電子レンジのしくみの理解度と説明深度の錯覚の関係について

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May 08, 23

スライド概要

第18回日本感性工学会春季大会
講演番号:1C01-02
原稿(pdf):https://researchmap.jp/d_the_rhythm/presentations/41656893/attachment_file.pdf
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大阪公立大学生活科学部居住環境学科デザイン人間工学研究室(土井俊央研究室)

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各ページのテキスト
1.

2023/3/6 感性工学会 電子レンジのしくみの理解度と 説明深度の錯覚の関係について 山本彩智(大阪市立大学 生活科学部居住環境学科3年) 土井俊央(大阪公立大学) 1

2.

2023/3/6 感性工学会 電子レンジの事故の多さ 事故原因の多くは使用者の誤使 用や不注意 身近な製品であるからこそ 使用者は使い方は知っていても 内部構造は理解されていないの では? 独立行政法人 製品評価技術基盤機構「5年で157件、電子レンジで発生 する事故~取扱説明書をよく読んで使いましょう~」(2020,2) (https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2019fy/prs200227.html) 2

3.

2023/3/6 感性工学会 電子レンジの仕組み マイクロ波を当てて食品の中にある水分の水分子を振動 させて加熱し、食品の内側から温める しくみを知らないと 事故に繋がる可能性 が高くなる 3

4.

2023/3/6 感性工学会 説明深度の錯覚ー知ってるつもり?ー 説明深度の錯覚 物事について実際に理解している以上に知っていると錯覚してしまう現象 1,自転車の仕組みをどれだけ理解しているか自己評価してもらう 2,自転車の絵を詳細に書いてもらう 3,もう一度、自転車の仕組みをどれだけ理解しているか自己評価 2回目の自己評価の方が小さくなる Steven Sloman, Philip Fernbach ,土方奈美(訳):知って るつもり 無知の科学,早川文庫,2021. 4

5.

2023/3/6 感性工学会 説明深度の錯覚の問題点 自転車を操作することが出来る ⇒仕組みも理解していると思い込んでいる 本当は知らないのに理解していると思い込んで生活することで、 複雑さを無視している 分かっていないことを自身がわかっていない事が問題 自身がわかっていないことに気付くことが重要 5

6.

2023/3/6 感性工学会 説明深度の錯覚は他のものにも起こる 自転車以外にも様々なものに説明深度の錯覚は起こる 電子レンジの事故の原因は使用者の誤使用や不注意 電子レンジにおいても構造が複雑なことを無視して 分かったつもりで生活しているのでは? 6

7.

2023/3/6 感性工学会 研究目的 ユーザがわかったつもりになっており、動作原理や構造を理解してい ないまま操作していることが電子レンジの事故原因の一つとして考え る ✔電子レンジを対象に説明深度の錯覚が起こっているのか確認 ✔電子レンジのしくみについての理解度が影響するのか 電子レンジの安全な利用を促進するための基礎的知見を得る 7

8.

2023/3/6 感性工学会 実験方法 20代から70代の57名(平均年齢:40.1才±11.1)にアンケート ⑴利用経験 ⑵理解度の ⑶仕組み ⑷理解度の 自己評価① 説明 自己評価② ⑵「電子レンジについてどの程度理解していると思うか?」を7段階で 自己評価 ⑶「電子レンジの加熱の仕組みについてできるだけ説明してください」 ⑷もう一度「電子レンジについてどの程度理解していると思うか?」を 7段階で自己評価 8

9.

2023/3/6 感性工学会 理解の差におけるグループ分け 電子レンジについて理解している人とそうでない人で 錯覚の起こり具合に差は出るのかを考える 「マイクロ波で水分を加熱する」と説明できた被験者 しくみ理解群:n=16 説明できなかった被験者 しくみ非理解群:n=41 9

10.

2023/3/6 感性工学会 分析方法 ・一回目と二回目の理解度の自己評価を比較 対応ありのt検定 一回目と二回目で有意な差はあると言えるのか確認 ・しくみ理解群と非理解群に分けて、説明前後での理解度を比較 対応ありのt検定 しくみ理解群と非理解群で差はあるのか確認 ・しくみ理解群と非理解群の初期の理解度の比較 対応無しt検定 10

11.

2023/3/6 感性工学会 説明の前後での理解度の自己評価の比較 理解度の自己評価 7 説明前後で有意に理解度が低 下 6 5 4 3 2 1 説明前 説明後 電子レンジにおいて説明深度 の錯覚が起こっている t(56)=3.75, p<0.01 11

12.

2023/3/6 感性工学会 理解群・非理解群の説明前後での理解度の比較 しくみ理解群では、説明前後で理解度 に有意な差はない しくみ非理解群では、説明前後で理解 度が有意に低下 しくみ非理解群のみ錯覚が起こってお り、「知ってるつもり」になっている t(15)=1.46 t(40)=3.67 P<0.001 12

13.

2023/3/6 感性工学会 理解群・非理解群の初期の理解度の比較 理解度の自己評価 7 理解群、非理解群で初期の理 解度に差はない n.s. 6 5 4 3 2 1 理解群 非理解群 非理解群は、理解していない にも関わらず、理解できてい ないことに気づていない t(55)=0.787 13

14.

2023/3/6 感性工学会 考察 今後の展望 しくみ非理解群は「分かったつもり」になっており 危険な使用方法などのヒューマンエラーの原因となり事故に 繋がる可能性が考えられる ・非理解群は、理解群と比べて、多く事故を起こしているのか ・電子レンジが、説明深度の錯覚を起こしやすいのか 他の電子機器でも同じ傾向の結果が得られるのか 14

15.

2023/3/6 感性工学会 グループ分けについて しくみの理解度で分ける+原体験でも活用できているか しくみを理解しているが、 具体的に注意すべき食品を理解できていない人が多くいる しくみの理解を具体例に落とし込めていない 15

16.

2023/3/6 感性工学会 今後の進め方について 説明深度の錯覚を防ぐための対処方法 製品に使用前に自身が理解していない事に気づいてもらう必要 ⇒マニュアル、取扱説明書 これまでのマニュアル 使用方法、注意事項 ⇒しくみについて言及することの影響 16

17.

2023/3/6 感性工学会 まとめ 電子レンジと説明深度の錯覚の関係について 電子レンジにおいて、説明深度の錯覚は起こっている 特にしくみ非理解群において起こっており、仕組み非理解群は 「知ってるつもり」になっている 今後は、この仕組み非理解群の「知ってるつもり」が電子レンジ の事故に繋がっているのか検証 謝辞 本研究は、株式会社クレステックとの共同研究の一環で実施したものです 17