夜空の暗さの定量的計測とツーリストの星空評価の比較分析~ みさと天文台における予備調査と今後の展望 ~

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December 15, 24

スライド概要

夜空の暗さの定量的計測とツーリストの星空評価の比較分析 ~ みさと天文台における予備調査と今後の展望 ~

発表内容は報告者個人の見解に基づくものであり、発表者が所属する組織の公式見解ではございません。
また、内容に誤りがある可能性があります。ご了承の上閲覧ください。

発表詳細
http://www.sti-jpn.org/conf/sti2022/program.html

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各ページのテキスト
1.

夜空の暗さの定量的計測とツー リストの星空評価の比較分析 ~ みさと天文台における予備調査と今後の展望 ~ 米澤 樹(紀美野町みさと天文台) 澤田 幸輝(和歌山大学大学院観光学研究科) 尾久土 正己(和歌山大学観光学部)

2.

アストロツーリズム 「美しい星空や天体を見上げるために居住地を離れる諸活動(澤田・ 尾久土,2020)」 例)公開天文台や観光地の星空ツアー、プラネタリウム、オーロラツアー等

3.

アストロツーリズムの流行 • 「星空を眺めるための旅行への参加」に 興味がある人数は全国で1,440万人 (宙ツーリズム推進協議会,2019) • 公開天文台で夜間に星を見る人は年間 55万人(全国公開天文台協会,2006) • 2018年は72万人(※予備集計) 星空を眺めるツアーの例)阿智村

4.

アストロツーリズムで求められるもの 「望遠鏡を覗く」や「天文知識に関する学び」よりも「綺麗な星空」を求める アストロツーリズム未経験者に対する意識調査(n=163) (澤田他,2021)

5.

星空について • 星空の「きれいさ」は日々変化する • 「月齢」「光害の量」「雲量」「風」「空気中のちりの量」「湿度」など様々な 環境要因により変化する(下記は月齢だけ変化させた例) 7/29 新月期の星空 ※輝度を補正 しています。 7/13 満月期の星空 ※輝度を補正 しています。

6.

目的 • 星空の「きれいさ」は何によって決まるのか • 環境要因と観光客の星空評価を比較 仮説1 観光客の星空評価は、空の暗さと相関がある。 仮説2 観光客の星空評価は、気温や雲量、月明かりなど個別事象よりも総 合的な事象である空の暗さと相関がある

7.

調査地:みさと天文台 • • • • • 町立天文台(教育課) 大人1,500円 子ども200 円 プラネタリウムもあり 2021年リニューアル 「天の川」を前面に売り出した 観光施設(山内,2022)

8.

空の明るさの計測について かつては裸眼測定(何等級まで見えているか・主観的) • 環境省が毎年実施している「全国星空継続観察」はデジタルカメ ラを使用 →基準星と空の暗さを比較し算出 →算出に時間と手間がかかる • 連続した計測は必要な調査ではSQM-LE を使用した例が多数 報告されている(山本ほか,2017) • 本調査でもSQM-LEを使用 •

9.

SQM-LE • • • • • Unihedron 社が開発 夜空の表面輝度(以下 NSB)を計測 する機器 天頂20度の単位立体角あたりの等 級値 (mag/arcsec2) の計測可能 簡単に継続観測が可能、安価である ため国内外で広く使用されている (Sánchez,2017) 雲や霧の影響を受けていることを考 慮する必要がある(山本ほ か,2017)

10.

Open Weather Map • • 世界中の任意の地点について、天気 データを提供 世界中の気象機関の予測モデル、観 測データを使用しAPIにて提供 本調査では、下記理由により使用した • 気象機関の観測地点がない • 雲量を取得するため(気象庁は11地 点のみ観測)

11.

環境要因データ収集 SQM-LE -NSB Open Weather map API -雲量 -気温 -天気 Astrotourism.jp 分析

12.

NSB(mag/arcsec2) 23 22 21 20 19 18 17 16 15 14 13 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 18:20 18:30 18:40 18:50 19:00 19:10 19:20 19:30 19:40 19:50 20:00 20:10 20:20 20:30 20:40 20:50 21:00 21:10 21:20 21:30 21:40 21:50 22:00 22:10 22:20 22:30 22:40 22:50 23:00 23:10 23:20 23:30 23:40 23:50 0:00 0:10 0:20 0:30 0:40 0:50 1:00 1:10 1:20 1:30 1:40 1:50 2:00 2:10 2:20 2:30 2:40 2:50 3:00 3:10 3:20 3:30 3:40 3:50 4:00 4:10 4:20 4:30 4:40 4:50 5:00 5:10 5:20 5:30 計測例:月齢7.3-9.3 5月3日 5月4日 時刻 5月5日

13.

ツアー参加者による星空評価の予備調査 場所:和歌山県紀美野町 みさと天文台 期間:5/1(月齢7.3) - 6/12(月齢12.6) 休館日及び悪天候時は実施せず 人数:250人 現在の星空の美しさを5段階評価してもらう。 -バイアスの掛からぬよう、ガイドは星空の状況に言及せず -暗順応してからの実施

14.

仮説1観光客の星空評価は、空の暗さと相関がある 結果:参加者評価の平均とNSBは正の相関がある 20.80 20.60 NSB(mag/arcsec2) 20.40 20.20 20.00 19.80 19.60 19.40 19.20 19.00 18.80 0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 参加者評価 相関係数:0.658(p<0.001) 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00

15.

仮説2:観光客の星空評価は、気温や雲量、月明かりな ど個別事象よりも総合的な事象である空の暗さと相関 がある NSB 相関係数 .658*** 気温 雲量 .058 -0.486*** ※p 値 ***p<.001, **p<.01, *p<.05 月の等級 .383* ※月の等級は『天文年鑑2022』を参照 NSBだけでなく、月の等級と正の相関あり 雲量と負の相関あり 来館者評価とNSB、雲量、月の等級それぞれの相関係数の差を検定したとこ ろ、有意な結果とはならず →仮説2は棄却された

16.

予備的考察 5等級から6等級の違いを認知 SQM計測の値 星の等級 星の数 ⇒星の数の違いにより星空を 評価していると示唆される Min 19.06 Max 20.70 Dark Skies AwarenessのHPより引用

17.

まとめ・今後の展望 結果:参加者評価の平均とNSBは正の相関がある →5等から6等の夜空の違いは認知 1. 2. 3. 4. 星空ツアー実施中に行なったため、属性を踏まえた分析ができ なった。 評価の際に周りの意見に同調して答える例が見られた。 ツアーガイドに配慮しているのか、極端に悪い評価をする例が 少なかった。 調査時期に見られる春の星空は明るい星の少ない季節であり、 評価に影響を 与えた可能性がある。 みさと天文台以外の星空体験での調査や属性を含めて分析など、今 後も継続して調査する必要がある

18.

参考文献 • • • • • • • 澤田幸輝・尾久土正己ほか(2021)「アストロツーリズムに対する日中間の認識ギャップに注目した 意識調査」 『2021年日本天文教育普及研究会年会集録』 Sánchez de Miguel, A., et al. "Sky Quality Meter measurements in a colourchanging world." Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 467.3 (2017): 2966-2979. 山内千里(2022)「みさと天文台の”令和の大改修”に至るまで」『21世紀WAKAYAMA』100, 916. 小野間(2017)「星空環境の評価指標の比較」 澤田幸輝・米澤樹・尾久土正己(2022)「アストロツーリストの夜空評価をめぐ る予備的考察― Sky Quality Meter」『観光学術学会第 11 回大会要旨集』pp. 31-32. 山本・小林・藤井(2017)SQMで福井の夜空の明るさを測る : 測定方法とその 問題点『福井大学地 域環境研究教育センター研究紀要 「日本海地域の自然と環境」』 田村・安藤(2018)徳島の星空:定点観測による光害の時間的変化