西洋美術史ゼミ第17回補足:エコール・ド・パリなど

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August 08, 22

スライド概要

隔週程度で行っている世界史と西洋美術史の勉強会のスライドです。このスライドは17回の補足として、比較的周縁的な潮流であるエコール・ド・パリや素朴派、バウハウスなどについて扱っています。厳密な考証は行っていませんが、可能な限り正確に書くことを心掛けています。以下のURLからスライドと補足資料をダウンロードできます。参考文献もこちらに記載しています。
https://github.com/amazuun/Art_of_Europe

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理系の大学生です。近代以降の美術史や思想史、現代美術について興味があります。厳密な考証は行っていませんが、可能な限り正確に書くことを心掛けています。後の物の方が出来が良いので、最新のものを最初に読むことをお勧めします。githubからはスライドと補足資料をダウンロードできます。参考文献は補足資料に記載しています。

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各ページのテキスト
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補足 西洋美術史ゼミ 第17回 抽象主義・ダダ・シュルレアリスムなど 発表者 あまずん 1

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発表者について あまずん Twitter : @quii_w (メイン) @amazuunsc(サブ) 理系の大学生(数学科)です。 近代以降の美術史や思想史、現代美術について 興味があります。 2

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ゼミについて • 週1回程度で美術出版社「増補新装 カラー版 西洋美術史」を一章ずつ 読み進め、内容をまとめ発表します。 • また、高校世界史に沿う形で当時の 出来事についても説明します。 • そのため、世界史と美術史を同時に 学ぶことができるため、歴史が好き な方も美術が好きな方も学びを深め ることができます。 3

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前回の内容 • 第一次世界大戦が起こり、古い政治体制や 自由主義的な価値観が根底からゆらいだ。 その結果、ヨーロッパの没落やアジア・ア メリカの地位の向上、ソ連の誕生などが起 こった。 • 19世紀末~20世紀初頭に起こった幻想的・ 神秘的・退廃的な性格を有する諸芸術を世 紀末芸術と呼ぶ。 • フォーヴィスムとドイツ表現主義は鮮烈な 色彩と激しい筆致で純粋な色彩の美を求め た。 • キュビスムは形態の革命で、対象を解体・ 再構築して遠近法の解体を図った。 マティス《赤のハーモニー》

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本日の内容 世界史について • 世界恐慌とファシズムの台頭 • 第二次世界大戦 美術について • イタリア未来派 • ロシア・アヴァンギャルド • ダダとシュルレアリスム • エコール・ド・パリと素朴派(補足スライド) • 建築・彫刻・写真(補足スライド) • アールデコとバウハウス(補足スライド) • 南北アメリカの絵画運動(補足スライド) 5

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全体の概略 • これは第17回の補足スライドです! • このスライドではエコール・ド・パリや素朴派、絵画以外の ファインアートやバウハウスを始めとするデザインなどについ て扱います。 • これらはメインストリームではないものの、美術史を語るうえ で欠かせないものです。例えば「乳白色の肌」で知られる藤田 嗣治はエコール・ド・パリに分類されます。 • とはいえ本編(?)とは独立した内容なので、読まなくても発 表の聴講には支障ないはずです。お時間のある方はお読みくだ さい。 6

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本日の内容 • 世界史:世界恐慌とファシズムの台頭 • 世界史:第二次世界大戦 • 美術史:イタリア未来派 • 美術史:ロシア・アヴァンギャルドと抽象絵画 • 美術史:ダダイスム • 美術史:シュルレアリスム • 美術史:エコール・ド・パリと素朴派(補足スライド) • 美術史:建築・彫刻・写真(補足スライド) • 美術史:アールデコとバウハウス(補足スライド) • 美術史:南北アメリカの絵画運動(補足スライド) 7

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エコール・ド・パリ(1) • フランス革命後、美術の舞台はロー マからパリに移り、そこではフォー ヴィスムやキュビスム、シュルレア リスムといった多様な芸術運動が花 開いていた。 • しかし、このような運動に加わらず、 各々で独自の世界を切り開く画家た ちもいた。彼らはエコール・ド・パ リ(パリ派)と呼ばれ、交流はあっ たが出身国も画風も様々であった。 モディリアーニ《黄色いセーター》

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エコール・ド・パリ(2) • 以下の画家が有名である。 1. アメデオ・モディリアーニ 2. 藤田嗣治 3. マルク・シャガール 4. モーリス・ユトリロ 5. シャイム・スーティン 6. ジュール・パスキン

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エコール・ド・パリ(3) • https://ja.wikipedia. org/wiki/%E3%82%A B%E3%83%95%E3% 82%A7_(%E8%97%A 4%E7%94%B0%E5% 97%A3%E6%B2%BB %E3%81%AE%E7%B 5%B5%E7%94%BB) パスキン《ソファに腰かけるシュザンヌ》 藤田嗣治《カフェ》

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エコール・ド・パリ(4) By Maurice Utrillo - Sotheby's sale N08588, Nov. 5, 2009, Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=24950333 ユトリロ《La Rue Norvins à Montmartre》 スーティン《ニシンとタマネギのある静物画 》

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エコール・ド・パリ(5) By Marc Chagall - Museum of Modern Art, New York, PD-US, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=39006275 シャガール《私と村》 By Marc Chagall - Agence Photographique de la Réunion des musées nationaux et du Grand Palais des Champs-Elysées, PD-US, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=59818098 シャガール《ロシアとロバとその他のものに》

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素朴派(1) • また、この時代は正規の美術教育を 受けていない画家が多く登場したこ とも特徴である。 • 彼らは素朴派と呼ばれ、別の生業の 傍ら作品制作を続けていた、いわゆ る素人画家である。しかしその創造 性は高く、特にアンリ・ルソーなど はかなり高く評価されている。 • こういった「アウトサイダー」によ る作品はアウトサイダー・アートと して分類され、現在の美術の一分野 を担っている。 アンリ・ルソー《眠るジプシー女》

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素朴派(2) アンリ・ルソー《夢》

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本日の内容 • 世界史:世界恐慌とファシズムの台頭 • 世界史:第二次世界大戦 • 美術史:イタリア未来派 • 美術史:ロシア・アヴァンギャルドと抽象絵画 • 美術史:ダダイスム • 美術史:シュルレアリスム • 美術史:エコール・ド・パリと素朴派(補足スライド) • 美術史:建築・彫刻・写真(補足スライド) • 美術史:アールデコとバウハウス(補足スライド) • 美術史:南北アメリカの絵画運動(補足スライド) 15

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20世紀初頭の建築(1) • 19世紀までは石とレンガが主役で あった建築分野だが、この時代に鉄 筋コンクリートの技法が確立され、 建築家は飛躍的に豊かな表現力を獲 得することになった。 • 鉄筋コンクリートは自由な造形性を もち、まるで粘土をこねるように物 体を思いのまま操ることが出来た。 • この創造性を活かし近代建築の三大 巨匠と呼ばれたのはル・コルビュジ エ、フランク・ロイド・ライト、 ミース・ファン・デル・ローエであ る。 663highland, CC 表示 2.5, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2193660 による ル・コルビュジェ《国立西洋美術館》

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20世紀初頭の建築(2) • また、この時代の建築家は単に一つ の建物を完成させるだけではなく、 その建物の社会的役割というものに 対しても責任を負うようになった。 • この流れを受けて、合理主義的な機 能主義建築と表現主義的な有機的建 築の二つの流れが生まれた。 • 先に挙げた三名だと、ル・コルビュ ジエとローエが機能主義、ライトが 有機的である。日本では、国立西洋 美術館をル・コルビジェが、帝国ホ テルをライトが設計している。 Sxenko, CC 表示 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=31 71223による ライト《カウフマン邸》

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20世紀初頭の彫刻(1) • 諸芸術の流れを受け、彫刻も従来の 写実的・公共的なものから抽象的で 表現主義的なものへと変化していく。 • キュビスムなどの影響を受け、プリ ミティブな形態(ブランクーシ)や 極度に抽象化された造形(ブラン クーシ、モディリアーニ)が生まれ たほか、ジャコメッティのような シュルレアリスム的な彫刻も作られ た。 • また、未来派の項で扱ったボッ チョーニの作品も重要である。 By Constantin Brâncuși - Library of Congress, PD-US, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=3898957 6 ブランクーシ《接吻》

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20世紀初頭の彫刻(2) Mike Master - File:Coloana_Infinită_-_vedere_spre_vest.JPG, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=91319130 による ブランクーシ《無限柱》 By Original work: Alberto GiacomettiDepiction: Christies - http://www.christies.com/medialibrary/images/features/articles/2015/04/15/giacometti/1.jpg, Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=46682587 ジャコメッティ 《L'Homme au doigt》 (The Man with the Finger )

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20世紀初頭の写真(・映像) • この時代は写真や映像といった、単 なる記録のために使われていた技術 が美術家によって用いられるように なった時代でもある。 • 写真ではマン・レイが特に有名で、 映画史としてはロシア・アヴァン ギャルドの時代に作られた『戦艦ポ チョムキン』などが重要である。 • こういった作品は複製芸術と呼ばれ、 オリジナルと複製品の差異が問われ ることとなり、ベンヤミンの「アウ ラ」などの概念が生み出される。 オデッサの階段の虐殺 (戦艦ポチョムキンの有名な一場面)

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本日の内容 • 世界史:世界恐慌とファシズムの台頭 • 世界史:第二次世界大戦 • 美術史:イタリア未来派 • 美術史:ロシア・アヴァンギャルドと抽象絵画 • 美術史:ダダイスム • 美術史:シュルレアリスム • 美術史:エコール・ド・パリと素朴派(補足スライド) • 美術史:建築・彫刻・写真(補足スライド) • 美術史:アールデコとバウハウス(補足スライド) • 美術史:南北アメリカの絵画運動(補足スライド) 21

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アールデコ • 20世紀のデザインは工業技術の進展 に伴い、(アール・ヌーヴォー的 な)華美な装飾を廃し、合理的・機 能的なデザインを希求した。 • アールデコはアール・ヌーヴォーに 続く美術様式である。キュビスムな どの前衛的造形やエキゾチシズム、 強化ガラスのような新たな素材を取 り入れた、幾何学的形態や鮮やかな 色彩が特徴の製品が作られた。この 様式は各国に広がり大量生産された。 コンピュータが読み取れる情報は提供されていませんが、Toksookだと推定されます (著作権の主張に基づく) - コンピュータが読み取れる情報は提供されていませんが、 投稿者自身による著作物だと推定されます(著作権の主張に基づく), CC 表示 2.5, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=671383による Maurice Ascalon

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バウハウス • 1919年、ドイツにバウハウスという 美術学校が設立された。これは美 術・建築に関する総合教育を行った 学校で、以後のデザインに多大な影 響を与えた。 • バウハウスの教育は抽象芸術の理論 を基礎としており、⾧方形や球体な ど幾何学的形状を特徴とする様式で ある。カンディンスキーやクレーも 教師として参加し、彼らの教えは 「バウハウス叢書」として現代でも 読むことが出来る。 バウハウスのエンブレム

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本日の内容 • 世界史:世界恐慌とファシズムの台頭 • 世界史:第二次世界大戦 • 美術史:イタリア未来派 • 美術史:ロシア・アヴァンギャルドと抽象絵画 • 美術史:ダダイスム • 美術史:シュルレアリスム • 美術史:エコール・ド・パリと素朴派(補足スライド) • 美術史:建築・彫刻・写真(補足スライド) • 美術史:アールデコとバウハウス(補足スライド) • 美術史:南北アメリカの絵画運動(補足スライド) 24

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南北アメリカの絵画運動 • 最後に、詳しい解説書でも扱われな いこともままあるほどに周縁的な運 動ではあるが、個人的な興味がある ためメキシコ壁画運動とアメリカ ン・シーンについて扱う。 • 繰り返すが、この二つはここまで述 べたものより遥かに非主流的なもの であり、後世への影響も少ない。そ のため、「メイン」の美術史への理 解が固まっていない場合はむしろ読 み飛ばす方が良いかもしれない。 • その場合は末尾にこのスライドのま とめがあるので注意されたい。 ホッパー《ガス・ステーション》

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メキシコ壁画運動(1) • 1930年代、モダニズムがヨーロッパ と北アメリカの境界を越え、世界に 広がり始めた。メキシコはその中心 であり、ここでメキシコ壁画運動が 生まれた。 • 壁画は個人所有されず誰でも見るこ とができ、また文字が読めなくても 鑑賞することができる芸術作品であ る。時の政府はこれを革命の成果と 民族アイデンティティを教える絶好 の形式と考え、多くのフレスコ画を 作らせた。 Thelmadatter, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3887674 による ディエゴ・リベラの壁画

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メキシコ壁画運動(2) • ディエゴ・リベラが特に有名で、彼 はダイナミックな構図と強烈な色彩 の作品を多く残した。 • 彼の妻であるフリーダ・カーロも有 名である。彼女は壁画を残さなかっ たものの、メキシコの現代絵画を代 表する画家であり、身体上の障害に ⾧く苦しんだ自分自身をモチーフと した作品を作り続けた。 • https://artsandcultu re.google.com/asset /the-two-fridasfridakahlo/zAHG4EZ1Wr wVYg?hl=ja カーロ《二人のフリーダ》

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アメリカン・シーン(1) • 1920~40年代に起こったアメリカ ン・シーンの運動は、当時の前衛志 向にたいして具象的・写実的なであ る。 • エドワード・ホッパーやグラント・ ウッドが有名だが、主として退廃的 な都市生活や郊外、農村部の風景な どを主題とし、これらを愛国主義的 に描いた。 ウッド《アメリカン・ゴシック》

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アメリカン・シーン(2) ホッパー《ナイト・ホークス》

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本日のまとめ • パリで主流派とは関わらず、各人で独自の 様式を確立した画家たちをエコール・ド・ パリと呼ぶ。また、この時代は「素人画 家」が作品制作をするようになり、彼らは 素朴派と呼ばれた。 • 鉄筋コンクリート技術の確立から建築は飛 躍し、機能主義建築と有機的建築が生まれ た。また彫刻もキュビスム等の諸潮流の影 響を受け、抽象的・プリミティブな彫刻が 作られるようになる。さらに、この時代は 写真や映像の新技術が芸術家の眼にとまり、 これを用いた芸術作品が作られる。 • デザインにおいてはアールデコとバウハウ スが革新的であり、合理的・機能的な造形 を目指した。 • モダニズムが波及し、南北アメリカでも 様々な絵画運動が巻き起こる。 モディリアーニ《黄色いセーター》