製品マニュアルにおける動画による動作原理の概念説明の有効性

663 Views

June 26, 23

スライド概要

第70回日本デザイン学会春季研究発表大会
講演番号:1A-01
原稿(pdf):https://researchmap.jp/d_the_rhythm/presentations/42573546/attachment_file.pdf

profile-image

大阪公立大学生活科学部居住環境学科デザイン人間工学研究室(土井俊央研究室)

シェア

またはPlayer版

埋め込む »CMSなどでJSが使えない場合

(ダウンロード不可)

関連スライド

各ページのテキスト
1.

2023/6/24 デザイン学会 製品マニュアルにおける動画による 動作原理の概念説明の有効性 山本彩智(大阪市立大学 生活科学部居住環境学科4年) 土井俊央(大阪公立大学) 瀬戸大地 清水義考(株式会社クレステック) 1

2.

2023/6/24 デザイン学会 背景 製品マニュアルの役割 製品マニュアル 製品を安全かつ効果的に使用するための 正しいメンタルモデルの構築を支援 しかし、誤使用に起因する製品事故は多く 発生している マニュアルを読んでいても理解できていな い、十分に読んでおらず 正しいメンタルモデルが構築できていない https://www.nite.go.jp/data/000138707.pdf 2

3.

2023/6/24 デザイン学会 背景 メンタルモデルの分類 メンタルモデル 手順や機能のように How to use it を理解する Functional model 従来マニュアルは 操作手順や、安全注意文の説明が多い Preece, J et al.: Human-Computer Interaction, Addison-Wesley, pp. 134-137, 1994 動作原理や構造のように How it works を理解する Structural model 従来マニュアルには、 動作原理や構造の説明は不足している 3

4.

2023/6/24 デザイン学会 背景 Structural modelの効果 Structural modelの構築を支援する動作原理や構造の概念の説明 ⇒ユーザに正しいメンタルモデルを構築してもらえる 製品マニュアル国際規格では、 製品の目的や原則を理解できるような概念情報をマニュアルに 記載することを求めている 正しいメンタルモデルが構築されていれば、逐一製品マニュアル に書かれている手順に依存せずとも効果的に使用できる 4

5.

2023/6/24 デザイン学会 背景 様々なマニュアル形態の増加 近年、動画マニュアルの増加 操作手順については 紙マニュアルと比べて動画マニュアルが有効 動作原理や構造についての概念説明における 効果は十分な知見がない 5

6.

2023/6/24 デザイン学会 研究目的 • 従来マニュアルには原理や構造のStructural modelを構築する説明が 不足している ⇒正しいメンタルモデルが構築されていない可能性 • 概念情報の説明方法に対する知見が少ない Structural modelに対応する仕組みの概念情報を 紙、および動画で説明することの有効性を検討 ・電子機器の事故の中でも事故数の多い電子レンジを対象とする 6

7.

2023/6/24 デザイン学会 実験内容 ①理解度 自己評価 ②マニュアルの提示 ③理解度 自己評価 ④理解度テスト ⑤マニュアルに関する主観評価 概要 条件ごとに異なるマニュアルを用意 し、マニュアル毎の理解度の変化を 見る 実験参加者 電子レンジの使用経験のある28名 (男性:11名,女性:17名, 平均:31.8歳,SD:13.7) 7

8.

2023/6/24 デザイン学会 電子レンジの加熱の仕組み マイクロ波を当てて食品の中にある水分の水分子を振動 させて加熱し、食品の内側から温める 8

9.

2023/6/24 デザイン学会 実験方法①③ 理解度 自己評価 電子レンジのしくみについての理解を問う半構造化インタビュー • 電子レンジとは何のために使うどんな製品であるか • 電子レンジが食品を加熱する仕組み • 電子レンジで食品を加熱する際に注意すべきこと、理由 ⇒メンタルモデルの構築度合を見る 電子レンジの理解度の自己評価(7段階) • 現時点で、電子レンジの加熱原理についてどの程度理解していると思うか • 温めるときの注意点及び注意を要する食材についてどの程度理解している と思うか 加熱原理 – Structural model 正しい使用方法を理解できているか:注意点 - Functional model 9

10.

2023/6/24 デザイン学会 実験方法② マニュアルの提示 条件ごとのマニュアルを提示:4条件 • 紙によるしくみの説明:9名 Structural model + Functional model 電子レンジの加熱原理+使えない食器や食材 • 動画によるしくみの説明:9名 紙と同様の内容を動画で説明 約3分20秒の動画 10

11.

2023/6/24 デザイン学会 実験方法② マニュアルの提示 条件ごとのマニュアルを提示:4条件 • 従来マニュアル:5名 Functional model 加熱原理を含めていない従来のマニュアル 既存マニュアルを引用 • マニュアル無し:5名 マニュアルを見ることで実際に 理解度が上がるか比較するため 制限時間は設けず、普段マニュアルを見るときと 同様に見るよう指示 11

12.

2023/6/24 デザイン学会 実験方法⑤ 理解度テスト 加熱原理(記述式) Structural model • 電子レンジは何によって食品を温めているか • 電子レンジは何を含んでいる食品を温めるか • 電子レンジの熱源はどんな物質に反射するか 注意すべき食材(選択式+理由記述) Functional model • 電子レンジによって加熱しすぎると焦げやすく発火しやすい 注意が必要な食品は何か • 電子レンジによって加熱すると破裂する恐れのある食品は何か • 加熱しすぎた後、急に動かすと突沸現象がおこる可能性がある食品は何か 12

13.

2023/6/24 デザイン学会 実験方法⑥ マニュアル評価 マニュアルに関する主観評価(7段階) • 分かりやすさ • 初めて知ったことはどの程度あったか ヒアリング • 実際使いたいと思うか、感想 13

14.

2023/6/24 デザイン学会 分析方法 - 各条件で比較 1.理解度の比較 加熱原理(Structural model)、注意点(Functional model)で分けて A,マニュアル提示後での比較③ B,マニュアル提示前後での差の比較①⇒③ 2.理解度テスト 加熱原理、注意点それぞれのテストでの得点 3.マニュアルの主観評価 分かりやすさ、初めて知ったことに差はあったか ①理解度 自己評価 ②マニュアルの提示 ③理解度 自己評価 ④理解度テスト 4.半構造化インタビュー マニュアルの提示前後でメンタルモデルに変化は見られたか ⑤マニュアルの主観評価 14

15.

2023/6/24 デザイン学会 提示後の理解度の自己評価の比較 7 6 注意点の理解度の自己評価 ** ** 7 ** ** 加熱原理の理解度の自己評価 6 **: p<0.01, *: p<0.05 2 2 1 1 * ** ** 5 5 4 4 3 3 マニュアルなし 従来マニュアル 紙 動画 マニュアルなし 従来 紙 動画 紙マニュアル、動画マニュアルではマニュアル無しと比べて有意に自己評価が高い 15 注意点については、従来マニュアルでも効果が見られた

16.

2023/6/24 デザイン学会 提示前後の理解度の自己評価の差の比較 6 **: p<0.01, *: p<0.05 提示前 提示後 ** ** 6 5 提示前 提示後 5 4 4 3 3 2 1 7 注意点の理解度の自己評価 加熱原理の理解度の自己評価 7 2 従来マニュアル 紙 動画 加熱原理については、紙、動画マニュ アルで有意な差が見られた 1 従来マニュアル 紙 動画 従来マニュアルでは、加熱原理の 16 理解度が上がらない

17.

2023/6/24 デザイン学会 理解度テスト **: p<0.01, *: p<0.05 * * 5 4 2 3 2 1 0 * 注意点についての理解度テスト得点 加熱原理についての理解度テスト得点 3 6 ** 1 マニュアルなし 従来マニュアル 紙 動画 自己評価通り、紙、動画ではテストでも 有効なことが示された 0 マニュアルなし 従来マニュアル 紙 動画 従来、紙マニュアルでは自己評価の割に 17 結果が出ていない

18.

2023/6/24 デザイン学会 マニュアルの主観評価 7 *: p<0.05 * 7 初めて知ったことの多さ 6 わかりやすさ 5 4 3 2 1 6 5 4 3 2 1 従来マニュアル 紙 動画 実際の理解度、分かりやすさともに 動画マニュアルが一番評価が高い 従来マニュアル 紙 動画 身近な製品のため、元の知識が多く 「思い出した」ことが多かった 18

19.

2023/6/24 デザイン学会 半構造化インタビュー:メンタルモデルの変化 従来マニュアル 紙マニュアル • 注意点についてのみ変化 • 動作原理、注意点ともに変化

20.

2023/6/24 デザイン学会 加熱原理についての説明があることで 電子レンジの正しいメンタルモデルが構 築されている 加熱原理の理解度自己評価 Structural modelに対応する加熱原理を 説明している紙と動画では、 自己評価、理解度テスト共に評価が高い 6 提示前 提示後 5 4 3 2 1 加熱原理の理解度テスト得点 考察 加熱原理の有効性 7 従来マニュアル 紙 * 3 動画 ** 2 1 0 マニュアルなし 従来マニュアル 紙 20 動画

21.

2023/6/24 デザイン学会 注意点において、動画の条件は理解度テ ストの得点が高い ⇒動作原理だけでなく、何に注意すべき かについての理解も深まった 注意点の理解度テスト得点 考察 説明方法 6 * 5 4 3 2 1 0 マニュアルなし 注意点の理解度の自己評価 7 従来マニュアルでは、自己評価に比べて 理解度テストの得点が低い ⇒実際の理解度が高まっていない * 6 * 従来マニュアル ** 紙 動画 ** 5 4 3 2 1 マニュアルなし 従来 紙 21 動画

22.

2023/6/24 デザイン学会 まとめ 〈目的〉 Structural modelに対応する仕組みの概念情報を 紙、および動画で説明することの有効性を検討 • 電子レンジにおいてはFunctional modelだけでなく、 Structural modelに対応した加熱原理を説明することで、 自己評価、理解度テスト共に効果が見られた • 従来マニュアル、紙マニュアル、動画マニュアルでは、 動画マニュアルが最も理解を促進させた 22