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January 24, 17
スライド概要
文献検索は「習うより慣れろ」!〜Pubmed編〜
Better Practice in Literature Searching! ~Pubmed Edition
滋賀県立総合病院 化学療法センター 腫瘍内科医
文献検索は「習うより慣れろ」! 〜Pubmed編〜
文献検索って何だかよくわからないんですが… ▪ 臨床で疑問にあたった時にどのように情報検索を行うか ◼ ◼ ◼ 同僚・先輩に相談する 教科書などを見る Googleなどの検索サイトで検索する ▪ それでもほしい情報が得られない場合に、 より広範囲かつ専門的な情報を検索したい・・・ 論文を自由に検索できれば より質が高く、より多くの情報に アクセスできる Pubmedを触ったことがない 論文は何が書かれているのか どういう構成なのかわからない どういう種類の論文があるのかわからない
そもそも論文を読んだことがない…
文献はどこから探せばいいの? ▪ 一次情報を探す ◼ ◼ ◼ Pubmed 言わずと知れた文献検索のスタンダード Google Scholar Googleが提供する新鋭の文献検索サイト 医中誌 日本語文献が収録されているサイト ▪ 二次情報を探す ◼ ◼ ◼ ◼ ◼ UpToDate 良質で最新のテーマ別Review. 要契約 個人契約は研修医2万円/年 一般5万円/年 DynaMed UpToDateと競合。UpToDateがやや全般的情報、 DynaMedが各論やピンポイント情報に強い傾向。 Cochrane Library Systematic Review等のエビデンス情報 Clinical Key 文献&教科書集。旧MD Consult 当院利用可 今日の臨床サポート 本邦の診療情報や保険適用に対応
論文の種類はどんなものがあるの? ◼ Article 原著論文 ◼ ◼ ◼ Case Report 症例報告 ◼ ◼ ◼ ◼ ◼ 1つの Article にはならないが速報性を重視するもの Nature のようにこれが1つの論文として扱われる雑誌もある Comment, Correspondense 論説、論評など ◼ ◼ 1つのテーマについて多数の論文を引用して整理しまとめたもの Short paper, Letter, News 短報 ◼ ◼ 実際に経験した症例について考察などを加えて報告したもの Review 総説 ◼ ◼ 1つの研究成果をまとめた論文の基本単位 基礎研究論文も臨床研究論文も、その合間の「橋渡し研究」も 投稿された論文に対して投稿された低減・疑問提起・異議 他の雑誌に投稿された話題となった論文の紹介など Abstract 抄録(学会抄録など) その他(修正、撤回、チュートリアル、お知らせ)
Article の構成はこうなっている ◼ Abstract 要約 ◼ ◼ Introduction 導入 ◼ ◼ ◼ ◼ ◼ ◼ 試験はどのような母集団・施設でどうやって実施したか 第I/II/III相、前向き/後ろ向き、ランダム化/盲検化/コホート等 使った薬剤量や使用方法は何か、効果をどうやって測定したか 統計解析はどうやって行ったか Results 結果 ◼ ◼ なぜこの研究を行ったか、どういう点が新しい知見なのか 何が解明されており、何はまだ解明されていないか Materials and Methods 方法 ◼ ◼ 論文の概要を数百 words 程度で簡単に示す 何人の被験者から、どのような測定結果が得られたか Discussion 考察 ◼ ◼ ◼ 測定結果から何が考えられるか、どう解釈するか Limitation(この研究の欠点や限界やバイアス)は何か 今後何が期待されるか、今後どのような検討が必要になるか
実際の Article の構成を見てみよう この部分全体が Abstract タイトル:進行肝癌に おけるソラフェニブ 著者 背景(Background):なぜ この研究を行うに至ったか 試験デザイン(Methods): 研究実施方法、母集団など 測定結果(Results) 結論(Conclusions): この研究から何が言えるか Llovet et al. NEJM 2008, 378-390
実際の Article の構成を見てみよう 試験デザイン(Methods): 研究実施方法、母集団など 対象患者 試験デザイン
実際の Article の構成を見てみよう アウトカムと評価方法 統計解析方法
実際の Article の構成を見てみよう 結果(Result) 有効性:全生存期間
実際の Article の構成を見てみよう 患者の割付のシェーマ
実際の Article の構成を見てみよう 副作用・安全性 症状の増悪までの期間 画像的増悪までの期間 奏効率・病勢制御率 治療継続期間
実際の Article の構成を見てみよう 患者の背景一覧
実際の Article の構成を見てみよう 考察(Disucussion)
実際の Article の構成を見てみよう 効果の一覧
実際の Article の構成を見てみよう 生存期間曲線 症状無増悪期間曲線 画像的増悪期間曲線
実際の Article の構成を見てみよう Forest plot 副作用発現頻度
実際の Article の構成を見てみよう Appendix
実際の Article の構成を見てみよう 引用文献一覧
論文が掲載されるジャーナルにも様々なものが ▪ Major journal の名前を見てみよう ◼ ◼ ◼ 臨床系でNEJM, the Lancet, JAMA などが有名 研究色が強いものでは Nature, Nature Medicine 専門分野毎のジャーナル ◼ ◼ 学術出版社が出版 ◼ ◼ Nature, Science 学会団体などが出版 ◼ ◼ Circulation, Gastroenterology, Am J Gastroenterology, Blood JAMA, Circulation, Gastroenterology 日本の学会も出版している ◼ Journal of gastroenterology, Hepatology Research
ジャーナル名は略称で記載される ▪ 検索サービスや引用文献一覧では略称で記載される ◼ ◼ ◼ ◼ ◼ ◼ ◼ ◼ NEJM, N Engl J Med = New England Journal of Medicine Nat Med = Nature Medicine Nat Genet = Nature Genetics Nat Rev Clin Oncol = Nature Review Clinical Oncology Am J Gastroenterol = American Journal of Gastroenterology Am J Pathol = American Journal of Pathology JCO, J Clin Oncol = Journal of Clinical Oncology Lancet Oncol = the Lancet Oncology ▪ 初めからすべて覚える必要はない。 ある程度の規則性があるので徐々に慣れる。
引用文献一覧から文献をたどることもできる UpToDate H.Pylori の微生物学と疫学 タイトル H.Pylori著者 発見の論文 掲載場所 Pubmedへのリンク
論文のありかを示す「住所」 ページ 巻・号 発行年 雑誌名 ▪ Lancet. 1984;1(8390):1311. ▪ ジャーナル毎に様々な表記法がある Nature 486, 537-540 (2012) ◼ Nature の表記法 ◼ NEJM の表記法 Nature 486:537-540, 2012 ◼ J Clin Oncol の表記法 Nature 2014;486:537-540
ジャーナルごとに掲載される論文の性格がある ▪ 例えば臨床腫瘍学のトップジャーナルを比べてみても… ◼ ◼ ◼ ◼ ◼ JCO = 米国臨床腫瘍学会 ASCO のガイドラインそのものや、 ガイドラインが変わるくらいの臨床研究が多い NEJM = 腫瘍学を専門にする医療者以外にも通用する文献 Lancet Oncol = ほとんどが大規模な国際第3相試験など Ann Oncol = 第1,2相や Negative Study も掲載される Support Care Cancer = 緩和ケア領域専門 ▪ Impact Factor などだけでなく、「どのような性格の ジャーナルに掲載されるか」も参考になる
Impact Factor ってなんだ? ▪ Impact factorとは「そのジャーナルに掲載された論文 が平均して何回引用されたか」という数値 ◼ 30報を掲載した雑誌で、合計150回引用されたら IF 5 ▪ 同一分野ではジャーナルの著名度の指標になるが、 分野が異なると比較はできない
オープン・アクセス・ジャーナルってなんだ? ▪ 残念ながら多くのジャーナルは有料雑誌 ◼ ◼ ◼ かなり高い。個人で年間数万円、論文1本は1,000〜3,000円 最近は印刷できない代わりに500円程度のものも (Nature系雑誌とreadcubeやiPhoneアプリとの連携など) 当院は施設契約されている電子ジャーナルが少なめ… ▪ オープン・アクセス・ジャーナルは無料で読める ◼ ◼ ◼ ◼ ◼ 読者が購読料を払うのではなく、論文投稿者が掲載料を支払う PLoS ONE, Nature Communications, etc. Lancet, NEJMなど普段はオープン・アクセスでないが特に注目 を浴びたい論文をオープン・アクセスにすることがある 近年はオープン・アクセスへの移行が進みつつある。 数年後には多くのメジャージャーナルがオープン化される?
PUBMEDも「習うより慣れろ」!
Pubmed は文献情報の宝庫 ▪ 論文界の Google! ◼ ◼ ◼ ◼ 英語圏の医学・生命科学系のほとんどの文献を検索できる 検索・Abstract(要約)の閲覧は無料 画面右上に文献本文のページへのリンクが付いており、 各ジャーナルの該当ページに飛ぶことができる(後述) アメリカの国立医学図書館の下部組織 NCBI が運営
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed 検索窓 データベース 種類 カスタマイズ
Google Scholar も論文検索の強力なツール ▪ Pubmedより歴史は浅いがGoogleの学術情報検索サイトである Google Scholarを使う人も増えてきている ▪ 今回はPubmedメインでお話をするのでGoogleのことはまたの機会 に・・・
Pubmed の使い方を見てみよう ▪ 検索語句が決まっている場合は基本の使い方は Google と同じ ◼ ◼ ◼ ◼ ◼ 検索ボックスにキーワードを入れて Enter! ハイフン、%などの記号は除いて半角スペースにする ギリシア文字は英語に直す(β→bまたはbeta) 熟語は” “で囲む 例:β-blocker → “beta blocker” ▪ AND検索、OR検索、()の使い方 ◼ pathology AND lung AND (adenocarcinoma OR squamous cell carcinoma) 「肺腺癌または肺扁平上皮癌の病理組織」
山中伸弥先生の iPS細胞論文 を検索してみる ▪ ノーベル賞受賞に繋がったマウスiPS細胞の論文 Induction of pluripotent stem cells from mouse …
キーワードに対応する検索結果が表示された! 目的の論文があった!
実際のPubmedのページはこんな感じ 本文へのリンク ジャーナル タイトル 著者 この論文を読んでいる人は こんな論文も読んでいます 要約 言及文献 DOI PMID オープンアクセス
Full text linkをクリックすると・・・ ジャーナルの公式webサイト PDF入手
論文のPDFがダウンロードできた!
もう少しPUBMEDを使ってみよう…
検索結果の論文が多すぎて調べきれない・・・ ▪ 検索結果に何千件も表示されるときは絞り込みをしよう
iPS細胞の山中論文を絞り込むには・・・ ▪ ノーベル賞に繋がったiPS細胞の山中論文は 2006年の生物学雑誌「Cell」に掲載されている・・・ ◼ ◼ ◼ 著者 author Yamanaka 掲載ジャーナル source Cell 掲載年 date of publication 2006年
他にもある絞り込みの種類 ▪ 絞り込みを組み合わせて目当ての論文を探し出す ◼ ◼ ◼ ◼ 複数キーワード絞り込み AND, OR ソースのジャーナル絞り込み [so], [ta] 著者絞り込み [au], [fau] full author, [1au] 1st author 発行年絞り込み [dp] date of publication ◼ ◼ ◼ ◼ ページ絞り込み [pg] タイトル絞り込み [ti] ジャーナル種類絞り込み [pt] paper type ◼ ◼ ◼ 2016[dp], 2016/08[dp], “last 3 years”[dp], 2014:2016[dp] “Clinical trial, Phase III”[pt], review[pt], Meta-analysis[pt] フルテキスト入手可能 full text[sb], free full text[sb] 要約あり “hasabstract”
実際に使ってみよう ◼ ソラフェニブの論文を見てみよう sorafenib AND N Engl J Med[so] AND 2008[dp] ◼ 大腸癌のレビューを検索してみよう Colorectal carcinoma AND review[pt] ◼ 院長先生の論文を検索してみよう Miyachi Yoshiki[au]
My NCBI を使えばさらに便利なPubmed ▪ メールアドレスを登録し、Pubmedの便利機能を使う ◼ ◼ ◼ ◼ ◼ ブックマーク機能、フィルター機能などを使う 検索履歴を参照する 定期的に使う検索式を保存しておく 登録キーワードに合致する論文が出るとメール通知される 自分の業績文献を登録する・公表する
興味がある論文が出たときに通知する機能も… キーワードに合致する論文を 定期的にメールで通知させる
論文をどうやって入手したらいいの? ◼ オープンアクセスジャーナル以外はほぼ有料(しかも高価!) ◼ 本来は施設でオンラインジャーナル契約をしてもらいたい Clinical Keyが使えるようになって少しずつ充実しはじめた… ◼ 大学院生・研究生・大学非常勤講師になれば 大学の電子ジャーナルに遠隔アクセスできることも (一部の私立大学などは全卒業生にも利用権を認めている!) ◼ その他の方法・・・
おまけ 文献管理アプリの話
文献PDFが増えてきて管理に困る! ▪ どんどん勉強していると文献がたまるばかり・・・ ◼ 紙ベースで保存:場所を取る、紛失する、探しにくい ◼ PCのフォルダで管理: はじめはいいが 文献が増えると大変!
文献管理アプリとは何か? ▪ 音楽を iTunes で管理するように 写真を Windows フォト や iPhoto で管理するように 文献も専用アプリで管理するソフト ◼ タイトル・ジャーナル名・著者名・発行年の一覧表示 ◼ PDFファイルを収納して簡単に検索できる ◼ メモ・PDFへの書き込み機能 ◼ 引用文献一覧を簡単に貼り付けることができる ◼ アプリによってはWebで他の研究者との連携機能もある
どんなアプリがあるのか? ▪ 多数の論文PDFなどを効率よく管理するためのアプリ ◼ ◼ Endnote 老舗文献管理ソフト ◼ 歴史もあり高機能でよく使われているがかなり高価(5万円!)。 ◼ Wordと連携して論文執筆に有用な機能が充実している。 Mendeley フリーソフトでは最もメジャー ◼ ◼ ◼ Papers 2, Papers 3 mac生まれ ◼ ◼ ◼ 基本利用は無料だが論文をたくさん(数百本?)入れると有料。 インストール版とWeb版の連携に強み。 見た目がキレイ。数千円(為替変動あり)。 Papers 3 はクラウド対応やiPad連携できるが日本語対応に難あり Readcube Webから来た新興勢力 ◼ ◼ ◼ PDFに依存しない文献管理を意識した新興ソフト。 多数の文献を管理する機能は少し頼りない。 Natureなどとの連携機能あり
文献管理アプリはどれを使えばいいの? ▪ まずはフリーの Mendeley がオススメ。 ▪ 見た目・細かい使い勝手にこだわるなら 他のアプリの体験版を使ってみる ▪ Endnote は職場により公費・研究費で買えるかも? ▪ 自分が使いやすいと思ったものを使えば良い
文献検索は「習うより慣れろ」!