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November 04, 25
スライド概要
自律的に意思決定を行い行動するAIエージェントが話題である。背景に、生成AIは夢を語ることはできるが行動を起こせない。そしてこれに由来する不都合な体験が増えてきていることがある。その一方、サービス提供者がAIエージェントに移行した場合、人間は自律的に目標を達成する機械(AI)を真に信頼できるか?という根本問題に直面する。この問題は、今後のサービス設計において避けて通れない課題になる。そんなことから、特にリスク思考に重点を置いてAIエージェント時代のサービス論について少し考えてみる。
定年まで35年間あるIT企業に勤めていました。その後、大学教員を5年。定年になって、非常勤講師を少々と、ある標準化機関の顧問。そこも定年になって数年前にB-frontier研究所を立ち上げました。この名前で、IT関係の英語論文(経営学的視点のもの)をダウンロードし、その紹介と自分で考えた内容を取り交ぜて情報公開しています。幾つかの学会で学会発表なども。昔、ITバブル崩壊の直前、ダイヤモンド社からIT革命本「デジタル融合市場」を出版したこともあります。こんな経験が今に続く情報発信の原点です。
AIエージェントが拓くサービスの未来:サービス論再考に向けたリス ク思考の検討 高橋 浩1* 1 B-frontier研究所 *著者:電話番号:090-4844-1353、Eメール:[email protected] 要旨 近年のAIの進歩は、生成AIの段階を超えて自律的に意思決定を行い行動するAIエージェントへと移行し ている。背景に、生成AIは夢を語ることはできても、行動を起こすことができないことがある。一方、 サービス提供者がAIエージェントに移行した場合、人間は自律的に目標を達成する機械(AI)を真に信 頼できるかという根本問題に直面する。この問題は、将来のサービス設計において避けて通れない課題 である。このような状況に対処するため、特にリスク思考に重点を置いてAIエージェント時代のサービ ス論について考える。 キーワード AIエージェント、生成AI、サービスモデル、リスク思考 1 はじめに 生成AIは大きな注目を集めて来たが, 現在はAI エージェントが大ブームになる気配である. AIエ ージェントは人間の細かな指示なしに自律的に 仕事を進められる点が最大の特徴であり, 生産性 向上に直接寄与する. 生成AIからAIエージェントに関心が大きくシ フトしている 背景を「 ス トーリー 」で 述べる (Bornet 2025). 家族旅行:機械が夢を見, 人間が働く時 A氏はギリシャへの家族旅行を計画する絶好の 時だと思い, ChatGPTを開いて「4人家族でギリシ ャを2週間旅行するプランを作って見せて」と入 力した. 子供たちがギリシャ神話に興味を持って いることなども追加した. AIは数秒のうちに傑作 を作り上げた. 【隠れた名所, 地元の体験, 彼の家族に合わせた 細やかな配慮, 完璧に練り上げられた旅程・・】. A氏が1時間ごとの詳細を尋ねると, AIは驚くほど 正確に回答を示した. 最適な写真撮影スポット, 完璧な休憩時間まで教えてくれた. ところが, その後に地獄を迎える.「魅力的な家 族経営」のホテルは永久に閉店?「隠れたビー チ」はどこにも見当たらない.「伝統的な料理教 室」は6ヶ月間予約で一杯. 要するに生成AIは空室状況の確認, 価格の比較, 予算と日程に見合ったフライト予約など, 行動を 伴うことが何一つできないのだ. 生成AIが描いた 完璧な空想(夢)を予約可能な形に変える作業は 全て人間に降りかかってくる. 結局「AIがやってくれると思っていた面倒な 作業に何時間も費やしてしまう」結果になる. こ れはまるで, 「人間をロボットのように, AIをク リエイティブな人材のように扱っている」. これ は想定とは違う. 生成AIを利用する場面が拡大 し, これと類似の経験に遭遇することが増えて来 れば, この不合理な状況を逆転させるニーズが登 場して来るのは当然である. 勿論生成AIが有益な場面は多い. 一部の分野で は生成AIが創造性を独占するのではないかと見 られている(de Cremer, 2023). 相談業務など行動 を伴わない対話型サービスでは生成AIは極めて 有益である. 一方, 著名な初期の生成AI生産性実 験論文(Noy 2023, Brynjolfsson 2023)などを除いて, 生成AIだけで確実に生産性向上に繋がったとの 報告は増えていない. やはり真に多くの場面でAI 投資に見合って生産性向上に繋がるケースを拡 大させて行くためには, 人間の細かい指示なしに AIが自律的に仕事を進められる手段の強化は重 要である. そして, この変化は確実にサービスの 見直しに繋がる. このような中で, サービス提供主体が自律的に 目標を達成する機械(AI)に移るのであれば, 顧客 (人間)は機械(AI)を本当に信頼できるか?という 根本問題に直面する. その一方, AIエージェント を巧みに使いこなすことが出来れば, 効果が絶大 なことは明らかである. これは新たなサービスの
未来を構想する際, 避けて通れない問題である. そこで, 本稿はAIエージェント時代を見据えて, 今後AIエージェントが本格的に普及して行った 場合, サービスの未来はどのように切り拓かれ るのかについて, 特に信頼と関係の深いリスク 認識(思考)を中心に考察する. 2 エージェントAIシステムの構成と課題 この作業を行うには, まず生成AIとAIエージ ェントとの違いを明確に理解することが重要で ある(Marr 2025). 生成 AIは創造性が原動力であり, 核心は, 既存 のデータから学習し, その知識を利用して, 人間 の創造性を模倣した新しいオリジナルな出力を 生成することである. 一方, AIエージェントは自 律的な問題解決者であり, 核心は, 意思決定を行 い, 行動を起こし, 変化する環境に適応すること である. これだけ特性が明確に違うので統合には 課題がある. しかし, 先述の問題に抜本的に対応 するニーズが強いので, 従来型エージェントシス テムのエンジンを生成AI由来のLLMに入れ替え て, エージェントAIシステムに必要な行動を行っ てもらおうとの案が考え出された. 従来型エージェントシステムは深刻なリスク にさらされない高度に管理された環境での適応 にのみ限定されていた(ルールベースAI). しか しエージェントAIシステムではエージェント自 身が相互に作用し適応することで, AI自身が行動 を起こし, 変化する環境に適応する. その概念図 を図1に示す(Kraprayoon 2025). また一般には要求の高度化に伴いシングルエ ージェントからマルチエージェントに移行する. その結果エージェントAIシステムは極めて複雑 な構造に移行する. その概念図を図2に示す (Sapkota 2025)(以降, AIエージェントとエージェ ントAIシステムは図2の用法で使用する. 合わせ てAIエージェントを一般用語としても使用す る). 勿論, 生成 AI (LLM)はAIエージェントの要求 に合わせて設計されてきた訳ではないので, 下記 のような問題は包含している(Ribeiro 2025). ・真の自律性の欠如: 生成 AI はトレーニングデ ータに依存しており, そのデータのバイアスや 制限に縛られているので, 真の意味での理解や 自律性はない. ・意思決定の不備: 生成 AI はもっともらしい出 力を作成することには優れているが, 堅牢な推 論能力が不充分なので, 一貫性を維持しながら 長期的に動的環境に適応し続けるのに必要な 意思決定能力は足りない. ・スケーラビリティと制御: 生成 AI は計算コス トが高く制御が困難なので, 特定エージェント アプリに合わせて微調整して行動しても, 多く の場合予測不可能な結果が生じ, 信頼性が損な われるリスクがある. ・倫理的およびセキュリティ上の懸念: 生成 AI の確率的性質は変わらない. 従って, 誤解を招 くコンテンツや有害なコンテンツ作成のリス クは残る. ・証拠の欠如: 生成 AI が AI エージェントのコン テキストで一貫して期待どおりに機能できる 経験的証拠はない. ケーススタディは逸話的な ものが多く長期的存続には対応できない. 即ち, 現行のエージェント AIシステムにはま だ欠けている, あるいは充分要件を満たし ていない機能がある. その例を次に示す (Ribeiro 2025). ・説明可能性と透明性: AIエージェントは, 理解できる言葉で自分の行動を正当化でき なければならない. ・堅牢なコンテキスト理解: システムは, 表 面レベルのパターン認識を超えた, より深 いコンテキストの理解と認識が必要であ る. ・効率的な学習メカニズム:AIエージェン トは, 大量の計算リソースや再トレーニン グを必要とせずにリアルタイムに適応でき る必要がある.
・安全性と信頼性: 複雑で構造化されていない環 境において, 予測可能で倫理的な行動を確保で きる必要がある. 3 データに基づくエージェントAIシステムの分 析 そこで, 現状のエージェントAIシステムの成熟 度を探るため, 公開済みエージェントAIシステム を選択し, 地についたデータに基づく分析を行う (Cemri 2025). 特に, 将来の主流となるマルチエ ージェントAIシステム(MAS:Multi Agent AI System)に焦点を当てる. 調査方法は次の通り である. 【調査方法】 ・ GPT-4o, Claude-3 を 用 い た オ ー プ ン ソ ー ス MASを6個選択する. ・別途, 6人の熟練した人間アノテーターを採用 する. ・彼らのスキルを使用して選択した6個のMAS の実行トレースを体系 的に行う. ・具体的には, さまざまな タスクから抽出した200 以上の会話トレース (平 均 して 15,000 行以 上のテキスト)を詳細 に分析する. ・成功・失敗の可否は 「MASが意図したタス ク目標が達 成できた か どうか」で判定する. 結果を図3に示す. また, 失敗原因を突きとめるた め, ・3つの障害カテゴリー (タイプ1, 2, 3) ・ 14件の障害モード を設ける. 障害分類を 図4, 各MASの評価結果 を図5に示す. また, 各 MAS の 障 害 特 性 と MASの説明を表1に示 す. タイプ1は仕様に関 する問題で, システム 設計上の決定の不充分 性または曖昧なプロン プト仕様に起因してい る. タイプ2はエージェ ント間の不整合に関す る問題で, 実行中のエ ージェント間の相互作 用と調整の不具合に起因している. 特にこのタイ プの失敗の診断は非常に複雑になる可能性があ る. タイプ3はタスク検証に関する問題で, エラー を検出または修正できない不適切な検証プロセ スに起因している.
AGIの到来が予想さ れている. AGI で引 き起こされるカタス トロフィは決定的リ スクとする. 以上の3 側面でリスクを考え る(図6). 全体としては極めて多様であるものの, 基本的 なものが多い(各MAS毎の障害特性は表1の左欄 参照). 従って, これらの問題の背後には潜在的な 根本問題が存在していることが示唆される. 前節 で述べたような内容が原因と推定される. 4 多様なリスクの把握とリスク思考 しかし, AIエージェントへの流れは着実に進 み, 今後様々な関連サービスが提供されて来るの は明らかである. その際, どのような姿勢で新た な環境に立ち向かうかが今後のサービス論にと って重要になる. このような状況において, 本節 では機械(AI)への信頼に関わるリスク認識(思考) に焦点を当てる. リスクは様々なのでリスクを整理する枠組み が必要である. 3つ考える. まずエージェントAIシ ステム全般のリスクを考える. 次に, この延長で 複雑な様相を呈するマルチエージェントAIシス テム(MAS)のリスクを深堀する. これらはどちら も, 個別には小規模で深刻度の低い混乱を引き起 こす場合が多い. しかし, 時間の経過とともに 徐々にシステムの回復力を弱め, 最終的には回復 不能な崩壊を引き起こす可能性がある. これらを 累積的リスクとする. 一方, マルチエージェント AIシステムの延長 線上に人間の能力を超えた エージェントAIシ ステム全般のリスク (図6 ①)では, エージ ェントAIシステムの 各エージェントが相 互作用するにも関わ らず, 現行MASの多 くのエージェントが 個別開発で, 検証も 個別テスト状態にあ るものが多いと推定 される. これでは, リスクがどのように, また何時 起きるか分からない. マルチエージェントシステムにおけるリスク (図6 ②)は, 本質的に多くの異なる主体と利害関 係者を巻き込む. そこで, このような場合, シング ルエージェントAIシステムとは異なって損害に 対する道徳的責任, 法的責任が登場する. 金融市 場などでは, それらに対する規制など新たなリス ク対応策も登場する. MASのリスクをより深く考えるため, 次の2つ の設問を元に3つの失敗モードを設定する (Hammond 2025). ・エージェントは相互に協力するのが望ましい か?➡望ましい/望ましくない. ・エージェントは目的が同じか?➡同じ/混合/反 対 設問に基づく3つの失敗モードを図7に示す. 協力の失敗:エージェントが相互に明確な目的 を持っているにも関わらず, その目的を達成す るための行動を調整できない場合に発生する リスク 対立:行為者が競争相手に対して優位に立とう とするためにAIシステムを活用する場合, 高度
なAIエージェントへの委 託自身が紛争発生の速度 や規模を拡大させるリス ク 共謀:AIシステム間の望ま しくない協力によって発 生するリスク それぞれの例を以下に示 す. 協 力 の 失 敗 の 例 : (Shearer 2023) AIエージェントは金融市場 の操作を学習できる 現象:AIエージェントは価 格や取引を自らの利益に 誘導するために他の市場 参加者を誤解させるイン センティブを与えられる 可能性がある. リスク:多くのMASでは, 一部のエージェントが 他のエージェントが持っていない知識を持っ ている可能性がある. このような情報非対称性 は「協力の失敗」につながるリスクがある. 対立の例:(Vallinder 2024) LLMエージェント間の協力は文化的に進化しない 現象:LLM集団を複数世代に渡って社会的ジレ ンマに置き, 成功した戦略が将来のエージェン トに継承されるようにして, 協力傾向の変化を 調査した. その結果, Claude集団は維持率が 80~90%, GPT-4 集 団 は 70%, Gemini 集 団 は 60%以下と, いずれの集団も一貫した戦略維持 の持続性が劣化していた. リスク:AIシステムは他者や環境と相互作用す る方法がオープンになるとますます人間的に なる可能性がある(人間は復讐心, 攻撃性, リ スク志向, 利己主義, 不誠実, 欺瞞性, 外部集団 への悪意のような潜在的性質を持っている). その結果, 各エージェントは他者を確実に欺く 能力を身に着けた後に初めて欺瞞的になるリ スクがある. 共謀の例: 言語モデルステガノグラフィー 現象:言語モデル(LLM)が同等の能力を持つ監 視システムの下ではステガノグラフィーメッ セージを交換できることが実証されている. GPT-4は26%の確率で検知されることなく秘 密メッセージを送信できた. リスク:AIシステムは秘密通信のためのますま す洗練されたチャネルを開発し, 安全対策を損 ない, 検知されない共謀を助長するリスクがあ る. 最後に累積的リスクと決定的リスクに関して 述べる. 本稿の範囲では累積的リスクが主である が, その枠内でも累積的に混乱が発生する事象が 継続すればリスクは徐々にシステムのリジリエ ンスを侵食し, エージェントAIシステムが社会に 浸透して行くと共に, 社会経済的均衡を破壊する リスクがある. その他に累積的リスクとして一般に認識され ているものには, 操作と欺瞞のリスク, 誤情報と 偽情報のリスク, 悪意のある使用のリスク, 差別 やヘイトスピーチのリスク, 監視, 権利侵害, 信頼 の低下のリスクなどがある. これらの多様なリスクに遭遇する環境が常態 化すれば, リスク思考を定式化するニーズは高ま る. この状況を踏まえ, デザイン思考の枠組みを 借用して図8の仕組みを提案する. 但し, デザイン 思考とは消費者がより大きなサイクルでサービ ス価値向上に関わるという点で, 利用形態には根 本的な違いがある. 5 新たなサービス論再考に向けて 以上の検討を踏まえ, 新たなサービス論を検討 する. まず, 既存サービス論との対比を行う. SDLは従来のGDLを抜本的に改訂するサービ ス論として2004年に導入され,2008年に大幅改 訂された(Vargo 2004, 2008).背景にデジタル化 の進展があった. SDLモデルの要点は次のようで ある. 1.「世の中の商売はすべてサービス」 2.「お客様は価値を作り出すパートナー」 3.「価値は企業と顧客との相互作用(共創)によ って創造」 4.「価値の表現主体は消費者であり,企業では ない」
5.「お客様が使った時点で価値が生成」 6.「お客様が実際に利用した瞬間が価値創造 の瞬間」 これに対して, 20年後のAIエージェント時代で は, サービス提供の主体をどの程度機械(AI)に託 すかを検討する状況にある. 本稿の検討に基づい て修正案を以下に示す. 新1. 「世の中の商売はすべてAIエージェントで 生成されたサービス」 新2. 「お客様は目標設定と価値享受を共有する パートナー」 新3. 「価値は目標設定を起点にAIエージェント 間および実世界との相互作用(共創)によって 創造」 新4. 「価値の表現主体はAIエージェントであり, 消費者は目標の設定者と受益者の両方」 新5. 「お客様が目標を意図した時点と使った時 点で価値が生成」 新6. 「お客様が目標を設定した瞬間と実際に利 用した瞬間が価値創造の瞬間」 既存サービス論に基づいた形式の表現にも一 定の意味はあると思う. 但し, これだけでは新た な環境への対応としては不充分である. そこで, 新たな環境説明のための仕組みを構想する必要 がある. 本稿では上述の検討を踏まえ, 図9に示す 概念図を提案する. 図9の各要素は次の通りである. 目標:目標の設定, 自律性レベルの設定, 一貫性 レベルの設定, 期待効果の設定, など 評価:目標到達に最適なベンチマークの選択と 実施, エージェント選択とその組合せの判断, 適切な監視ツールの選択と実施, など 機能:推論能力, 一貫性保持能力, 最適化能力, 他 で要件に合致するLLMの選択とシステム実行 リスク:リスク思考による精査, リスク感度の高 い生成物確認と必要時のフィードバック, プラ イバシー/セキュリティ要件の充足確認, など コスト:必要性能に見合う能力とコストのバラ ンス確認, 許容リスクと許容コストのバランス 確認, 保持情報容量コスト確認, など 新たな環境への適応はこれらの各要素の充足 性とこれらの連携に託されることになると思わ れる. ここで, エージェントAIシステムのエンジンと して採用したLLMの特性を再度想起する. 生成AI の場合, 例え生成処理がブラックボックスであっ ても, 人間はまだ制御権を握っている. プロンプ ト再作成など一定の見直し手段はある. しかし, エージェントAIシステムの場合, 消費 者は目標設定の一部に関与はできるものの, 機械 (AI)に処理を委託している以上, 生成過程がブラ ックボックスなので, 責任を伴う結果が出ていて も, 責任をAIに問えない以上, 責任は人間に降り かかってくる. 制御はせいぜい次のサイクルでの 目標設定へのフィードバック程度であろう. このような状況が常態化した場合, 消費者(人 間)はリスク感度を磨き, 適切なリスクを負担し ながら妥当なリターンを得るという, 実際には実 社会でよくある状況の究極の場面に遭遇するこ とになる. 前述の通り現行エージェントAIシステムの成 熟度はまだ低い. しかし, 成熟度は急激に高まっ てくるであろう. AIエージェントによる価値提供 を競う競争が世界的に起きている. しかし, いく ら成熟度が進んでも, 人間社会がそうであるよう に, 完全な安心確保が出来る状況には至らない. 結局, 予想される変化の帰趨は, 既存サービスが エージェントAIシステムに置き換えられてゆく 世界を見据えた未来志向のサービス論を再構築 して行くことになる思われる. その際, リスク思 考は重要になる. 勿論, リスク以外の分野も重要である. 今回は AIエージェントの普及で分かり易い変化の視点 としてリスクに焦点を当てた. 今後, その他の項 目の検討詳細化と全体的整合の取れたサービス 論の再構築の議論が必要である. 6 参考文献 Bornet, Pascal et al., “Agentic Artificial Intelligence: Harnessing AI Agents to Reinvent Business, Work, and Life”, Irreplaceable Publishing, 2025. Brynjolfsson, Erik et al., “GENERATIVE AI AT WORK”, NBER Working Paper, No. 31161, April 2023. Cemri, Mert et al., “Why Do Multi-Agent LLM Systems Fail? ”, arXiv preprint arXiv:2503.13657, 2025. de Cremer, David et al., “How Generative AI Could Disrupt Creative Work”, Harvard Business Review, 13, April 2023. Hammond, Lewis et al. “Multi-Agent Risks from Advanced AI”, arXiv preprint arXiv:2502.14143 ,2025. Kraprayoon, Jam et al., “AI Agent Governance: A Field Guide”, arXiv preprint arXiv:2505.21808, 2025. Marr, Bernard, “Generative AI Vs. Agentic AI: The Key Differences Everyone Needs To Know”, Forbes, Feb 03, 2025.
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