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January 07, 25
スライド概要
妊娠中や授乳中の女性が臨床試験に参加する必要性が高まっています。従来の医薬品開発では妊婦や授乳婦が除外されることが多く、これが有効性や安全性に関する情報不足を招いています。既に、妊娠・授乳中の女性を研究対象に含めることを推奨している国際的な取り組みやガイドラインが存在することを説明しました。
SMO-CRCを経て、病院CRCへ転職し、CRC歴15年以上。新人時代にGCP全文読んだ後、改訂の度に全文読み直すので、CRCの中ではGCPフリークス? 個人的な活動のため、プロフィール「では」名を伏せ、「スライド上」のみ公開。 ‐SMO-CRC時代に病院CRCが個人的に受講した資料を善意で拝見し、自身が成長した経緯があり、世のCRCに還元したい思いで、自身が作成した資料は(引用文献などから公開許可が得られる範囲内で)無料公開。
ICH-E21 妊婦及び授乳婦の臨床試験への組入れ 2025/01/07 聖路加国際病院 治験管理課 三宅絢野 本発表は、演者の個人的見解に基づくものであり、 演者が所属する聖路加国際病院の見解を示すものではありません。 本演題発表に関連して、開示すべき COI 関係にある企業等はありません
医薬品の開発段階での情報不足 ➢ 医薬品の開発段階でのデータ不足している • 臨床試験に組み入れない • 安全性・有効性の情報がない • 妊婦・授乳婦に医薬品が提供されない 臨床試験に 組み入れない ➢ 参考 | 添付文書 9.5 妊婦 (選択は以下4つ) ✓ 投与しないこと 安全性・有効性 の情報がない ✓ 投与しないことが望ましい ✓ 治療上の有益性が危険性を上回ると判断される 場合にのみ投与すること ✓ 非臨床試験で妊娠、胎児及び出生児への影響を 認めない+薬理作用からも影響が懸念されない 妊婦・授乳婦に 医薬品が提供 されない 場合は「9.5妊婦」を設ける必要はない Ayad M, Costantine MM. Epidemiology of medications use in pregnancy. Semin Perinatol.;39(7):508–11. 第50回ICH即時報告会_E21 EWG : 臨床試験への妊婦・授乳婦の組入れ,https://www.jpma.or.jp/information/ich/sokuji/eo4se30000001f18-att/04_E21.pdf,(2024-12-25閲覧) 医療用医薬品の添付文書等の記載要領に関する質疑応答集(Q&A)について 厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課 事務連絡平成31年1月17日 令和5年2月17日最終改正 2
データ創出の必要性 ➢ 薬剤が妊娠・授乳中でなければ適応の場合でも… • 治療しない/治療を中断する • 薬剤を使用するなら避妊を必須とする • 薬の影響が不安なので中絶を考える ➢ 実際には妊婦・授乳婦も • 妊婦・授乳中でも病気になる 例 | 妊娠期がん、 • 疾患を抱えていても妊娠・出産を希望 例 | 自己免疫疾患、精神疾患 • 妊婦に伴って罹患する疾患 例 | 妊娠高血圧症、妊娠糖尿病 感染症 ➢ 無治療/治療中止により、疾患の増悪・発症リスクを高める疾患もある 妊娠中・授乳婦を対象とした 医薬品のデータ創出の必要性がある 第50回ICH即時報告会_E21 EWG : 臨床試験への妊婦・授乳婦の組入れ,https://www.jpma.or.jp/information/ich/sokuji/eo4se30000001f18att/04_E21.pdf,(2024-12-25閲覧) 3
米国 | PRGLAC ➢ 妊娠中および授乳中の女性に特化した研究に関する タスクフォース (2017-2021) Task Force on Research Specific to Pregnant Women and Lactating Women (PRGLAC) • 21st Century Cures Actに基づき設置 • PRGLACからの勧告リスト (2019/6/7) 1. 臨床試験の議題に妊娠中および授乳中の女性を含め、 統合する Include and integrate pregnant women and lactating women in the clinical research agenda 10. 臨床研究に妊娠中および授乳中の女性を含めるために、 プロトコル開発と研究デザインに積極的なアプローチ を導入する Implement a proactive approach to protocol development and study design to include pregnant women and lactating women in clinical research ※日本語訳はDeepL翻訳 4 https://www.nichd.nih.gov/about/advisory/PRGLAC, (2024/12/29閲覧)
EMA | ConcePTION ➢ 妊娠中および授乳中の薬の安全性をよりよく監視し、 伝達するためのエコシステムの構築 (2019/4- 2024/12/31) Building an ecosystem for better monitoring and communicating of medication safety in pregnancy and breastfeeding • ConcePTIONの最終的な目標は、妊娠中および授乳中 の薬剤の安全性に関するエビデンスに基づく情報を、 効率的かつ体系的で倫理的に責任のある方法で提供 できる、信頼できる生物医学的エコシステムを構築 することである情報は、医療提供者と患者の双方が 同様に利用できる形で提供される The ultimate goal of ConcePTION is to create a trusted biomedical ecosystem capable of providing evidence-based information on the safety of medications during pregnancy and breastfeeding in an efficient, systematic and ethically responsible way. The information will be provided in a form that is usable by both healthcare providers ※日本語訳はDeepL翻訳 and patients alike. 5 https://www.ihi.europa.eu/projects-results/project-factsheets/conception , (2024/12/29閲覧)
CIOMS・WHO | 国際倫理指針 ➢ 人間を対象とする健康関連研究の国際的倫理指針 (2016) International Ethical Guidelines for Health-related Research Involving Humans • 妊娠可能女性の参加 Inclusion of women of child-bearing potential • 生物学的に妊娠可能な女性を臨床研究から除外する ことを一般的な原則とすることは正しくない. 当該女性集団についての研究による新たな知識が 得られる可能性が奪われてしまうからである. このことは,女性の自己決定権に対する侮辱である. A general policy of excluding from clinical studies women who are biologically capable of becoming pregnant is unjust in that it deprives them of the benefits of new knowledge derived from these studies. It is also an affront to their right to self-determination. https://cioms.ch/wp-content/uploads/2017/01/WEB-CIOMS-EthicalGuidelines.pdf , (2024/12/29閲覧) CIOMS, 訳:栗原千絵子, 齊尾武郎, 監修:渡邉裕司. 人間を対象とする健康関連研究の国際的倫理指針. 臨床評価. 45巻4号. 2018, 745-862, https://cioms.ch/wp-content/uploads/2019/07/Japanese-Translation-CIOMS-Ethical-Guidelines-2016.pdf,(2024-12-29閲覧) 6
WHO | ガイダンス ➢ 臨床試験におけるベストプラクティスのガイダンス (2024/9/25) Guidance for best practices for clinical trials 2.1.3 適切な臨床試験の対象集団 Appropriate trial population • 臨床試験から通常除外される集団(明示的または暗示的な除外)の 具体例としては、妊娠中および授乳中の女性、乳児および小児、 高齢者が挙げられる。この慣行は非常に有害であり、除外の妥当な 理由が示されない限り、こうした人々は試験への参加対象とすべき である(例えば、深刻な安全性への懸念がある場合、特定の介入に 対する禁忌がある場合、または試験が対象とする健康問題のリスク が非常に低い場合など) 。 Specific examples of populations that have typically been excluded from clinical trials (either explicitly or by implicit exclusion) include pregnant and lactating women, infants and children, and older adults. This practice has been hugely detrimental and such people should be eligible for trial enrolment unless a valid justification is provided for their exclusion (for example, if there is a serious safety concern or a contraindication to a certain intervention or if they are at very low risk of the health issue the trial seeks to address). https://www.who.int/publications/i/item/9789240097711 , (2025/01/07閲覧) ※日本語訳はDeepL翻訳 7
CTTI | Transforming Trials 2030 ➢ 2030年の臨床試験におけるCTTIのビジョン (2020/4/27) CTTI Transforming Trials 2030 1. 臨床試験は患者中心で、簡単にアクセスできる。 Clinical trials are patient-centered and easily accessible. 登録された臨床試験参加者は、医療製品の使用 が予想される集団の多様性を反映している Enrolled clinical trial participants reflect the diversity of the population expected to use the medical product. ※日本語訳はDeepL翻訳 8 https://ctti-clinicaltrials.org/who_we_are/transforming-trials-2030/ , (2024/12/28閲覧)
ICHとは 9
ICHガイドラインの区分 10
ICH-E8 (臨床試験の一般指針) E8 1997/7 E8(R1) 3.2.2.1 被験者の選択 一般に、妊娠可能な女性は、試験に参加する際には十分に 効果的な方法で避妊すべきである。 3.1.4.3 特別な集団 a)妊婦における検討 一般に、妊婦は、妊娠時の使用を目的としていない医薬品 の治験からは除外されるべきである。 治験薬の投与中に被験者が妊娠した場合には、投与を問題 なく中止できるのであれば、治験薬の投与を中止すべきで ある。この場合には、妊娠、胎児、出生児の追跡評価を 行うことは重要である。同様に、妊娠中に使用される 医薬品につき妊婦が参加する臨床試験でも、妊娠、胎児、 出生児の追跡評価が非常に重要である。 b)授乳婦における検討 薬物又はその代謝物の乳汁への排泄については、必要に 応じて検討すべきである。授乳婦が試験に加わった際は、 授乳されている乳児に対する薬物の影響についても観察 すべきである。 2021/6 4.3.3.1 妊婦での検討 妊娠中に使用される可能性のある医薬品 の検討は重要である。 妊娠中の女性ボランティアが臨床試験へ 組み入れられる場合、又は参加者が試験 の途中に妊娠した場合、妊娠とその結果 の追跡評価、並びにその転帰の報告は 必要である。 4.3.3.2 授乳婦での検討 医薬品又はその代謝物の乳汁への排泄は、 該当する場合及び実施可能な場合に検討 すべきである。授乳婦が臨床試験に組み 入れられている場合、通常、乳児に対す る医薬品の影響についても観察する。 11 https://www.pmda.go.jp/files/000156372.pdf , (2024/12/28閲覧) https://www.pmda.go.jp/files/000250244.pdf , (2024/12/28閲覧)
ICH-E21 (妊婦・授乳婦の臨床試験への組入れ) ➢ 妊婦及び授乳婦の臨床試験への組入れ (2022/5) Inclusion of Pregnant and Breast-feeding Individuals in Clinical Trials 臨床試験への妊娠中および授乳中の女性の参加および/または 継続を可能にするために、世界的に受け入れられる枠組みと ベストプラクティスを提供することを目的としている また医薬品使用に関する臨床的意思決定(例 | 製品ラベルの 改善)に役立つ、妊娠中および授乳中の女性における安全性、 有効性、および/または薬物動態に関する十分に強固なデータ セットの収集を可能にする原則と実践をカバーする the E21 Guideline seeks to provide a globally accepted framework and best practices to enable inclusion and/or retention of pregnant and breast-feeding individuals in clinical trials and will cover principles and practices to enable the collection of a sufficiently robust set of safety, efficacy, and/or pharmacokinetic data in pregnant and breast-feeding individuals which will better inform clinical decision-making in medicinal product use (e.g., improved product labelling). ※日本語訳はDeepL翻訳 https://www.ich.org/page/efficacy-guidelines, (2024/12/29閲覧) https://www.pmda.go.jp/int-activities/int-harmony/ich/0126.html, (2024/12/29閲覧) 12
参考に…市販後のガイダンス ➢ 医薬品の投与に関連する避妊の必要性等に関するガイダンス • 日本のガイダンス • 適用範囲は市販後である • 生殖発生毒性と遺伝毒性から 考慮されている ✓ 遺伝毒性試験 S2(R1)+S6(R1) 種々の機序で遺伝的な傷害を 引き起こす可能性を検出 ✓ 生殖発生毒性試験 S5(R3)+S6(R1) 医薬品のヒトへの適用が生殖 発生過程に及ぼすあらゆる 影響を明らかにする ※表は抜粋であるため全文を読むことを推奨する 医薬品の投与に関連する避妊の必要性等に関するガイダンスについて 薬生薬審発0216第1号,薬生安発0216第1号,令和5年2月16日 https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001064535.pdf,(2024/12/28閲覧) 13
最後に ➢ これまで • 大前提として、薬害を繰り返してはならない • 一方、妊婦・授乳婦であることだけを理由に医薬品の投与から遠ざけられてきた • これは医薬品の開発段階でのデータ不足であることは否めない • 「臨床試験=妊婦・授乳婦は除外することで胎児・母体を守ること」と信じて臨床試験を実施 • 海外では臨床試験への妊婦・授乳婦の組み入れは既に10年程前から議論されている ➢ 倫理的問題 • 妊婦・授乳婦を臨床試験から不当に排除することには倫理的問題があることを認識する • 臨床試験へのアクセスを制限している • 臨床試験の恩恵を受ける機会を奪っている • 女性の自己決定権の機会を奪っている ➢ 将来に向けて • • 臨床試験で必須であった避妊の規定を解除することに対する影響の考慮が必要である ガイドライン発出前から日本でどのように対応するかディスカッションを重ねることが 望ましい 第50回ICH即時報告会_E21 EWG : 臨床試験への妊婦・授乳婦の組入れ, https://www.jpma.or.jp/information/ich/sokuji/eo4se30000001f18att/04_E21.pdf,(2024-12-25閲覧) 14