技術的脅威そのものよりも、運用やビジネスへの最終 的な影響を重視するアプローチ
断章 まとめ
断章 まとめ 脅威に対する解像度が上がれば、リスクに 対する解像度も上がる 脅威に対する感度は一朝一夕では身につか ない。普段からトレンドのキャッチアップ を行い、「これが自組織で起こる可能性 は?影響は?」を常に問い続ける 脅威モデリングはこれらの助けになるが、 過剰に期待しないこと(銀の弾丸ではな い)、本質を見失わないこと
第3章 生成AIのリスクに対しての 向き合い方 Copyright © 2026 haya All rights reserved.
生成AIのリスク
社内で利用するシーン 生成AIのリスク 攻撃者が利用するシーン リスクは大きく2つに分類できる
社内で利用するシーン
社内で利用するシーン 生成AI登場以前からソフトウェア やWebサービスに存在するリスク 生成AI特有のリスク
生成AI登場以前から ソフトウェアや Webサービスに 存在するリスク データを保管および処理する場所・国に関するリスク データの連携先・共有範囲に関するリスク ファイルやデータベースを消してしまうリスク サービス提供者が調査などで 閲覧する可能性があるリスク etc
生成AI特有のリスク 学習に利用されるリスク 誤った情報が生成されるリスク 著作権や知的財産権を侵害するリスク ソースコードや文章が容易かつ大量に 生成されることによるレビュワーの疲弊リスク 与えた情報や指示によって アカウントが凍結されるリスク etc
+安直に禁止した場合や 社内手続きを厳格化した場合の リスク シャドーAIのリスク ビジネス上の競争力を 失うリスク etc
社内で利用するシーン で考えること
社内で利用するシーン で考えること 従来から存在するリスクと生成AI特有のリスク vs 禁止・厳格化した場合のリスク 「どこまでリスクを許容するか」を見直す 情シスとしては見直し案を検討して、経営層や管掌役 員に提案・合意を得る
攻撃者が利用するシーン
生成AIによって変わること 攻撃者が利用するシーン 生成AIによって変わらないこと
脆弱性を発見する速度と量 脆弱性情報から攻撃コードを生成する速度 生成AIによって変わること 初期侵入から目標達成までの速度 (次スライドの「変わらないこと」を除く) 言語の壁 etc
生成AIによって変わらないこと CPUの処理速度 ネットワークの通信速度 ストレージの読み書き速度 リクエストの送信から レスポンスが返ってくるまでの速度 何も穴がないところから侵入する術 etc
攻撃者が利用するシーン で考えること
攻撃者が利用するシーン で考えること 従来から変わらずにやること 考えを変えなければならないこと
外部に露出している箇所の管理と最小化 脆弱性管理および対応の徹底 従来から変わらずに やること 最小権限の原則に則ったアカウントや 権限管理の徹底 ネットワークセグメントの分離 重要なデータのバックアップとリストア訓練 etc
考えを変えなければ ならないこと 品質とトレードオフでパッチを即適用する運用にする、 対策の速度を上げるためにコスト増を受容する、などの セキュリティ対策の品質・コスト・納期 (QCD)のバランス感 2026年10月現在、一連の未曾有の不正アクセスと個人情報漏洩で大きなパラダイムシ フトが起きている(10/12追記) こちらも情シスとしては見直し案を検討して、経営層 や管掌役員に提案・合意を得る
第3章 まとめ
第3章 まとめ AI時代に「ゼロリスク(完璧な安全)」は 現実的ではない 従来通りの対策・施策は進めつつ、 セキュリティ対策の品質・コスト・納期 (QCD)のバランス感については考えを変え なければならない また、組織はこれまでの常識を見直して、 AI時代で生き残るための”常識”を模索する 必要がある(10/12追記)
Thank you.