分からず屋と進める社内改革

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April 15, 25

スライド概要

Power Appsの部活動コミュニティ「Power Club」でゲスト登壇させていただいた際の資料です。
https://powerclub.connpass.com/event/351793/

組織変革など、人と人の関係性や変化が生じる場面で必ずと言っていいほど起きる衝突、そして、「わかりあえなさ」について、自分なりの解釈と経験をもとにお話させていただきました。

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社内における市民開発の普及。Power PlatformやMicrosoft 365を活用した新しい仕組みの導入。 みなさんうまいこといっていますか?

なかなか話を聞いてくれない上司
思いどおりに予算を割いてくれない経営陣
何かと難癖をつけて反対してくる他部署の人
イマイチ乗り気になってくれない部下
などなど

「なんでわかってくれないんだ」「こんなにいいことをやろうとしているのに」「このままじゃ会社もみんなダメになるのに…」 正しいと思っていることがなかなか受け入れてもらえなくて思い悩んでいませんか?

歯痒さを怒りに乗せてブツけてみても、論理で殴ってみても、解決には至りません(実践済み)。

なぜうまくいかないのでしょうか。
どうしたらこれらの課題を解決に近づけていけるのでしょうか。

仕事の中で、特に社内の改革ごとに取り組んでいると遭遇する、解決がとても困難な課題が生じる原因とその対策に焦点をあてたお話をします。

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組込み屋生まれSIer育ちの営業マン(本業)。 Microsoft 365の提案・構築・運用・教育もやる自宅独学系無免許SE(趣味)。保有資格はMS-900/MS-700/PL-900/PL-100/情報セキュリティマネジメント。 ホップバシバシ系のペールエールビールが大好物。 HIT広島観光大使。

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関連スライド

各ページのテキスト
1.

分からず屋と進める社内改革 2025年4月14日 宮川 裕穂 (@miyakawayuho)

2.

– お仕事をするなかで、組織変革や業務変革など、 既存の枠組みから変化をともなう場面で「なんかうまくいかない」 という経験はありませんでしょうか? (私はたくさんあります…) 今日の目的 – Power PlatformやMicrosoft 365の導入、新しいシステムやクラ ウドサービスの導入、業務フローの変更などなど… 自分だけでなく、上司、他部署、組織のいろんな人に絡む「変化」 をともなう場面で、「なんかうまくいかない」という経験はありませ んでしょうか? – 今日は、そんな「なんかうまくいかない」原因を探り、どのようにア プローチしていくのがよいのか。 私自身が手応えを感じている理論と実践をみなさんにも共有して 明日からのお仕事に活かしてもらうことを目的としています。 ©Yuho Miyakawa 1

3.

– 山口県生まれ、 広島県在住 – 職歴 – 【前職】 組込み機器向けGUIソフトウェア開発ツールの会社で営業SEを11年 – 【現職】 広島地場のSIerで営業事務?として8年目 – Microsoft 365の導入提案、設計・構築、教育、サポート、運用 – お客さんの現場に入り込んで、お客さんと一緒に問題解決策を考え、提案 私について – 保有資格 – MS-900 (Microsoft 365 Fundamentals) – MS-700 (Teams Administrator Associate) – 情報セキュリティマネジメント – お気に入りのMicrosoft製品 – Word, PowerPoint, OneNote, Copilot, Intune Channel Connect 2023で登壇 (2023年9月 日本マイクロソフト品川本社) ©Yuho Miyakawa 2

4.

あなたについて、 少し教えてください ©Yuho Miyakawa 3

5.

– 話を聞いてくれない人 – 「ワシには関係ない」 – 「ワシは聞いとらん」 変革を進めるなかで 遭遇しがちな 「わからず屋」 – 反対ばかりしてやってくれない人 – 「それって◯◯なリスクあるよね?」 – 「前例はあるの?」「事例はあるの?」 – 「コストが〜」「費用対効果が〜」「それって儲かるの?」 – 肯定してくれるけどやってくれない人 – 「そうだねぇ…」 ©Yuho Miyakawa 4

6.

– 論理的に合理性を説明する – 導入効果について論理立てて説明する わからず屋に わからせるには どうしたらいいのか… – リスク対策について論理立てて説明する – わかりやすい資料を作成する – より強い権力者を味方につけてガツンと言ってもらう – 声を荒げる、机を叩く ©Yuho Miyakawa 5

7.

– 論理的に合理性を説明する 理論武装 – 導入効果について論理立てて説明する わからず屋に わからせるには どうしたらいいのか… – リスク対策について論理立てて説明する – わかりやすい資料を作成する – より強い権力者を味方につけてガツンと言ってもらう – 声を荒げる、机を叩く ©Yuho Miyakawa 権力 恐喝 6

8.

– (論理的な)武力行使をして、 相手をやっつけるのが目的ではなかったハズ なんかこのアプローチ は違う気がする… – もともとは、会社をより良くして、お客さんに もっと貢献できるようになるために変革に 取り組もう! …という目的だったよね… – 共創・共同による創造とは、ほど遠いね… – 仮に、わからず屋をやっつけられたところで、 また次に出てきたら同じようにやっつけるの…? ©Yuho Miyakawa 7

9.

自分が相手を「わからず屋」と感じているとき、 相手も自分のことを「わからず屋」と感じているのでは? 仮説 ©Yuho Miyakawa 8

10.

ここでアンケートに ご協力ください ©Yuho Miyakawa 9

11.

– 何回聞いても何度調べてもイマイチピンとこなかったが、 あるとき「あー、そういうことかー!」と、ズドンと腹落ちした 人の知識と知恵は 人それぞれ ©Yuho Miyakawa – 「なるほど」「理解した」「わかった」と言ったこと、感じたことがある – 自分には、まだまだわかってないことがたくさんある、と感じる (例:Microsoft 365全然わからん…) 10

12.

人がモノゴトを解釈して「物語る」枠組み → ナラティブ (narrative) • ひとりひとり、uniqueである • 常時アップデートされる (たまにデグレードもする) 人には、モノゴトを 解釈して「物語る」 枠組みがある 経験 知識と知恵 人生観 人間関係 所属部門や立場 課されている仕事 ナラティブの構成要素 ©Yuho Miyakawa 11

13.

事象X input 同じインプットでも、 解釈は人それぞれ ナラティブB ナラティブA output 解釈A ©Yuho Miyakawa input output 解釈B 12

14.

– 自分と相手のモノゴトを解釈する枠組み(ナラティブ)が異なる。 – 自分が相手を「わからず屋」と感じているときには、 お互いのナラティブの違いに起因する解釈の違いが生じており、 おそらく相手も「わからず屋」と感じている可能性が高い。 結論 ©Yuho Miyakawa 13

15.

モノゴトを解釈する枠組み あれ? …だとすると… 一人一人、ナラティブが異なるのであれば、 他人と分かち合うなんて永久に無理なのでは…? 経験 ©Yuho Miyakawa 知識と知恵 人生観 人間関係 所属部門や立場 課されている仕事 14

16.

どうする? たたかう まほう どうぐ にげる ©Yuho Miyakawa 15

17.

– 古代ギリシャ時代にソクラテスが実践し、プラトンが体系化して 書物にまとめた「対話 (dialogue:ダイアローグ)」 – パソコンの「対話型ウィンドウ」のことも「ダイアログ」という 「対話」のススメ – 語源は、何かを媒介しておこなわれる行為「dia-」と 理性的な語り「logos」から – 情報の共有を目的に言葉を交わす会話 (conversation) とも、 互いの主張をぶつけあう ディベート (debate) とも、 衝突している意見の一部ゆずる 妥協 (compromise) とも、 他人の気持ちを類推する 忖度 とも異なる行為 ©Yuho Miyakawa 16

18.

– 言葉を介して行われる理性的な語り合いのこと – 理性的な探求と創造行為であり、相手をやっつけるためのもので はない 対話とは? – お互いの解釈の枠組み (narrative) を理解し合いながら、お互い の新しい解釈の枠組みを見つけ出し、新たな洞察や合意を創造し ていく行為 ©Yuho Miyakawa 17

19.

1. 【準備】相手とのナラティブに深い谷があることに気づく – 「あれ? なんか話が噛み合ってないな?」 という違和感がヒントになる 2. 【観察】谷の向こうにある相手のナラティブをよく観察する – 相手の言動や状況を見聞きして、谷の位置や相手のナラティブを探る 対話の4STEP 3. 【解釈】谷を越えるための橋を設計する – 橋をかけられそうな場所、橋のかけ方を探る 4. 【介入】谷に橋をかける – 実際に行動することで、橋(新しい関係性)を築く ©Yuho Miyakawa 18

20.

経験 知識と知恵 人生観 人間関係 所属部門や立場 課されている仕事 谷に気づき、 ナラティブを 観察する ©Yuho Miyakawa 19

21.

対話するって レベルじゃねぇぞ! 対話の準備 その前に… ©Yuho Miyakawa 20

22.

– 怒りを感じたら、コントロールするのではなく、「怒りを感じている」 と、心の中でラベル付けをしてみましょう。 – 自分の感じていることや体の感覚に対して「◯◯を感じている」 「◯◯をしている」といったように心の中で名前をつける 「ラベリング」と呼ばれる行動です。 怒りを手放す テクニック – 原始仏教の「サティ(気づき)」という考え方に基づいています。 – 体の感覚と心の中の感情や妄想がゴチャ混ぜにになってまとわり ついている状態(執着)を手放して、冷静に正しい思考を取り戻しや すくする「生活の知恵」であり「思考法」のひとつです。 – 実際に怒っている真っ只中に「怒りを感じている」とラベリングする のは難しいので、「あの時自分は怒りを感じていたな」と振り返っ てラベリングするところから始めてみましょう。 ©Yuho Miyakawa 21

23.

ナラティブ アプローチ – 医療の世界で考えられた、人間の関係性に着目した問題解決の 手法のひとつ – 技術的なアプローチでは解決できない、人間の関係性に起因する 複雑な問題を相手のナラティブをよく観察してお互いに歩み寄る 対話型の問題解決手法 ©Yuho Miyakawa 22

24.

「かつて、 Officeは箱に 入ってましたよね」 ©Yuho Miyakawa 出典:マイクロソフト、Office 97をバージョンアップ | PC Watch 23

25.

– 約10年間、数字は右肩下がり – その間、ファンドが3回入れ替わるものの、経営状況は改善せず – 離職者も多く、「典型的なダメ会社」の烙印を押されてしまう ミスターミニット の復活劇 – 2013年にファンドから送り込まれた迫さんも、これまで同様、売り上 げを増やすための新サービスを考えて現場に指示を出すものの、 現場はその新サービスを頑なに実行しない – 「現場が動かない」ことにシビレを切らした迫さんが現場に出向き、 よくよく観察してみると、現場には現場の判断と合理性があって「新 サービスを意図的に実施していない」ことがわかった – 原因は現場ではなく、現場と本社をつなぐ”橋”にあることがわかった – 現場と本社をつなぐ”橋”の建設を慎重に積極的に進めた結果、ミス ターミニットは3年後に業績が回復し始める 出典: 他者と働く 「わかりあえなさ」から始める組織論 宇田川元一 著 NewsPicks パブリッシング ©Yuho Miyakawa ミスターミニット「ダメ会社」が再生した理由 「主演・脚本・監督、俺」の29歳 社長の変化とは? | リーダーシップ・教養・資格・スキル | 東洋経済オンライン 24

26.

©Yuho Miyakawa 25

27.

Appendix ©Yuho Miyakawa 26

28.

仕事において遭遇する問題 (problems) 問題の分類 技術的問題 (technical problem) 適応課題 (adaptive challenge) 技術的問題:技術的な解決手段がある問題 (たいがいは金、モノ、ITで解決できる) 適応課題:人と人の関係性に起因して生じている解決が困難な問題 ©Yuho Miyakawa 27

29.

他者と働く 「わかりあえなさ」から始める組織論 宇田川 元一 著 NewsPicks パブリッシング 今回の内容は、この書籍をベースにしています。ナラティブとダイアローグ。 反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」 草薙龍瞬 著 KADOKAWA 参考文献 ブッダ、と聞くと「宗教?」と身構えがちですが、いわゆるライフハック本だと思います。 実践 対話型組織開発 生成的変革のプロセス ジャーヴィス・ブッシュ 著、永石信 監訳 ディスカヴァー・トゥエンティワン 現場主導で変革していく様を描いた、理論と実践が詰まった読み物。サッと読めます。 ©Yuho Miyakawa 28