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August 01, 23
スライド概要
知的障害のある子どもを持つ保護者に対して有用と思われる下記の情報提供内容をまとめております。
12.障害者の意思決定や日常の手続きを支援する制度について
(成年後見制度、日常生活自立支援事業)
このスライドは12の内容のうちの1つです。全ての内容を参照される場合は下記のURLにアクセスしてください。
https://www.docswell.com/s/7480727/5387NL-2023-08-01-084137
知的障害特別支援学校にのみならず、保護者さまや知的障害の方に関わる仕事をされている方にも広くご利用いただければと思います。
資料については自由に改変いただけますが、営利目的での使用および再配布はご遠慮ください。
なお、内容においては、書籍や政府機関の情報を参照して細心の注意を払って作成していますが、制度の変更や万が一の誤記等によって内容が正しくない恐れがあります。
また、本内容に基づいて情報提供を行い、不利益が生じた場合の筆者は責任を一切負いません。
親の支援なき後に備えて 事例 Kさんは自身が高齢になったため、子どもの将来を考え、自分や奥 さんがなくなった後は子どもを信頼できる人に任せたいと思いました。 調べた結果、障害のある方にも成年後見制度が使えることがわかり、 司法書士に相談して詳しい説明を受けました。後見制度を利用すると 月額2万円程度の報酬が必要になることや途中でやめられないことが わかりました。Kさんの子どもは中程度の障害がありますがグループ ホームに入っているので、日常的なケアは必要ありません。まだまだ Kさんは子どもの手続きや財産管理などは行え、奥さんも元気なので、 すぐには成年後見制度を使わず、Kさんの子どもが将来の後見人を指 定する任意後見制度を利用することにしました。 話し合いの結果、任意後見人にはグループホームを運営している社 会福祉法人が引き受けてくれ、Kさんの子どもも同意したので、司法 書士の手を借りて申請を行いました。
障害者の意思決定や日常の手続きを支援する制度について 成年後見人制度 障害のある人に代わって財産の管理や重要な決定を下す後見人を定める制度です。 財産全てに代理権のある「後見」、申請した範囲と借金や相続など重要な行為のみ 影響力のある「補佐」、本人が認めた範囲のみ影響がある「補助」が役割として存 在します。後見人は本人に代わって契約したり、不当な契約を取り消したりするこ とができます。また、1名の被後見人に対して、財産管理をする後見人と身上監護を 行う後見人の2名をつけるなど、複数名の後見人の指定も可能です。 *なお、「後見」の権限が最も強く、「補助」は弱く、その間が「補佐」です。 後見人等が権利を行使できる例 • 一人ではグループホームの選択・契約は難しいので、後見人が本人にとって暮らし やすそうなグループホームを見つけ、「代理権」を用いて契約した。 • 一人で家にいるときに訪問販売で英会話セットを売りつけられた。 →それを知った補佐人は「取消権」を用いて契約を解除した。 権利を行使できない例 • 外出する度にグループホーム利用者全員分のケーキを買ってきてしまう。 →日常生活に関する行為は影響できないため、権利を行使できない。
親の支援なき後に備える制度、サービス 成年後見制度の利点 • 親なき後は後見人が、本人に代わって財産管理や意思決定を行ってくれる安心感が あります。 • 後見人の仕事としてある程度の身上監護(本人の生活や健康の維持を助けること) が期待できます。 成年後見制度の欠点 • 成年後見人候補を挙げることはできますが、裁判所が選任するので後見人を選ぶこ とはできません。(任意後見制度を利用している場合を除く) • 報酬が必要となります。目安としては子どもの資産1000万までが月2万円程度、 1000~5000万で月4万程度、5000万超で月6万程度です。また、身上監護に特別な 困難がある場合は報酬額の50%の範囲で増額されます。 • 現状では一度成年後見制度を始めると途中で辞めることができません。 →後見人の報酬はずっと発生し続けます。 • 後見人によっては財産管理や意思決定の代行のみで、身上監護が十分に行われない ことがあります。また、本人のニーズを理解せずに対応を行う可能性もあります。
親の支援なき後に備える制度、サービス 成年後見人について 任意後見制度を利用し て親が勧めた人を任意後 見人として子どもが同意 するなどの場合を除いて、 基本的に後見人を選ぶこ とはできません。 親族が選任される場合 は2割程度と低く、専門後 見人(司法書士、社会福 祉士、弁護士)が選ばれ ることが大半です。 *ただし、親族を候補者 に挙げる割合自体が低い ため、候補に上げること で専任される可能性はあ ります。 *グラフは最高裁判所の 『後見関係事件の概況 ―令和4年1月~12月―』 から引用しています
親の支援なき後に備える制度、サービス 成年後見人について 下記に後見人を任せる相手の一般的な利点と欠点を記述しています。 親族 利点 本人のニーズが良くわかっており、無報酬でも引き受けてくれる可能性が高い 欠点 ほとんど接点のない遠い親族だと財産の使いこみなどが心配される 成年後見人開始後は信託監督人を指定し、報酬を払う必要がある(月1万~2万) 長い期間にわたって行うので負担が大きい 専門後見人 利点 手続きが良くわかっており、任意後見制度利用の場合は信頼できる人を探して任せられる 欠点 本人のニーズを理解できるよう工夫が必要である 法定後見の場合は後見人が信頼できる人間か不明である 報酬が必要になる(月2万程度) 法人(社会福祉法人、弁護士事務所など) 利点 長く関わってもらえやすく、手続きもよくわかっている 欠点 複数人で対応するので本人のニーズ理解ができるかがより心配である(報酬も必要)
親の支援なき後に備える制度、サービス 任意後見制度 法定後見制度では後見人の候補者は挙げることができるものの、誰 が後見人になるかわからないため、その事自体がリスクになります。 法定後見制度ではなく、任意後見制度を利用することで後見人を事前 に決めておくことができます。 *成人した子どもの保護者が子どもの任意後見人を選ぶことはできま せん。保護者が勧めた候補者を子どもが受け入れて届け出るという形 となります。そのため、重度の障害があるために意志の確認が困難な 場合は任意後見契約を締結できない可能性があります。また、子ども が候補者を拒否する場合は任意後見契約が結べません。
親の支援なき後に備える制度、サービス 任意後見制度の利点 • 後見人を信頼できる人に任せることができる。 • 後見を始めるまでは、一般的に報酬が発生しません。 *後見を始める前にも報酬を支払うと契約した場合は除きます。また、任意後見人 として登記する際に、公正証書作成費用等はかかります。 任意後見制度の欠点 • 任意後見人への報酬に加えて、任意後見監督人への報酬が必要となります。 任意後見制度の流れ 1.信頼できる人を「任意後見人候補者」として選びます。 2.具体的な支援内容や報酬額を候補者との間で決めます。 3.決まった契約内容に基づき公正証書を作成してもらい、契約を締結します。 4.作成された公正証書が法務局に送られ、登記されます。 以降、後見の必要が生じた際に、4親等以内の親族や任意後見人などが家庭裁判 所に申し立てます。申立後に任意後見監督人が専任され、任意後見が始まります。
親の支援なき後に備えて 事例 *Kさんの子どもの障害が軽度である場合 Kさんは自身が高齢になったため、子どもの将来について考え、成 年後見制度の利用を検討しました。 調べた結果、後見制度を利用すると月額2万円程度の報酬が必要に なることや途中でやめられないことがわかりました。Kさんの子ども は軽度の障害があり、複雑な手続きなどを行うことは難しいのですが、 わかりやすく説明してもらえれば自分のことは自分で決められます。 Kさんは受けられる支援に報酬が見合わないと感じました。 相談支援員専門員が訪問した際に、方法がないか聞いてみると日常 生活自立支援事業について教えてもらえました。一回の費用も安い上 に、利用する場合にだけ支払えばいいので金銭的負担がすくないため、 子どもに勧めて何度か練習として利用しました。子どもも必要に応じ て利用するというので、Kさんも自分になにかあっても子どもはやっ ていけると感じました。
親の支援なき後に備える制度、サービス 日常生活自立支援事業 現状の成年後見人制度は費用負担が大きく、途中でやめられないため、使い勝手がよく ありません。一人での行政や福祉サービスの手続き、金銭管理は難しいものの、補助があ ればなんとか行える方は成年後見制度ではなく、日常生活支援事業を利用するのが良いで しょう。 日常生活自立支援事業の概要 • 支援者:社会福祉協議会職員や専門的な知識を持った生活支援員 • サービス内容: 福祉サービスの利用援助(申し込みや契約の代行など) 金銭管理(医療費や公共料金の支払い手続き、年金や福祉手当の受領手続きなど) 重要書類や通帳等の保管 日常生活の事務手続き(公的書類の取得や届け出、クーリングオフ制度の手続きなど) • 費用:1回で1000円~2500円程度