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March 02, 26
スライド概要
相変わらず、生成AI関係のニュースが多い。最近は、「SaaSの死」論争が話題になっている。背景に生成AIの能力向上やAIエージェントへの期待があるものと思われる。そもそも生成AIやAIエージェントは企業にとって恩恵にも不利益にもなるもので、結果、先行きについて不確実性を高めているのは事実であろう。その中の代表的なものとして、生成AIの企業組織への導入が必ずしも成功していないことが挙げられる(95%が失敗または停滞)。これが成功してくれないと、AI投資に対する回収の目途も立たない。そこで、今回はこの問題についてまとめてみた。そこで、公開する。
定年まで35年間あるIT企業に勤めていました。その後、大学教員を5年。定年になって、非常勤講師を少々と、ある標準化機関の顧問。そこも定年になって数年前にB-frontier研究所を立ち上げました。この名前で、IT関係の英語論文(経営学的視点のもの)をダウンロードし、その紹介と自分で考えた内容を取り交ぜて情報公開しています。幾つかの学会で学会発表なども。昔、ITバブル崩壊の直前、ダイヤモンド社からIT革命本「デジタル融合市場」を出版したこともあります。こんな経験が今に続く情報発信の原点です。
組織への生成AI導入の課題と指針 B-frontier 研究所 高橋 浩
目的 • 生成AIが普及し出しており、更に利用促進を図るためデータセ ンター投資も活発に行なわれている。 • 一方、企業組織への生成AI導入は必ずしも成功していない。 • その実態がMITレポート(July 2025)で報告された。 • 「95%の組織がゼロリターン」で上手く行っていないとの結果 は市場に衝撃を与えた。 • そこで、組織への生成AI導入では次のようなニーズがある。 ①生成AI導入ではどのような効果が期待できるか? ②何が生成AI導入や普及を妨げているのか? • 本稿は、このような認識から、主に障害の中味や、その背景に ついて理解を深めることを目的としている。 2
目次 1. 2. 3. 4. 5. はじめに - MITレポートの紹介 各分野へ生成AI導入時の機会と課題 組織への生成AI導入の評価結果紹介 組織への生成AI導入の分析 今後に向けた指針 3
1.はじめに - MITレポートの紹介 MITレポートの要点 • 企業への生成AI導入の投資額は300~400億ドルに上っていた。 • しかし、95%の組織はゼロリターンという驚くべき結果が明らか になった。 • 購入側(大~中堅~中小企業)と提供側(スタートアップ、ベン ダー、コンサル企業)間の結果があまりにも明確に分かれていた。 ……そこで、レポートではこれを「生成AIの分断」と呼んでいる。 • 統合AIパイロットのうち数百万ドル規模の価値を生み出していた のはわずか5%であった。 • 大多数の企業は測定可能な損益への影響がないまま停滞していた。 • 成功・失敗の相違はモデルの品質や規制などではなくアプローチ によるものだった。
MITレポートの要点(続) • 生成AI導入は主として個人の生産性向上に寄与するものであり、 企業の損益向上には寄与していないと結論づけられた。 • また、カスタムAIシステムやベンダー提供のエンタープライズ向 けAIシステムは企業から密に拒否されていた。 • 組織の60%がこれらを評価していたが、パイロット段階に達して いたのはわずか20%、本番環境に到達したのは5%であった。 • 殆どは、脆弱なワークフロー、コンテキスト学習の欠如、日常業 務との不整合などで失敗していた。 • 主な調査結果を以下に示す。
調査結果1 生成AIの組織での個人使用、企業統合使用の利用状況 • タスク特化型生成AIツールのパイロット段階から本番環境への 急激な低下は、生成AIの分断を浮き彫りにしている。 個人使用の生成AI 組み込み型またはタスク固有の 生成AI わずか5% 調査済み パイロット段階済み 実装に成功済み
調査結果2 業種による相違 • 生成AIによるディスラプションは業界で大きく異なっていた。 エネルギーと素材 先端産業 金融サービス 消費者・小売 ヘルスケアと製薬 プロフェッショナルサービス メディア&テレコム 新たに開発したAI市場破壊指数に基づく評価 • 左図は各業界を5つの観測可能な指標(下記)で 0から5までスコア付けした結果 1. 2. 3. 4. 5. 主要既存企業の市場シェア変動率(2022~2025年) 2020年以降に設立されたAIネイティブ企業の収益成長 AI主導の新しいビジネスモデルの出現 生成AIに起因するユーザー行動の変化 AIツールに起因する経営組織の変更頻度 相対的に左記業種には浸透しだしている。
実際、大手企業ではAI導入率が低下していた 米国国勢調査局の企業規模別最新データによると従業員250人以上の企業ではAI導入率が低下していた 大企業のAI導入率が低下し始めている 低下 従業員250人以上
2.各分野へ生成AI導入時の機会と課題 トレンド 企業組織へ生成AI導入検討の背景 • AIによって最大3億の仕事が自動化され、2030年までには8億人も の労働者が失業する可能性があるとの警告が嘗てあった (Mckinsey, 2018/6/1)。 • その後生成AIが登場し、全ての人が新たなシステムを社会の利益 創出のため受容できるか、新たな慣行採用の是非が迫られている。 総論把握 • 生成AIは、技術的、社会的、法的、倫理的観点から、機会と課題 を突きつけている。 • 一方、生成AIは諸刃の剣であり、社会と産業のあらゆるレベルに プラスとマイナスの影響を与えると突き放して見ることもできる。
課題整理の枠組み • そこで、この問題をより具体的に検討するため、本節では次の5 分野を例に、生成AI導入による機会と課題の抽出を試みる。 1• 製造業における生成AI 2• 持続可能なITマネジメントにおける生成AI 3• 職場における生成AI 4• 人事分野における生成AI 5• マーケティングにおける生成AI • そして、次節での「組織への生成AI導入の評価」に繋げる。
1 製造業における生成AI 機会 • 製造業ではデジタル化、自動化、コネクティビティ技術(IoT等)導 入による生産プロセス改善、コスト削減、効率性向上に大きな期 待が寄せられており、生成AIはこうした技術の一つである。 • 生成AIは特に最適なソリューションの探索と実行、機能仕様やコ ストに応じた新しい出力の作成、設計と生産オプションの組み合 わせによる効率的なリードタイム実現などに活用できる。 1• 設計と開発の最適化に活用 2• 定義された制約に最も適合する最適なソリューションを特定し、複数の サプライヤーの能力との互換性確保に活用 3• 様々なデータソースを分析してリアルタイムに欠陥を特定するのに活用、 など
課題 1 製造業における生成AI(続) • 生成AIを既存の生産システムに統合するには、共通のフレーム ワークがないので、一般的には技術能力の面で多額の先行投資が 必要になることが多い。 • 複雑で動的な製造環境では、製造プロセスの変動に適応できる堅 牢で信頼性の高いAIモデルが必要だが、適切な学習データの入手 が難しく、正確な能力を生成できない場合がある。 1 • プライバシー、法的責任、著作権侵害などのリスクに対する懸念 2 • 著作権侵害の対象になるかもしれないとの懸念 3 • 出所が完全に開示・把握されていないデータを用いて学習された場合の 企業が生成した出力(製品)の所有権を主張できるかどうかの懸念 4 • データのプライバシーを確保しながらセキュリティ能力を開発するため の別途の投資の負担、など
2 持続可能なITマネジメントにおける生成AI 機会 • 生成AIはエネルギー効率、資源管理、持続可能な調達、持続可能 な設計・開発などに焦点を当てることで、IT業界の持続可能性の 管理を支援できる。 • 生成AIは、意思決定、設計、最適化、シミュレーションなどに適 用することで独自の優れた回答を生成でき、持続可能性を高める ことができる。 1 • 気候変動などの悪影響の最小限化に活用 2 • 資源効率の向上や環境への影響軽減化に活用 3 • データセンターにおけるエネルギー利用の最大化に活用 4 • 需給予測に基づいたエネルギー価格の推移予測に活用、など
2 持続可能なITマネジメントにおける生成AI(続) 課題 • そもそも生成AIは多くの処理能力を使用するため、エネルギー消 費量の増加につながる。 • 偏ったデータや信頼性の低いデータで学習された生成AIは、社会 的、経済的、環境的不公正を助長する可能性がある。 • 新しいイノベーションを急速に導入すると、ハードウェアの頻繁 な交換や廃棄物(電子廃棄物)の処分などにつながる。 1 • エネルギー効率とレイテンシ、スループット、信頼性などとのトレード オフ改善が課題 • コンピューティングリソース、ストレージ、帯域幅などのリソース割り 2 当てを改善するのが課題 3 • 機密性の高いITサステナビリティデータの評価などが課題 4 • 人間とAIの連携での、説明可能性他の限界などが課題、など
3 職場における生成AI 機会 • 生成AIはタスクの自動化や人への依存度を減らす業務プロセスの 再設計などだけでなく、専門家が業務を拡張・補完するためにも 活用できる。 • 生成AIは、構造化されていない創造的なタスクにも適応できるた め、プログラミング、建築、ライティング、カスタマーサービス などの業務、複雑で非構造化された活動における意思決定の補助 などに適応範囲を広げられる。 • さまざまな種類の生成AIを活用して創造的なタスクを拡張 1 • 例1:視覚ベースの生成AIを使用してデザイン関連のタスクを強化 • 例2:個別化された治療計画や診断を提供することで、患者の転帰を改 善し、全体的なコストを削減、など
課題 3 職場における生成AI(続) • 創造プロセスの大部分が生成AIに割り当てられるようになると、 従業員の道徳的・心理的健康状態に変化が見られる可能性がある。 • 仕事への目的意識の喪失や創造プロセスの「ブラックボックス 化」で、専門家としての意欲に影響を与える可能性がある。 • 更に潜在的には、成果物の知的所有権に関するもので、人間は重 要な知的財産の所有者になれない危険性がある。 1 • テクノロジーの活用が職場における従業員のウェルビーイングにどのよ うに影響するか検討が課題 2 • AIが徐々に創造プロセスを置き換えたり、制御を奪ったりする可能性の 検討が課題 3 • 職場において人間の創造性を無意味なものにしてしまう方向への移行が もたらす長期的な影響の検討が課題、など
4 人事分野における生成AI 機会 • 生成AIは、HRM(Human Resource Management)において、採用 プロセス、研修・開発イニシアチブ、資源配分等に適応の結果、 従業員エンゲージメントを改善するのに活用できる。 • 生成AIは、採用プロセスにおいて、履歴書から候補者の情報を自 動抽出し、採用担当者がより適切な応募者に選択的に焦点を絞る ように支援することができる。 1 • 従業員間のリソース割り当てや従業員のエンゲージメント改善、従業員の 離職率を最小限に抑えるための工夫などに活用 • 企業内で求人広告を出し、応募者が応募する際の応募資格、適性、選考プ 2 ロセスの問い合わせなどに活用 3 • 従業員の過去の行動や交流に関するリマインダーをチームに提供すること で、チームメンバー間のより良い交流促進に活用
課題 4 人事分野における生成AI(続) • データが従業員の様々なグループ、役職、文化、民族性を適切に 反映していない場合、モデルが生成する推奨結果に課題が生じ、 全従業員に対する公平性を示すことが困難になる可能性がある。 • 従業員が多様な民族、文化、社会的背景を持つ場合、組織におけ る包括的な労働規範や慣行の基盤に悪影響を与える可能性がある。 1 • 採用プロセスと採用結果の改善にどのように貢献できるかが課題 2 • 人材獲得プロセスの複雑さを考慮すると、採用プロセスにおける潜在的な 応募者の体験をどのように向上させられるかが課題 • 人事部門は、予算と専門知識が限られたサポート機能と見なせることが多 3 いため、これらの要件にどのように対応できるかが課題 • 公平性、透明性、説明責任をどのように確保し、人事管理への悪影響を軽 4 減できるかが課題、など
5 マーケティングにおける生成AI 機会 • 生成AIは、広告コンテンツ、デジタルマーケティング戦略、 チャットボットベースのソリューション、ブログ投稿、営業研修 プログラムの開発などに活用できる。 • 生成AIは、見込み顧客の閲覧履歴や過去の購入履歴を他の利用可 能なデジタル情報と組合わせることで、コンテンツのハイパー パーソナライゼーションを支援することに活用できる。 1 • オンラインキャンペーンの属性の混乱を解消し、収束的な結果を得るため に活用 2 • 既存顧客の膨大なデータセットを活用して、インサイトや推奨事項を導き 出すために活用 3 • 販売実績の最適化と顧客体験の向上の機会を拡充するために活用 4 • サービス提供を差別化し、プレミアム料金設定などのために活用
課題 5 マーケティングにおける生成AI(続) • 分析や洞察のために生成AIを活用する際には、非公開データと公 開データの統合、データの所有権、知的財産権、プライバシーの 問題といった課題に対処する必要がある。 • 販売・マーケティング活動に生成AIの利用を拡大するに連れて、 一部の企業が偏ったデータや誤った情報を入力情報として用いる よう誘導される可能性がある。 1 • 市場の状況や微妙な顧客の感情、感情的な顧客インタラクションを理解 し対応することが課題 2 • 生成AI関連のマーケティングデータと関連する洞察の所有権をどのよう に決定するかが課題 3 • 生成AIが、ユーザーへの高度な共感と感情的サポートが求められるサー ビス業界において、どのような役割を果たせるかが課題
各分野へ生成AI導入時の機会と課題(中間まとめ) • 典型的な適応例は下記などである。 • 最適なソリューションの探索と実行(製造業) • エネルギー効率、資源などの管理(ITマネジメント業) • 専門家の業務を拡張あるいは補完(職場への適応) • 企業の採用プロセスの改善(人事分野への適応)、など • 但し、いずれの場合も解決が必要な根源的課題を伴っている。 • これらは専門分野毎に個別対応が必要なものと、生成AI導入 に共通な課題に分けられる。 • そして、特に重要な後者の課題を検討するためには社会的、 技術的、法的、倫理的視点からの総合的検討が必要である。 • このような取組みは難しいが、適切に企画されたインタ ビュー情報を基礎にして仮説・検証型の取組み方法がある。 • 次節ではこのような取組みを述べる。 21
3.組織への生成AI導入の評価結果紹介 評価結果の紹介 • 本節では企業組織への生成AI導入時の振舞いを総合的視点から主と してインタビューでデータ収集し、それを基に仮説・検証型で検討 した研究事例を紹介する。 • 3つの事例を述べる。 A• 障壁を打ち破る: 生成AIの導入と組織での使用の調査 By N. Albishri B• 生成AI革命:生成AI導入の深掘り By A. Kumar C• 混乱を超えて:TOEフレームワークを通して見る生成AIの 組織への導入 By L. Hughes 22
A 障壁を打ち破る: 生成AIの導入と組織での使用の調査 *:7つの対象概念は全て特定原著論文に基づく。 生成AI特性識別の対象概念* 内容 (a)生成AIの相対的優位性 生成AIツールを使うことで、タスクをより迅速に完了できる。 生成AIツールを使うことで、仕事の質を向上させられる。 生成AIツールを使うことで、仕事が楽になる。 生成AIツールを使うことで、仕事の効率が向上する。 生成AIツールを使うことで、生産性を向上させられる。 (b)生成AIの互換性 生成AI技術は私の仕事スタイルにとても合っている。生成AI技術を使うことで、仕事の質が向上する。 生成AI技術の使用中に監視されることに何の問題もない。 生成AI技術のおかげで、仕事が楽しくなった。 生成AI技術を使うことにはリスクを伴う要素があるが、私はそれを楽しんでいる。 (c)生成AIの複雑性 生成AI技術の使用は複雑な作業である。 生成AI技術は、それほど頭を使わずに操作できる。 生成AI技術は学習にそれほど時間がかからない。 生成AI技術には柔軟な機能がある。 (d)生成AIの試用可能性 生成AIツールを様々な業務シナリオで試用し、どのように役立つかを確認できたことに感謝している。。 生成AIツールを試してみることで、業務要件への適用性について十分な情報に基づいた結論を導き出すことができる。 生成AIツールを様々な業務シナリオで試用し、どのように役立つかを確認できたことに感謝している。 生成AIツールを使用するかどうかを決める前に、実際に試してみることができた。 生成AIツールを試用期間を設け、その機能を十分に確認することができた。 (e)生成AIの利点の観測可能 性 他の人が生成AIツールを使っているのを見た。友達が使っているのを見て、自分も生成AIツールに参加しようと思った。 私が使っているのを見て、他の同僚も生成AIツールに興味を持ったようだった。 (f)生成AIによる社会的影響 力の認識 友人たちは、生成AIツールを使うべきだと言っている。生成AIツールを使うのは良いことだというニュース報道を見る。 専門家の意見は、生成AIツールの使用に対する肯定的な感情を示している。 マスメディアの報道を見て、生成AIツールを使うべきだと確信している。 (g)生成AIの継続的な使用 今後の業務において、生成AI技術を活用する予定である。 今後の業務において、生成AI技術を活用していく姿を思い描いている。 業務において生成AI技術を活用する可能性を積極的に模索している。 長期的な業務計画に生成AI技術を取り入れることを決意している。
仮説一覧 • 7つの対象概念を元に9つの仮説を設定する。 番号 仮説の内容 H1 生成AIの相対的優位性(a)の認識は、生成AIの試用可能性(d)にプラスの影響を与える。 H2 生成AIと既存技術との互換性(b)は、生成AIの試用可能性(d)にプラスの影響を与える。 H3 生成AIの試用可能性(d)は、生成AIの利点の観察可能性(e)にプラスの影響を与える。 H4 生成AIの試用可能性(d)は、生成AIによる社会的影響力(f)にプラスの影響を与える。 H5 生成AIの試用可能性(d)は、生成AIの継続的な使用(g)にプラスの影響を与える。 H6 生成AIの利点の観察可能性(e)は、生成AI の継続的な使用(g)にプラスの影響を与える。 H7 生成AIの社会的影響力(f)は、生成AIの継続的な使用(g)にプラスの影響を与える。 H8a 生成AIの複雑性(c)は、生成AIの相対的優位性(a)と、高度な生成AI技術の相対的な利点といった生成 AIの試用可能性(d)との関係をプラスに調整する。経営幹部は生成AIを試用することで、その有効性 を確認する動機となる。 H8b 生成AIの複雑性(c)は、生成AIの互換性(b)と生成AIの試用可能性(d)の関係をプラスに調整する。例 えば、生成AIの互換性は、経営幹部が生成AIを試用し、その有効性を確認する動機となる。
概念モデル • 7つの対象概念と9つの仮説を一覧表示する。 (c) (e) 生成AIの 複雑性 生成AIの利点 の観察可能性 (a) 生成AIの相対 的優位性 (g) (d) 生成AIの継続的 な使用 生成AIの試用 可能性 (b) 生成AIの 互換性 (f) 生成AIによる社会 的影響力の認識
• 準備 データ収集と実施法 • 7つの対象概念に関する情報は全て対応する原著論文から入手した。 • 7つの対象概念のバランス調整の後、業界専門家によるフィード バックを行った。 • 参加者 • サウジアラビアの複数業界の組織で複数職務を兼務する企業幹部を アンケート依頼者として選定した。 • 実施法 • Googleフォームで作成されたWebベースの当該目的用アンケートを 500名に送付し回答を求めた。 • 376名から回答があった。不完全なものを除去し有効回答は342件で あった。 • この有効データを元に厳密な統計処理を行った結果を次頁に示す。
検証結果 • H8aを除き正の関係が有ることが確認された。 (c) (e) 生成AIの 複雑性 生成AIの利点 の観察可能性 (a) 生成AIの相対 的優位性 (g) (d) 生成AIの継続的 な使用 生成AIの試用 可能性 (b) 生成AIの 互換性 (f) 生成AIによる社会 的影響力の認識
4設問に基づく検証結果の確認 • 設問1.生成AIの相対的優位性(a)と生成AIの互換性(b)に関する認識は、生成AIの試用 可能性(d)にどのような影響を与えるか?(H1,H2) • H1とH2は正であった。生成AIの相対的優位性(a)、互換性(b)と経営幹部の試用意欲(d)との 間には正の相関があることが分かった。 • 既存システムとの整合性と従業員の準備状況が実験を促進させることを示している。 • 設問2.生成AIの試用可能性(d)は、利点の観察可能性(e)、社会的影響力の認識(f)、継 続的な使用(g)とどのように関連しているか?(H3,H4,H5) • 試用可能性(d)はリスク認識を低下させ、採用を促進させていることが分かった。 • 設問3.生成AIの利点の観察可能性(e)、社会的影響力の認識(f)は、生成AIの継続的な使 用(g)とどのように関連しているか?(H6,H7) • 生成AIの利点の観察可能性(e)、社会的影響力の認識(f)は、経営幹部の生成AIの継続利用意 思(g)に良い影響を与え経営幹部の意欲を高めていることが分かった。 • 設問4. 生成AIの複雑性(c)は、生成AIの相対的優位性(a)、互換性(b)、および試用可能 性(d)の間の関連を調整するか?(H8a,H8b) • 生成AIの複雑性(c)が相対的優位性と試用可能性の関係を調節しないことが分かった(H8a)。 生成AIのメリットが複雑性に見合うほど魅力的でなく試用さえ躊躇してしまうことがある。
• 考察: 考察と実践的意味 • 経営幹部が生成AIに潜在的メリットを認識していても、複雑性(c)に 伴う認知負荷がメリットを覆い隠す障壁となっている可能性がある。 • そして、判断ミスを犯すことへの恐怖が、生成AI試行への意欲を阻 害し、意思決定プロセスをさらに複雑化させている可能性がある。 • 生成AIの相対的な利点(a)、既存との互換性(b)と継続的使用(g)間には、 試用可能性(d)を介した正の相関関係があることが分かった。 • 実践的示唆: 1. 過度の複雑さは試用可能性を妨げるが、互換性はその悪影響を軽減する。 2. 技術の非互換性は、従業員を取り囲む技術的障壁を作り出し、パフォー マンス効率に悪影響を及ぼす。 3. 従って、組織はまず従業員のスキルを向上させ、その後、試験的に生成 AIを導入してそのメリットを最大限に発揮させることが不可欠である。 4. その為には経営幹部に対する適切なトレーニングと人材育成も重要であ る。 5. 即ち、障壁緩和には経営幹部への研修と従業員の教育開発が重要である ことが示唆される。 29
B 生成AI革命:生成AI導入の深掘り • AI投資回収に関係の深い企業組織への生成AI導入、特にB2B企業形態 への生成AI導入に下記設問を設定している。対象概念を下表に示す。 • 設問1. B2Bマネージャーによる生成AI導入の主要な推進要因は何か? • 設問2. 生成AI導入はB2B企業業績に大きな影響を与えるか? • 設問3. 倫理的なリーダーシップは生成AI の導入にどのような影響を与えるか? 分類 生成AIを活用する理由 対象概念 内容 (a)独自性の必要性 独自性への欲求は、群衆から抜きん出たいという個人の願望 を反映している。 (b)情報の完全性 ユーザーは、関心のあるトピックに関する最新かつ包括的な 情報を受け取ることを期待している。 (c)利便性 利便性は、最小限の人的労力でタスクを効率的に完了する能 力を指し、エンゲージメントを大幅に向上させる。 (d)欺瞞性 欺瞞性は、技術が不正確または誤った情報を提示し、期待に 応えられていない、あるいはタスクを実行できていないとい う印象を与えることを指す。 (e)情報過多 情報過多は、個人が過剰な情報に圧倒され、それを効果的に 処理する能力を超えていると感じたときに発生する。 生成AIに反対する理由
仮説一覧 • 5つの対象概念を元に7つの仮説を設定する。 番号 仮説の内容 H1 独自性への必要性(a)は、B2B企業における生成AI導入にプラスの影響を与える。 H2 情報の完全性(b)は、B2B企業における生成AIの導入にプラスの影響を与える。 H3 利便性(c)は、B2B企業における生成AI導入にプラスの影響を与える。 H4 欺瞞性(d)は、B2B企業における生成AIの導入に悪影響を及ぼす。 H5 情報過多(e)は、B2B企業における生成AIの導入に悪影響を及ぼす。 H6 B2B企業における生成AIの導入は、企業業績にプラスの影響を与える。 H7 B2B企業において、倫理的なリーダーシップは生成AI導入と企業業績の関連性を有意に 調整する。
概念モデル • 5つの対象概念と7つの仮説を一覧表示する。 生成AIを活用する理由 倫理的リーダーシップ (a)独自性の必要性 (b)情報の完全性 (c)利便性 生成AIに反対する理由 (d)欺瞞性 (e)情報過多 生成AI採用 企業業績
• 準備 データ収集と実施法 • 5つの対象概念を抽出するため、B2Bマネージャー約30人に2023年 9月から10月にかけて、半構造化インタビューを複数回実施した。 • 対象概念抽出のためのデータは、世界7か国から収集された。 • 参加者 • 仮説検証のためのデータ収集には、広く使用されているデータ収集 プラットフォームProlificを使用して参加者を募った。 • 実施法 • 測定項目数とサンプルサイズの比率を学術的に推奨されている基準 を上回るように考慮した。 • 選別した回答301件のうち277件がスクリーニングの質問に合格した。 回答者の平均像は1日4時間生成AIを個人使用している人達であった。 • この有効データを元に厳密な統計処理を行った結果を次頁に示す。
検証結果 • H5を除き正の関係が有ることが確認された。 生成AIを活用する理由 倫理的リーダーシップ (a)独自性の必要性 (b)情報の完全性 (c)利便性 生成AIに反対する理由 (d)欺瞞性 (e)情報過多 生成AI採用 企業業績
仮説に基づく検証結果の確認 • 仮説H1, H2, H3【 (a)独自性の必要性, (b)情報の完全性, (c)利便性】: • 独自性は、個人が革新的で他に類を見ないソリューションを求める動機となっていた。 • 正確で信頼性の高いアウトプットを作成するには、情報の完全性が不可欠であった。 • 利便性はB2B企業における生成AIの採用率を高めていた。 • 仮説H4 【(d)欺瞞性】: • 欺瞞性が認識されると、B2B企業の管理職における生成AIの採用率が低下することが明らか になった。 • 仮説H5 【(e)情報過多】: • 情報過多はB2B企業における生成AI導入に大きな影響を与えないことが分かった。 • ユーザーは膨大な量の情報をフィルタリングするための戦略を立て、情報過多の悪影響を 軽減できている可能性がある。 • 仮説H6 【企業業績】: • 倫理的リーダーシップはB2B企業における生成AI導入と企業業績への影響を改善することを 示唆している。 • 仮説H7 【倫理的リーダーシップ】: • 倫理的リーダーシップが高いB2B企業は、企業業績が向上する可能性がある。
• 考察: 考察と実践的意味 • 生成AI導入の主な理由として、独自性、情報の完全性、利便性へのニーズ が浮上し、反対の理由として、欺瞞性と情報過多が浮上した。 • 倫理的リーダーシップが生成AIの真の潜在能力を引き出す上で重要である ことが示唆された。 • 実践的示唆: 1. 経営者は、独自性と創造性を重視した組織文化を育成することが望まし い。 2. 従業員は、可能な限り完全な情報に基づいて意思決定を行うように訓練 される必要がある。 3. 企業は、タスク遂行の利便性を高める高品質な生成AIツールへの投資を 活発に行う必要がある。 4. 管理者は、従業員に批判的な思考力を育み、生成AIが提供する情報に虚 偽があると感じた場合、批判的に判断し、必要に応じて是正措置を講じ る姿勢を取ることが望ましい。 5. 倫理的リーダーシップの調整効果は有効であり、生成AIの潜在的価値を 最大限に活用するためには、企業は倫理的で責任感のあるリーダーを採 用することが望ましい。 36
C 混乱を超えて:TOEフレームワークを通して見る生成AIの組織への導入 • 技術・組織・環境(TOE)フレームワークを用いて生成AIが組織の意思決定 に与える影響などを下記設問に沿って明らかにした。対象概念も示す。 • 設問1.組織における生成AIの活用に影響を与える、技術、組織、環境に焦点を当てた 主要な要因は何か? • 設問2. 生成AIの活用に影響を与える主要な調整要因は何か?また、それらは組織内の 意思決定にどのような影響を与えるか? 分類 対象概念 (a)複雑性 堅牢な技術アーキテクチャや適切なITインフラストラクチャの必要 性は、技術的および運用上の大きなハードルになる。 (b)相対的優位性 生成AIはビジネスプロセスを合理化し、反復的タスクに費やす時間 を最小化し、また、非構造化データから貴重な洞察を抽出できる。 (c)スタッフのスキル 従業員が生成AIを業務フローに統合する準備が整っていない状態で は、従業員は生成AIツールを自信を持って適切に活用できない。 (d)変革能力 組織変革能力は、意思決定者が生成AI技術をどのように支援し、実 装するかを形作る上で極めて重要な役割を果たす。 (e)規制環境 組織は生成AIシステムが規制や標準に準拠していることを確認する 必要があり、規制環境は生成AIの導入に重要な影響を与える。 技術的背景(T) 組織的背景(O) 環境的背景(E) 内容
仮説一覧 • 5つの対象概念を元に6つの仮説を設定する。 番号 仮説の内容 H1 認識された複雑性(a)は、生成AIの採用に悪影響を及ぼす。 H2 相対的優位性(b)の認識は、生成AIの採用にプラスの影響を与える。 H3 スタッフのスキルと能力(c)は、生成AIの導入にプラスの影響を与える。 H4 規制圧力(e)は、生成AIの導入に悪影響を及ぼす。 H5 変革能力(d)は、認識される複雑性(a)と生成AI導入の関係に正の影響を与える。 H6 変革能力(d)は、スタッフのスキル(c)と生成AI導入の関係に負の影響を与える。
概念モデル • 5つの対象概念と6つの仮説を一覧表示する。 技術的背景(T) (a)複雑性 (d)変革能力 (b)相対的優位性 組織的背景(O) (c)スタッフスキル 環境的背景(E) (e)規制環境 生成AI使用
• 準備 データ収集と実施法 • 5つの対象概念の抽出のため、業界関係者と探索的な定性調査を行 うとともに、世界中の様々な業界セクターの意思決定者を対象とし たインタビューを行なった。 • インタビューの質問は、TOEフレームワークに沿って作成された半 構造化質問で、合計14回インタビューが実施された。 • 参加者 • データ収集にはProlificを使用して参加者を募った。 • 実施法 • 事前スクリーニングを実施して、適切な該当者を選別するこ とで、最終的に304名を特定した。 • データ収集は2024年12月に行われた。 • ここで得たデータを厳密に統計処理し分析した結果を次頁に示す。
検証結果 • H5を除き正の関係が有ることが確認された。 技術的背景(T) (a)複雑性 (d)変革能力 (b)相対的優位性 組織的背景(O) (c)スタッフスキル 環境的背景(E) (e)規制環境 生成AI使用
仮説に基づく検証結果の確認と考察 • 仮説H1, H2, H3【 (a)複雑性, (b)相対的優位性, (c)スタッフスキル】: • 複雑性は生成AIの利用に有意な負の影響を与えており、組織への生成AI導入を阻害していた。 • 相対的優位性は生成AIの利用に強い正の影響を示し、有益と認識されて採用加速させていた。 • スタッフスキルは正の影響を示し、従業員教育が不可欠な要素であることを示唆している。 • 仮説H4 【(e)規制環境】: • 仮定された負の関係を裏付ける証拠が不十分であることが示された。 • 規制上の懸念が生成AI導入の主要な阻害要因とは認識されていないことを示唆している。 • 仮説H5 【(d)変革能力】: • 変革能力が正の緩和役割を果たし、複雑性の負の影響を弱めていることを示唆している。 • 変革能力の高い組織は、生成AI導入において認識されている困難を克服しやすく、複雑性へ の懸念にもかかわらず、より多くの導入を促進すると考えられる。 • 仮説H6 【(d)変革能力】: • 変革能力が高いほど、生成AIの活用を促進するためのスタッフのスキルへの依存度を低下さ せることを示唆している。 • 実質的には、変革能力が高い場合、生成AIの導入はスキルのばらつきに対して鈍感になり、 逆に変革能力が低い場合は、より敏感になる。
組織への生成AI導入の評価結果紹介(中間まとめ) • 3つの生成AI導入評価における対象概念を一覧にまとめて示す。 による分類軸 技術的背景(T) 資料 (c)複雑性 (b)互換性 (d)試用可能性 (a)相対的優位性 資料 (b)情報の完全性 (a)複雑性 (a)独自性の必要性 (c)利便性 (b)相対的優位性 (c)スタッフのスキル (d)変革能力 組織的背景(O) 社会/集団への 依存的背景 (e)観測可能性 (f)社会的影響力 (g)継続的使用 (e)規制環境 環境的背景(E) (生成AIに反対する理由) 資料 (d)欺瞞性 (e)情報過多 • 上記分類に基づき、より具体的な実践的示唆の抽出を次節で行う。 43
4.組織への生成AI導入の分析 分析の枠組みと分析結果 • 本節では分析のバランスが良く組織要因への配慮も充分な からの情報を中心にして組織への生成AI導入を深堀する。 資料 4.1.複雑性 • 複雑性とは、生成AI技術の解釈、設定、既存ITインフラへの統合がど の程度難しいのかの認識の程度を指す。 • 技術的障壁としては、互換性、試行可能性、その他のイノベーション 特性が、採用にどのように影響するかも含む。 • 合わせて、生成AIモデルの説明可能性、出力の予測不可能性、技術統 合の課題なども含む。 • 例えば、説明可能性の複雑さ、即ち有用性、偏り、予測不可能などは 生成AIの出力を理解する際の認識論的な難しさを示す。
• このような認識に基づく再構成で、技術的課題は純粋に技術的な課題 から、認知的および解釈的な課題を含むものへと変化する。 • 従って、しばしば透明性のない出力を信頼し認証する能力も考慮した 上で、組織は解釈可能性の詳細に取り組む必要がある。 • 導入の決定は、機能性だけでなく、企業が十分に理解していない成果 を信頼し正当化できるかどうかも考慮する必要がある。 4.2.相対的優位性 • 相対的優位性は生成AIの利用を最も強く予測する因子として浮上した。 • 相対的優位性は、イノベーションが、それが置き換える既存システム やプロセスよりもメリットをもたらすと認識される程度を指す。
• これらの認識されたメリットには、効率性の向上、意思決定の改善、 顧客とのインタラクションの強化、様々な部門における生産性の向上 などがある。 • インタビュー回答者もコンテンツ作成能力やデータ分析能力の向上と いった実用的メリットも挙げており、生成AIを業界横断的なワークフ ローを再構築できる汎用技術として認識している。 4.3.スタッフのスキル • 従業員の専門知識、経営陣のサポート、組織的な準備といった内部特 性は、組織が新しい技術を採用し実装する能力を形作る。 • 従業員が高度な技術リテラシー、AIへの精通度、自動化技術の事前経 験などを有する組織は、生成AIツールの実験、カスタマイズ、統合に 取り組む可能性が高くなる。
• スキルが主に社内リソースであった従来のIT環境と異なり、生成AIは 能力の補完性、即ち人間の専門知識と機械の生産性の相互作用を重視 する。 • この複雑さは、人間の能力とAIの能力の関係が単なる付加的なもので はなく、むしろ相乗的な相互作用であり、技術導入においてもリソー ス統合の理解の再定義を要求する。 • これは、スキルが組織にしっかりと位置づけられるという従来の認識 に疑問を投げかけ、生成AI導入は、カテゴリーを横断した社会技術的 スキルに左右されることを示唆している。 • 従って、生成AI導入の成功は、組織リソースの個別性ではなく、人間 とAI能力のダイナミックな相互作用にかかっていることを認識する必 要がある。
4.4.変革能力 • 組織の変革能力は生成AIの急速かつ予測不可能な進化に適応し、再構 築し、効果的に対応する能力を反映する動的な能力と理解できる。 • 即ち、変革能力の高い組織は、技術の複雑性が導入に及ぼす悪影響を 軽減させ、解釈可能性の問題やデータ依存性、システム統合の課題な どのリスクを吸収できる有利な立場を取れる。 • 組織が、アジャイルな組織構造、継続的な学習文化、レジリエントな リーダーシップのような変革能力を備えていた場合、複雑性は回避す べき障壁としてではなく、管理すべき課題として捉えられる。 • 逆に、変革能力の低い組織は、イノベーション導入の負担が熟練した 個人にのしかかり、彼らの存在が決定的な要因となる可能性がある。 • そこで、強固な変革能力を持ちたい組織は、チーム間の学習を制度化 し、個人の専門知識への依存を減らし、生成AIの統合を支える適応的 なルーチン開発を促進する必要がある。
組織への生成AI導入の分析(中間まとめ) 変革能力から組織学習ループへ • 変革能力は、生成AIアプリケーションの実験、フィードバックの吸収、不確 実性の下での反復的な再構成などの学習ループを反映している。 • この枠組みは、能力の重要性を静的な見方から、調査と適応の動的プロセス へと変える。 • この観点から、生成AI導入とは、一度限りの実装ではなく、継続的な探索と 適応のプロセスであることを示唆している。 • 変革能力を動的能力として組み込むことで、企業は生成性と不確実性を乗り 越えるための内部リソースを調整できる。 • 変革能力は、スキルの影響を個人レベルから組織レベルへと変化させ、例え ば、医療や政府機関のように規制が厳しく、資源が限られている分野でも、 スタッフの専門知識が中心的な役割を担える可能性がある。 • 適応型リーダーシップ、アジャイルなプロジェクト管理、イノベーションガ バナンスへの投資を通じて、生成AIの導入はより持続可能でスケーラブルな 利用を促進できる。
5.今後に向けた指針 どのように組織への生成AI導入に立ち向かうか 5.1.実践への示唆 • 組織は、コンテンツ作成の自動化、意思決定支援、顧客エンゲージメン トの強化など、生産性、効率性、創造性の測定可能な改善を示すユース ケースを開発する必要がある。 • 意思決定者は、早期の成功事例を示し、それらを共有し、生成AIイニシ アチブをより広範な戦略目標と整合させることで、導入を促進できる。 • 組織は、生成AIの導入を単なる技術投資としてではなく、人材育成の取 り組みとして捉える必要がある。 • 研修プログラムは、技術的機能とスタッフが専門各業務において生成AI を有意義に適用できるよう支援するAIリテラシーの両面に焦点を当てて 実施すべきである。
• 複雑性が積極的に管理されている場合、組織は好奇心からコミットメン トへと進み、変化を受け入れる可能性が高くなる。 • 変革能力や適応力のある組織は、技術的な不確実性やスキルギャップに 直面しても、生成AIを導入しやすい。 • リーダーは、実験を奨励する文化を育むことで、組織での生成AI能力の 構築を優先させる必要がある。 • 変革能力を高めることで、組織の回復力は高まり、導入を推進する上で 特定の個人やチームへの依存度を低くできる。 5.2.役割毎への提言 • 経営幹部は、ROIの観点から、より広範なデジタルトランスフォーメー ションの目標の中に生成AI導入を組み込む必要がある。
• 意思決定者は、イノベーションの可能性と、既存の従業員の能力を強化 する機会を評価する必要がある。 • CIOは、複雑性を軽減するため、モジュール型のパイロットベースの生 成AI導入を優先し、反復学習とシステム統合を促進する必要がある。 • 人事担当者は、既存の専門能力開発戦略に生成AIリテラシーを統合し、 職務に関連する生成AI研修の受講を奨励する必要がある。 • 更に、役割別の推奨事項は実用的なガイダンスとして提供し、それと共 に、組織の状況に基づいて戦略を差別化する必要がある。
最終まとめ • 企業組織への生成AI導入は必ずしも成功しておらず、MITレポートにある ように「95%の組織はゼロリターン」で停滞していた。 • そこで、生成AIの組織への導入の機会と課題を、技術的、社会的、法的、 倫理的観点という広い立場から抽出した。 • これに基づき仮説・検証型の分析を行った結果、経営幹部は生成AIに潜在 的メリットを認識しつつも、複雑性に伴う認知負荷がメリットを覆い隠す 障壁となっているようだ、などの知見を得た。 • この状況に対処する為、従業員のスキルを向上させ、試験的に生成AIを導 入してメリットを最大限発揮させることが不可欠だ、などの結論も得た。 • そして、これらを実践的指針あるいは提言としてまとめた。 • これらの取組みによって生成AIを企業組織に統合して使用する際の一般的 方向性は示唆できたかと思う。 • 但し、現実は遥かに複雑であり、実践的経験から類似の示唆を直観的に感 得していることも多いと思う。如何に深く問い詰めるかが問われる。 53
編集後記 • 今回は、生成AIサーベイ論文(2023. 引用回数 5931回)で有名なYogesh K. Dwivediと共著論文が多いLaurie Hughesの2026年に発表されたばかり の論文に主に依拠した[3~5節]。 YK. Dwivedi • 本論文は最近特に問題と成っている企業組織への生成AI導入時の課題へ の取組みに見事に対応しており、紹介に値する内容と感じた。 • また、この分析の前提となる“各分野へ生成AI導入時の機会と課題”につ L. Hughes いては、これまた生成AIアプリのサーベイ論文で有名なKeng-Boon Ooi の2025年論文(引用回数 1023回)に依拠した[2節]。 • 本稿が依拠した論文は、現代の生成AIの経営学的視点からの大御所論文 KB. Ooi の組合せではあるが、問題分析は初期段階にあるとも感じた。 • 本質的に、今回の問題は極めて奥が深い。 • 生成AIは個人が自己目的で利用する分には容易だが、この個人体験が 返って企業組織への本格導入時の問題の困難さを覆い隠している。 • 今後、この分野の論文は多数登場し、嘗てのダイナミックケイパビリ ティ論(David Teece, 2018. 引用回数 5426回)的な広がりが発生するので はないかと感じた。 54
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