家電製品の操作マニュアルにおける動画の有効な利用方法についての検討

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December 11, 23

スライド概要

2023年度日本人間工学会関西支部大会
講演番号:GS2-4
原稿(pdf):https://researchmap.jp/d_the_rhythm/presentations/44229909/attachment_file.pdf

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大阪公立大学生活科学部居住環境学科デザイン人間工学研究室(土井俊央研究室)

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各ページのテキスト
1.

2023/12/08 日本人間工学会関西支部大会 家電製品の操作マニュアルにおける 動画の有効な利用方法についての検討 山本彩智(大阪市立大学 生活科学部居住環境学科4年) 土井俊央(大阪公立大学) 瀬戸大地 清水義考(株式会社クレステック) 1

2.

製品マニュアルの役割 製品マニュアル 製品を安全かつ効果的に使用するための 正しいメンタルモデルの構築を支援 しかし、家電製品の誤使用に起因する製品事故は多く発生している マニュアルを読んでいても理解できていない、 そもそも十分に読んでいないことが一因 ⇒ユーザが正しいメンタルモデルを構築できていない 2

3.

メンタルモデルの分類 メンタルモデル 手順や機能のように How to use it を理解する Functional model 動作原理や構造のように How it works を理解する Structural model 従来マニュアルは 操作手順や、安全注意文の説明が多い 清水義孝:メンタルモデルを更新する取扱説明 書の役割, 第17 回日本感性工学会春季大会 C000057C000057 2022 従来マニュアルには、 動作原理や構造の説明は不足している J. Preece, Y. Rogers, D. Benyon, T. Carey, S. Holland, H. Sharp: Human Computer Interaction, Addison Wesley,134 137, 1994 3

4.

Structural model の役割 Structural model構築支援のため動作原理や構造の説明をすることで ⇒ユーザに正しいメンタルモデルを構築してもらえる 正しいStructural modelが構築されていれば、逐一製品マニュアルに 書かれている手順に依存することなく効果的に使用できる? ⇒膨大な安全注意文や操作手順を熟読しなくても 危険な操作を想定できる マニュアルの国際規格では製品の目的や原則を理解できるような 概念情報をマニュアルに記載することを求めている 4

5.

製品マニュアルの多様化 近年、動画による製品マニュアルが増加している 製品の組み立てなど手順・方法の説明については 紙よりも動画の説明が有効 ⇒Functional modelの観点からは動画マニュアルが有効 動作原理や構造についてのStructural modelに対応する説明について の検討は十分にされていない 5

6.

研究目的 ユーザに正しいメンタルモデルを構築してもらうには Functional modelだけでなくStructural modelの構築も必要 紙だけでなく動画による操作マニュアルの増加 操作マニュアルにおける Structural modelに対応する「仕組みの概念説明」と Functional modelに対応する「具体的な操作手順」の2つの情報を 紙・動画をどのように使うのが有効であるか調査する 今回は事故の多い電子レンジを対象とする 6

7.

実験内容 実験参加者 電子レンジについて 同程度の利用経験をもつ40名 (男性:10名,女性:30名, 平均:36.5歳,SD:14.3) 概要 条件毎に異なる操作マニュアルを 見せて、電子レンジの操作をさせて ユーザのメンタルモデル構築度合を 比較した ①操作マニュアルの提示 ②電子レンジの操作課題(思考発話法) ③メンタルモデル構築度合推定アンケート ④マニュアルに対する主観評価 ⑤時間経過後の理解度テスト (一部参加者のみ) 7

8.

実験内容:条件 操作マニュアルの提示 条件毎の操作マニュアルを提示:2×2 = 4条件(各条件10名ずつ) Structural modelに対応する「しくみの概念情報」と Functional modelに対応する「具体的な操作手順」の 2つの情報をそれぞれ紙・動画で示し、組み合わせたものを用意 S:しくみの概念説明 F:具体的な操作手順 条件1 S:紙 F:紙 条件2 S:紙 F:動画 条件3 S:動画 F:紙 条件4 S:動画 F:動画 制限時間は設けず、普段マニュアルを見る時と同様に見るように指示 8

9.

紙によるStructural modelの説明(S:紙) 9

10.

紙によるFunctional modelの説明(F:紙) 10

11.

動画によるStructural modelの説明(S:動画) • Webへの掲載にあたって動画は削除しました 11

12.

動画によるFunctional modelの説明(F:動画) • Webへの掲載にあたって動画は削除しました 12

13.

実験内容:電子レンジの操作課題 思考内容を常に発話しながら電子レンジの操作を求めた 3つの操作課題 ・冷蔵庫からアルミホイルで包んだお にぎりを1つ取り出し,手動で温める ・冷蔵庫から肉まんを1つ取り出し, 手動で温める ・冷蔵庫から牛乳を取り出し,ホット ココアを作る(手動であたためる) 机の上に複数の容器、ラップなどを並べ自由に使ってもらう 操作中にマニュアルを見返すことも認めた 13

14.

評価指標 1.メンタルモデル構築度合推定尺度(5段階) 土井ら(2014)がユーザインタフェース操作における メンタルモデル構築度合を測定するために開発したアンケート項目を 操作マニュアル向けに一部修正して利用 ・操作の際に、機器がどのような状態なのか理解することが出来る ・機器やその操作の際に表示されている用語を理解できる 等の質問16項目の合計を比較 2.マニュアルに対する主観評価(7段階) ・総合的に分かりやすさ ・動作原理についての分かりやすさ ・操作手順についての分かりやすさ ・実際に利用したいか 14

15.

評価指標 3. 時間経過後の理解度テスト 各条件4名ずつのみ、3-4週間経過後の電子レンジの理解度を調べるため の理解度テストを実施 加熱原理(記述式) Structural model ・電子レンジは何によって食品を温めているか ・電子レンジは何を含んでいる食品を温めるか ・電子レンジの熱源はどんな物質に反射するか 注意すべき食材(選択式+理由記述) Functional model ・電子レンジによって加熱しすぎると焦げやすく発火しやすい 注意が必要な食品は何か ・電子レンジによって加熱すると破裂する恐れのある食品は何か ・加熱しすぎた後、急に動かすと突沸現象がおこる可能性がある食品は何か 15

16.

評価指標 4.プロトコル分析 電子レンジの操作課題中に見られた発話から 操作マニュアルがどのようにユーザの知識に反映されているかを検討 提示したマニュアル毎で発話・行動に違いが見られるか 16

17.

メンタルモデル構築度合推定尺度 二元配置分散分析の結果 90 動作原理の主効果:F(1,36)=5.50, p <0.05 80 70 Structural情報が紙 ⇒Functional情報が動画の方が メンタルモデルを構築しやすい Functional情報が紙 ⇒Structural情報が動画の方が メンタルモデルを構築しやすい p <0.05 p <0.01 メンタルモデル構築度合 操作手順の主効果:F(1,36)=1.12 交互作用:F(1,36)=5.50, p <0.05 * ** 60 50 40 30 20 10 0 F:紙 F:動画 S:紙 F:紙 F:動画 S:動画 17

18.

メンタルモデル構築度合推定尺度 二元配置分散分析の結果 90 動作原理の主効果:F(1,36)=5.50, p <0.05 80 Structural情報が紙 どちらも紙媒体が最も メンタルモデル構築度合が低い ⇒Functional情報が動画の方が メンタルモデルを構築しやすい Functional情報が紙 ⇒Structural情報が動画の方が メンタルモデルを構築しやすい p <0.05 p <0.01 70 メンタルモデル構築度合 操作手順の主効果:F(1,36)=1.12 2つの情報のいずれかに動画が使われていると 交互作用:F(1,36)=5.50, p <0.05 メンタルモデルの構築度合は高まる * ** 60 50 40 30 20 10 0 F:紙 F:動画 S:紙 F:紙 F:動画 S:動画 18

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マニュアルに対する主観評価:動作原理の分かりやすさ ** 二元配置分散分析の結果 5 操作手順の主効果:F(1,36)=0.50 交互作用:F(1,36)=0.13 紙よりも動画の方が、動作原理の 分かりやすさの評価が高い ⇒Structural modelの情報を提示するには、 紙よりも動画が受け入れられやすい 動作原理の分かりやすさ 動作原理の主効果:F(1,36)=12.59, p <0.01 4 3 2 1 F:紙 F:動画 S:紙 F:紙 F:動画 S:動画 19

20.

一定期間後の理解度テスト 二元配置分散分析の結果 3 加熱原理についてのテスト得点と 加熱原理 注意点 2 5 4 注意点 ⇒マニュアルの見せ方は違っても 提示内 容が同内容だと理解度への影響は小さい 加熱原理 注意点についてのテスト得点 どちらの結果も、各条件で有意差なし 6 3 1 2 1 0 F:紙 F:動画 S:紙 軸ラベル F:紙 F:動画 0 S:動画 20

21.

操作課題中の発話:プロトコル分析 条件間で差が見られなかった発話・行動 ・電子レンジを操作する際の工夫について 「さっきの取説で水をかけたほうが良いって書いてたから水をかけます」 「アルミホイルはだめって書いていたので」 ・マニュアルを見返すタイミング 「どの容器が使えるかわからないから、もう一度マニュアルを見返します」 「加熱時間がわからないので、確認します」 ⇒実際の操作で不安点が出てきた際にマニュアルを見返す 条件間で差が見られた発話・行動 ・動画よりも紙の方が見返されやすい 「紙の取説の方は、探したい箇所をすぐ見つけられるけど動画は探すのに時間がかかる」 「分かりやすいのは動画だけど、手間がかからないのは紙」 21

22.

結論 電子レンジのメンタルモデルの構築においては Structural、Functionalの情報どちらかに動画を使うことが有効 ただし、どちらの条件も動画で示すのが最も良いというわけではない ⇒メンタルモデルの構築についてそれぞれの情報の提示方法よりも 組み合わせが関係している 分かりやすさの主観評価について Structural modelに対応する説明をするには、動画の方がユーザに 受け入れられやすい 理解度テスト⇒各条件4名ずつと少ない、期間が空きすぎた プロトコル分析⇒今後、発話数やエラーについても細かく検討する 22