何のための開発生産性?

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March 25, 25

スライド概要

2025年3月25日開催の「コード品質向上のノウハウ」で発表した資料です。

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ウェルスナビ株式会社 技術広報チームの公式アカウントです。

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各ページのテキスト
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何のための開発⽣産性? 等々⼒ ⾼秀 - Takahide Todoroki ウェルスナビ株式会社 1

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⾃⼰紹介 氏名(等々力 高秀) ウェルスナビ株式会社 プロダクト開発チーム / マネージャー ウェルスナビでは ● 2024/7 入社 ● 総合アドバイザリー・プラットフォーム(MAP:Money Advisory Platform)の開発 ひとこと ● ソフトウェアで人々の生活を豊かにすること。 ● それを継続できる個人・チームの自律と成長。 2 @2025 WealthNavi Inc.

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資産運用ロボアドバイザー 「 WealthNavi 」 3 ※ ⼀般社団法⼈⽇本投資顧問業協会「契約資産状況(最新版)(2024年9⽉末現在) ⼀般社団法⼈⽇本投資顧問業協会「契約資産状況(最新版)(2024年3⽉末現在) 『ラップ業務』『投資⼀任業』」を基にネット専業業者を⽐較 ウエルスアドバイザー 社調べ(2024年12⽉時点) 社調べ(2024年6⽉時点) ※ 画⾯はイメージです。

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アジェンダ 1. 開発生産性に感じるもの 2. 開発生産性向上の取り組み 3. 現状の課題と今後の展望 4. まとめ 4 @2025 WealthNavi Inc.

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1. 開発生産性に感じるもの 2. 開発生産性向上の取り組み 3. 現状の課題と今後の展望 4. まとめ 5 @2025 WealthNavi Inc.

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開発⽣産性に感じるもの 嫌悪感を抱く? 1. 「開発生産性」という言葉に対する嫌悪感 ● ● 「効率、効率」と数値で評価されることで、まるで製造装置のように扱われる感覚? ソフトウェア開発は単純作業ではなく、創造的で複雑な仕事であるという意識・反発? 2. ソフトウェア開発の不確実性と見積もりの難しさ ● ● ● 「工数・工期見積もり」と強く結びつくことが多く、嫌な感情を抱く原因になっている? 見積もりや開発効率の汎用的な指標は存在するが・・・ 一部のケースでは適用可能な指標があるものの、普遍的に通用するわけではない。 6 6 @2025 WealthNavi Inc.

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開発⽣産性に感じるもの 3. 開発生産性を巡る議論と対立 ● ● ● ビジネス部門と開発チームの間での「生産性」の議論は、不和や不信感を生む要因になっている。 見積もり時は「工数・工期が大きすぎる」。プロジェクトが進むと進捗遅れのリカバリーに悩まされる。 その結果、経験則や数学的手法(ファンクションポイント、三点見積もり)を駆使し、説得力を持たせようとするが、決定打 にはなりにくい。 4. 数値化しやすい指標への違和感 ● ソースコード量、プルリクエスト数、不具合発生率などは数値化しやすいが、それらだけで生産性を測ることには違 和感を覚える人も多い。 その違和感の根本には、以下の要因があるのではないか? ○ ソフトウェア開発は開発チーム単体で完結するものではない。 ○ 不確実性が大きく、単純な指標では測りきれない。 ● 7 @2025 WealthNavi Inc.

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開発⽣産性に感じるもの 嫌悪感の正体は? ● ● ● ● ● 「開発生産性」という言葉がもたらす感情の背景には、ソフトウェア開発の複雑さがある。 「何を作るのか」「どう作るのか」という議論を置き去りにする傾向がないか? 「開発生産性」の低下は、コードの品質や速度の問題ではなく、要件定義の曖昧さや関係者間の認識齟 齬が原因ではないのか? 「何を目的として生産性を測るのか?」を明確にしないと、議論が空回りし不信感につながる。 ただの数値化ではなく、継続的な改善も含めた視点で考えることが重要。 まとめ ● ● ● ソフトウェア開発は、単なるコードの生産ではなく、不確実性の高い課題に向き合い、価値を創造する活動。 数値化しやすい指標だけでは、本当の開発生産性は測れない。 開発生産性を数値化・評価するには「顧客が本当に必要だったもの」を提供できる成熟した環境の実現が不可欠。 8 @2025 WealthNavi Inc.

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1. 開発生産性に感じるもの 2. 開発生産性向上の取り組み 3. 現状の課題と今後の展望 4. まとめ 9 @2025 WealthNavi Inc.

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開発産性向上の取り組み これまで進め方 ● ● ● ● PdMが事業部門とコミュニケーションし、要求を整理。 PdMとUI/UXデザイナーがFigmaで画面イメージを作成。 その資料を基に、開発チームが画面実装・API設計&実装。 QAチームがテストケースを作成。 10 @2025 WealthNavi Inc.

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開発産性向上の取り組み QAチームの報告 ● ● ● ● ● 表記不良: 30% UI不良: 40% 機能実装不良: 20% その他: 10% QAテスト後の仕様調整: xx件 11 @2025 WealthNavi Inc.

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開発産性向上の取り組み 主な原因 ● ● UI/UXの実装不備: マークアップの間違い (文言間違い含む )、表示データの項目ミス。 QAテスト後の仕様調整 : Figmaを基に各工程が進行するが、最終段階で認識齟齬が膨れ上がった。 関係者全員 ● ● それぞれの関心事で、それぞれが資料を作成。資料が他領域とクロスオーバーしない。 口頭やSlackでのやり取りで終わり、合意形成の履歴が追跡できない。 PdM ● ● 完成形を明確に把握しきれておらず、関係者に十分に伝えられていない。曖昧なまま進めてしまい後工程で認識齟齬が発生する。 市場の変化や新たな要望による要求・仕様変更が発生しても、それを適切に整理・反映・管理できていない。 UI/UXデザイナー ● ● 開発チームの実装に適した情報が不足し、技術的制約や開発・テストの観点が抜け落ちる。 静的な画面設計に偏り、動的な挙動やユーザー体験を十分に要件へ落とし込めていない。 開発チーム ● ● 何を作るべきか認識が不十分で、仕様の細部を想像で補ってしまう。 UI/UXの細かい意図を十分に確認せず、作りながら解釈することがある。 12 @2025 WealthNavi Inc.

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開発産性向上の取り組み 問題の本質は何か? これらの問題を単なるミスや技量不足として片付けると、根本的な課題を見逃し、同じ問題を繰り返してしまう。これはソフトウェ ア開発における不確実性との闘いそのものではないか? 1. 認識の不一致 要件定義、実装、テストの全員が「何を作るのか?」を明確に認識できていないという課題が浮き彫りになった。 2. コミュニケーション不足 曖昧性や不確実性の多くは、市場要求の変化ではなく、担当領域間のコミュニケーション不足によって生じている。コミュニケー ションとは、対話に限らず、自分の関心事を正確に伝え、相互の関心事に配慮するあらゆる手段(資料を含む)を指す。 3. 開発チーム以外の関係者も実物を触る重要性 QAテスト以外では誰も実物を触らず、仕様の確認が机上の議論にとどまってしまう。開発チーム以外の全関係者が積極的に触 れ、実際の動作を確認することは重要。 13 @2025 WealthNavi Inc.

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開発⽣産性の向上の取り組み まとめ ● ● ● ● コード品質は重要だが、それを追求する前に考えるべき前提がある。 ソフトウェア開発は、PdM、UI/UXデザイナー、開発チームなど多くの関係者が関与し、単なるコードの生産ではなく、価値 の創造をが目的。 「顧客が本当に必要だったもの」を提供できているかが、本当の意味での生産性を考える上で最も重要な要素。 この視点を欠いた数値化は、開発チームの自己満足に終始し、開発の本質を見誤る原因になりかねない。 「顧客が本当に必要だったもの」に尽きる 14 @2025 WealthNavi Inc.

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1. 開発生産性に感じるもの 2. 開発生産性向上の取り組み 3. 現状の課題と今後の展望 4. まとめ 15 @2025 WealthNavi Inc.

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現状の課題と今後の展望 現状の課題 ● ● それぞれの関心事で、それぞれが資料を作成。資料が他領域とクロスオーバーしない。 口頭やSlackでのやり取りで終わり、合意形成の履歴が追跡できない。 現時の期待動作は? 実際の振る舞いはどうなっている? フィードバック動線がない? etc… ● ● ● ● 16 @2025 WealthNavi Inc.

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現状の課題と今後の展望 今後の展望: インプットとアウトプットの関係性におけるフィードバックの重要性 ● ● ● 情報(インプット)提供側は、アウトプットを生み出す側に関心事を注入する。 アウトプットを生み出す側は、情報(インプット)提供側の関心事を反映する。 実物での確認。要求・仕様に早期にフィードバックする。 17 @2025 WealthNavi Inc.

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現状の課題と今後の展望 今後の展望: 認識齟齬を減らすコミュニケーションの道具作り ● ● ● 担当領域間のコミュニケーション機会の増加。 担当領域間のそれぞれの関心事を共有、相互フィードバック。 出来る限り共通の資料を用いて、コミュニケーションする。 18 @2025 WealthNavi Inc.

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1. 開発生産性に感じるもの 2. 開発生産性向上の取り組み 3. 現状の課題と今後の展望 4. まとめ 19 @2025 WealthNavi Inc.

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まとめ 1. 開発⽣産性の向上には、「何を作るのか」を明確にし、各領域の関⼼事の違いを意識 して認識を揃えることが重要。 ● ● ⽣産性向上の鍵は、コードの量や速度だけでなく、適切なインプット‧アウトプットの内容。 その内容を⾼めるためには、「何のために」「誰のために」作るのかを意識することが不可⽋。 2. 認識齟齬は、担当領域の境界のコミュニケーション不⾜と関⼼事の違いに起因する。 ● ● 要件の曖昧さ、UI/UXと開発の乖離、QAの仕様不明確などが各⼯程で発⽣し、認識の分断が⼿戻りを増加。 QAテスト以外で関係者が実物を触らず、机上の議論に終始することで、仕様の不備に気づくのが遅れる。 3. 開発⽣産性向上には、境界領域の認識齟齬を減らし、情報とコミュニケーションを統 合する仕組みが必要。 ● ● ● 共通の資料を活⽤し、要件‧仕様‧設計‧テストの整合性を確保する。 インクリメンタルな仕様策定を⾏い、開発初期からQAや関係者が仕様確認に関与する。 実物を触る機会を増やし、机上の議論だけでなく、早期フィードバックを取り⼊れる。 20 @2025 WealthNavi Inc.

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ご清聴ありがとうございました 21 @2025 WealthNavi Inc.

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【重要な注意事項】 ● 本資料は、断定的判断を提供するものではなく、情報を提供することのみを⽬的としており、いか なる種類の商品も勧誘するものではありません。最終的な決定は、お客様⾃⾝で判断するものと し、当社はこれに⼀切関与せず、また、⼀切の責任を負いません。 ● 本資料には将来の出来事に関する予想が含まれている場合がありますが、それらは予想であり、ま た、本資料の内容の正確性、信頼性、完全性、適時性等を⼀切保証するものではありません。本資 料に基づいて被ったいかなる損害についても、当社は⼀切の責任を負いません。また、当社は、新 しい情報や将来の出来事その他の情報について、更新⼜は訂正する義務を負いません。 ● 本資料を利⽤することによりお客様に⽣じた直接的損害、間接的損害、派⽣的損害その他いかなる 損害についても、当社は⼀切の責任を負いません。 商号等:ウェルスナビ株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第2884号 加入協会:日本証券業協会 一般社団法人日本投資顧問業協会 22 @2025 WealthNavi Inc.

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Appendix 1 定期的にWealthNaviの開発(技術‧組織)に関する情報を発信しています。 開発者ブログ ● 技術広報に関する お問い合わせ先 ● https://zenn.dev/p/wn_engineering ブックマーク追加や記事への「いいね」していただけると嬉しいです ウェルスナビ 技術広報チーム(tech_pr@wealthnavi.com) 23 @2025 WealthNavi Inc.

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Appendix 2 ウェルスナビでは複数の開発系ポジションで採⽤を強化しています。 主な採⽤中職種 ● ● ● ● ● QAエンジニア SETエンジニア モバイル開発エンジニア エンジニアリングマネージャー バックエンド開発エンジニア 採⽤情報詳細 ● 下記URL(QRコード)よりご確認ください。 https://recruit.wealthnavi.com/ 採⽤に関する お問い合わせ先 ● ● 「カジュアルに話を聞いてみたい」という温度感でも構いません。 ウェルスナビ採⽤チーム(recruiting@wealthnavi.com)までご連 絡お待ちしております。 24 @2025 WealthNavi Inc.