リー代数の計算の楽しみ

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October 19, 19

スライド概要

リー代数の計算の楽しみ @第16回日曜数学会 - ニコニコ動画
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日曜数学会 in マスパーティ
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マスパーティに参加してリー代数の計算の話をしました #日曜数学会 #マスパーティ - usami-k 数学日記
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各ページのテキスト
1.

リー代数の計算の楽しみ 宇佐見 公輔 2019 年 10 月 19 日 宇佐見 公輔 リー代数の計算の楽しみ

2.

自己紹介 職業:プログラマ / 趣味:数学 関西日曜数学友の会での発表履歴: Generalized Onsager algebras(第 5 回 / 2019 年 8 月) ルート系とディンキン図形(第 4 回 / 2019 年 4 月) ラムダ計算の話(第 3 回 / 2018 年 11 月) 圏論と Haskell(第 2 回 / 2018 年 8 月) 執筆参加: 数学デイズ大阪編:低次元のリー代数をみる(Kindle 版発売中) 宇佐見 公輔 リー代数の計算の楽しみ

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リー代数 ベクトル空間とリー代数 ベクトル空間 =「加法」と「スカラー倍」 リー代数 = ベクトル空間 + 第 3 の演算「ブラケット積」 ブラケット積が満たすべき条件 1 [ax + by, z] = a[x, z] + b[y, z], [z, ax + by] = a[z, x] + b[z, y](双線型性) 2 [x, x] = 0 ( =⇒ [x, y] = −[y, x])(交代性) 3 [x, [y, z]] + [y, [z, x]] + [z, [x, y]] = 0(Jacobi identity) 宇佐見 公輔 リー代数の計算の楽しみ

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抽象的に与えられたリー代数 いくつかの「生成元」を用意して、加法、スカラー倍、ブラケッ ト積をほどこして得られるものの集合を考える。 A1 :生成元と関係式で与えられたリー代数 生成元:e, f , h 関係式:[e, f ] = h, [h, e] = 2e, [h, f ] = −2f これはどのようなリー代数か? 宇佐見 公輔 リー代数の計算の楽しみ

5.

「どのようなリー代数か」とは 何が分かったらいいのか? リー代数はベクトル空間なのだから、基底が知りたい。 そして、その基底同士のブラケット積が知りたい。 特に、行列のリー代数であらわすことができれば分かりやすい。 宇佐見 公輔 リー代数の計算の楽しみ

6.

行列のリー代数 gl(n, C) C 成分の n 次正方行列がなすベクトル空間 + 次のブラケット積 [X , Y ] := XY − YX このブラケット積の定義は、リー代数の条件を満たしていること が確認できる。 宇佐見 公輔 リー代数の計算の楽しみ

7.

抽象的なリー代数と行列のリー代数との対応 sl(2, C) sl(2, C) := {X ∈ gl(2, C) | tr(X ) = 0} これは 3 次元のベクトル空間で、以下の E, F, H を基底に持つ。  E :=  0 1 0 0  , [E, F] = H ,  F :=  0 0 1 0  , [H , E] = 2E   1 0  H :=  0 −1 [H , F ] = −2F sl(2, C) は、生成元と関係式のリー代数 A1 と同型である。 宇佐見 公輔 リー代数の計算の楽しみ

8.

実際に調べたいリー代数 Dn (1) 型 Onsager 代数 生成元:e0 , e1 , . . . , en 関係式: [[ei , ej ], ej ] = ei (i と j が Dn 型 Dynkin 図形で隣り合う) (1) [ei , ej ] = 0 (otherwise) n−1 0 2 3 n−2 n 1 宇佐見 公輔 リー代数の計算の楽しみ

9.

おおまかな予想 An 型 Onsager 代数が、loop 代数 C[t, t −1 ] ⊗ sl(n, C) の部分代 (1) 数として具体的に実現できることは、先人の結果で分かっていた。 Dn 型 Onsager 代数は、loop 代数 C[t, t −1 ] ⊗ o(2n, C) の部分代 (1) 数として書けるだろうと予想できた。 (実際、これは正しかった。 参考:関西日曜数学友の会第 5 回 Generalized Onsager algebras) 宇佐見 公輔 リー代数の計算の楽しみ

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どうやって調べるのか? これを調べる時点で理論的な背景は分からなかったので力技。 同型になる部分代数を探して、基底を見つけたい。そのために、 行列同士のブラケット積をたくさん計算する必要がある。 行列を直接計算しても良いが、以下の関係を利用してみる。 gl(n, C) の基底のブラケット積 Eij : (i, j) 成分だけ 1 で他は 0 の行列 [Eij , Ekl ] = δjk Eil − δil Ekj 宇佐見 公輔 リー代数の計算の楽しみ

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パターンマッチ ある式の中に [Eij , Ekl ] という形を見つけたら、機械的に δjk Eil − δil Ekj に置き換えることができる。 このルールだけあれば、Eij が行列をあらわしたものであること は忘れてしまってもいい。 この置き換えは、プログラミングで言う「パターンマッチ」で処 理できるのではないか? その考えに基づいてプログラムコードを書いてみる。 宇佐見 公輔 リー代数の計算の楽しみ

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Mathematica を使う Mathematica によるパターンマッチプログラム LieBracket [e[i_ ,j_],e[k_ ,l_ ]] := KroneckerDelta [j,k] e[i,l] - KroneckerDelta [i,l] e[k,j]; LieBracket [e[1,2] ,e[2 ,3]] (* = e[1 ,3] *) LieBracket [e[4,5] ,e[5 ,4]] (* = e[4 ,4] - e[5 ,5] *) 宇佐見 公輔 リー代数の計算の楽しみ

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D 型の基底 o(2n, C) o(2n, C) := {X ∈ gl(2n, C) | X | S + SX = 0} (S : (i, j) 成分が i + j = 2n + 1 のときだけ 1 で他は 0 の行列) o(2n, C) の基底のブラケット積 Gij := Eij − E2n+1−j,2n+1−i [Gij , Gkl ] =δjk Gil − δil Gkj + δ2n+1−j,l Gk,2n+1−i − δ2n+1−i,k G2n+1−j,l 宇佐見 公輔 リー代数の計算の楽しみ

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D 型の計算 D 型を計算するパターンマッチプログラム G[i_ ,j_] := 0 /; i+j == 2n+1; G[i_ ,j_] := - G[2n+1-j ,2n+1-i] /; i+j > 2n+1; LieBracket [G[i_ ,j_],G[k_ ,l_ ]] := KroneckerDelta [j,k] G[i,l] - KroneckerDelta [i,l] G[k,j] + KroneckerDelta [2n+1-j,l] G[k ,2n+1-i] - KroneckerDelta [2n+1-k,i] G[2n+1-j,l]; LieBracket [G[1,2] ,G[2 ,3]] (* = G[1 ,3] *) 宇佐見 公輔 リー代数の計算の楽しみ

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例:生成元の表現を探す e[i_ ]:= t[1]G[2n -1 ,1] + t[ -1]G[1 ,2n -1] /;i==0; e[i_ ]:= G[i,i+1] + G[i+1,i] /;1 <=i <=n -1; e[i_ ]:= G[n-1,n+1] + G[n+1,n -1] /;i==n; LieBracket [e[1],e[2]] (* = G[1 ,2] + G[2 ,1] *) LieBracket [e[1],e[2] ,e[3]] (* = G[1 ,3] - G[3 ,1] *) LieBracket [e[1],e[2] ,e[3] ,e[4]] (* = G[1 ,4] + G[4 ,1] *) 宇佐見 公輔 リー代数の計算の楽しみ

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まとめ リー代数の計算の手助けとして、Mathematica プログラミングを 活用した。 行列を計算する代わりにパターンマッチを活用することで、計算 の見通しも良くなった。様々な組み合わせを試した結果、生成元 と基底をローラン多項式+行列で表現できた。 (Date, Usami, On an analog of the Onsager algebra of Type Dn ) (1) プログラミングを数学研究に活用するのも楽しい! 宇佐見 公輔 リー代数の計算の楽しみ