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March 20, 21
スライド概要
すうがく徒のつどい@オンラインでルート系とディンキン図形の講演をしました #tsudoionline - usami-k 数学日記
https://usami-k.hatenadiary.jp/entry/2021/03/21/213926
すうがく徒のつどい@オンライン
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すうがく徒のつどい @ オンライン ルート系とディンキン図形 宇佐見 公輔 3/20(土) 17:00 ~ 18:30
内容 §0 Introduction §1 準備: 鏡映 §2 ルート系の定義 §3 ルート系の定義の起源 §4 ルート系の性質 §5 ルート系の底 §6 ディンキン図形
ルート系とディンキン図形 §0 Introduction ルート系: ベクトルの集合である条件をみたすもの 例1 6つのベクトルの集合 例2 8つのベクトルの集合
ルート系の起源: リー代数 ・C上の有限次元単純リー代数の分類がしたい あるベクトルの集合が対応している(リー代数のルート系) ・リー代数のルート系の性質をとり出して, 「抽象ルート系」の定義とする ・抽象ルート系の分類をする ・抽象ルート系に対して, それをルート系ともつリー代数をみつける ⇒ リー代数の分類の完成
ルート系の分類: ディンキン図形 ・ルート系からある手続きによってディンキン図形という 図形がつくれる ・これを使うとルート系の分類ができる ・逆にディンキン図形からルート系を復元できる
ルート系があらわれる分野 ※参考情報として... ・正多面体群 ・有限鏡映群 ・特異点論 ・楕円曲面 ・パンルヴェ方程式
§1 準備: 鏡映 Def (ユークリッド空間) R上の有限次元ベクトル空間で, 内積が定義されているものをユークリッド空間という. 正定値対称形式 記法 E: ユークリッド空間 α, β ∈ E に対して内積を(α|β)と書くことにする.
Def (超平面) E: ユークリッド空間 α ∈ E に対して Pα := { β ∈ E | (α|β) = 0 } と定義する. Pαをαと直交する超平面という. E: 2次元の場合 E: 3次元の場合
超平面に関する鏡映 (β + tα | α) = 0 (β|α) + t(α|α) = 0 ∴ t = - (β|α) / (α|α) β + 2tα = β - 2(β|α)/(α|α) α C(β, α)と書く. Def (鏡映) 写像 σα: E → E β ↦ β - C(β, α)α をPαに関する鏡映 という.
§2 ルート系の定義 Def (ルート系) E: ユークリッド空間 Δ ⊂ E がルート系であるとは, 以下をみたすこと. (1) Δは0を含まない有限集合で, Eを張る. (2) t ∈ R, α ∈ Δ, tα ∈ Δ ⇒ t = ±1 (3) α ∈ Δ ⇒ σα(Δ) = Δ (4) α, β ∈ Δ ⇒ C(β, α) ∈ Z この条件をひとつずつ見てみる.
(1) Δは0を含まない有限集合で, Eを張る. ゼロベクトル Eの任意の元が Δの元の線型結合でかける. E: 2次元で考えると これはダメ これもダメ これはOK これもOK
(2) t ∈ R, α ∈ Δ, tα ∈ Δ ⇒ t = ±1 つまり, α ∈ Δのとき αのスカラー倍でΔに含めてよいのは αと-αだけ. これはダメ これはOK これもダメ これもOK
(3) α ∈ Δ ⇒ σα(Δ) = Δ αと直交する超平面Pαに関する鏡映 E: 2次元で考える これが要求 されている Δ = σα(Δ) Δ ≠ σα'(Δ) これも条件をみたさない
これはどのベクトルαをとっても σα(Δ) = Δが成り立つ. これでもOK σα(Δ) = Δが成り立つ. ※補足: (2)で α ∈ Δ, tα ∈ Δ ⇒ t = ±1 だったが (3)から α ∈ Δ ⇒ -α ∈ Δ である.
(4) α, β ∈ Δ ⇒ C(β, α) ∈ Z = 2(β|α) / (α|α) σα: β ↦ β - C(β, α)α これが整数 という要求 例: αとβの角度が π/4 の場合 C(β, α) = 1 C(β, α) = 2
この8つのベクトルの集合は どの2つをα, βとして選んでも C(α, β) ∈ Z が成り立つ. (-2, -1, 0, 1, 2 のどれかになる) ※なお, これは (1) (2) (3) (4) のすべての条件をみたす. つまり, ルート系の例のひとつになっている.
ここまでルート系の定義について見てきた. 要求されている条件がけっこうきびしい. 実のところ, ルート系の種類はそれほど多くない. 既約なルート系の数は以下のとおり. 複数のルート系に分離できない Eの次元 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10~ ルート系の種類 1 3 3 5 4 5 5 5 4 4
§3 ルート系の定義の起源 ※ Introductionの話をもう少しだけ詳しく ルート系はリー代数の分類のときにうまれた. ベクトル空間(加法とスカラー倍の2つの演算) + 第3の演算 ブラケット積
V: C上有限次元ベクトル空間 f: V上の線型変換 ・fの固有値: λ ∈ C, v ∈ V, f(v) = λv のとき λはfの固有値 ・fの固有空間: λが固有値のとき Vλ := { v ∈ V | f(v) = λv } 簡単のためfは対角化可能であるとすると, V = ⊕λ∈Λ Vλ という直和分解ができる(固有空間分解). ※この分解のしかたはfに依存していることに注意.
L: C上有限次元単純リー代数 固有空間分解と似たようなルート空間分解がある L = H ⊕ ⊕α∈Δ Lα α: H → C H: カルタン 部分代数 Lα := { x ∈ L | ∀h ∈ H, [h, x] = α(h) x } ルート空間 この分解のしかたは特定の線型変換に依存せず, 本質的に一意な分解 Lの構造はルートの集合Δと対応している.
Lのルートの集合Δ ⊂ H* が以下の性質をもつ. H → C 線型写像がなすベクトル空間 (1) ΔはH*を張る. (2) t ∈ R, α ∈ Δ, tα ∈ Δ ⇒ t = ±1 (3) α ∈ Δ ⇒ σα(Δ) = Δ (4) α, β ∈ Δ ⇒ C(β, α) ∈ Z ここから抽象ルート系の定義をつくり, 可能なルート系が どのくらいあるのか調べる → リー代数がどのくらいあるか分かる
§4 ルート系の性質 Lem Δ: ルート系 α, β ∈ Δ, αとβは線型独立とする. このとき C(α, β)C(β, α) ∈ {0, 1, 2, 3} = 2(β|α) / (α|α) Proof αとβがなす角をθとする. (α|β) = |α||β| cos θ (これが定義). C(β, α) = 2|β||α| cos θ / |α|^2 = 2|β|/|α| cos θ C(α, β)C(β, α) = 4 cos^2 θ となる. cos^2 θ = 1 のときαとβは線型独立でない. Δ: ルート系より C(α, β), C(β, α) ∈ Z よって上の結果をえる.
Lem より α, β ∈ Δ の関係は以下のようになる. C(α, β)C(β, α) cos^2 θ θ C(β, α) C(α, β) 0 0 π/2 0 0 1 1/4 π/3 1 1 2π/3 -1 -1 2 1/2 π/4 1 2 3π/4 -1 -2 3 3/4 π/6 1 3 5π/6 -1 -3
Lem Δ: ルート系 α, β ∈ Δ, αとβは線型独立 (α|β) > 0 のとき α-β ∈ Δ (α|β) < 0 のとき α+β ∈ Δ Proof (α|β) > 0 の場合を示す. 先の表から C(α, β) = 1 または C(β, α) = 1 である. C(α, β) = 1 とすると σα(α) = α-β ∈ Δ がわかる. C(β, α) = 1 とすると σα(β) = β-α ∈ Δ このとき α-β = -(β-α) ∈ Δ がわかる.
§5 ルート系の底 Thm Δ: ルート系 π ⊂ Δ で次をみたすものが存在する. (1) πはEの基底 (2) β ∈ Δ を β = Σα∈π kα α と書くとき, 各kαは整数で, すべて0以上 または すべて0以下 Def 上のπをΔの底という.
例 Δを以下とする. π = {α, β} はΔの底 これら4つは係数がすべて正 (正のルート) これら4つは係数がすべて負 (負のルート)
ここでは詳しく述べないが次の事実がある. Δ: ルート系 π = {αi}: Δの底 Cij := C(αj, αi) Δ': ルート系 π' = {α'i}: Δ'の底 C'ij := C(α'j, α'i) とするとき, 以下は同値 (1) ΔとΔ'は同型 (2) 基底の番号付けをうまく入れかえると 任意のi, jについて Cij = C'ij したがって, ルート系を分類するには (Cij)の可能性を 調べればよい.
Def (カルタン行列) Δ: ルート系 π = {α1, ..., αn}: Δの底 Cij := C(αj, αi) 行列 C = (Cij)1≤i,j≤n をΔのカルタン行列という. 例 Δを以下とする π = {α1, α2} とする. C = (C11 C12 / C21 C22) = (2 -2 / -1 2)
§6 ディンキン図形 ルート系を分類するにはカルタン行列を分類すればよい. カルタン行列をグラフとして表現するのがディンキン図形. Def (ディンキン図形) Δ: ルート系 C = (Cij)1≤i,j≤n: カルタン行列 以下のルールで作られるグラフをΔのディンキン図形という. ・頂点はn個 ・頂点iとjを Cij Cji 本の辺で結ぶ ・|Cij| < |Cji| のとき iからjに向きをつける 0, 1, 2, 3
例 C = (2 -2 / -1 2) のとき C12 C21 = 2 |C21| < |C12| 2×2のカルタン行列は次の4種類 (2 0 / 0 2) (2 -1 / -1 2) (2 -2 / -1 2) (2 -3 / -1 2)
逆にディンキン図形からカルタン行列が復元できる. 例 Cは4×4行列とわかる. Cの対角成分はすべて2 それ以外は 0, -1, -2, -3 のいずれか (2 -1 0 0 -1 2 -1 -1 0 -1 2 0 0 -1 0 2)
ルート系やカルタン行列がみたすべき性質を ディンキン図形で表すとシンプルになる. 例えば ・ループは存在しない ・分岐はあっても1つ ・2重辺はあっても1つ ・3重辺はあっても1つ →さらに実は分岐先の長さに 条件がつく →さらに実は しかありえない →さらに実は しかありえない
可能なディンキン図形 An (n≥1) Bn (n≥2) Cn (n≥3) Dn (n≥4) En (n=6,7,8) F4 G2 例外型
ルート系の種類 n 1 2 3 4 5 6 7 8 9 A1 A2 A3 A4 A5 A6 A7 A8 A9 B2 B3 B4 B5 B6 B7 B8 B9 C3 C4 C5 C6 C7 C8 C9 D4 D5 D6 D7 D8 D9 G2 F4 E6 E7 E8