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October 30, 16
スライド概要
2016年10月31日に甲南大学ネットワークキャンパス東京で開催されたシンポジウム「日本語教育における理系研究者とのより良い連携を探る」での角南北斗の担当セッションのスライドです。
教育系ウェブデザイナー
みんなが ハッピーになる プロジェクト デザイン術 Sunami Hokuto 2016.10.30 @甲南大学ネットワークキャンパス東京 シンポジウム:日本語教育における理系研究者とのより良い連携を探る
角南 北斗 Sunami Hokuto
登壇者について フリーランスのウェブデザイナー的な人 教育系サイトや教材の設計・開発してます ✓ 元々日本語教育研究者なのでそれ関係が多いです 教師として授業もしてます ✓ 情報教育・デザイン・プレゼン・マネジメントなど ☞ 詳しくは sunamihokuto.com へ
このセッションについて 研究者ではなくプロの制作者(会社)と 協業する場合のお話です。 ✓ 小〜中規模の予算で制作スタッフは最低限、 広告代理店などは間に入らない場合を想定。 ✓ なるべく一般的な制作者の視点を意識してますが 僕個人の仕事観はめっちゃ入ってます。 まだ教材開発の具体的な予定がない方は、 その機会が来たときのイメージ作りとして。
みんなが ハッピーになる プロジェクト デザイン術
なぜ「教材」ではなく 「プロジェクト」のデザインなのか?
教材制作の構図 プロジェクト 教師 技術者
なぜプロジェクト単位で見るの? 課題解決のために教材を開発する場合、 単に教材を完成させるだけでは、 課題の解決につながらないことも多い。 ✓ 教材の質が良くないと目的を果たせない ✓ 広報をうまくしないと教材が利用者に届かない ✓ メンテナンスを怠ると教材の価値がなくなる
作ることが目的になりやすい 教材を作ること以外(その前後)にも 目的達成のためにすべきことは少なくない。 が、教材の開発に苦労することが多いため、 教材開発が目的化してしまいがち。 ✓ 作りっぱなしで、きちんと評価をしない ✓ 作ったものを届けるエネルギーが枯渇する ✓ 公開を継続するための予算が組まれていない
プロジェクトという俯瞰的視点 教材開発もプロセスの一部にすぎない ✓ 周囲は完成品としての教材でしか評価しないが、 教材の出来が悪くても、開発が中止になっても、 それが全体として肯定的な意味を持つこともある。 プロジェクト単位で考えることで、 教材開発に関わる要素を適切に評価する。
みんなが ハッピーになる プロジェクト デザイン術
プロジェクトでの「みんな」とは? 直接的な利害関係者 ✓ 教師 ✓ 学習者 ✓ 技術者・制作会社 間接的に影響するコミュニティ ✓ 教師の所属する教育機関 ✓ 開発に出資している組織 ✓ 業界全体
どうなればハッピー? 直接的な利害関係者 ✓ 教師:望んだ教材が完成する ✓ 学習者:良い教材が使える ✓ 技術者・制作会社:十分なお金が手に入る
でも実際は…
イメージしてるのと 違うんだよなぁ… 教師
低予算の仕事なのに やたら要求多いよねぇ.. 技術者
学習者 あー、なんでこんな イケてない教材なの?
教師・技術者・学習者の3者すべてが ハッピーなプロジェクトは、 実際には少ないのではないか?
プロジェクトでの「みんな」とは? 直接的な利害関係者 ✓ 教師 ✓ 学習者 ✓ 技術者・制作会社 教材設計論
プロジェクトでの「みんな」とは? 直接的な利害関係者 ✓ 教師 ✓ 学習者 ✓ 技術者・制作会社 あまり語られない
技術者がアンハッピーでは困る 特に技術者がアンハッピーな状況だと、 教材は一応は完成したとしても、 プロジェクトの目的を果たせないことが多い。 ✓ 開発作業に全力を投じていないから教材の質が低い ✓ 公開後の変更や追加開発がスムーズにいかない ✓ プロジェクトメンバー全体の士気の低下を招く 技術者のハッピーもデザインの対象に!
みんなが ハッピーになる プロジェクト デザイン術
技術者のハッピーを デザインするキーワードは?
お金
よのなかね かおか おかねか なのよ 回文
PRICELESS お金で買えない価値がある。 買えるものはマスターカードで。
あなたはプロジェクトにおいて 技術者の何を買っているのか?
買えるものと、買えないもの お金だけでは買えないもの ✓ 腕の良い技術者 ✓ 質の良い成果物(教材) お金で買うこともできるもの ✓ 請求書に載るような作業 ✓ 請求書に「はっきりとは」載らない作業
お金だけでは買えないもの 他所より高額な制作費を支払えば、 腕の良い技術者が来てくれる…とは限らない。 ✓ IT業界の仕事人の質にはバラつきがあり、 制作単価と技術力が比例しないことも多い。 教材の質を高めるのに必要な教育系知識を 普通の技術者に期待するのは酷というもの。
Pricelessを手に入れるために 信頼できる人から技術者を紹介してもらう ✓ 結局「紹介が最強」なのは教師の募集と同じ 先行事例の関係者に相談する ✓ 良い事例には良い技術者がいる(かもしれない) ✓ まずは先行事例をしっかりと調べる
Point 良い制作パートナーと出会うために、 関連する先行事例がないか調べて、 その関係者にコンタクトを取る。 学会や研究会はその出会いの一歩。
買えるものと、買えないもの お金だけでは買えないもの ✓ 腕の良い技術者 ✓ 質の良い成果物(教材) お金で買うこともできるもの ✓ 請求書に載るような作業 ✓ 請求書に「はっきりとは」載らない作業
お金で買うこともできるもの 能力をお金で確実に買うことは難しいが、 技術者の時間はお金で買うことができる。 たとえ資金が潤沢でなくても、 技術者の時間にまつわるコストを下げれば、 支払い額面以上の価値を感じてもらえる。 ✓ もちろん最低限必要なお金の用意は前提ですよ
技術者は何に時間を使っているのか?
パソコンを叩いている時間は、ごく一部
大半は、設計のための打ち合わせ
打ち合わせは最大のコスト 制作時間の多くは「打ち合わせ」と、 教材設計のための「考える時間」に使われる。 この時間は見積書に明記されない場合が多い ✓ ディレクション費と書くとケチをつけられるため、 他の「作業っぽい項目」に乗せてしまうことも。 ✓ 見積もりの項目にないと、発注側(教師)は 相手の時間を買っているという意識が薄れがちに。
打ち合わせコストは見積もりにくい 打ち合わせにどのくらい時間がかかるかは、 依頼側(教師)によって大きく異なる。 ✓ 技術に明るいか、教材の青写真が描けているか ✓ 決断までのスピードは速いか 相手がわからない初期段階の見積もりでは、 打ち合わせコストは大きめに取られがち。 ✓ このコスト計算が、相見積もりの差を生む
賢い買い物をするために 技術や納品物を買っているのではなく、 専門家の時間を買っていると意識する。 専門家の時間を効率化するためのサポートは 間接的なコストダウンにつながる。 ✓ 支払われる金額が同じであれば、 スムーズに仕事ができるほうが嬉しいもの。
Point 打ち合わせを効率化することによって、 技術者の仕事はスムーズに進み、 教材の質も上がり、ストレスも減る。
技術者との打ち合わせは どうやって効率化する?
教師の頭の中にあるイメージを伝える
イメージの具現化は目指さない 他人の頭の中を想像するのは難しい ✓ 技術者にエスパーごっこをさせると疲弊する 教師のイメージが明確であるとは限らない ✓ 昨日と言ってることが違う…はよくあるし、困る イメージ通りの教材が正解とも限らない ✓ 言われた通り作ったら学習者に不評だった、とか
まずは状況説明を丹念に その教材イメージに至った理由を、 データやエピソードを示しながら説明する。 ✓ 事業の詳細や現場の状況、学習者についてなど ✓ 教育の素人である技術者にもわかるように
判断材料から教材像を再検討 その教材イメージは妥当な結論なのか、 手元の情報(判断材料)を見ながら、 関係者全員で客観的に検証する。 ✓ 誰かの頭の中を闇雲に探るのではなく、 場にある情報を元にみんなで考えるので、 関係者全員が参加でき、論理的に考えやすい。 話し合いで教材像が変わることも多い
可能ならば調査も行なおう 判断材料が足りないと感じた場合は、 まず素直にそれを認めることが大切。 ✓ ここで「教師の勘」を拡大適用すると痛い目に。 失敗教材の多くは「教師の思い込み」が原因では? 調査も視野に入れる ✓ 学習者の観察とか、他の教師への聞き取りとか、 教師が手軽にできる範囲でも効果は大きい。 ✓ そこを含めて論文書いちゃえばいいじゃない
Point 教材開発は急がば回れ。 教師はまず情報を整理して提示し、 ディスカッションで認識を共有する方が、 最終的には時間が無駄にならない。
Point もし具体的なイメージを伝えたい場合は、 既存のな教材を例に挙げ、 それとの共通点や相違点を語ろう。
既存教材の研究はしっかりと 技術者にとっては、言葉で説明するより モノを見せてもらった方が理解が早い。 ✓ モノを軸にすれば抽象的な話になりにくい 実際に話に出すかは別にしても、 同ジャンルの既存教材は調べておくべき。 ✓ ほら「NIHONGO eな」とか便利ですよ
NIHONGO eな 日本語学習サイトの活用方法を紹介
打ち合わせの質を高める
可視化しながら議論をする 議論はリアルタイムに文字化することで、 脱線や堂々巡りを防ぎやすい。 ✓ ホワイトボードに書きながら話を進めたり、 書記役のPCをプロジェクタで壁に投影。 ✓ 参加者の視線が同じ方向に向くので集中しやすい 会議終了と同時に議事録は完成 ✓ 後から書いて再チェックするのは無駄が多い
議論の可視化のオススメツール ホワイトボード+写メ ✓ 図などを描くのにはアナログの使い勝手が◎ ✓ スマホで撮ればデータ化は簡単だが、やや見づらい Googleドキュメント+プロジェクタ投影 ✓ 書記役のPC画面を部屋に投影しながら話し合う ✓ Skypeの参加者も手元で同じ文書を見つつ、 同時に編集できるので議事録の共同作成が可能。
議事録はゼッタイ作るべき 人は簡単に「決めたこと」を忘れてしまう ✓ 通常授業などと並行して行われる教材開発は、 全体が長期化しやすく、記録の参照が重要になる。 その場で決まったことだけでなく、 そう決まった理由も併せて書いておく。 ✓ 何時間も議論して納得して決めた方針であっても、 誰しも忘れて一貫性のないことを言い出しがち。
Point 議論はホワイトボードやプロジェクタで 可視化しながらやると、議事録にもなる。 事実だけでなく経緯も書いておこう。
要所を押さえたら、あとは任せる
打ち合わせのコスト配分は 大→小 プロジェクトの目標や状況はきちんと確認し、 コンセプトを固めるまでは時間をかける。 具体的な制作作業が始まったら、 協議の時間が負担になることが多いので、 なるべく減らしていけるのが理想。 ✓ 技術者は制作モードに入ると邪魔されたくない
技術者の主体性をサポートする 教師に聞かなくても技術者が判断できる、 技術者が主体的に設計できる範囲を増やす。 ✓ 技術者が自分の判断でできることが増えれば、 打ち合わせも減らせるし、技術者も楽しくできる。 ✓ なぜそういう設計にすべきなのかを 技術者がきちんと理解していることが大前提。
教師の好みを差し挟まない ダメな部分の指摘は、教師の主観ではなく、 プロジェクトのコンセプトの観点から。 ✓ 理由が明確なダメ出しであれば納得しやすいし、 同じような失敗を繰り返すこともなくなる。 コンセプトの観点から言及できないことは、 説得力がないので、なるべく避ける。 ✓ 教師の好みに振り回されると、技術者は疲弊する ✓ 途中でコンセプトを詰め直すことはよくある
Point 最初は時間をかけて認識の共有を図る。 しっかりコンセプトを固めたら、 無駄な打ち合わせを重ねたりせず、 枝葉の部分は任せる勇気も必要。
コミュニケーションの 期待値をそろえる
メールの返信が遅い教師 一般に、教師より技術者(制作会社)の方が メールなどの返信は早いことが多い。 ✓ 制作側は制作自体が仕事であるのに対して、 教師は授業などメインの仕事が優先されがち。 ✓ レスが遅くてイライラする!は、よく聞く話
待たされるコスト コミュニケーションで「待たされる」時間は さまざまなコストアップにつながる ✓ 作業が効率良く進まない ✓ 思考が途切れてしまって、復帰に時間がかかる ✓ 他の作業との調整が難しくなる ✓ プロジェクト全体が長期化しやすい
待ち時間に他の仕事をしてもらおう 教師の側が返信速度を上げるのは困難 待ち時間に他の仕事を進めてもらえるよう、 教師が配慮したメールを出すことで、 返信スピードが遅くても負担になりにくい。
返信タイミングを読めるように いつが忙しいかを伝えておこう ✓ 授業が多い火曜は無理、金曜は対応しやすい、など 週の固定スケジュールを伝えておく ✓ 学内イベントなどで余裕がなくなる時期を伝える 返信を期待するタイミングを明示する ✓ 「できれば明日中に可否だけでも教えてください」 ✓ 「今週末まで出張なのでお返事は急がないです」
Point 互いの仕事の仕方や状況の共有で、 過剰な気遣いやイライラを回避できる。
教材が完成した後も 良い関係を築いていこう
引き続きおつきあいを 教材公開後も技術者の出番は多い ✓ 修正・改善・トラブル対応・アクセス解析など ✓ 一般に「ウェブサイトは公開後が本番」といわれる 定期的に連絡を取っておくとスムーズ ✓ 反響を聞かせてもらえると、制作者は嬉しいもの ✓ 勝手が分かっている相手なら仕事コストは下がる
制作者への敬意は大切 広報媒体に制作協力者のクレジットを ✓ 教材が認知されることで制作者にもメリットが 制作実績として公開することを許可しよう ✓ 一般に、広告代理店からの制作依頼の場合、 制作者は制作実績として外部に公表できない。 ✓ 実績公開OKというだけで、制作者としてはプラス
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Point 外部の技術者もチームメンバーとして 継続的な付き合いができると、 関係者全員に大きなメリットがある。
まとめ
技術者と良いお付き合いを 技術者側の仕事の仕方を想像することで、 スムーズに仕事を進めてもらうことができ、 全体の費用対効果を高めることになる。 プロジェクトチームの一員として接し、 技術者と信頼関係を築いていけるのが理想。
Sunami Hokuto Blog: withcomputer.jp Site: sunamihokuto.com Twitter: @shokuto