スクラムマスターの思考を深める3つの「見方」

5.7K Views

August 24, 24

スライド概要

スクラムフェス仙台2024で登壇した資料です。
https://confengine.com/conferences/scrum-fest-sendai-2024/proposal/20298/3

profile-image

チーム作りの専門家。チーム作りを通じて誰もが楽しく働ける社会を目指します!専門領域はチームビルディング / ファシリテーション / アジャイル / スクラムマスター / 意思決定 / タスク管理

シェア

またはPlayer版

埋め込む »CMSなどでJSが使えない場合

関連スライド

各ページのテキスト
1.

スクラムマスターの思考を深める 3つの「見方」 2024/08/24 渡部啓太 @スクラムフェス仙台2024 1

2.

「成長」するために 何をしていますか? 2

3.

僕は、本から新たな見方を得て、それを 現場で試すことで成長を実感することが多 いです CSMやシステムコーチングの トレーニングも有意義でした もちろん、コミュニティも 3

4.

今日は、僕がここ数年で得た新たな視点、 3つの「見方」についてお話しします 自己組織化 多様性 真のリーダー 4

5.

今日は、僕がここ数年で得た新たな視点、 3つの「見方」についてお話しします みなさんの成長の 一助になれば幸いです! 自己組織化 多様性 真のリーダー 5

6.

渡部 啓太 Twitter : @sobarecord チーム設計師 NRI bit Labs 所属 アジャイルコーチ / スクラムマスター コミュニティ活動 / 本の執筆 / ブログ House of Team Building チームを作る設計図 (仮) ← 執筆中! 6

7.

最初は「自己組織化」についてです 自己組織化 多様性 真のリーダー 7

8.

「自己組織化」に 必要なことは何? 8

9.

必要なことの一つは、情報を巡らせること システムコーチングの 参考書籍から見方を得ました 9

10.

そもそも、自己組織化とは… 物質や個体が、系全体を俯瞰する能力を持たない のに関わらず、個々の自律的な振る舞いの結果と して、秩序を持つ大きな構造を作り出す現象のこ と(Wikipediaの定義) 10

11.

そもそも、自己組織化とは… 新しい構造を作り出し、学び、多様化する よう、自らを構造化するシステムの能力 チームや組織の文脈では、 こちらの定義がしっくりきますね。 11

12.

自己組織化で達成したいこと ひとりで解決できる問題はほとんどない、 自社だけで完結する仕事はほとんどない 12

13.

自己組織化で達成したいこと ひとりで解決できる問題はほとんどない、 自社だけで完結する仕事はほとんどない • 不確実で変化の激しい環境で生き残るには安定し たシステムよりも適応力と弾力性、すなわち、 「計画に従うことよりも変化への対応」が大事 • 「最良のアーキテクチャ・要求・設計は、自己組 織的なチームから生み出されます」 13

14.

そのためには情報を発生させ、巡らせる システムが生存しつづけるには、宇宙が成長し つづけるには、情報が絶えず生成されなければ ならない。<中略> 私たちは、情報に対する 新しいアプローチ、つまり管理するのではなく 促進する、コントロールするのではなく発生さ せるアプローチを立てる必要がある。 14

15.

「情報を発生させ、巡らせる」 には何をすると良い? 15

16.

「見える化」のプラクティスを採用する ・線表 ・タスクボード ・バーンダウンチャート 16

17.

『線表』─ 自律的に動くことをうながす ・今のチームの状態が一目瞭然 線表の例 状況整理と進捗確認に効く ・何をすべきかが明確になる 17

18.

情報を発生させる、もうひとつのポイント 質問)今、ここには何がありますか? 18

19.

情報を発生させる、もうひとつのポイント 質問)今、ここには何がありますか? これを見て、運営の方々、参加者の方々がなにかするかも? 参加人数、スケジュール、僕が話している画面だけでは 解らないことです 19

20.

定性的な情報も巡らせる 定量的なデータのみが情報ではない。メンバーの胸の内にあ る意見や解釈、歴史、感情も情報だととらえる。 この後のセッションで そういう話が 聞けるかも?? 20

21.

定性的な情報からも課題解決につなげる エドワード・デミングは「測らなけれ ばマネジメントできない」と言ったのと同 時に、「企業の課題の3%しか数値化できな い」と言った たとえば、ふりかえりのプラクティスでは メンバーの感情や意見を出すものが多い。 そういう場が自己組織化をうながしていくのだ 21

22.

次は「多様性」についてです 自己組織化 多様性 真のリーダー 22

23.

「多様性」に 必要なことは何? 23

24.

必要なことの一つは、心理的安全性です 『決断の本質』と『多様性の科学』 から学びました 24

25.

多様性は複雑な問題を解決するために持つ 多様性が必要な問題空間 多様性が不要な問題空間 複雑な問題を解決するには、異なる視点が必 いっぽう、単純な問題は、問題空間を把握で 要だ。個人の発想や考えだけでは、問題空間 きているリーダーの意思決定や、同じ能力を に盲点ができてしまう。 持ったメンバーを集めることで解決できる。 (図は書籍『多様性の科学』を参考に作成) 25

26.

簡単な問題なら1人で考えても正解になる 大きい順に並べてください イヌ、ウサギ、ゾウ 26

27.

簡単な問題なら1人で考えても正解になる 僕たちが解いている問題は もっと複雑なはずです 大きい順に並べてください イヌ、ウサギ、ゾウ 27

28.

そして、多様性は心理的安全性を求めます 心理的安全性がないと多様性を発揮できない 28

29.

心理的安全性とは、多様性を生み、 成果を生みだすものだと考えられます 心理的安全性=組織やチーム全体の成果に向けた、率直な意見、素朴な質問、そして違 和感の指摘が、いつでも、誰もが気兼ねなく言えること (書籍『心理的安全性のつくりかた』より) 心理的安全性 多様性 成果 (問題解決) 29

30.

心理的安全性が 「無い」状態とはなぜ起こる? 30

31.

仕事場では、コミュニケーションに勾配 (上下関係)が発生しやすいのです ランク 影響大/変えにくい 人種差別、社会的地位 障害、肌の色、 年齢、家柄、学歴 影響大/変えやすい 感情、知識、情報、 態度、経験、洞察、 発言、被害、場 影響小/変えにくい 経済的地位、宗教、 容姿、出身地 影響小/変えやすい 習慣、健康、 服装、髪型、化粧 自己表現 強要・非難 非主 張的 攻撃的 服従・忖度 アーノルド・ミンデルが提唱した概念。ラン アサーションの文脈で出てくる考え方。自分 クの高い側からは抑圧、低い側からは抵抗が も相手も大切にするコミュニケーションでな うまれる。話し合いや情報共有の公正さや透 いと、悪循環におちいってしまう。 明性に影響がでる。 (図は書籍『ディシジョンメイキング』を参考に作成) 31

32.

さらに、対人関係のリスクにより チームに貢献する行動をしない 4つのリスクへの不安から、コミュニケーションが少なくなる ・必要な事でも質問・相談をしない ・必要でも助けを求めない ⇒「無知」と思われるリスク ⇒「邪魔」だと思われるリスク ・ミスを隠す、自分の考えを言わない ・議論をせず、率直に意見を言わない ⇒「無能」と思われるリスク ⇒「否定的」だと思われるリスク (書籍『心理的安全性のつくりかた』より) 32

33.

つまり、コミュニケーション不全により、 集合知を発揮するための多様性が減少する コミュニケーションの上位の、 ひとりの視点に引っ張られてしまう 33

34.

好子があると、その行動をする確率が増す おすわりをすると、ごはんがもらえる うまい おすわり、するべし ↑ 好子 34

35.

好子があると、その行動をする確率が増す 良いコミュニケーションを して欲しい側が変わるべし おすわりをすると、ごはんがもらえる うまい おすわり、するべし ↑ 好子 35

36.

心理的安全性の4因子に対する好子 書籍『心理的安全性のつくりかた』を参考に一覧化 1 話しやすさ 2 助け合い 聞く、傾聴する、相槌を打つ、お礼を言う、目を見 話を聞く、方針を示す、解決策を考える、分担し対 て話す、身体ごと相手に向ける、何らかのリアクシ 応する、業務を引き取る ョンをする 3 挑戦 4 新奇歓迎 挑戦を歓迎する、工夫を促す、まず承認する、機会 同質を求めず違いを歓迎する、包摂(インクルージ を与える、新しい取り組みを促す、常識外れを歓迎 ョン)する、個性・らしさに応じた最適配置・役割 する、チャレンジをたたえる、経過・プロセスを見 決め、様々な視点・ものの見方を歓迎する 守る、結果をともにふりかえり共に学ぶ姿勢を持 つ、一連の挑戦を事例として組織に周知する 36

37.

相手を知る、類似性を感じる打ち手も大事 37

38.

チームで「ディシジョンゲーム」をするのも おすすめ!ぜひ参考にしてください。 38

39.

最後に「真のリーダー」についてです 自己組織化 多様性 真のリーダー 39

40.

⼤ 「真のリーダー」ってなんだろう? スクラムマスターは、スクラムチームと、より きな組織に奉仕する真のリーダーである。 (スクラムガイドより) 40

41.

真のリーダーの定義はないから難しい… 『ザ・ビジョン』が参考になるかも! • ビジョン作りをストーリー形式で学べる本 • 組織のビジョンはもちろん、個人にもフォーカス が当たっており、リーダー、マネージャーには もちろん、いろいろな人におすすめできる本 • 「これ、スクラムマスターのことじゃない?」 となる部分があった 41

42.

リーダーに関して、こんな記述があります ビジョンにどう向き合うべきかをみんなに 意識させ、正しい軌道を外れないよう、障 害を取り除いてあげてはどう? リーダーはビジョンに使える召使いであっ て、みんなから仕えられる お偉方ではないんだ 42

43.

リーダーに関して、こんな記述があります ビジョンにどう向き合うべきかをみんなに 意識させ、正しい軌道を外れないよう、障 害を取り除いてあげてはどう? SMでは!? リーダーはビジョンに使える召使いであっ て、みんなから仕えられる お偉方ではないんだ 43

44.

リーダーの務めについても書かれている • リーダーの務め(書籍『ザ・ビジョン』より) 何が一番大切かを思い出させる ビジョンを見失わないように助ける 可能な限り障害を取り除く みんなに実践をうながし、励ます 44

45.

リーダーの務めについても書かれている • リーダーの務め(書籍『ザ・ビジョン』より) 何が一番大切かを思い出させる ビジョンを見失わないように助ける 可能な限り障害を取り除く みんなに実践をうながし、励ます スクラムのビジョンの実現を助けるのが スクラムにおける真のリーダー 45

46.

スクラムを『ザ・ビジョン』モデルで表すと 【目的】 複雑な問題に対応する適応型 のソリューションを通じて、 人々、チーム、組織が価値を 生みだす • • • 目的:「なぜ」を説明するもの イメージ:最終結果 価値感:「どう行動するか」への答え 【価値感】 【イメージ】 透明性、検査、適応が実現さ れ、スクラムイベントが機能 している 確約 集中 公開 尊敬 勇気 46

47.

ビジョンの実践には支援の仕組みが必要 • 支援の仕組みというのは、コミュニケーションや意志 決定のプロセスの構築のこと • 仕組みにより、チームが軌道を外れないようにする 【支援の仕組み】 ・スプリント ・スプリントプランニング ・デイリースクラム ・スプリントレビュー ・スプリントレトロスペクティブ 47

48.

そして、対話をうながし、励ます 【支援の仕組み】 ・スプリント ・スプリントプランニング ・デイリースクラム ・スプリントレビュー ・スプリントレトロスペクティブ ↓ ビジョンをめぐる 対話 ↓ さまざまな出来事を ビジョンの視点から 見るよう励ます 48

49.

具体的には… • スクラムガイド読み合わせ 49

50.

具体的には… • 車輪のツールでスクラムの価値基準をふりかえる ①「今、このチームが最も体現している価値基準はどれ だと思いますか?」と呼びかけ、自分が思う位置に付 箋を移動させてもらう ②そこに付箋を移動させた理由を聞いていく。他の人 からの疑問や質問、コメントなどあれば、そういう声 も出してもらい対話をうながす ③「今、このチームが最も体現していない価値基準はど れだと思いますか?」と呼びかけ、自分が思う位置に 付箋を移動させてもらう ④ そこに付箋を移動させた理由を聞いていく。他の人 からの疑問や質問、コメントなどあれば、そういう声 も出してもらい対話をうながす ⑤これからのチームに活かせそうなアイデアを出す ⑥アクションアイテムを決める 50

51.

まとめ • スクラムマスターとして成長するには新たな見方が必 要。本を読もう、コミュニティに参加しよう • 僕が新たに得た見方は3つ • 自己組織化:情報を発生させ、巡らせる(感情も) • 多様性:心理的安全性が多様性を引き出す • 真のリーダー:スクラムのビジョン実現を助ける 51

52.

ありがとうございました! 新たな見方が得られたのなら 幸いです