サービスへの生成AI(& LLM)の適応 付属資料

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October 14, 24

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付属資料

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定年まで35年間あるIT企業に勤めていました。その後、大学教員を5年。定年になって、非常勤講師を少々と、ある標準化機関の顧問。そこも定年になって数年前にB-frontier研究所を立ち上げました。この名前で、IT関係の英語論文(経営学的視点のもの)をダウンロードし、その紹介と自分で考えた内容を取り交ぜて情報公開しています。幾つかの学会で学会発表なども。昔、ITバブル崩壊の直前、ダイヤモンド社からIT革命本「デジタル融合市場」を出版したこともあります。こんな経験が今に続く情報発信の原点です。

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各ページのテキスト
1.

[タイトル] サービスへの生成AI(&LLM)の適応 高橋 浩 B-frontier研究所 要旨 生成AIはあらゆるサービス分野に影響を与えている.その影響範囲は単にツールレベルを超えて企業の組織内 部の変革にまで及んでいる. 組織内のチームに「人間対人間」から「人間対非人間(生成AI)」の混入が始ま ろうとしているのがその例である.このような状況に対して新たなサービスモデルの提示が必要だが,既存サ ービスモデルの代表であるSDLモデルは適切な提示ができていない.そこで,この状況を改善するため,社会 物質性(Sociomateriality)理論を踏まえた新たな考え方を導入する.そうすることで生成AI時代に相応しいサービ スモデルの在り方について提案する. キーワード サービス, 生成AI, 社会物質性, サービスモデル 1 はじめに ・知識やスキルの束が組織の重要な資源と言える. 新しく登場した生成AIは膨大なデータセットとユー ザーのフィードバックから学習し,様々なコンテンツ を作成する能力を強化させている.この勢いは驚異的 であり,一部の分野では生成AIが創造性を独占するの ではないかと見られている(de Cremer, 2023).現在で は,コンテンツ提供に重点を置いた職種は勿論のこ と,このような機能を組織の一部に包含するあらゆる サービス産業が生成AIによる独特の影響を受けると考 えられている.そこで,このような環境に対して,既 存サービス理論の代表であり,一世を風靡したSDLモ デル(Vargo 2004, 2008 )が対応で きる の が望 まし い.しかし,現実には対応できていない.その理由を 簡単に論述する. ・資源は作用するもの(Operant:技術など)と作用され るもの(Operand:製品など)に分離され,そうするこ とで資源を物質的なものに限定せず,資源によって 駆動される組織も把握できるようにする. SDL(サービスドミナント論理)は従来のGDL(モノ ドミナント論理)を抜本的に改訂するサービスモデル として2004年に導入され,2008年に大幅改訂された. 背景にデジタル化の進展が関係していたと考えられ る.SDLモデルの要点は次のようである. 「世の中の商売はすべてサービス」 「お客様は価値を作り出すパートナー」 「価値は企業と顧客との相互作用によって創造」 「お客様が使った時点で価値が生成」 「お客様が実際に利用した瞬間が価値創造の瞬間」 「価値の表現主体は消費者であり,企業ではない」 この延長で本稿のテーマに関わる組織・技術関係に 焦点を絞ると下記などの論点がある. ・サービスを資源として捉える. ・資源には組織が戦略的に意思決定する行為やプロセ スが含まれる. ・この前提で「価値共創メカニズムは企業と顧客によ る資源統合によって実現される」と定義する. ・そこで,企業はサービスを最大化するための価値創 造と,そのための資源統合を図らねばならない. 大筋でこの枠組みで生成AI登場後の状況を説明しよ うとする論文は若干存在する(Spohrer, 2022, 他).例え ば,Warg(2024)は「今,生成AI活用で問われているの は組織を如何に生成AI利用組織に変換し組織の学習と 開発を改善するかである.この検討にSDLモデルを活 用する」としている. しかし,論理があまりにもSDL世界に閉じた議論を しており,技術,および技術と組織の連携が如何に異 次元的であるかについての認識を欠き説得力がない. その理由にSDL視点が極めてマーケティング指向的な のと , 技術 は ,資 源 を2 つに 分 離し た 一方 の 資源 (Operant資源)に位置づけられているのみで,生成AI独 特の機能活用に有効な「技術と組織の融合」の視点が 欠落しているからと思われる.結果,技術と組織を融 合させて,サービスの多様化,細分化を進展させ,そ の延長で組織変革を構想する枠組みがない. そこで本稿は,このような認識から,2節で生成AI の独特の傾向,3節で「技術と組織の融合」理論の紹 介,4節でこれらを踏まえたこれからのサービスモデ ルの在り方を論述する.そうすることで,生成AI時代 のサービスモデルの在り方を考える.

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2 サービス創造における生成AIの傾向 本稿の出発点である生成AIが如何に独特な 傾向を持つかを明らかにするため下記2点を 述べる. ・ChatGPT機能の著名な実証実験の成果 ・生成AIを知識労働者が活用する各接点での 傾向 2.1 ChatGPT機能の実証研究の成果から 研究1:MITのNoy等(2023)によるChatGPTの 生産性向上の測定実験 被験者をランダムに2 グループ(A,B)に分 け,2 タスクを実施してもらう.うち,A グ ループのみに2 番目タスク実施前にChatGPT へのサインアップを指示し,ChatGPT が有用 と判断した人にはタスク実施へのChatGPT 使 用を許可する(結果は図1) . 図1 ChatGPT機能の生産性測定実験 主な結果: ・タスク実施時間が約40%短縮された. ・未熟練者の生産性が熟練者に接近した. 研究2:Stanford大学のBrynjolfsson等(2023)に よる既存顧客問合せシステムにChatGPTアド オンによる生産性向上測定実験 既にOpen AI 社のGPT ファミリーを導入し ていた米国大手ソフトウェア企業(複数社) に勤務する顧客サービス部門の5179 名を対象 に顧客とのチャット300 万件を分析した.生 産性の尺度は時間当たりの問合せ解決件数を採用した (結果は図2) . 図2 顧客問合せシステムにChatGPTアドオン実験 価値創造: ・ChatGPTをアドオンした場合の問合せ解決件数が約 50%効率向上した. 組織は様々な構造化および非構造化データを処理す ることで,コミュニケーションチャネル内の隠れたパ ターン,関係性,洞察を発見できる. ・新人担当者の習熟期間が半分以下に低下した. 価値検索: この結果,例えばコールセンターのような業務では 問合せデータを学習させ続ければ生成AIが全ての対応 を担えそうな分野が登場する.このような業務は早晩 人間は生成AIに代替され る. この よう な 組 織変革 が大規模に発生する. 生成AIは組織が保有する暗黙知をコード化し明示的 知識に変換することで従業員にメリットをもたらす. 主な結果 2.2 生 成 AI を 活 用 し た 知 識労働者の各接点の 傾向から 組織の既存知識に基づ いて トレ ーニ ング できる 生成AIの機能は,企業の 知識 資産 を再 結合 し知識 労働 を変 革す る新 たな 機 会 を 提 供 で き る (Benbya, 2020, 2021, 2024).代表的 事例を4種以下に示す.ま た一覧を表1に示す. 表1 生成AIを活用した知識労働の接点

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価値共有: 表3 SDLモデルと社会物質性モデル 【著者作成】 生成AIは, 1) 従業員の質問に答え ることによる知識の共有,2) カスタ マイズされた学習体験によるパーソ ナライズされたフィードバック機能 の提供を行える. 価値に基づくアプリケーション: プロセスの拡張や自動化を行うこ とで様々な経験とスキルを持つ従業 員が同等のタスクを実行できるよう になり,生産性向上に貢献できる. これらの結果,企業組織の知識労 働は適切な改革によって抜本的に強 化される. 3 「技術と組織の融合」(社会物質 性)の理論 このような状況の分析手段として社会物質性 (Sociomateriality) を 導 入 す る . 元 々 , 社 会 物 質 性 は 「組 織 にお け る技 術 と仕 事の 融 合」 を 目的 と して Orlikowski等(2007, 2008)によって導入された.組織内 の情報実践を適切に把握するため,技術の開発と利 用,社会的過程と物質的過程を区別しない総合的な見 方を採用しようというのが特徴である.背景に,IT普 及によって組織へのデジタル化の影響が大きくなって いたにもかかわらず,当時の経営学が技術,組織,仕 事を別々に概念化するのみで,適切な対応ができなか ったことがある.このような状況を解決するために導 入されたものなので,大局的にはSDLモデル登場と通 じる面がある.社会物質性の要点は次のようで ある. 技術は,この方法論では組織化を達成する複雑なプ ロセスの一部として理解される.例えば研究課題とし ては下記などが挙げられる. ・新しい情報システムを理解することでどのような意 味が生まれるか? ・技術の実装は技術と組織の相互適応をどのように伴 うか? ・電子メディアの使用などに伴う新たな規範は既存の 文化的規範や慣行にどのように関わって形作られる か? ・技術はどのようにして異なるコミュニティ間で知識 を共有するための境界オブジェクトとして機能する か? 「技術と組織は根源的に不可分」 「技術の開発と利用,社会的過程と物質的過程 を総合的に見る」 「組織の中の情報実践を把握するには技術開発 と利用を峻別しない」 「社会的過程と物質的過程も区別しない」 「情報システム実現の方法は企業(組織)と顧客 との相互作用による」 研究の方法論を従来研究と比較した結果を表2に示 す.生成AIの登場はこの流れを更に加速させていると 考えられる. 表2 技術と組織に関する2つの研究の流れ 図3 2つのモデルの位置づけ【著者作成】 ・技術の設計と使用によって仕事の性質はどのように 変化するか ? ・技術の使用によって組織の関係性はどのよう に再構築されるか? これらの情報を元に,SDLサービスモデルと 社会物質性サービスモデルとの比較を行った. 結果を表3,両モデルの位置づけを図3に示す. この理論を適切に利用すれば,SDLモデルの弱 点(新技術に対応する側面)を補完するモデルと して社会物質性サービスモデルを活用できる. また,両モデルを組合わせることで,生成AIを 組織に本格導入する際のプロセスをより詳細に 可視化できる可能性がある.

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4 生成AI時代のサービスモデルの在り方 4.1 社会物質性アプローチを採用した研究事例 まず,組織に生成AIを導入したケースの分析に社会 物質性的アプローチを採用した 先進研究を紹介する. また,インタビューの事例を「集約された4つの相 互作用」(表4参照)毎に以下に示す. 表4 ミクロレベルの設定とテーマの分類 本研究の基本認識: 生成AIが人間のような能力を 高めて行くに連れ,生成AIをツ ール視点でのみ評価するのでは なく,人間とのコラボレーショ ンの参加者と見做す見方に移行 すべきである.しかし,このよ うな状況への研究が期待されて はいるが,人間と生成AIの関係 性に関する実証研究は極めて少 ない.また,研究の方法論は定 性的アプローチにならざるを得 ない.そこで本課題を,社会物 質性アプローチを工夫して研究 する(Drossel, 2024). 研究に対する基本方針: 生成AIは既に個別には管理タスク,戦略タスクの双 方に対応でき,経営慣行のあらゆる範囲に参入できる レベルに達している.これにより,生成AIを管理者の 日常業務の対等な対応相手と捉える文脈が生まれてい る.しかし,管理者が生成AIをどのように扱うのかに ついての疑念も生じている.また,生成AIのブラック ボックス的特性が生成AI出力の不確実性を生じさせ, 生成AIを適応する職種/職場によって大きく状況が異 なる.このことが研究の妨げになっているので,適応 分野を特定せず,生成AIと人間との関係をミクロレベ ルの生成AIと人間とのやり取り(社会物質性アプロー チ)に焦点を当てて研究する(Drossel, 2024). 方法論: 生成AIと管理者の関係を,組織慣行ではなく,生成 AIと管理者間のミクロな“関係慣行”に焦点を当て る.そして,適切な当事者に高度に準備したインタビ ューを行うことで有益な“関係慣行”に関わる情報を 収集する.そして,“関係慣行”に焦点を当てて収集 したデータをテーマ別に分類する.そうすることで, 生成AIと管理者双方が関与する行動から,両者間の関 係性を形成する進化のプロセス(社会物質性的価値創 造)に係わる知見を抽出する. 実験概要プロフィール: 構造化した2段階のインタビュー を実施した(28 件).インタビュー相手はドイツ,スエーデンの大手 企業の当該テーマに適切なキーマン(CTO, 戦略担当役 員, 等)であった. インタビュー手法の概要を表4に示す. 第1段階:ミクロなやり取りから“関係慣行”に関わ る項目を抽出する. 第2段階:収集データからテーマを特定する. 支援: 「会議に参加する人数が減り,生成AI が生成した 要約が送信されてきます.」「会議中に話された内 容はこれです.これが重要なポイントです.実行さ れたタスクはこれです」. … 電子メールで済ませ られるはずの会議に時間を費やす代わりに,要約を 受け取るだけで済む. ためらい: この業界では時間はお金です.私たちは時間を売っ ており,誰もが週末,夕方,夜にたくさん働くとい うプレッシャーにさらされています.そして,少し 時間を取って「いや,でも今は新しいやり方でやっ てみよう」と立ち止まらなければなりません.これ は,何か新しいことを始める前の境界線のようなも のです. 検証: 多くの場合,それ(生成AI)は形式的すぎるように聞 こえます.単に良すぎるように聞こえます. 「私の同僚はそれを書きませんでした.(…)彼が そのように書くのを見たことはありません.」しか し,今では突然,彼は(生成AIを意識してか?)非 常に正確で形式的に書くようになりました. パートナーシップ: 私のコミュニケーターは,通常,CEO のスピーチを 書くのを手伝ってくれます.一緒に座ってしばらく 過ごすこともよくあります(…).そのため,準備 ができるまでに数回のターンが必要です.今回は, 土曜日に 生成AI を介してほぼ瞬時に行われ,週末 に来てこれを書く必要はありませんでした. このような活動を踏まえて管理者が生成AIと関係性 を形成する進化のプロセスを表5にまとめる.この表 で示すように,管理者は試行錯誤を通じて生成AIを経

5.

表5 生成AIと関係性を形成する進化のプロセス 生成AIは急速に変化する技術であり,アルゴリズムも 常に更新されるので,時間の経 過とともに関係性も変化する運 命にある.それにも関わらず, 管理者は生成AIとのミクロな 視点からの関係性に一定の安定 を維持できる可能性がある.何 故なら,インタビューの結果か らは生成AIに基づく意思決定 に言及した人はおらず,寧ろ生 成AIに意思決定を任せないこ とが強調されていた.実践的な 範囲限定の知恵が存在し得る. 生成AIは意思決定に重要な 暗黙知,即ち経験を通じて具体 化された知識に基づく判断力が 欠けており,生成AIへの信頼 と連帯感が向く範囲は特定され ると考えられる. 営慣行のツール,次にはコラボレーションの相手とし て認識するようになる.4段階の進化の特徴を以下に 示す. 「ジュニアアシスタント」: 管理者は生成AIと対話することで毎日の作業負荷を 軽減することを目指す.そして不要な義務から解放さ れることで管理業務を実行する生成AIに反応する.相 互作用(支援)は生成AIが意図した目標を達成できる かどうかという管理者の認識(アフォーダンス)に基 づいている. 「社外フリーランサー」: 4.2 生成AI時代に向けたサービスモデルの在り方 第2節で述べたように,生成AIは従来技術とかなり 異なった特性を持つ.即ち,汎用的能力(処理時間が 短い,未熟練者の利用効果の方が大きい,等)に加え て,知識労働の各接点でも特色がある.これらが,自 動化促進,人材配置転換促進,新AIリテラシー教育促 進などによって組織変革に及ぶ要因になる.そこで, 課題は単なるマーケティング的視点を超えて組織変革 に対する総合的ソリューションを要求する.従って, これに向けても対応できる新たなサービスモデルの構 築が必要になる. 生成AIを管理者の日常業務に組み込むには仕事の習 慣を変える必要が出て来る.そして,潜在的データの 漏洩やデータ分析に対するためらいが管理者にとって のリスクと認識される.この過程で管理者は不透明な ツールによって制御を受けたと認識した場合,生成AI を自らと密接な関係にない社外フリーランサーのよう に感じる. このような視点から,本節では組織に本格的に生成 AIを導入した場合のSDLサービスモデルと社会物質性 サービスモデルを統合したモデルを構想する. 「知識のある人」: より個別サービスに近い社会物質性モデル側で組織 へ生成AI導入時の形式を規定する.内容はツールベー ス活用とコラボレーションベース活用に分かれる(図 4). 管理者は生成AIから提供された結果を事実検証する 新たな慣行を作成する.その中で生成AIの知識と管理 者の曖昧な質問に回答し文脈をより良く理解する生成 AIの能力を確認する.このことで生成AIの利点を特 定し,生成AIによる管理業務の強化を目指す. 「「仲間」で「同僚」」: 管理者と生成AIとの相互作用は目に見えて絡み合う ようになる.管理者は徐々に同僚の代わりに生成AIに アプローチするようにルーチンを変更し,生成AIとの 間が人間とのやり取りのようになってくる.結果,管 理者は同僚よりも生成AIとのやり取りの方がより快適 だと感じる場面も登場してくる. 最終段階の「パートナーシップ」: 最終的には管理者と生成AIとの関係性は収集された データに基づくパートナーの段階に到達する.但し, サービスモデルの構成:SDLサービスモデルと社会物 質性サービスモデルの統合を下記2ステップで検討す る. ステップ1: ステップ2: 次によりマクロな視点のSDLモデルとそれを補完す るミクロな社会物質性モデルを両者で重複する組織 (資源)をキーにしてリンクする(図5). このビューに基づいて既存SDLサービスモデルの修 正案を記す. SDLサービスモデルの修正案: SDLモデルの根幹の「企業と顧客の共創モデル」に 技術主導の生成AIを挿入する必要がある.特に企業に 生成AI本格導入時,企業内組織での生成AIと人間と の「人間対非人間」コラボレーションが課題になる. そこで,技術・組織融合は社会物質性モデルに委ね,

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SDLモデルからは,両モデルの共通 項を介して社会物質性モデルにリン クする. 社会物質性モデルは,実証研究(第 4節4.1)の成果から,当面は生成AIの ツールベース活用,コラボレーショ ンベース活用とする.当面は2種だ が,将来的には多面化があり得る. 社会物質性モデルを活用して細分 化・詳細化された個別サービスは, 全体としてSDLモデルにもフィード バックされる. 最後に生成AI時代におけるサービ スモデルの位置づけについて述べ る.企業と消費者の“共創”を過度 に強調するのは生成AI本格導入の場 面では必ずしも相応しくない.代わりに,生成AIと組 織の融合によって,如何に新たなサー ビスを提供する基盤を整備するかが重 要になる.この背景に,生成AI導入の 世界では,サービス消費者がサービス 利用起因で生成するデータが再度新た な生成AIトレーニングデータになるサ イクルの存在がある.この結果,新た なデータでトレーニングされたサービ スはサービス高度化に資する面がある 反面,過去の低品質のデータを引きず りサービスを不適切にする幻覚の原因 になる.このような中では,消費者は 単にサービスの利用者というだけでな く,サービスの信頼性の一部を担うサ ービス監視者的役割も期待される.こ のような環境でのサービスモデルは, 従来に比して,よりサービスの信頼を 担保するフレームワークとしての役割 も持つ. 全体を通してまとめると,嘗て,本質的にはデジタ ル化の進展に大きな影響を受けた,あるいは触発され た 2 つ の 理 論 ( SDL サ ー ビ ス モ デ ル と 社 会 物 質 性 (Sociomateriality)理論)が登場した.しかし,今回登 場した生成AI技術はデジタル化の要因技術であったイ ンターネット技術にも例えられる本質的技術と位置付 けられている面がある(Eapen, 2023).もしそうである ならば,この新たな状況に対応する新たな理論が登場 するはずである.しかし,それにはかなり時間がかか るであろう. そこで,この端境期における生成AI導入に関わる 課題対応には別の工夫が必要になる.既存理論の改良 あるいは組み合わせによって当面の対応を行うのは現 実的対応の一つである.本稿はこのような立場から, SDLサービスモデルの一部修正と社会物質性サービス モデルの組み合わせによる試みを具体化した.一定の 有効性があることを期待したい. 図4 組織への生成AIの組入れ【著者作成】 図5 SDLモデルと社会物質性モデル統合【著者作成】 4 参考文献 Benbya, H., Franz Strich, Toomas Tamm, “Navigating Generative Artificial Intelligence Promises and Perils for Knowledge and Creative Work”, Journal of the Association for Information Systems, forthcoming 2024. Benbya, H., Stella Pachidi, Sirkka L. Jarvenpaa, “Special issue editorial: Artificial intelligence in organizations: Implications for information systems research”, Journal of the Association for Information Systems 22 (2), 10, 2021. Benbya, H., Thomas H. Davenport, Stella Pachidi, “Artificial intelligence in organizations: Current state and future opportunities”, MIS Quarterly Executive 19 (4), 2020. Brynjolfsson, E., Danielle Li, Lindsey R. Raymond, “GENERATIVE AI AT WORK”, NBER Working Paper, No. 31161, April 2023. de Cremer, David et al., “How Generative AI Could Disrupt Creative Work”, Harvard Business Review, 13, April 2023. Drossel, Maya and Felix Löfgren Hallbeck, “Generative AI, the new colleague? – a sociomateriality perspective on the human-AI relationship”, GM0861 V24 Master Degree Course, University of Gothenburg, Spring 2024. Eapen, Tojin T., Daniel J. Finkenstadt, Josh Folk, Lokesh Venkataswamy, “How Generative AI Can Augment Human Creativity”, Harvard Business Review, July–August 2023. Noy, S., Whitney Zhang, “Experimental Evidence on the Productivity Effects of Generative Artificial Intelligence”, SSRN 4375283,2023.

7.

Orlikowski, Wanda J., “Sociomateriality: Challenging the Separation of Technology, Work and Organization”, Annals of the Academy of Management 2 (1), 433-474, 2008. Orlikowski, Wanda J., “Sociomaterial practices: Exploring technology at work”, Organization Studies 28 (9), 1435-1448, 2007. Spohrer, J. C., Paul P. Maglio, Stephen L. Vargo, Markus Warg,“Service in the AI era: Science, logic, and architecture perspectives”, Business Expert Press, 2022. Vargo, S. L., Robert F. Lusch, “Evolving to a new dominant logic for marketing”, Journal of marketing 68 (1), 1-17, 2004. Vargo, S. L., Robert F. Lusch, “Service-dominant logic: continuing the evolution”, Journal of the Academy of marketing Science 36, 1-10, 2008. Warg, M., Eric Schott, and Markus Frosch, “From Generative AI to Generative Organizations: A Service Lens on Organizational Learning and Development”, The Human Side of Service Engineering, Vol. 143, 12–22, 2024.