Lancet特集号の理解: 研究の価値を高め無駄を減らす

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May 24, 22

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一般社団法人臨床疫学研究推進機構

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各ページのテキスト
1.

Lancet特集号の理解: 研究の価値を高め無駄を減らす 奥村泰之 一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究部 研究員 臨床疫学研究における報告の質向上のための統計学の研究会 第19回研究集会 2015/3/21 (土) 13:10~17:40 東京医科歯科大学湯島キャンパス 1号館西7階 口腔保健学科第3講義室

2.

2009年,85%の生物医学研究は無駄, 毎年,数100億米ドルの損失 Chalmers, Glasziou: Lancet. 2009 Jul 4;374(9683):86-9. 2

3.

2014年,上方修正 毎年,2,000億米ドルの損失 Macleod MR et al: Lancet. 2014 Jan 11;383(9912):101-4. 3

4.

2009年,無駄研究の発生要因, 研究進捗4段階別 研究疑問 研究計画 Chalmers, Glasziou: Lancet. 2009 Jul 4;374(9683):86-9. 入手可能性 報告 4

5.

2014年,無駄研究の発生要因, 研究進捗5段階別 規制と管理 Macleod MR et al: Lancet. 2014 Jan 11;383(9912):101-4. 5

6.

感情的反発への配慮, 無駄→研究の価値を高める機会 Walley T: Improving reporting to decrease the waste of research: the point of view of an academic funder (http://www.equatornetwork.org/paris2014/09_Thepointofviewofanacademicfunder/09_Thepointofviewofanacademicfunder/index.html#0_209000) 6

7.

研究疑問,無駄研究の発生要因 優先順位の低い研究疑問 重要なアウトカムの欠落 50%以上の研究計画は,系統的展望を 未参照 Macleod MR et al: Lancet. 2014 Jan 11;383(9912):101-4. 7

8.

研究計画,無駄研究の発生要因 50%以上の研究計画は,バイアスへの リスクの配慮不足 不十分な検定力 (標本サイズ) 不十分な研究成果の再現性 Macleod MR et al: Lancet. 2014 Jan 11;383(9912):101-4. 8

9.

規制と管理,無駄研究の発生要因 無駄となる原因への配慮不足 (臨床試 験登録の確認など) リスクに不釣り合いな規制 負担かつ不整合な規制・管理プロセス Macleod MR et al: Lancet. 2014 Jan 11;383(9912):101-4. 9

10.

入手可能性,無駄研究の発生要因 50%以上の研究は未公表 意に沿わない研究の未公表 研究成果の一部の選択的報告 Macleod MR et al: Lancet. 2014 Jan 11;383(9912):101-4. 10

11.

報告,無駄研究の発生要因 30%以上の研究は報告不完全 50%以上の研究は事前設定した主要評 価項目を未報告 新しい研究の多くは関連研究の文脈と の解釈不足 Macleod MR et al: Lancet. 2014 Jan 11;383(9912):101-4. 11

12.

無駄研究の予防法の特集 研究疑問 研究計画 入手可能性 [1] Chalmers I et al: Lancet. 2014 Jan 11;383(9912):156-65 [2] Ioannidis JP et al: Lancet. 2014 Jan 11;383(9912):166-75 [3] Al-Shahi Salman R et al: Lancet. 2014 Jan 11;383(9912):176-85 [4] Chan AW et al: Lancet. 2014 Jan 18;383(9913):257-66 [5] Glasziou P et al: Lancet. 2014 Jan 18;383(9913):267-76 規制と管理 報告 12

13.

無駄研究の予防法,発表分担 • 基礎研究から応用につながる可能性を高める方法を検討する。 • 資金提供者は,ユーザーのニーズに合致した研究疑問を考慮し,研究助成プロセスの透明性を向上させる。 • 資金提供者と監査者は,研究助成の申請書において,新たな一次研究を実施する正当性の説明として,系統的展望に基づく記載を求める。 研究疑問[1] 土屋政雄 • 資金提供者と監査者は,進行中の研究として何が存在しているかを把握できるよう,インフラを整備する。 • 研究計画書,解析手順書,生データを公開する。 • 研究法に精通した研究者が研究の全プロセスに関与する,研究者へ研究法を継続的に教育する,経済的利害関係者による影響を減らす。 伊藤理紗 研究計画,実施と分 • 再現性を高める研究活動 (例: データ共有や解析スクリプト公開) や再現性のある研究へ報酬 (例: 研究費や学術的評価) を与え,追試を促進するための効果的な文化を作る。 析[2] 徳増裕宣 • 倫理審査委員会などの監査者は,無駄な研究を減らすように権限を行使する (例: 臨床試験の事前登録を要求するなど)。 • 監査者と政策立案者は,研究者などと協力して研究実施のガイドラインなどを策定し,それらは研究に関連するリスクと釣り合うよう保証する。 • 研究者と研究責任者は,症例登録,欠測,データモニタリング,データ共有の効率を上げ,これらの効率を高めるための研究を行う。 規制と管理[3] • すべての人は,通常診療と研究を統合するよう宣伝することで,臨床試験の効率改善を支援する。 市川周平 • 研究機関と資金提供者は,研究の普及に関する業績評価を適用する (例: 倫理審査承認の研究あたりの,出版割合やデータ共有割合)。 • 研究者,資金提供者,監査者などは,研究計画書やデータ共有の基準を開発・採用する (例: SPIRIT声明やPRISMA-P声明の採用)。 入手可能性[4] • 資金提供者,監査者,出版社などは,研究の事前登録,研究計画書の公開,データ共有を支持・強制する。 松岡志帆 • 研究機関と資金提供者は,研究報告の完全性を高めるよう,監査し報酬を与える。 • 資金提供者は,良好な報告と保管を支援するための,研究報告のインフラ整備に責任を持つ。 報告[5] • 資金提供者,研究機関と出版社は,著者と査読者が研究報告の完全性を高められるよう改善する。 [1] Chalmers I et al: Lancet. 2014 Jan 11;383(9912):156-65 [2] Ioannidis JP et al: Lancet. 2014 Jan 11;383(9912):166-75 [3] Al-Shahi Salman R et al: Lancet. 2014 Jan 11;383(9912):176-85 [4] Chan AW et al: Lancet. 2014 Jan 18;383(9913):257-66 [5] Glasziou P et al: Lancet. 2014 Jan 18;383(9913):267-76 13

14.

無駄予防の事例,多方面の関係者の努力 資金提供者,研究機関と出版社は,著者と査読者が研究報告の完全 性を高められるよう改善する。 研究法に精通した研究者が研究の全プロセスに関与する,研究者へ 研究法を継続的に教育する,経済的利害関係者による影響を減らす。 倫理審査委員会などの監査者は,無駄な研究を減らすように権限を 行使する (例: 臨床試験の事前登録を要求するなど)。 [1] Chalmers I et al: Lancet. 2014 Jan 11;383(9912):156-65 [2] Ioannidis JP et al: Lancet. 2014 Jan 11;383(9912):166-75 [3] Al-Shahi Salman R et al: Lancet. 2014 Jan 11;383(9912):176-85 [4] Chan AW et al: Lancet. 2014 Jan 18;383(9913):257-66 [5] Glasziou P et al: Lancet. 2014 Jan 18;383(9913):267-76 14

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無駄予防に寄与する関係者 組織 資金提供者 監査者 研究機関 個人 方法論者 査読者 政策立案者 出版社 成果の 利用者 研究者 [1] Chalmers I et al: Lancet. 2014 Jan 11;383(9912):156-65 [2] Ioannidis JP et al: Lancet. 2014 Jan 11;383(9912):166-75 [3] Al-Shahi Salman R et al: Lancet. 2014 Jan 11;383(9912):176-85 [4] Chan AW et al: Lancet. 2014 Jan 18;383(9913):257-66 [5] Glasziou P et al: Lancet. 2014 Jan 18;383(9913):267-76 15

16.

日本,関係者への周知から始めよう 奥村泰之, 赤羽隆文: Monthly IHEP 239: 14-22, 2015. (http://goo.gl/QRbtTP) 16

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Take Home Messages 無駄な研究は蔓延 予防には多方面の関係者の協力が不可欠 関係者への周知から(^^) 17

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JustGiving 統計学で検索! http://justgiving.jp/p/886 REQUIRE研究会は、臨床疫学系の研究者が、統計学の継続学習をする場です。こうした取り組みは、公的研究費や民間財団からの支援を受けることは難しい状況です。しかし、運営費を確保するた めに参加費や年会費を高く設定することは、大学院生の参加を妨げ、かつ「参加者が講師」というスタンスを貫くために採用したくないと考えています。継続的に健全な研究会を運用可能な仕組みにするため、どうか、ご支援を頂けると幸いです。