スライド - 位置情報ゲーム「Ingress」を用いた自治体での観光振興の取り組み―神奈川県横須賀市と東京都中野区の事例研究によるモデル構築― 内田悠貴

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October 01, 18

スライド概要

Ingressを用いた自治体での観光振興の取り組みについて、神奈川県横須賀市と東京都中野区にインタビューを行い、それに基づいてIngressを用いた自治体での観光振興の取り組みについて求められる要素をまとめたモデル図を作成しました。
執筆時期は2017年です。
論文掲載note:
https://note.com/ruindig/m/mef101a2f8bc6
RuinDig/YukiUchida-graduation-thesis - GitHub
https://github.com/RuinDig/YukiUchida-graduation-thesis
論文概要ページ(Google Scholar向けメタデータ設定済み)
https://ruindig.github.io/pages/graduate-thesis

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各ページのテキスト
1.

位置情報ゲーム「Ingress」を用いた自治体で の観光振興の取り組み ―神奈川県横須賀市と東京都中野区の事例研 究によるモデル構築― 内田悠貴 東洋大学国際地域学部 国際地域学科国際地域専攻

2.

研究動機を説明する前に

3.

Ingressについて • 2016年7月にリリースされたスマートフォンアプリ 『Pokémon GO(ポケモンGO)』を開発したNiantic, Inc.(Niantic社)によるスマートフォン用位置情報ゲー ムアプリ。 • 主な内容:プレイヤーは青と緑、2つの陣営のどちら かを選び、現実世界の各地に点在するゲーム内の拠 点となる「ポータル」を訪れ様々なアクションを起こし たり、ポータル同士を繋ぎコントロールフィールドと呼 ばれる三角形のフィールドを作り大きさを競う。 • ポータルを訪れるためには、プレイヤーが外に出て ポータルが位置する現実世界での場所を実際に訪 れる必要がある。 出典:筆者作成

4.

ポータルとは 寺社仏閣、城跡をはじめとする歴史的建築物や公園、市役所等の公共建築、芸術作品等 の人工物、その地域特有の場所等が基本。 ポータル同 士をつない で形成され た三角形の コントロール フィールド 青・緑・白色 に映る要素 がポータル 出典:筆者作成

5.

プレイヤーの行動実績―Explorer • • 『プレイ開始からこれまでに 未訪問のポータルを何ヶ所 ハック(ポータルからアイテム を入手する行動)したか』を示 す。 これまでに10万か所の未踏 のポータルを訪れたプレイ ヤーもいる。 出典:筆者作成

6.

プレイヤーの行動実績―Trekker • 『プレイ開始からこれ までどれだけの距離を 歩いてきたか』を示す。 • 5000kmを歩いたプレイ ヤーもいれば、1万km 歩いたプレイヤーもい る。 出典:筆者作成

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Ingressが現実世界に与える影響

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Ingressにおけるリアルイベントの数々 出典: https://plus.google.com/ +MasashiKawashima/pos ts/3roEC1R7z8h, 2017年 12月10日参照 出典(左): https://plus.google.com/+ Ingressjapan/posts/2UGD FbJy3SP, 2017年12月10日 参照 出典(右): https://plus.google.com/ 11048365980694075896 4/posts/EKCxXJxD8HE, 2017年12月10日参照

9.

企業・ブランド・組織とのパートナーシップ やコラボレーション 出典:筆者作成 パートナーシップ コラボレーション ローソン 日本赤十字社 ソフトバンク 日本テニス協会 三菱東京UFJ銀行 東急ハンズ AXA PARCO WILLER JTB 伊藤園 New Balance 大日本印刷 Anker オートバックス Cheero

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アプリ内の要素として登場しているが、同 時に、広告(ネイティブアド)としての役割も 担っている等ビジネス面にも影響を与え ている。 例:ローソンの場合、店舗をポータル化す る事で、Ingressプレイヤーは10m先のA社 のコンビニよりも50m先のローソンを選ぶ、 という様にして商圏を広げている。 また、Niantic社としては半径40m以内でプ レイヤーがパートナーシップ企業のポータ ルに対して何かアクションを起こす事で Cost Per Visitとして収益を上げている。 出典: 筆者作成 出典:https://japan.cnet.com/article/35078185/, 2017年12月12日参照、 http://hrnabi.com/2016/02/23/10394/, 2017年 12月12日参照

11.

Ingressを用いた観光振興を目指す自治体による取り組み 神奈川県横須賀市や岩手県など 出典:http://www.cocoyoko.net/ingress/, 2017年12月12日参照 出典:http://www.pref.iwate.jp/kouchoukouhou/031399.html, 2017年12月 12日参照

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研究動機 • 私は日常の中でスマートフォンアプリ「Ingress(イングレス)」をプレイして いる。 • Ingressをプレイする中で、日経トレンディや電通報の特集記事でゲーム の要素を別の領域に応用して社会課題の解決を目指す「ゲーミフィケー ション」という言葉を知る。 • それを受けて、Ingressをはじめとする位置情報ゲームによるゲーミフィ ケーションを当初は主題とした。 • 後に、Ingressを観光振興に導入した自治体の事例研究を主題にする。

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先行文献研究 • Ingressを用いた観光振興や地域活性化の取り組みに関する先行研究は、 岩手県庁ゲームノミクス研究会の報告書や山梨県での取り組みに関する 山梨総合研究所(地域シンクタンク)の報告書などがあり、その他にジオ キャッシング等その他の位置情報ゲームを用いた観光振興や地域活性 化に関する取り組みまたはその可能性を研究した例が存在。 • Ingressを用いた複数の自治体での取り組みを比較した研究は見当たらな かった。

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本研究における問い 【観光振興においてなぜスマートフォンアプリ「Ingress」が 選ばれたのか、そして導入した自治体間で取り組みに差 が出ている要因とは何か】 • 地方自治体がIngressを観光振興に導入した頃は、コロプラ社 の『コロニーな生活』やマピオン社の『ケータイ国盗り合戦』は サービスが続いている時期である。そうした中で、Ingressが選 ばれた理由は何かを研究する。 • また、観光振興にIngressを導入しているが、2014年12月から の導入以来、積極的にイベントやキャンペーンを発信している 神奈川県横須賀市と、同じく2014年の導入以来目立ったイベ ントやキャンペーンを打ち出せていない東京都中野区、双方 の間に差が生じる要因は何かを研究する。

15.

研究方法 1. ミッションデイ横須賀や『「なかのまちめぐり博」の開催を記念したオリジナルミッ ションをクリアした人へのモバイルバッテリープレゼントキャンペーン』に関する TwitterおよびGoogle+上でのSNS投稿を検索。 1-A:ミッションデイ横須賀は「#IngressYokosuka」および「#missionday」をというワード を含む2015年10月30日から2015年10月31日の投稿を対象に検索。 1-B:『「なかのまちめぐり博」~』は2016年10月15日から2017年1月31日の投稿を 「中野区 歴史と文化の回廊」と「まるっと中野 Ingress」というワードで検索した。 1-C:ミッションデイ横須賀において、Google+でNiantic社が公式に立ち上げたイベン トページ(https://plus.google.com/events/cc1fvuf8knlotblbesr4is5l2v0, 2017年10月 30日参照)を閲覧。 1-A、1-B、1-Cはいずれも2017年10月30日時点である。 2. 神奈川県横須賀市と東京都中野区へインタビューを実施(2017年11月)

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研究結果① SNS投稿の検索・調査結果 出典:筆者作成 Twitter 投稿数 Google+ 投稿数 #IngressYokosuka 402件 中野区 歴史と文化の回廊 6件 #missionday 11件 まるっと中野 Ingress 0件 中野区 歴史と文化の回廊 5件 まるっと中野 Ingress ミッションデイ横須賀Google+イベン トページ 3件 50人以上の ユーザーが937 枚の写真を共有 投稿内容 Twitter:#IngressYokosuka、#missionday 当時のゲーム画面、イベント当日の食事、記念艦『三笠』の写真、ミッションデイ 横須賀当日に開かれた対談イベントが実施された横須賀芸術劇場の様子など 多岐にわたった。 Twitter、Google+:「中野区 歴史と文化 の回廊」、「まるっと中野 Ingress」 どのような場所を巡ったのかという内容やモバイルバッテリーの当選を伝える内 容、レンタサイクルで巡ったことを伝える内容などであった。

17.

研究結果② 神奈川県横須賀市へのインタビュー 1. Q:なぜ自治体の観光振興にIngressを選んだのか? A:取り組み開始以前から自分自身がプレイをしていること、取り組 み開始当初Ingressが無料であったこと。 2. Q:観光振興においてどのような場合にIngressが効力を発揮する のか? A:著名な方やメディアを巻き込んで企画する。予算がない中でも、 どのような可能性があるのかを探す。作品へのリスペクトや作品 への愛があること。 3. Q:イベントやキャンペーン成功の鍵は何か? A:【模索・発見・企画】を行政が行い、【発展・継続】を地元事業者 の自発的な動きによって実行され、【波及】として、ファンコミュニ ティの形成がされること。

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研究結果②(続き) 4. Q:Niantic社の介入の有無によるイベントの盛況度合いに差はあっ たのか? A:Niantic社の介入があった2015年10月31日のミッションデイ横須賀 では1866人が参加し、Niantic社の介入が無かった2016年4月30日 に開催された咸臨丸フェスティバルウォーク✕Yokosuka Ingress(総来 場者数1836人、一般参加者1461人、Ingress参加者375人)であった。 よって、Niantic社の介入の有無によるイベントの盛況度合いに差が あった。 5. Q:公式イベントでの有料チケット販売などマネタイズ面が表面化し てきたことで取り組み開始当初からの姿勢に変化はあったか? A:チケット販売は個人のコレクター心を満たすだけのものであったた め、取り組み当初からの姿勢は変わっていない。

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研究結果③ 東京都中野区へのインタビュー 1. Q:なぜ自治体の観光振興にIngressを選んだのか? A:石巻や横須賀でのイベントを参考に取り組みを開始した。 2. Q:観光振興においてどのような場合にIngressが効力を発揮 するのか? A:地域にやる気を持ったプレイヤーがいること、自治体の主 要産業が観光であること、観光スポットが適度に散らばってい ること。

20.

研究結果③(続き) 3. Q:イベントやキャンペーン成功の鍵は何か? A:Ingress×健康、Ingress×地域活性化等、Ingressと何かを掛け合わせ ること、Ingressに限らず、イベントやキャンペーンに付加価値や魅力を 持たせること、事前の情報発信をすること。 4. Q:今現在Ingressを用いた観光振興の取り組みを行っていない理由は 何か? A:当初、石巻や横須賀で活用したイベントが開催されており、中野区 の地域特性を活かしやすい取り組みだと感じていたが、公式イベントで の有料チケット販売等のマネタイズ面や地域トラブル等の新聞記事で の表出があること。また、住宅都市である中野区では、商業地域のすぐ 隣に住宅街があり、住宅街を避けてイベントすることの困難さや歩きス マホなどネガティブな要素も多いため、大きなイベントは難しいと考えて いる。

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結論 研究結果より、横須賀市と中野区 におけるIngressを用いた観光振興 の取り組みに差が生じている要因 は地方自治体のマネタイズ面へ の姿勢と都市の性格であると結論 付けた。 また、横須賀市と中野区へのイン タビューを基に、Ingressを用いた 観光振興の取り組みに求められ る要素を右のモデル図に示した。 ⑨Ingressを用いた 観光振興 ⑧著名な方や地元の有力者、メディア、 企業などを巻き込んで企画する ⑦自治体より地域のプレイヤーが主体とな ること ⑥自治体とプレイヤーコミュニティの積極的な コミュニケーション ⑤予算が無くても様々な可能性を探す ④観光スポットが適度に散らばっていること ③公平性に対する自治体の姿勢 ②自治体の重要産業が観光であること 出典:筆者作成 ①自治体職員がIngressをプレイしている

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今後の課題 • Ingressを用いた観光振興の取り組みにおいて横須賀市に並び代表的な 自治体である岩手県にインタビューを行うことができなかった。 • 更なる研究として、自治体の産業別売り上げおよび収入金額において観 光産業が占める割合の水準などの基準を設定した上で、このモデル図 に基づいて、どの地方自治体がIngressを用いた観光振興の取り組みを 行うのに当てはまるのか、岩手県にこのモデル図を当てはめるとどの要 素を満たすのか、という観点から研究を行ってみたい。 • 加えて、海外でもIngressのリアルイベントは開催されているが、横須賀市 のようなIngressを用いた観光振興の継続的な取り組みの事例にも視野 を広げていきたい。

23.

ありがとうございました。 論文PDF https://drive.google.com/file/d/12kUlZKJbUV_LnicGe5_Z1tVxp4gnr3l/view 論文要旨PDF https://drive.google.com/file/d/16MhMcw0Tl MIcepapaUHOGbLVTjRX-ZVS/view 論文概要ページ 論文掲載note https://ruindig.hatenablog.jp/entry/ ingress/rd-yu-graduate-thesis https://note.mu/ruindig/m/mef10 1a2f8bc6