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October 16, 26

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Security Days Fall 2026 Fukuoka FB-05 2026年10月16日(金)13:00–13:30 「ひとががんばる」から 「AIとともに判断する」へ ― サイバー危機に備える人材と組織 ― 九州大学 情報基盤研究開発センター 小出 洋 Room B

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はじめに 4分 今日の結論を先に申し上げます 1 攻撃も防御も速くなりました。いま一番遅いのは「人の判断」です AIで見つけるのも、攻めるのも速くなった。詰まるのは、決めて説明するところです 2 AIを判断の「相手」にします。決める権限と責任は人に残します 選択肢を並べさせ、反対の立場から問わせる。出力は「検証すべき仮説」として扱います 3 がんばる人に頼らず、判断が回る仕組みを平時に作ります 任せ方・判断カード・演習の3つで、限られた人員でも回るようにします 「ひとががんばる」を「仕組みが回す」に置き換える ― 今日はその具体的なやり方の話です。 Security Days Fall 2026 Fukuoka FB-05 小出 洋(九州大学) 2 / 24

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はじめに 4分 これまでの話と、今日の一歩 沈まないための備え 5月 鹿児島 やられても事業が 止まらないことを目標 に。 止まらない力は 訓練で得る 作業はAI、判断は人。 判断をその場で作る 組織は追いつけない。 → 判断を設計する 9月 FIT2026 AI出力は「答え」では なく 「検証すべき仮説」。 それを事業継続判断へ 変換する人材を育てる 今日 AIを判断の「相手」にし、 不確実なまま 早く決め直せる組織を、 限られた人員で作る 「作業はAI、判断は人」から一歩進めて、「AIとともに判断する」へ。 Security Days Fall 2026 Fukuoka FB-05 小出 洋(九州大学) 3 / 24

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はじめに 4分 この30分の地図 5分 律速点は人の判断へ 判断に使える時間が短くなった。5つの判断 9分 AIとともに判断する AIを判断の相手にする。ミニ演習と暫定判断 5分 限られた人員で回す 任せ方の3段階と判断カード 5分 平時に判断を練習する AIを入れた机上演習と、そこで測るもの 2分 明日からやること 持ち帰っていただく3つ 付録に、判断カードと演習進行の雛形を付けています。そのままお使いください。 Security Days Fall 2026 Fukuoka FB-05 小出 洋(九州大学) 4 / 24

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第1部 律速点は人の判断へ 速くなったのは「見つける」まで。遅いのは「決める」

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第1部 律速点は人の判断へ 5分 見つけるのはAIで速くなりました。詰まるのはその先です AI・攻撃 不確実な候補 人の判断と説明 脆弱性候補、PoC、 アラートが大量に、速く届く 本物か、届くのか、 影響はどこまでか未確定 ここが律速点。 判断に使える時間は短くなった 人と組織がこなすべき一連の処理(個々のAIツールの性能だけでは片づかない) 重複を除く 真偽を確かめる 自社に届くかを見る 緩和策を選ぶ 止めるか決める 誰に何を説明するか AIの性能が上がると、防御は楽になるのではなく、「見つけた後の判断と説明」が重くなります。 Security Days Fall 2026 Fukuoka FB-05 小出 洋(九州大学) 6 / 24

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第1部 律速点は人の判断へ 5分 組織の命運を分ける判断は、いまも人にあります 止めるか 続けるか 説明するか 公表するか 何から戻すか サービス・リリー スを止めるか。ど こまで止めるか 事業をどう続ける か。手作業や縮退 運用に切り替える か 顧客・取引先に、 何を、どの順で説 明するか いつ、どこまで公 表するか。当局へ の報告 復旧の順番。どの 状態なら信用して よいか どれも「取り消しにくく」「影響が広く」「後で説明を求められる」判断です。だからAIに丸投げできません。 Security Days Fall 2026 Fukuoka FB-05 小出 洋(九州大学) 7 / 24

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第1部 律速点は人の判断へ 5分 「ひとががんばる」の正体は、判断の材料集めです 初動の工程 AIに任せやすい作業(材料) 人が担う判断 把握 アラートの集約、ログの突き合わせ、時系列の整理 「インシデントだ」と宣言するか 影響 影響範囲の候補、似た事例の検索 どの業務を優先して守るか 封じ込め 隔離手順の案、設定変更の下書き 止める範囲と、止める時刻 説明 経緯の要約、文案、想定問答の下書き 何を、誰に、いつ出すか 復旧 バックアップの確認、手順の提示 何から戻すか、どこまで信用するか 夜通しがんばっているのは、多くの場合、左の列です。左をAIに渡して、人は右に集中します。 Security Days Fall 2026 Fukuoka FB-05 小出 洋(九州大学) 8 / 24

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第2部 AIとともに判断する 「作業はAI、判断は人」の、その先へ

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第2部 一歩① AIを判断の相手にする 9分 AIに作業だけでなく、判断の「相手」をさせます 選択肢を並べさせる 反対の立場から問わせる 見落とした前提を挙げさせる 「止める/続ける/部分的に止め る」を、それぞれの根拠・影響・ 取り消しやすさとともに並べさせ ます 決めかけた案に対して、あえて反 論させます。「止めない場合に一 番困るのは誰か」 「この判断が間違っているとした ら、どの前提が崩れたときか」を 挙げさせます 決めるのは人、責任を負うのも人です。AIは参謀であって、決裁者ではありません。 Security Days Fall 2026 Fukuoka FB-05 小出 洋(九州大学) 10 / 24

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第2部 AIとともに判断する 9分 AIの出力を受け取ったら、4つを問い直します AIが示した候補を、自社のシステムの構造へ戻して問い直す 共通する姿勢 どの仮定が成り立っているか ? 間違っていたら何が起きるか ? どの証拠が足りないか? 組織の誰が決めるべきか? 確実な情報が少ない中で、判断を遅ら せすぎず、かつAIを過信しない。 AIの出力は「答え」ではなく「検証す べき仮説」です。 「AIを使いこなす」ことより、AIの出力を自社のシステムと組織の文脈に置き直すことが要です。 Security Days Fall 2026 Fukuoka FB-05 小出 洋(九州大学) 11 / 24

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第2部 ミニ演習(会場参加) 9分 ミニ演習:金曜17時、重大な脆弱性が公表されました 前提 判断してください ・自社の Web システムを複数の顧客企業が使っている ・利用しているフレームワークに重大な脆弱性。 PoC は公開済み ・脆弱な機能を実際に使っているかは未確認。 攻撃の痕跡はまだない ・月曜午前に、大口顧客向けの機能リリースを予定して いる A リリース延期を即決し、週末に緊急 対応する B AIの結果を受けて、月曜リリースは 予定どおり実施する C 今ある材料で暫定判断し、見直す時 刻と条件を決めておく 18時、AIエージェントの調査結果が届く 「脆弱な機能は使われていない可能性が高い(静的 解析による)。リリースは予定どおりで問題ないと考え られる」 5月(鹿児島)のミニ演習の続編です。前提は同じで、途中でAIの調査結果が届きます。 Security Days Fall 2026 Fukuoka FB-05 小出 洋(九州大学) 12 / 24

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第2部 一歩② 暫定判断 9分 判断を遅らせすぎず、AIを過信しない ― 暫定判断 不確実なときの2つの失敗 暫定で決め、見直す時刻を決める 過信:AIのもっともらしい結論をそのまま採用 する(ミニ演習の B) 「今の材料では、リリースは保留。顧客に暫定の 連絡を入れる」 「日曜12時に、動的な確認の結果を見て見直す」 「脆弱な機能の利用が否定できれば、予定どおり 出す」 先送り:情報がそろうまで決めない。その間に 悪用と問い合わせが広がる (AIの出力を一律に信じない「過剰な拒否」も こちら) この3点を、決めた人の名前と時刻とともに記録 します。 完全な情報は来ません。決め直せる形で早く決めることが、不確実な状況での判断の型です。 Security Days Fall 2026 Fukuoka FB-05 小出 洋(九州大学) 13 / 24

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第3部 限られた人員で回す 「あの人がいないと動かない」をなくす

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第3部 限られた人員で回す 5分 「ひとががんばる」体制の弱さは、判断が人に貼りついていること よくある状態 規模の小さい組織ではさらに ・判断できる人が1〜2人に集中している ・夜間・休日・長期戦で、その人が倒れる ・判断の根拠が頭の中にあり、記録に残らない ・情シスが1人、または兼務 ・経営層が「ITの問題」と捉えている ・反対意見を言ってくれる同僚がいない ・頼る先を、事故が起きてから探す 人を増やすのは難しい。変えられるのは、判断を人から仕組みへ移すことです。 Security Days Fall 2026 Fukuoka FB-05 小出 洋(九州大学) 15 / 24

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第3部 一歩③ 任せ方を書く 5分 AIへの任せ方は、3つの問いで3段階に分けておきます 問い 自動でよい 人の承認つき 人が決める 取り消せるか すぐ戻せる 手間はかかるが戻せる 戻せない 影響はどこまでか 一部の端末・利用者 一つの部署・サービス 全社・顧客・社会 後で説明できるか 根拠が記録に残る 根拠を人が確かめられる 説明責任を人が負う 例 不審な端末の隔離 一部サービスの一時停止 リリース延期、公表、身代金 3つのうち1つでも右に寄れば、右の段階に置きます。AIエージェントのリスクは「賢さ」より 「権限」にあります。 Security Days Fall 2026 Fukuoka FB-05 小出 洋(九州大学) 16 / 24

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第3部 一歩③ 判断カード 5分 5つの判断を、1枚ずつ「判断カード」にしておきます 項目 記入例:「リリース・サービスを止めるか」 決める人/代わりの人 事業部長 / 不在時は情報システム部長(連絡がつかなければ当番責任者) 確認する順番 露出 → 実際に使っているか → 顧客・業務への影響 → 停止以外の緩和策 AIに出させるもの 影響範囲の候補、選択肢とその根拠、反対の立場からの指摘 期限と見直し 公表から○時間以内に暫定判断。○時間ごとに見直す。覆す条件 伝える先 経営層、広報、主要顧客の窓口、委託先 頼る先 保守ベンダー、インシデント対応事業者、保険、警察の相談窓口、地域の協議会 判断を「その場で作らない」ための1枚です。5つの判断 × 1枚、A4 で5枚から始められます。 Security Days Fall 2026 Fukuoka FB-05 小出 洋(九州大学) 17 / 24

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第4部 平時に判断を練習する 一度も決めたことのない判断は、当日も決められません

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第4部 一歩④ AIを入れた演習 5分 机上演習に、AIを「3つの役」で入れます 状況をまとめる役 状況を揺さぶる役 記録を残す役 次々に入る情報を AI が整理し、 判断者に要約を渡します。参加者 がそれを鵜呑みにしないかも見ま す 誤った要約や、自信過剰な提案、 想定外の問い合わせを AI が差し 込みます。毎回違う演習になりま す 誰が、いつ、何を根拠に、暫定で 決め、いつ見直したかを記録し、 振り返りの材料にします AIは参謀であって、決裁者ではありません。そのことを、演習で体に覚えてもらいます。 Security Days Fall 2026 Fukuoka FB-05 小出 洋(九州大学) 19 / 24

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第4部 平時に判断を練習する 5分 演習で測るのは、判断の「質」です 観点 記録するもの 暫定判断までの時間 情報が入ってから暫定で決めるまで。決めずに止まっていた時間 見直し 決めた時刻どおりに見直したか。何を見て覆した/維持したか AIとの距離 要約を確かめたか(過信)。使える材料を捨てていないか(過剰な拒否) 伝わり方 判断が次の部門・取引先へ、いつ届いたか 人の評価はしません。演習の成果物は、書き直した判断カードです。 Security Days Fall 2026 Fukuoka FB-05 小出 洋(九州大学) 20 / 24

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明日からやること 2分 持ち帰っていただきたい3つ 1 5つの判断を判断カードにし、決める人と代わりの人を決める 止める・続ける・説明する・公表する・何から戻す 2 AIへの任せ方を3段階に分け、判断の場ではAIに反論させる 取り消せるか・影響はどこまでか・後で説明できるか。決めるのは人 3 AIを入れた机上演習で「暫定判断と見直し」を練習する 終わったら判断カードを書き直し、次の演習日をカレンダーに入れる どれも予算より先に、決めることで始められます。「ひとががんばる」から「AIとともに判断する」へ。 Security Days Fall 2026 Fukuoka FB-05 小出 洋(九州大学) 21 / 24

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付録 1 配布用 判断カード(雛形) 項目 書くこと 判断 止める/続ける/説明する/公表する/何から戻す のどれか。対象(どのサービス・業務か) 決める人/代わりの人 役職で書く。連絡がつかないときの順番まで 判断の材料 何を見て決めるか。AIに出させるもの、人が確かめるものを分けて書く 任せ方の段階 自動/人の承認つき/人が決める。どこまでが自動か 期限と見直し 暫定判断の期限。見直しの間隔。覆す条件 伝える先 経営層、広報、法務、現場、取引先、委託先、当局 頼る先 ベンダー、インシデント対応事業者、保険、警察の相談窓口、地域の協議会 記録 誰が・いつ・何を根拠に決めたか。決めなかった場合はその理由 Security Days Fall 2026 Fukuoka FB-05 小出 洋(九州大学) 22 / 24

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付録 2 配布用 AIを入れた机上演習の進行雛形(90分) 時間 内容 0:00–0:10 目的とルール。人を評価しない。正解はない。AIは参謀で、決めるのは人 0:10–0:25 状況1(発覚)。AIの要約を受け取り、暫定判断と見直し時刻を決める 0:25–0:45 状況2(連絡手段が使えない/AIの要約に誤りが混ざる)。確かめ方を言ってもらう 0:45–1:00 状況3(取引先・委託先・拠点からの問い合わせ)。誰が何を答えるか 1:00–1:10 状況4(報道・SNS・身代金要求)。「人が決める」段階の判断者を特定する 1:10–1:30 振り返り。AIが残した記録を見ながら、詰まった場所だけを拾う。判断カードを直す Security Days Fall 2026 Fukuoka FB-05 小出 洋(九州大学) 23 / 24

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ご参加いただき ありがとうございました 九州大学 情報基盤研究開発センター 小出 洋