アウトドアチェアや360度揺れる椅子をオフィス作業に用いた際の身体的負担とその座り心地の評価

293 Views

June 24, 24

スライド概要

日本人間工学会第65回大会
講演番号:1C1-4

profile-image

大阪公立大学生活科学部居住環境学科デザイン人間工学研究室(土井俊央研究室)

シェア

またはPlayer版

埋め込む »CMSなどでJSが使えない場合

(ダウンロード不可)

関連スライド

各ページのテキスト
1.

2024/6/22 日本人間工学会第65回大会 アウトドアチェアや360度揺れる椅子を オフィス作業に用いた際の身体的負担と その座り心地の評価 ○野田彩加(大阪市立大学生活科学部) 土井俊央(大阪公立大学大学院生活科学研究科)

2.

研究背景 • 近年,新型コロナウイルスの影響もあり,在宅勤務やワーケーション などの多様な働き方がされている • それに伴い,これまで使用されてきた一般的な事務用椅子のみならず, アウトドアチェアやスツールなどがオフィスワークにも使われる ようになっている • しかし,これらの多様な椅子のガイドラインや設計要件は定かではない 2

3.

研究目的 近年利用されている椅子がオフィスワークにおいて 人に与える影響を調査し,特性を把握する 3

4.

実験内容 概要 3条件の椅子を比較: swaying chair outdoor chair • 360度揺れる椅子(コクヨ ing LIFE)= swaying chair • アウトドアチェア(Snow Peak FD チェア)= outdoor chair • 一般的な事務椅子(コクヨ CRS-G287N)= office chair 実験参加者:健常な女子大学生8名 年齢(平均±標準偏差)20.3±1.2歳,身長154.7±3.2cm,体重は51.8±4.1kg 場所:大阪公立大学生活科学部人工気候室 4

5.

実験内容 装置: • 筋電計測装置 (NECメディカルシステムズ 多用途テレメータシステム サイナアクトMT11) • シート式座面圧力計 (ニッタ 体圧分布測定システムBPMS) • 三次元動作解析装置 (ノビテック 3次元リアルタイム モーション計測システムVENUS3D) 5

6.

実験の流れ 身長・体重を測定 電極・マーカー 疲労度・座り心地 作業環境を調整 を付ける 評価アンケート 文字入力作業 疲労度・座り心地 最大随意収縮時の 30分 評価アンケート 筋活動の計測 説明 筋電図,動作解析,座圧分布,主観評価,文字入力作業の成績から分析 6

7.

実験の様子 電極 反射マーカー 体圧分布 実験参加者 7

8.

疲労度アンケート(産業疲労研究会) 自覚症しらべ 疲労部位しらべ 8

9.

座り心地の主観評価アンケート 以下の13項目について,「1: 全く好ましくない~5: 非常に好ましい」の5段階の 評定尺度で回答を求めた 1. 総合的な座り心地の良さ 8. 背部(腰の上から首の下)のフィット感 3. 臀部・大腿部が支持される感じ 10. 座面の位置 2. 臀部・大腿部のフィット感 4. 臀部・大腿部の感触 5. 腰部のフィット感 6. 腰部が支持される感じ 7. 腰部の感触 9. 背部の感触 11. 座面のサイズ感 12. 背もたれの位置 13. 背もたれのサイズ感 9

10.

結果: 腰部における疲労度の作業前後の差分平均 swaying chair とoutdoor chairに有意差あり(p <0.05) 10

11.

結果: 作業後における座り心地評価 swaying chairとoutdoor chairに有意差あり office chairとoutdoor chairに有意差あり 11

12.

結果: 内腹斜筋のRMS 開始直後,前半→swaying chairとoutdoor chairに有意差あり(p <0.05) 中半,後半→swaying chairとoffice chairに有意差あり(p <0.05) 12

13.

結果: 座面圧力 実験参加者#8の後半(20-30分)における座面圧力の平均化画像 開始直後,前半,中半,後半 →swaying chairとoutdoor chair、outdoor chairとoffice chairに有意差あり(p <0.01) 13

14.

考察 • swaying chairの腰部のフィット感,支持される感じ,感触の印象評価は高く, 疲労度の値が有意に低い →腰部のフィット感,支持される感じ,感触は疲労に影響を及ぼす • swaying chairの内腹斜筋の活動が有意に大きい →上半身の安定性を保ちながら体幹をコントロールしている(RP Kuster, 2020) • outdoor chairの座圧が有意に高い →座面が薄く,圧力が分散されにくかったため RP Kuster, Is active sitting on a dynamic office chair controlled by the trunk muscles?, PLOS ONE, 2020 14

15.

結論 • outdoor chairは,腰部や臀部・大腿部の負担が大きく, オフィスワークには向いていない • swaying chairは,内腹斜筋の活動量が多く,主観評価も高く, オフィスワークに有用である swaying chair outdoor chair 15

16.

残った課題・今後の展望 体幹と大腿部の角度を大きくし,膝の角度を小さくすることで,座っているときの 腰部と上背部の姿勢がより自然になり,背筋の活性化を抑えることができる (Seulgi Kim et al, 2023) →動作解析に基づく運動学的側面と結びつけ, 筋活動量の増減と身体負担の関係を明確にすること Seulgi Kim, Ilsepk Lee, Sang Hyeon Kang, and Sangeun Jin, Significance of Lower Body Postures in Chair Design, Human Factors, Vol. 65(4), 575-591, 2023 16

17.

まとめ 目的:近年利用されている椅子がオフィスワークにおいて人に与える影響を調査し, 特性を把握する(swaying chair, outdoor chair, office chairを比較) 結果: • swaying chairの腰部のフィット感,支持される感じ,感触の印象評価は高く, 疲労度の値が有意に低い • swaying chairの内腹斜筋の活動が有意に大きい • outdoor chairの座圧が有意に高い →outdoor chairはオフィスワークに向いておらず, swaying chairはオフィスワークに有用である 今後:筋活動量の増減と身体負担の関係を明確にする 17

18.

ご清聴ありがとうございました 謝辞 本研究を行うにあたり、実験やデータ処理にご協力いただきました 大阪公立大学生活科学部人工気候室の技術職員の山下久仁子様に 深く感謝いたします。 ○野田彩加(大阪市立大学生活科学部) 土井俊央(大阪公立大学大学院生活科学研究科)