知的障害の子どもを持つ保護者への情報提供資料_11_障害者扶養共済制度・信託

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August 01, 23

スライド概要

知的障害のある子どもを持つ保護者に対して有用と思われる下記の情報提供内容をまとめております。

11.親なき後に一定の金額を子どもに支給する制度について
(障害者扶養共済制度、家族信託、生命保険信託、特定贈与信託)

このスライドは12の内容のうちの1つです。全ての内容を参照される場合は下記のURLにアクセスしてください。
https://www.docswell.com/s/7480727/5387NL-2023-08-01-084137

知的障害特別支援学校にのみならず、保護者さまや知的障害の方に関わる仕事をされている方にも広くご利用いただければと思います。
資料については自由に改変いただけますが、営利目的での使用および再配布はご遠慮ください。
なお、内容においては、書籍や政府機関の情報を参照して細心の注意を払って作成していますが、制度の変更や万が一の誤記等によって内容が正しくない恐れがあります。
また、本内容に基づいて情報提供を行い、不利益が生じた場合の筆者は責任を一切負いません。

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兵庫教育大学大学院における修士論文執筆に際して作成した資料を共有しています。 研究において分析した知的障害の子どもを持つ保護者の持つ不安に対して応える内容をまとめております。 知的障害特別支援学校にみならず、保護者さまや知的障害の方に関わる仕事をされている方にも広くご利用いただければと思います。

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各ページのテキスト
1.

親なき後に一定の金額を子どもに支給する制度について 事例 *Jさんが40代前半の場合 Jさんは自分が先立った後の子どものことを考え、ふと不安 になりました。学校からの配布物に、親なき後に子どもにお 金を支給できる障害者扶養共済制度のパンフレットが入って いたため、記載されていた都道府県の窓口に問い合わせてみ ました。 担当者からの説明では、途中で加入をやめた場合にはほと んどお金が戻ってこないデメリットはあるものの、Jさんの年 齢では比較的安く加入できることや税金の優遇があることな どがわかり、加入することにしました。 後日、Jさんは自治体の窓口で加入の手続きを行いました。

2.

お子さんにお金や資産を残す場合は慎重に・・・ 障害のあるお子さんが多額のお金や資産を持つとデメリットが多いです。 例 • 法定成年後見人に親族以外の専門家が指名される可能性が非常に高くなる。 • 選ばれた専門家の成年後見人報酬が上がる。 • 不動産などに重度障害のある方の名義が入ると、後見人がつかないと売却できないこ とが多い。 *後見人がついた方の不動産は、その方の住んでいないものであれば、後見人が自由に 処分できるようになるので、自宅以外の不動産を残すことはおすすめしません。 • 多額のお金をうまく扱えない方も多い。 • 多額の資産を持っていることがわかるとだまし取られるおそれも・・・ そのため、一度にお金を渡さず、少額を毎月渡すことが有効です。

3.

親なき後に一定の金額を子どもに支給する制度について 障害者扶養共済制度 月々9300円からの支払いで加入する保護者が亡くなった後に、一口月2万円(二口月4万) が生涯支給されます。地方自治体が運営する制度なので、掛け金の割に保障が非常に厚いです。 利点 • 65歳以上、加入歴20年の両方を満たすとそれ以上掛け金は必要なくなる。 • 加入期間中、払い終わった後のどちらの場合も、加入者に万一があったら、お子さんに生涯 の保証が得られる。 • 支給された給付金に対して税金がかかりません。生活保護を受ける場合も支給分の生活保護 費は減額されず、別途支給されます。 • 小規模企業共済等掛金控除とすることで、加入する方の所得によりますが年末調整または確 定申告で掛け金の2割程度(所得税・住民税共に10%の方の場合)が戻ってくる。 • 掛け金を上回る受給額が期待できる。 (45歳になる直前に加入すると総保険金額約350万円、年末調整で戻ってくる総額約65万円、総受給額約600万円) *お父さんが加入し、年の差25歳の息子が受給する場合で、お二人とも現在の平均寿命 (81歳)まで生きるシミュレーションです。

4.

親なき後に一定の金額を子どもに支給する制度について 障害者扶養共済制度 欠点 • 45歳の区分から区分が上がるごとに総支払金額が割高になっていきます。 • 払いきるまで、掛け捨て保険に近い性質なので、途中で脱退した場合は少額(5~25万)しか返ってき ません。お子さんが先に亡くなってしまった場合も弔慰金として少額(5~25万)しか返ってきません。 • 保護者が65歳以降になると入ることができません。 加入時の年度の4月1日時点の年齢 掛金月額(1口あたり) 35歳未満 9,300円 35歳以上40歳未満 11,400円 40歳以上45歳未満 14,300円 45歳以上50歳未満 17,300円 50歳以上55歳未満 18,800円 55歳以上60歳未満 20,700円 60歳以上65歳未満 23,300円

5.

親なき後に一定の金額を子どもに支給する制度について 事例 *Jさんが50代後半の場合 Jさんは自分が先立った後の子どものことを考え、ふと 不安になりました。障害者扶養共済制度の利用も考えま したが、Jさんの年齢では掛金が高く、税金の優遇も仕事 をやめたあとはメリットが少ないことなどがわかり、加 入は見送りました。 インターネットで検索したJさんは生命保険信託や特定 贈与信託があることを知り、Jさんは保険会社へ説明を聞 きに行きました。まだまだ元気なJさんは、自身が更に高 齢になったときに、残っている退職金などを原資にして 終身保険料を支払い生命保険信託を利用する心づもりを しました。

6.

親なき後に一定の金額を子どもに支給する制度について 家族信託 親族に資産を託して、それの中から決めた金額をお子さんに渡してもらう制度 です。公証役場(遺言などを管理する役場)に信託契約書を提出して取り決めを 法的に有効にする必要があります。 利点 ・取り決めの内容を柔軟に決めることができます。 ・納得してもらえるなら無報酬でもお願いできます。 欠点 ・公証役場に契約書を提出するなど利用までのハードルが高いです。手続きは司 法書士などの専門職を頼るのが現実的かと思います。 ・税務署とのやり取りが必要になる場合があるので、任される親族への負担が大 きい。 ・月々高額の支給をすると所得税・住民税がかかります。 ・任せる相手によっては使い込みの恐れがあります。

7.

親なき後に一定の金額を子どもに支給する制度について 生命保険信託 終身の生命保険金などを原資にして契約で決めた金額を定期的にわたすことができま す。障害の有無に関わらず、利用できるサービスです。 利点 • 指図権者(お金の出し入れを指示する人)が必要ですが、必要に応じて指示を出すだ けなのであまり負担になりません。 • 初期手数料は5,500円、年間手数料は年額22,000円と割安で、総じて特定贈与信託より 手数料が安い傾向があります。 *手数料は2023年7月時点でのプルデンシャル生命の場合です。 なお、取扱会社による条件の開きが大きく比較が必要です。 • お子さんの後に受け取り手がなければお世話になった団体などに寄付できます。 欠点 • 終身生命保険などを別途契約するため、保険料相当の金額を支払う必要があります。 • 月々高額の支給をすると所得税・住民税がかかります。 • 生命保険金がなくなると信託が終了します。

8.

親なき後に一定の金額を子どもに支給する制度について 特定贈与信託 保護者さんが健在なうちに銀行と契約を行い、贈与を行います。契約時点で完結するので、契約直後 に何かあっても生前贈与加算などで相続税の影響を受けません。契約で決めた金額をお子さんに定期的 にわたすことができます。 利点 • お子さんの後に受け取り手がなければお世話になった団体などに寄付できます。 • 軽度~中度の方は3000万まで、重度の方は6000万までの非課税枠が設定され、枠内なら無税 で渡せます。 (ただし、多額の贈与をしても十分に使い切れない可能性はあります。) 欠点 • 契約にあたって成年後見人をつけることを求められる可能性があります。 • 契約後は解約の取り消し、中途解約、受益者の変更が非常に難しいです。 • 信託した金額が尽きると、契約が終了します。 • 総じて生命保険信託より手数料が高額です。初期手数料は3.3%と高く、年間手数料は1.65%、安全性の 高い国債運用を行う代わりに年間手数料を割り引く場合でも0.88%になります。1000万円以上の贈与 から受け付けるため、利用のハードルが高いです。 *手数料等は2023年7月時点でのみずほ信託銀行の場合です。

9.

親なき後に一定の金額を子どもに支給する制度について どの制度を利用すべきかの目安 • 44歳までの方→障害者扶養共済制度 掛金総額を大幅に上回る支給が期待でき、65歳まで働くとすると節税 のメリットが最大限利用できるので障害者扶養共済制度がお勧めです。 • 45歳~49歳の方→ ①障害者扶養共済制度 ②生命保険信託 障害者扶養共済制度の掛金はやや上がりますが掛金総額を十分に上回 る支給が期待できます。今の年齢から20年仕事を続ける場合は節税のメ リットが最大限発揮できます。 継続的に支出をしたくない方は手数料が比較的安い生命保険信託を探 して、将来的に加入するのが良いと思われます。

10.

親なき後に一定の金額を子どもに支給する制度について どの制度を利用すべきかの目安 • 50歳~54歳の方→ 障害者扶養共済制度 または 生命保険信託 障害者扶養共済制度の掛金は上がりますが掛金総額を上回る支給は期待できます。 しかし、節税のメリットは基本的に働き続けている間に得られるためため、退職後 はあまりメリットを得られません。 手数料が比較的安い生命保険信託を探して、将来的に加入するのも良いと思われ ます。 • 55歳以上の方→ ①生命保険信託 ②障害者扶養共済制度 障害者扶養共済制度の掛金は更に上がりますが、それでも掛金総額を上回る支給 される期待はできます。ただし、節税される期間は長くありません。 退職後のライフプランを考慮して、問題の出ない金額設定を行い、手数料が比較 的安い生命保険信託を探して、将来的に加入するのが良いと思われます。

11.

親なき後に一定の金額を子どもに支給する制度について どの制度を利用すべきかの目安 • 信頼できる親族がいて負担をいとわず協力してくれる場合 → ①障害者扶養共済制度 ②家族信託 基本的には障害者扶養共済制度を検討したほうが良いですが、年齢的に掛金が上 がり、利用を見合わせる場合は家族信託が検討できます。 信頼できる親族に任せる方が費用がかからず、必要なときに柔軟にお金を渡して もらえます。しかし、生涯に渡って行うことを考えると負担が大きくなるため、障 害のある方より同程度の年齢か若い方で、負担をいとわず協力してくれる方を見つ ける必要があります。 • 多額の金額を渡したい方(おすすめはしませんが)→ 特定贈与信託 多額の金額を渡したい場合、非課税で贈与できる特定贈与信託が向いています。 ただし、手数料が高い場合が多く、本人が使い切れない恐れがあります。契約後の 取り消しや変更が非常に難しい点も踏まえて利用を検討しましょう。