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February 27, 17
スライド概要
東京大学 システム情報学専攻 談話会
2017年2月27日(月)15時~16時30分
北村大地, "独立性に基づくブラインド音源分離の発展と独立低ランク行列分析," 東京大学 システム情報学専攻 談話会, 2月27日, 2017年.
Daichi Kitamura, "History of independence-based blind source separation and independent low-rank matrix analysis," The University of Tokyo, Department of Information Physics and Computing, Seminar, 27th Feb., 2017.
http://d-kitamura.net/links_en.html
東京大学 システム情報学専攻 談話会 2017年2月27日(月)15時 独立性に基づくブラインド音源分離の発展と 独立低ランク行列分析 History of independence-based blind source separation and independent low-rank matrix analysis 総合研究大学院大学(SOKENDAI) 複合科学研究科 博士後期課程3年 北村大地
自己紹介 • 名前: 北村大地(Daichi Kitamura) • 年齢: 26(1990年3月11日生まれ),博士後期課程3年 • 経歴: 香川高等専門学校(旧高松工業高等専門学校)(16 ~ 22) 電気情報工学科→専攻科(創造工学専攻), 学士(工学) 奈良先端科学技術大学院大学(22 ~ 24) 情報科学研究科, 修士(工学) 総合研究大学院大学(24 ~ 27) 複合科学研究科(情報学専攻),博士(情報学)取得見込 • Twitter: @UDN48_udon サバゲー 2
発表の概要 • 研究の背景 – 音源分離問題とその用途 • ブラインド音源分離と独立成分分析 – 前提条件,問題解決に利用可能な手掛かり – 周波数領域への適用,耐残響性の向上 • 音楽信号の効率的なモデリング – 非負値行列因子分解による低ランク近似 – 多次元観測音響信号への拡張 独立成分分析 に由来する音源分離法 の発展 (1994年~2012年) 非負値行列因子分解 に由来する音響信号の 表現方法の発展 (1999年~2013年) • 独立低ランク行列分析によるブラインド音源分離 – 独立低ランク行列分析 – 多チャネル非負値行列因子分解との関連性 • まとめとさらなる発展 – より高精度なブラインド音源分離を目指して 3
発表の概要 • 研究の背景 – 音源分離問題とその用途 • ブラインド音源分離と独立成分分析 – 前提条件,問題解決に利用可能な手掛かり – 周波数領域への適用,耐残響性の向上 • 音楽信号の効率的なモデリング – 非負値行列因子分解による低ランク近似 – 多次元観測音響信号への拡張 独立成分分析 に由来する音源分離法 の発展 (1994年~2007年) 非負値行列因子分解 に由来する音響信号の 表現方法の発展 (1999年~2013年) • 独立低ランク行列分析によるブラインド音源分離 – 独立低ランク行列分析 – 多チャネル非負値行列因子分解との関連性 • まとめとさらなる発展 – より高精度なブラインド音源分離を目指して 4
研究の背景:音源分離問題 • 音源分離(audio source separation) – 複数の音源が混合された信号を音源毎に分離する信号処理 – 音声認識,雑音抑圧,補聴器,会議アーカイブ etc. – ほぼ全ての音響システムのフロントエンドに応用可能 • 観測信号から有意な因子を抽出する技術 – 知能情報学の一大トピック • 音楽信号の音源分離(music source separation) 音楽CD 音源分離 実演奏の録音 – ユーザによる既存音楽の再編集,自動採譜技術, 楽器演奏における教育支援,超臨場感音場再現の制御 等 5
研究の背景:音源分離問題の種類 • 混合される音源数と録音時のマイク数の関係 – 優決定条件(音源数 音源信号 マイク数)の音源分離 観測信号 混合系 分離信号 分離系 マイクロホンアレイ – 劣決定条件(音源数 マイク数)の音源分離 L-ch 1-ch R-ch 音楽CD ステレオ信号(2-ch) モノラル録音 モノラル信号(1-ch) • 「事前情報」の有無 – 音色の事前学習,楽譜やユーザアノテーション,音源やマイク の空間的な位置情報等 – 事前情報を用いない手法:ブラインド音源分離 6
研究の背景:歴史的発展 • 基礎となる数理理論の登場と発展 1994 独立成分分析(ICA) 1998 1999 周波数領域ICA(FDICA) 非負値行列因子分解(NMF) 年代 パーミュテーション 問題解決法の検討 2006 独立ベクトル分析(IVA) 2009 2012 2013 2016 ※代表的な手法のみを表記 NMFの様々な問題への適用 生成モデル的解釈 各種拡張 板倉斎藤擬距離NMF(ISNMF) 時変複素ガウスIVA 多チャネルNMF 独立低ランク行列分析(ILRMA) 7
発表の概要 • 研究の背景 – 音源分離問題とその用途 • ブラインド音源分離と独立成分分析 – 前提条件,問題解決に利用可能な手掛かり – 周波数領域への適用,耐残響性の向上 • 音楽信号の効率的なモデリング – 非負値行列因子分解による低ランク近似 – 多次元観測音響信号への拡張 独立成分分析 に由来する音源分離法 の発展 (1994年~2012年) 非負値行列因子分解 に由来する音響信号の 表現方法の発展 (1999年~2013年) • 独立低ランク行列分析によるブラインド音源分離 – 独立低ランク行列分析 – 多チャネル非負値行列因子分解との関連性 • まとめとさらなる発展 – より高精度なブラインド音源分離を目指して 8
ブラインド音源分離と独立成分分析 • ブラインド音源分離(blind source separation: BSS) – 混合系 が未知の条件で分離系 を推定 混合系 分離系 BSS – マイクの位置や間隔,音源の位置等の情報が不要 • 優決定条件(マイク数≧音源数)のBSS – 統計的独立性に基づく手法が代表的 • 独立成分分析(ICA)[Comon, 1994] • 周波数領域ICA(FDICA)[Smaragdis, 1998], [Saruwatari, 2000], [Sawada, 2004], ・・・ • 独立ベクトル分析(IVA)[Hiroe, 2006], [Kim, 2006], [Kim, 2007], [Ono, 2011] • 音響信号のBSSにおける難しさ – 「残響による畳み込み混合」の逆系を推定しなければならない 9
独立成分分析(ICA)おさらい • ICAの前提条件 – 3つの仮定を用いて混合前の独立成分を推定 • 1. 独立成分は互いに独立(音源は多くの場合独立) • 2. 独立成分は非ガウスな分布から生成(音声や音楽は非ガウス分布) • 3. 混合行列は可逆で時不変(優決定,音源やマイクは移動しない) 音源信号 (潜在因子) 1. 互いに独立 2. 非ガウス分布 混合系 混合信号 (観測情報) 3. 可逆で時不変 逆行列 10
独立成分分析(ICA)おさらい • ICAの不確定性 – 2つの任意性が存在 • 1. 独立成分の分散(パワー)は決定できない(音量が分からない) • 2. 独立成分の順序は決定できない(順番が変わりうる) 独立成分 混合信号 推定信号 分離系 ICA 独立成分 混合信号 推定信号 分離系 ICA 11
独立成分分析(ICA)おさらい • ICAの推定理論 – 推定信号間の独立性を最大化 近づける – 対数尤度関数 :音源の非ガウスな分布 未知なものなので適当に与える必要がある 12
音源の分布:音声 • 音声の時間信号 ガウス分布よりも急峻で裾 が長い →尖度が高い 13
音源の分布:ピアノ音 • ピアノ音の時間信号 ラプラス分布 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 -5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5 音声ほどではないが,やは りガウス分布よりも急峻で 裾が長い →尖度が高い →ラプラス分布に近い? 14
音源の分布:ドラム音 • ドラム音の時間信号 コーシー分布 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 -5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5 ガウス分布よりも急峻で裾 が長い →尖度が高い →コーシー分布っぽい 15
耐残響性の向上:周波数領域ICA(FDICA) • 実際の音響信号の混合 – 残響による畳み込み混合 • 例: 会議室では300ミリ秒,コンサートホールでは2秒等 畳み込み混合 残響長 瞬時混合 (混合フィルタのタップ長) – 時不変混合係数 が時不変混合フィルタ に変化 • 対残響性の向上 – 時間領域での逆フィルタ を推定 • 16 kHzサンプルでは300 msのフィルタ長が4800タップ(1音源あたり) • ICAで推定すべきパラメータが爆発的に増加→推定は困難 – 周波数領域でのICAの適用 • 周波数毎の分離行列 を周波数毎のICAで推定→推定は容易 • パーミュテーション問題に直面 16
耐残響性の向上:周波数領域ICA(FDICA) • 短時間フーリエ変換(short-time Fourier transform: STFT) フーリエ変換 … 窓関数 Frequency – 音響信号を短時間で切り出して周波数領域に変換 フーリエ変換 スペクトログラム フーリエ変換 窓長 … Time スペクトログラムの解像度を決定 シフト長 窓長が短い:時間分解能が高い 窓長が長い:周波数分解能が高い 窓長 – 窓長より短い畳み込み混合を周波数領域の瞬時混合に変換可 – 従来のICAやその推定アルゴリズムがそのまま適用可能 – 窓長の設定はトレードオフが存在 [Araki1, 2003] • 長いと統計バイアスが増加,短いと残響の影響が増加 17
耐残響性の向上:周波数領域ICA(FDICA) • 周波数領域ICA(FDICA)[Smaragdis, 1998] … 周波数領域の時不変 瞬時混合行列 … … Frequency bin – 各周波数ビンの複素時系列に対して独立なICAを適用 スペクトログラム ICA1 ICA2 ICA3 ICA Time frame 逆行列 18
耐残響性の向上:周波数領域ICA(FDICA) • FDICAにおけるパーミュテーション問題 – 各周波数ビンで推定信号の順序がバラバラになる – 様々なパーミュテーションソルバが検討されている 分離信号1 音源1 観測1 ICA Time 音源2 Permutation Solver 分離信号2 観測2 全て時間周波数 領域の信号 ※分散(スケール)もバラバラになるが,これは容易に戻すことが可能 19
到来方向を用いたパーミュテーション解決 • FDICA+DOAクラスタリング[Saruwatari, 2006] – 推定分離フィルタ から混合フィルタ を逆算 – 音源の到来方向(DOA)でクラスタリング 音源 とマイクアレイ間の 伝達系を表す 「ステアリングベクトル」 混合行列の列ベクトル 正面 右 DOA クラスタリング 左 正面 到来方向(DOA) 右 推定された 音源成分の頻度 推定された 音源成分の頻度 左 Source 1 Source 2 左 正面 右 到来方向(DOA) 20
FDICAによる音源分離のメカニズム • FDICAで推定される分離フィルタ とは? – 周波数領域での瞬時混合を仮定 – 音源毎の空間特徴の違いを用いた線形の空間分離フィルタ 空間分離 フィルタ 音源1 音源1の空間 分離フィルタ 音源1 音源2 分離フィルタのタップ長 はフーリエ変換の窓長 と同じ – 適応ビームフォーミング(ABF)と本質的に等価 [Araki2, 2003] • ABF:妨害音のみがアクティブな時間の出力二乗誤差最小化 • 妨害音に対してヌル(感度0)を打つような空間分離 • ABFは音源位置とマイク位置が既知で音源アクティビティ検出が必要 – FDICAはブラインドな音源分離手法 • 混合系未知,アクティビティ検出不要 • 厳密な音源位置とマイク位置が既知の場合のビームフォーミングが FDICAの上限性能といえる 21
FDICAの分離フィルタとABFの分離フィルタ • 図は [Araki2, 2003] より引用 BSSの 空間分離 フィルタ TR = 0 ms TR = 300 ms TR = 0 ms TR = 300 ms ABFの 空間分離 フィルタ 22
独立ベクトル分析(IVA) • よりエレガントなアプローチ – 分離フィルタ推定(周波数毎のICAの最適化) 1個の問題の – パーミュテーション問題の解決(ポスト処理) 最適化で実現したい • 独立ベクトル分析(IVA)[Hiroe, 2006], [Kim, 2006] スカラー – ICAを多変量(多次元)分布モデルへ拡張( – 周波数をまとめたベクトル変数に対するICA 多変量非ガウス分布 混合行列 観測信号 ベクトル 分離行列 ) 推定信号 互いに独立 … … … … … 互いに高次相関を持つ 同じ音源が一つの推定信号に自然にまとまる 23
IVAにおける音源分布と高次相関 • FDICAとIVAの違いは非ガウス音源分布のみ – 音源の事前分布が一変量か多変量か • IVAの仮定する音源の事前分布 – 零平均ラプラス分布の例(音声信号のモデルとして一般的) 周波数毎に独立な 事前分布 周波数間で高次相 関をもつ事前分布 分散共分散行列 – 後者は (互いに無相関)の場合でも, • 球対称な分布を仮定していることに起因 • 高次相関性,高次依存性が生じる のとき が互いに依存 ベクトルノルムにのみ依存 24
IVAにおける音源分布と高次相関 • 図は [Kim, 2007] より引用 互いに独立な 二変数ラプラス 分布 x1とx2は互いに独立なラプラス分布 (条件付き分布はラプラス分布) 球対称な 二変数ラプラ ス分布 x1とx2は互いに無相関だが 依存関係がある • 球対称音源分布の(かなりざっくりとした)定性的な説明 – 周波数間で同じ時間変動を持つ成分を一つの音源としてまとめ る傾向にある パーミュテーション問題の回避 25
FDICAとIVAの分離原理比較 • FDICAの分離原理 推定信号 STFT 分離フィルタ 推定信号の分布形状があらかじめ仮定した非ガウス な音源分布に近づくように分離フィルタを更新 Time Frequency 観測信号 Frequency 中心極限定理より,混合信号 本来の音源信号は はガウス分布に近い信号 非ガウス分布に従う スカラーの 確率変数 推定信号の 現在の分布形状 非ガウスな 音源分布 互いに 独立 Time • IVAの分離原理 Frequency 推定信号 分離フィルタ STFT 推定信号の分布形状があらかじめ仮定した非ガウスな 球対称の音源分布に近づくように分離フィルタを更新 Time Frequency 観測信号 ベクトルの多変量 確率変数 非ガウスな 球対称多変量 推定信号の 音源分布 現在の分布形状 互いに 独立 Time 26
発表の概要 • 研究の背景 – 音源分離問題とその用途 • ブラインド音源分離と独立成分分析 – 前提条件,問題解決に利用可能な手掛かり – 周波数領域への適用,耐残響性の向上 • 音楽信号の効率的なモデリング – 非負値行列因子分解による低ランク近似 – 多次元観測音響信号への拡張 独立成分分析 に由来する音源分離法 の発展 (1994年~2012年) 非負値行列因子分解 に由来する音響信号の 表現方法の発展 (1999年~2013年) • 独立低ランク行列分析によるブラインド音源分離 – 独立低ランク行列分析 – 多チャネル非負値行列因子分解との関連性 • まとめとさらなる発展 – より高精度なブラインド音源分離を目指して 27
非負値行列因子分解の音響信号への適用 • 非負値行列因子分解(NMF) [Lee, 1999] – 非負制約付きの任意基底数( 本)による低ランク近似 • 限られた数の非負基底ベクトルとそれらの非負係数を抽出 – STFTで得られるパワースペクトログラムに適用 • 頻出するスペクトルパターンとそれらの時間的な強度変化 Time 基底 Amplitude 基底行列 アクティベーション行列 (スペクトルパターン) (時間的強度変化) Frequency Frequency 混合された観測行列 (パワースペクトログラム) アクティベーション Time Amplitude : 周波数ビン数 : 時間フレーム数 : 基底数 28
NMFのパラメータ推定 • NMFにおける変数の最適化 – 観測 とモデル の距離をコストとし変数について最小化 – 距離関数は任意 • 二乗ユークリッド距離,KLダイバージェンス,板倉斎藤擬距離,・・・ – いずれの距離関数でも閉形式の解は未発見 – 効率的な反復更新による最適化アルゴリズム • 補助関数法に基づく乗算型更新式(最も有名) [Lee, 2000] (コスト関数が二乗ユークリッド距離の場合) 29
NMFの音響信号への応用例 • 推定した基底(頻出スペクトル)とアクティベーション(時 間変化)を音源毎にクラスタリング – ブラインドではなかなか難しい • 教師ありNMF(SNMF)[Smaragdis, 2007], [Kitamura1, 2014] 学習ステージ 分離ステージ Given 30
NMFと音楽信号の相性 • 音楽信号の音源分離の特徴 – 離散的構造 限られた数の音高(ピッチ)の重ね合わせ • 重なり合った音をパーツ単位に分割しその線形結合で表現できる 限られた数の音価(音の長さ) 限られた数の音高(音の高さ) 離散的なパーツの重ね合 わせで構成されている • 離散的構造を持つ信号の適切な表現 – 音楽信号の「低ランク性」 – NMFの「低ランク近似分解」 • 音源分離以外にも音楽信号処理で広く活用されている – 自動採譜,ビートトラッキング,超解像,・・・ 31
音楽信号は本当に低ランク? • 音楽信号の特有の性質 Drums Guitar Vocals Speech 32
音楽信号は本当に低ランク? • 音楽信号特有の性質 95% line 6 41 101(VocalsとSpeechで同じ) 95%到達時の基底数 (行列サイズは2049x394) – 同じパターンの繰り返しが多いドラムやギター等は低ランク – ボーカル及び音声は楽器音ほど低ランクではない – 楽器音は少ない数の音パーツ(基底)で構成(離散的構造) 33
板倉斎藤擬距離基準NMF(ISNMF) • 従来のNMF分解の問題点 – データ行列(非負実数)は1本の基底と1本のアクティベーション からなるランク1行列の線形結合として表現 – は振幅スペクトログラムなのか?あるいはパワーなのか? – いずれにしても線形結合(加法性)は成り立たない • 理論的には複素スペクトログラムの加法モデルが正しい – 位相スペクトログラムはどうするのか? • 板倉斎藤擬距離基準NMFでは下記のように解釈される – 複素スペクトログラムに対する生成モデルを与えられる • 複素数成分の線形結合なので理論的に正しいモデル – 位相は無情報な形(一様分布)で保持される • 無情報なので最尤推定結果は観測の位相 34
板倉斎藤擬距離基準NMF(ISNMF) • ISNMF[Févotte, 2009] 最小化は等価 点対称零平均複素ガウス分布 観測の複素数値 複素ガウスの分散 • この生成モデルはガウス分布の再生性を用いて分解可 – とおくと 35
板倉斎藤擬距離基準NMF(ISNMF) • を複素スペクトログラムとしたとき,各時間周波数要素 は複素要素 を 個足し合わせたもの 時間周波数 要素(複素数) 零平均,分散 の原点対称複素ガウス これらの複素ガウス分布は互いに独立(分散は異なる) – 複素ガウス分布の線形結合なので も複素ガウス分布 • ガウス分布の再生性 • の複素ガウス分布の分散は – 分散が時間周波数で変動する複素ガウス分布が生成モデル 36
板倉斎藤擬距離基準NMF(ISNMF) • パワースペクトログラムは複素ガウスの分散に対応 パワーが小=分散が小 殆ど0付近の複素数しか 生成しない Frequency bin : パワースペクトログラム 但し濃淡が濃い方が 大きなパワーを示す Time frame パワーが大=分散が大 大きな振幅の複素数も 生成しうる 各時間周波数で分散が変動する複素ガウス分布 巨視的(マクロ)に考えると分散が変動する為,スペクト ログラム全体の密度分布 はスーパーガウシアン (カートシスがガウス分布より大)な分布になっている 37
NMFの多チャネル信号への拡張 • NMFを多チャネルの信号に適用できれば面白い – アレー信号処理やICAのように空間特徴量(振幅差,位相差) を活用できる • アクティベーション共有型多チャネルNMF[Kitamura2, 2014] – チャネル間の音量比(アクティベーション)を保つNMF分解 – 空間特徴量を壊すことなく低ランク近似 • DOAクラスタリングとSNMFのハイブリッド法[Kitamura, 2015] – 音楽信号を音量比でクラスタリングしてSNMFを適用 – クラスタリングで欠損した成分を外挿・復元しながら音源分離 • 多チャネルNMF[Ozerov, 2010], [Sawada, 2013] – 音源の時間周波数構造を低ランク近似し,そのパーツを空間特 徴量で音源毎にクラスタリング – 理論的には劣決定条件(マイク<音源数)でも音源分離可能 38
NMFの多チャネル信号への拡張 • 多チャネルNMF [Sawada, 2013] 多チャネル ベクトル 時間周波数毎の 観測チャンネル間相関 瞬時空間相関行列 音源周波数毎の クラスタリング関数 チャンネル間相関 基底行列 アクティベーション行列 強度変化 スペクトルパターン 多チャネル観測信号 空間モデル 音源モデル 音源毎の空間的な違い 全音源の音色構造 39
空間相関行列とは • 空間相関行列 又は 空間共分散行列 [Duong, 2010] – – – – Duong modelとも呼ばれる 音源とマイク間の伝達系と音響的拡散度合を表す特徴量 ステアリングベクトル の基底拡張 Source image 観測信号 中の 番目の音源成分のみを と表すとき 音源毎の 空間共分散 時変な音源の分散(パワースペクトログラム) 観測の 空間共分散 マイクロホンへの伝達系 に寄与する時不変な成分 (空間相関行列) 時間周波数で分散共分散が 変動する多変量ガウス分布 観測の 生成モデル 多チャネル Wiener filter 時変分散と音源毎の空間共分散 から音源分離が可能(劣決定も可) 40
空間相関行列のランク • 空間相関行列は瞬時空間相関の期待値 音源毎の 空間共分散 – 「瞬時相関の期待値」のランクが1 伝達系が時不変な1本の空間基底でモデル化できる – 時不変な1本の空間基底:ステアリングベクトル ランク1 空間モデル – 「瞬時相関の期待値」のランクが1より大きい(フルランク) 音響信号の拡散,音響放射特性の変動,残響 • ステアリングベクトルのような1本の空間基底では表現不可 • 複数本の空間基底になる(空間基底の数=空間相関行列のランク) • 周波数領域での瞬時混合仮定が成り立たない という瞬時混合の式で書けない 41
NMFの多チャネル信号の最適化 • 多チャネルNMFはISNMFの純粋な多次元拡張 • 尤度関数 – 各時間周波数で分散が変動する多変量複素ガウス分布 • 負の対数尤度関数 – Logdet divergence [Kulis, 2006],Stein’s loss [James, 1961]とも – 板倉斎藤擬距離の多次元版 観測 に対して,パラメタを とおくと • ISNMFのような更新式が出てくるが,計算量が大きい 42
発表の概要 • 研究の背景 – 音源分離問題とその用途 • ブラインド音源分離と独立成分分析 – 前提条件,問題解決に利用可能な手掛かり – 周波数領域への適用,耐残響性の向上 • 音楽信号の効率的なモデリング – 非負値行列因子分解による低ランク近似 – 多次元観測音響信号への拡張 独立成分分析 に由来する音源分離法 の発展 (1994年~2007年) 非負値行列因子分解 に由来する音響信号の 表現方法の発展 (1999年~2013年) • 独立低ランク行列分析によるブラインド音源分離 – 独立低ランク行列分析 – 多チャネル非負値行列因子分解との関連性 • まとめとさらなる発展 – より高精度なブラインド音源分離を目指して 43
動機 • ICAで仮定される非ガウスな音源分布 – 分離フィルタを推定する唯一の手がかり:音源モデル – より正確な音源分布 → 高精度な分離フィルタの推定 – 確率分布というマクロなモデル • 音源信号の持つ時間周波数の構造は考慮できない – 音楽信号では音源間の独立性が弱まる • 時間的な共起(リズム),周波数の重なり(ハーモニー) 等 • 時間周波数構造を分散の変動として表現したISNMF – 従来手法よりも正確な音源分布としてICAの推定に用いたい – ICAの高速・安定な最適化も受け継ぎたい • 多チャネルNMFの最適化はあまりにも非効率・不安定 • 時変分散複素ガウスIVA(時変IVA)[Ono, 2012] • 独立低ランク行列分析(ILRMA)[Kitamura, 2016] 44
様々な非ガウス分布を仮定したIVA • 球対称ラプラス分布IVA(再掲) [Hiroe, 2006], [Kim, 2006] – 定常な球対称ラプラス分布を仮定 ラプラスIVA 非ガウス分布 (球対称ラプラス分布) 分散 • 時変分散複素ガウス分布IVA [Ono, 2012] – 分散が時変なパラメトリックな複素ガウス分布を仮定 – 時間方向の音源アクティビティを時変分散でモデル化 複素ガウス分布 時変IVA 非ガウス分布 時変分散 45
Frequency 時変IVAの 音源モデル Frequency 「低ランク性」の音源モデルへの導入 Time 濃淡が分散の大小 分散の大小は音源のパワーの大小 Time 時変な成分 周波数方向には一様な分散 Basis Frequency 提案手法の 音源モデル Frequency 時間周波数上での分散の変動を NMFで低ランク表現 Time Time Basis 基底数(音源モデルのランク数)は任意 46
提案手法:IVAとNMFを融合した新しいBSS イ ル マ • 独立低ランク行列分析(independent low-rank matrix analysis: ILRMA) – 時間周波数で分散が変動する複素ガウス分布を仮定 複素ガウス分布 時間周波数変動分散 (低ランク音源モデル) 非ガウス分布 Basis Frequency 提案手法の 音源モデル Frequency – 分離音源が「互いに独立」かつ「できるだけ低ランク」になる Time Time Basis 基底数(音源モデルのランク数)は任意 47
提案手法:IVAとNMFを融合した新しいBSS • FDICA,IVA,及びILRMAの比較 FDICAの音源モデル スカラー変数の非ガウス分布 (ラプラス分布) ラプラスIVAの音源モデル NMFによる低ランクな 時間周波数構造 (時間周波数分散変動型 複素ガウス分布) 観測信号 推定信号 分離 フィルタ Frequency ILRMAの音源モデル Frequency ベクトル変数の多変量な 球対称非ガウス分布 (多変量ラプラス分布) Time Time 低ランクな時間周波数構造を 持つように分離フィルタを更新 48
ILRMAのコスト関数と潜在変数の導入 • ILRMAのコスト(対数尤度)関数 IVAのコスト関数 (空間分離フィルタの推定に寄与) – IVAの反復更新式 – NMFの反復更新式 分離信号: ISNMFのコスト関数 (音源モデルの推定に寄与) 2つの交互最適化反復で 全変数を容易に推定可能 • 音源の適切なランク数を潜在変数で推定することも可能 潜在変数の導入 0~1の値をとる潜在変数 – Ex. ボーカルはあまり低ランクにならず,ドラムは低ランク 49
ILRMAの最適化 • ILRMAの反復更新式(最尤推定) – NMF変数の最適化は補助関数法に基づく乗法更新式 空間分離フィルタと分離信号の更新 音源モデルの更新 但し, , は 番目の要素のみ1で 他 は0の縦ベクトル – 反復で尤度が単調増加することが保証されている • 必ずどこかの局所解(停留点)へ収束 50
ILRMAの更新のイメージ • 音源毎の空間情報(空間モデル)と 各音源の音色構造(音源モデル)を交互に学習 音源モデル 音源モデル の学習 空間分離フィルタ の学習 NMF の更新 NMF 混合信号 分離信号 – 音源毎の時間周波数構造を正確に捉えることで,独立性基準 での線形時不変な空間分離の性能向上が期待できる 51
多チャネルNMFとILRMAの関連性 • 何が違うのか? – 音源分布は同じ(ISNMFの時間周波数分散変動複素ガウス) – ILRMAはICAやIVAと同様に周波数領域の瞬時混合を仮定 – 多チャネルNMFはフルランク空間相関行列を仮定 • 多チャネルNMFの空間相関行列にランク1制約を導入 – ランク1空間モデル(再掲) • 時不変な1本の空間基底(ステアリング ベクトル)で伝達系が表現できるという仮定 • 実際に計算してみる – 1. ランク1空間モデルの導入 – 2. 混合系の変数を分離系の変数へと変換 52
多チャネルNMFとILRMAの関連性 • ランク1空間モデル制約多チャネルNMFの導出 観測 に対して,パラメタを にランク1空間制約 とおくと を導入 ここで 53
多チャネルNMFとILRMAの関連性 • ランク1空間モデル制約多チャネルNMFの導出(続き) を多チャネルNMFのコスト関数に代入 を用いて変数変換 54
IVA,多チャネルNMF,ILRMAの関連性 • 多チャネルNMFからみると – ランク1空間制約,逆システム(分離系)の推定問題に変換 – 決定条件(マイク数=音源数)ではILRMAと双対な問題 • 時変IVAからみると – 音源分布の基底数を1本から任意の本数に拡張 空間モデル 柔軟 限定的 • 独立に発展した多チャネルNMFとIVAを統一的に捉える 新しい理論 多チャネル NMF 空間相関行列の ランクを1に制限 IVA NMFの音源 モデルを導入 限定的 音源モデル ILRMA 柔軟 55
尤度関数の比較 • ラプラスIVA [Hiroe, 2006], [Kim, 2006] • 時変ガウス分布IVA [Ono, 2012] • 多チャネルNMF [Sawada, 2013] • ILRMA [Kitamura, 2016] 時間周波数変動分散 (低ランク音源モデル) 56
歴史的発展(再掲) • 基礎となる数理理論の登場と発展 1994 独立成分分析(ICA) 1998 1999 周波数領域ICA(FDICA) 非負値行列因子分解(NMF) 年代 パーミュテーション 問題解決法の検討 2006 独立ベクトル分析(IVA) 2009 2012 2013 2016 ※代表的な手法のみを表記 NMFの様々な問題への適用 生成モデル的解釈 各種拡張 板倉斎藤擬距離NMF(ISNMF) 時変複素ガウスIVA 多チャネルNMF 独立低ランク行列分析(ILRMA) 57
従来手法とILRMAの性能評価 • ILRMAへの期待 – NMF音源モデルの導入による性能向上(IVAと比して) – ランク1空間モデルの導入による安定性の向上(多チャネル NMFと比して) • ランク1空間モデルが成立する条件での実験 – マイク位置時不変混合系(多チャネルNMFを含む全手法での 必須条件) – 残響時間が窓長より短い(ランク1空間モデル) – 特異な音響放射特性などがない(ランク1空間モデル) • インパルス応答の畳み込みによるシミュレーション混合 – 残響時間が短ければランク1空間モデルが完全に成立 • 実際のライブ録音による混合観測 – より現実的な条件での実験 58
音楽音源分離実験の条件 • 実験条件 音源信号 窓長(FFT長) シフト長 基底数 主観評価値 SiSECのプロ音楽信号に,RWCP収録のマイクアレーインパルス 応答で畳み込んで作成,2チャンネルで2音源の混合信号 512 ms,ハニング窓 128 ms (1/4シフト) 1音源につき30本(ILRMA1),全音源で60本(ILRMA2) SDR改善値(音質と分離度合いを含む総合的な分離性能) Impulse response E2A (reverberation time: 300 ms) Source 1 Source 2 Impulse response JR2 (reverberation time: 470 ms) Source 1 Source 2 2m 50 50 5.66 cm 2m 60 60 5.66 cm 59
実験結果: fort_minor-remember_the_name SDR improvement [dB] Good E2A (300 ms) 16 Violin synth. 12 8 4 0 -4 -8 Good 16 SDR improvement [dB] Poor JR2 (470 ms) Poor Vocals Directional clustering IVA Violin synth. Ozerov’s Ozerov’s Sawada’s Proposed Proposed Sawada’s MNMF MNMF with MNMF method method MNMF random w/o with initialized by initialization partitioning partitioning proposed function function method Vocals 12 8 4 0 -4 -8 Directional clustering IVA Ozerov’s Ozerov’s Sawada’s Proposed Proposed Sawada’s MNMF MNMF with MNMF method method MNMF random w/o with initialized by initialization partitioning partitioning proposed function function method 60
実験結果: ultimate_nz_tour SDR improvement [dB] Good E2A (300 ms) 20 Guitar 15 10 5 0 -5 Good 20 SDR improvement [dB] Poor JR2 (470 ms) Poor Synth. Directional clustering IVA Guitar Ozerov’s Ozerov’s Sawada’s Proposed Proposed Sawada’s MNMF MNMF with MNMF method method MNMF random w/o with initialized by initialization partitioning partitioning proposed function function method Synth. 15 10 5 0 -5 Directional clustering IVA Ozerov’s Ozerov’s Sawada’s Proposed Proposed Sawada’s MNMF MNMF with MNMF method method MNMF random w/o with initialized by initialization partitioning partitioning proposed function function method 61
各手法の性能と計算コストの比較例 • SiSECデータベース収録のプロ音楽信号 – ファイル名: bearlin-roads__snip_85_99,14 s(16 kHzサンプル) – 音源: acoustic_guit_main, bass, vocalsの3音源 Good 12 SDR improvement [dB] 10 15.1 s 60.7 s 8 11.5 s 6 7647.3 s 4 IVA MNMF ILRMA (潜在変数無) ILRMA (潜在変数有) 2 0 Poor -2 0 100 200 Iteration steps 300 400 62
音声音源分離実験の条件 • 実験条件 音源信号 窓長(FFT長) シフト長 基底数 主観評価値 SiSECのライブ録音音声信号,2チャンネルで2話者の混合信号 256 ms,ハニング窓 128 ms (1/4シフト) 1音源につき2本(ILRMA1),全音源で4本(ILRMA2) SDR改善値(音質と分離度合いを含む総合的な分離性能) – 予備実験より,音声信号に対しては基底数を大きくすると音源 分離に失敗する事実を確認 16 12 Speaker 1 8 4 0 -4 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 Number of bases for each source ( ) SDR improvement [dB] SDR improvement [dB] • 音声信号の時間周波数構造がNMF表現に不向き? 16 12 Speaker 2 8 4 0 -4 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 Number of bases for each source ( ) 63
実験結果: female3_liverec_1m SDR improvement [dB] Good 130 ms Poor SDR improvement [dB] Good 250 ms Poor 16 14 12 10 8 6 4 2 0 -2 -4 16 14 12 10 8 6 4 2 0 -2 -4 Speaker 1 Directional clustering IVA Speaker 1 Directional clustering IVA Speaker 2 Ozerov’s Ozerov’s Sawada’s Proposed Proposed Sawada’s MNMF MNMF with MNMF method method MNMF random w/o with initialized by initialization partitioning partitioning proposed function function method Speaker 2 Ozerov’s Ozerov’s Sawada’s Proposed Proposed Sawada’s MNMF MNMF with MNMF method method MNMF random w/o with initialized by initialization partitioning partitioning proposed function function method 64
実験結果: male3_liverec_1m SDR improvement [dB] Good 130 ms Poor SDR improvement [dB] Good 250 ms Poor 14 12 10 8 6 4 2 0 -2 -4 14 12 10 8 6 4 2 0 -2 -4 Speaker 1 Directional clustering IVA Speaker 1 Directional clustering IVA Speaker 2 Ozerov’s Ozerov’s Sawada’s Proposed Proposed Sawada’s MNMF MNMF with MNMF method method MNMF random w/o with initialized by initialization partitioning partitioning proposed function function method Speaker 2 Ozerov’s Ozerov’s Sawada’s Proposed Proposed Sawada’s MNMF MNMF with MNMF method method MNMF random w/o with initialized by initialization partitioning partitioning proposed function function method 65
各手法の性能の主観評価による比較 • 音声信号と音楽信号の分離結果を主観評価で比較 – 聴覚の正常な20代の男性10名女性4名 – サーストンの一対比較法(間隔尺度) • 二手法間のスコアの差が二手法を比較した際に一方が選ばれる確率に 対応 1.6 0.8 間隔尺度を確率値に変換するグラフ 0.4 Probability of selection Subjective score 1.2 Speech signals Music signals 0.0 -0.4 -0.8 -1.2 IVA Multichannel NMF ILRMA 1.0 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0 -2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 Difference of subjective scores 66
考察 • ほぼすべての場合で高速,高精度,安定な分離を達成 – 多チャネルNMFと比較するとモデルの自由度に優位性はない – 精度向上はランク1空間モデルの導入による空間モデル変数 の最適化が容易になったことに起因 • 音声信号に対しては基底数を増加できない – 基底数が増加すると性能が不安定 – 音声の時間周波数構造は音楽信号ほど低ランクではない 67
音源分離デモンストレーション:音楽分離の例 • 音楽信号 – “Ultimate NZ tour”,3音源 – イコライザ(音色の変更)では不可能な処理 提案法による パートごとの 音源分離 Vocal Keyboard Guitar Vocal 3つのパートが鳴っていること に注意して聞いてください Keyboard Guitar HPにも手法間比較用のデモがあります 68
発表の概要 • 研究の背景 – 音源分離問題とその用途 • ブラインド音源分離と独立成分分析 – 前提条件,問題解決に利用可能な手掛かり – 周波数領域への適用,耐残響性の向上 • 音楽信号の効率的なモデリング – 非負値行列因子分解による低ランク近似 – 多次元観測音響信号への拡張 独立成分分析 に由来する音源分離法 の発展 (1994年~2007年) 非負値行列因子分解 に由来する音響信号の 表現方法の発展 (1999年~2013年) • 独立低ランク行列分析によるブラインド音源分離 – 独立低ランク行列分析 – 多チャネル非負値行列因子分解との関連性 • まとめとさらなる発展 – より高精度なブラインド音源分離を目指して 69
より高精度なブラインド音源分離を目指して • 潜在因子への構造モデルの導入による発展可能性 – 確率分布モデルでは困難だった詳細な「操作(induce)」が可能 領域の指定 – ユーザとのインタラクション • ユーザが分離の途中で構造モデルに介入 • 例:映画撮影等のプロ用途の音声強調 – 実現可能な学習データの活用 • 音楽信号では「楽譜」は強力な事前情報 • 例:芸術性を損なわない超高品質な音楽編集 時間区間の指定 • ブラインドな信号処理技術の重要性 – DNNの華々しい凌駕,学習ベースの技術 – 音源分離の学習データは容易可能か • 意外と困難ではない?SiSEC2016,SiSEC2017 (MSD/DSD dataset) – では,空間情報の学習データは容易可能か • 録音環境は一期一会 • 学習なし or スモールデータの追求 70
参考文献(アルファベット順)(1/4) • [Araki1, 2003]: S. Araki, R. Mukai, S. Makino, T. Nishikawa, and H. Saruwatari, “The fundamental limitation of frequency domain blind source separation for convolutive mixtures of speech,” IEEE Trans. Speech and Audio Process., vol. 11, no. 2, pp. 109–116, 2003. • [Araki2, 2003]: S. Araki, S. Makino, Y. Hinamoto, R. Mukai, T. Nishikawa, and H. Saruwatari, “Equivalence between frequency-domain blind source separation and frequency-domain adaptive beamforming for convolutive mixtures,” EURASIP Journal on Advances in Signal Process., vol. 2003, no. 11, pp. 1–10, 2003. • [Comon, 1994]: P. Comon, “Independent component analysis, a new concept?” Signal Process., vol. 36, no. 3, pp. 287–314, 1994. • [Duong, 2010]: N. Q. K. Duong, E. Vincent, and R. Gribonval, “Under-determined reverberant audio source separation using a full-rank spatial covariance model,” IEEE Trans. Audio, Speech, Lang. Process., vol. 18, no. 7, pp. 1830–1840, 2010. • [Févotte, 2009]: C. Févotte, N. Bertin, and J.-L.Durrieu, “Nonnegative matrix factorization with the Itakura-Saito divergence. With application to music analysis,” Neural Comput., vol. 21, no. 3, pp. 793–830, 2009. • [Hiroe, 2006]: A. Hiroe, “Solution of permutation problem in frequency domain ICA using multivariate probability density functions,” Proc. Int. Conf. Independent Compon. Anal. Blind Source Separation, 2006, pp. 601–608. 71
参考文献(アルファベット順)(2/4) • [James, 1961]: W. James and C. Stein, “Estimation with quadratic loss,” Proc. Berkeley Symposium on Mathematical Statistics and Probability, vol. 1, 1961, pp. 361–379. • [Kim, 2006]: T. Kim, T. Eltoft, and T.-W. Lee, “Independent vector analysis: An extension of ICA to multivariate components,” Proc. Int. Conf. Independent Compon. Anal. Blind Source Separation, 2006, pp. 165–172. • [Kim, 2007]: T. Kim, H. T. Attias, S.-Y. Lee, and T.-W. Lee, “Blind source separation exploiting higher-order frequency dependencies,” IEEE Trans. Audio, Speech, Lang. Process., vol. 15, no. 1, pp. 70–79, 2007. • [Kitamura1, 2014]: D. Kitamura, H. Saruwatari, K. Yagi, K. Shikano, Y. Takahashi, and K. Kondo, “Music signal separation based on supervised nonnegative matrix factorization with orthogonality and maximum-divergence penalties,” IEICE Trans. Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences, vol. E97-A, no. 5, pp. 1113–1118, 2014. • [Kitamura2, 2014]: T. Miyauchi, D. Kitamura, H. Saruwatari, and S. Nakamura, “Depth estimation of sound images using directional clustering and activation-shared nonnegative matrix factorization,” Journal of Signal Process., vol. 18, no. 4, pp. 217–220, 2014. • [Kitamura, 2015]: D. Kitamura, H. Saruwatari, H. Kameoka, Y. Takahashi, K. Kondo, and S. Nakamura, “Multichannel signal separation combining directional clustering and nonnegative matrix factorization with spectrogram restoration,” IEEE/ACM Trans. on Audio, Speech, and Lang. Process., vol. 23, no. 4, pp. 654–669, 2015. 72
参考文献(アルファベット順)(3/4) • [Kitamura, 2016]: D. Kitamura, H. Saruwatari, H. Kameoka, Y. Takahashi, K. Kondo and S. Nakamura, “Determined blind source separation unifying independent vector analysis and nonnegative matrix factorization,” IEEE/ACM Trans. Audio, Speech, Lang. Process., vol. 24, no. 9, pp. 1626–1641, 2016. • [Kulis, 2006]: B. Kulis, M. Sustik, and I. Dhillon, “Learning low-rank kernel matrices,” Proc. Int. Conf. on Machine Learning, 2006, pp. 505–512. • [Lee, 1999]: D. D. Lee and H. S. Seung, “Learning the parts of objects by non-negative matrix factorization,” Nature, vol. 401, pp. 788–791, 1999. • [Lee, 2000]: D. D. Lee and H. S. Seung, “Algorithms for non-negative matrix factorization,” Proc. Adv. Neural Inform. Process. Syst., 2000, vol. 13, pp. 556–562. • [Ono, 2011]: N. Ono, “Stable and fast update rules for independent vector analysis based on auxiliary function technique,” Proc. IEEE Workshop on Applications of Signal Process. to Audio and Acoust., 2011, pp. 189–192. • [Ono, 2012]: T. Ono, N. Ono, and S. Sagayama, “User-guided independent vector analysis with source activity tuning,” Proc. ICASSP, 2012, pp. 2417–2420. • [Ozerov, 2010]: A. Ozerov and C. Févotte, “Multichannel nonnegative matrix factorization in convolutive mixtures for audio source separation,” IEEE Trans. Audio, Speech, and Lang. Process., vol. 18, no. 3, pp. 550–563, 2010. 73
参考文献(アルファベット順)(4/4) • [Saruwatari, 2000]: S. Kurita, H. Saruwatari, S. Kajita, K. Takeda, and F. Itakura, “Evaluation of blind signal separation method using directivity pattern under reverberant conditions,” Proc. IEEE Int. Conf. Acoust., Speech, Signal Process., 2000, pp. 3140–3143. • [Saruwatari, 2006]: H. Saruwatari, T. Kawamura, T. Nishikawa, A. Lee, and K. Shikano, “Blind source separation based on a fast-convergence algorithm combining ICA and beamforming,” IEEE Trans. Audio, Speech, Lang. Process., vol. 14, no. 2, pp. 666–678, Mar. 2006. • [Sawada, 2004]: H. Sawada, R. Mukai, S. Araki, and S.Makino, “Convolutive blind source separation for more than two sources in the frequency domain,” Proc. IEEE Int. Conf. Acoust., Speech, Signal Process., 2004, pp. III-885–III-888. • [Sawada, 2013]: H. Sawada, H.Kameoka, S.Araki, and N. Ueda, “Multichannel extensions of non-negative matrix factorization with complex-valued data,” IEEE Trans. Audio, Speech, Lang. Process., vol. 21, no. 5, pp. 971–982, 2013. • [Smaragdis, 1998]: P. Smaragdis, “Blind separation of convolved mixtures in the frequency domain,” Neurocomputing, vol. 22, pp. 21–34, 1998. • [Smaragdis, 2007]: P. Smaragdis, B. Raj, and M. Shashanka, “Supervised and semisupervised separation of sounds from single-channel mixtures,” Proc. ICA, 2007, pp. 414–421. 74