機械回路の記号解析 その10

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September 22, 26

スライド概要

機械系メカトロニクス講義の続きとして、新たに機械回路をはじめます。今回は熱解析です。機械・電子回路・制御システムは必ず熱を発生し、その温度管理が性能・寿命・安全性を決定するため、熱設計はメカトロニクス設計の重要な要素です。
今回、電子機器の冷却を取り上げます。パワートランジスタ、ICチップやプリント基板の冷却、そしてファンを用いた空冷について主に例題をまじえて解説します。また熱抵抗を用いたLTspiceによる熱回路の解析も行ってみました。


電気回路アナロジーの復習
熱回路における
流通量と位差量
対応する変数と素子

0. 電子機器冷却の概論
代表的な故障メカニズム
電子機器の冷却手法

1.チップレベルの熱伝導
 1.1 パワートランジスタの熱伝導
 1.2 例題:接合部温度
 1.3 ICパッケージの熱伝導
 1.4 ICパッケージの強制空冷

2.プリント回路基板 (PCB) の熱伝導
 2.1 例題:銅箔が貼られたプリント基板の熱伝導
 
3.ヒートフレームによる伝導冷却
 3.1 ヒートフレームによるPCBの伝導冷却
 3.2 LTspiceによる熱抵抗ネットワーク解析
 3.3 熱抵抗ネットワーク解析(断線など)
 3.4 熱抵抗ネットワーク解析 (まとめ)

4. Finからの放熱
 4.1 基礎方程式
 4.2 各種モデルの計算式
 4.3 補正長近似
 4.4 例題:Finからの放熱
 4.5 フィンの有効度(𝜺_𝒇)
 4.6 フィンの効率( 𝜼_𝒇 )
 4.7 配列フィンによる放熱
     
5.フィンの熱抵抗
 5.1 配列したフィンの熱抵抗解析
 5.2 例題:最大許容発熱量
 5.3 例題:ヒートシンクの選定
5.4 例題:Finの冷却効果
 

 
つづく

補足:中田孝氏について
補足:私の卒論・就職・修論(改定版)
参考文献

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これまでに主に,ロボティクス・メカトロニクス研究,特にロボットハンドと触覚センシングの研究を行ってきました。現在は、機械系の学部生向けのメカトロニクス講義資料、そしてロボティクス研究者向けの触覚技術のサーベイ資料の作成などをしております。最近自作センサの解説を動画で始めました。https://researchmap.jp/read0072509 電気通信大学 名誉教授 

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各ページのテキスト
1.

2026.9.22 機械回路の記号解析 その10---- 熱伝導回路 part2 --- 下 機械系のためのメカトロニクス 条 誠 電気通信大学名誉教授 電子機器冷却 PCB パワートランジスタの熱伝導 ヒートフレームによるPCBの伝導冷却 ジャンクションからヒートシンクまでの熱経路 LTspiceによる熱抵抗ネットワーク解析 The University of Electro-Communications Department of Mechanical Engineering and Intelligent System

2.

内 電気回路アナロジーの復習 I. 熱回路における a. 流通量と位差量 b. 対応する変数と素子 容 0. 電子機器冷却の概論 a. 代表的な故障メカニズム b. 電子機器の冷却手法 4. Finからの放熱 4.1 基礎方程式 4.2 各種モデルの計算式 4.3 補正長近似 4.4 例題:Finからの放熱 4.5 フィンの有効度(𝜺𝒇 ) 4.6 フィンの効率( 𝜼𝒇 ) 4.7 配列フィンによる放熱 1.チップレベルの熱伝導 1.1 パワートランジスタの熱伝導 1.2 例題:接合部温度 1.3 ICパッケージの熱伝導 1.4 ICパッケージの強制空冷 5.フィンの熱抵抗 5.1 配列したフィンの熱抵抗解析 5.2 例題:最大許容発熱量 5.3 例題:ヒートシンクの選定 5.4 例題:Finの冷却効果 2.プリント回路基板 (PCB) の熱伝導 2.1 例題:銅箔が貼られたプリント基板の熱伝導 つづく 3.ヒートフレームによる伝導冷却 3.1 ヒートフレームによるPCBの伝導冷却 3.2 LTspiceによる熱抵抗ネットワーク解析 3.3 熱抵抗ネットワーク解析(断線など) 3.4 熱抵抗ネットワーク解析 (まとめ) • 補足:中田孝氏について • 補足:私の卒論・就職・修論(改定版) • 参考文献 2

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はじめに 機械の振動系と電気回路が同じように取り扱えると、知ったのは中田孝氏の書籍「工 学解析」でした。同書は、Lagrange運動方程式、Fourie解析、変分法、テンソル解 析など物理学者の数学的道具を機械工学を学ぶ学生に分かり易く解説したものです。 その中に機械回路の記号解析がありました。これがアナロジーというものに関心を 持った始めでした。 機械系と電気系のアナロジーについて学ぶに従い、「物理量の捉え方」の一つとして 流通量と位差量があること、これにより機械と電気系の物理変数の対応関係ができる こと、さらに流体系、熱回路、音響工学など広い分野の物理現象の解析にアナロジー の考え方が使えることに興味を覚えたものです。また双対性の概念は、各種物理現象 への新たな視点を得るきっかけとなりました。 さて、機械系メカトロニクス講義の続きとして、新たに機械回路をはじめます。今回 は熱解析です。機械・電子回路・制御システムは必ず熱を発生し、その温度管理が性 能・寿命・安全性を決定するため、熱設計はメカトロニクス設計の重要な要素です。 今回、電子機器の冷却を取り上げます。パワートランジスタ、ICチップやプリント基 板の冷却、そしてファンを用いた空冷について主に例題をまじえて解説します。また 熱抵抗を用いたLTspiceによる熱回路の解析も行ってみました。 https://github.com/m4881shimojo/heat 参考文献 中田孝:工学解析(技術者のための数学手法),オーム社,1972. 3

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復習 電気回路アナロジーの復習 4 1. 機械振動系と電気回路のアナロジーとは何か、 2. なぜ機械振動系と電気回路の間にはアナロジーが成り立つのか、 3. 流通量と位差量という物理量の観点から説明します 4. そして、力ー電流、力ー電圧のアナロジーを電気回路の双対性から説明します 5. また、電気・機械系の物理変数の対応関係を説明し、対称性と保存則との関係をみます 6. 機械系、電気回路、流体系、熱回路などへの展開について簡単に示します I. 熱回路における a. 流通量と位差量 b. 対応する変数と素子 についての復習です 機械回路の記号解析 その1「電気回路アナロジーによる解析手法」 https://www.docswell.com/s/m_shimojo/57REQ7-2024-11-05-140854 機械回路の 記号解析 その1 参照ください

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復習 a. 流通量と位差量 5 量 内 容 例 流通量 要素を通過する量 電流,流量,熱流量,力など 要素に加わる差の量 電圧,圧力,温度,速度など Through quantity 位差量 Across quantity 流通量と位差量は、電気回路、機械系、熱回路、流体などであります 電気 機械 直進系 回転系 流通量 電流 i[A] 力 f[N] トルク τ[N・m] 位差量 電圧 e[V] 速度 v[m/s] 角速度 ω[rad/s] 熱 流体 熱流量 流量 q[m3/s] q[J/s]or[W] 温度 θ[K] or[℃] 圧力 p[Pa]

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復習 b. 熱回路で対応する変数と素子 6 この熱ー電気回路アナロジーで用いる、対応する変数と受動素子を示します 熱系 変数 熱流量 q [J/s] or [W] 電流 I [A] 温度 T [K] or[℃] 電圧 V [V] 熱容量 定数 電気系 熱抵抗 Cth [𝐽Τ𝐾] Rth [K/W]or[℃/W] ------- キャパシタンス C [F] 電気抵抗 R [Ω] インダクタンス L [H] 注釈: ⚫ 温度は、絶対温度 [K](ケルビン)セルシウス温度 [℃]が あります。使い分けのポイントは「温度の変化(差)を 見たいのか」それとも「エネルギーの絶対量として扱い たいのか」にあります。 𝑇 𝐾 = 𝑡 ℃ + 273.15 ⚫ ワット[W]、ジュール[J]、カロリ[cal]の単位系の換算 1 𝐽 = 1 𝑁 ∙ 𝑚 = 1 𝑊 ∙ 𝑠 ≒ 0.2389 𝑐𝑎𝑙 [W]=[J/s]=[V・A] 1 𝑘𝑐𝑎𝑙 = 4184 𝐽 = 1.160 𝑊ℎ

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概論 電子機器冷却の概論 ⚫熱設計が重要 熱は機器を破壊します。機械・電子回路は必ず熱を発生し、その温度管理 が機器の性能・寿命・安全性を決定します。このため、熱設計はメカトロ ニクス設計の重要な要素です。 ⚫10℃ 2倍則 電子機器の故障率は温度に対して指数関数的に増加します。(温度を10°C 上げると故障率が2倍になる) 7

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概論 対象部品・材料 半導体素子 (IC/MOSFET) a. 代表的な故障メカニズム 故障メカニズム 発生現象と影響 主な熱的要因・物理プロセス エレクトロ マイグレーション 内部金属配線の断線、ウィス カー・ブリッジ短絡 高温度下で格子振動が大きくなり、移動電子に よる金属原子の移動が加速される 熱疲労 (熱膨張係数の不一致) 熱暴走 ハンダ接合部のクラック、ワイヤ シリコン、リードフレーム、基板等の異種材料 ボンディング剥離 間の熱膨張係数差による繰り返し応力 大電流集中による素子の過熱溶 融・永久破壊 温度上昇に伴うPN接合リーク電流の増加と発熱 の正フィードバックループ 電解コンデンサ ドライアップ現象 静電容量の低下(容量抜け)、ESR 高温により封口ゴムを透過して電解液が徐々に (等価直列抵抗)の上昇 蒸発・揮発する モータ・トランス 絶縁材の熱劣化 巻線のレアショート(層間短絡)、 高温暴露によるエナメル被膜や絶縁紙の化学変 フレームへの地絡 化(分子鎖切断・炭化・脆化) プリント基板 (PCB) Z方向(板厚方向) の熱膨張 スルーホールめっきの破断・断線 SEI被膜の熱分解 セル膨張、ガス発生、最悪の場合 一定温度以上で負極表面の保護膜が分解し、電 は 解液と電極が直接反応して急激に発熱する 熱暴走・発火 リチウムイオン 電池 8 基板樹脂(FR-4等)のZ方向熱膨張率が銅めっ きより格段に大きく、めっきを引っ張る SEI被膜(Solid Electrolyte Interphase:固体電解質界面相)とは、リチウムイオン電池の初回充電時に、負極(グラファイト等)の表面で 電解液が電気化学的に分解・反応して形成される不活性な薄膜のことです。

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熱と故障率の関係(10℃ 2倍則) モータの寿命を左右する「巻線の絶縁寿命」と「軸受グリースの寿命」の評価において、 アレニウスモデル(10℃ルール)が業界標準として使われています。 By Gemini ⚫ 巻線の絶縁寿命: モータ巻線のエナメル被膜や絶縁シート(PETやポリイミド等)は、熱による酸化や高 分子鎖の切断といった化学反応によって劣化が進みます。そのため、アレニウスの式に 直接従います。重電・電機分野では、アレニウスモデルを実用化した「モンツィンガー の法則(Montzinger’s rule)」と呼ばれ、以下の関係が成り立ちます。 耐熱限界付近において、巻線温度が10℃上昇すると絶縁寿命 は1/2になり、10℃下がると2倍に延びます ⚫ 軸受グリースの寿命 : モータ故障の約半数を占めるベアリング損傷も、熱が大きく関係しています。グ リースの基油酸化や蒸発・増ちょう剤の分解も化学プロセスであるため、アレニウ スモデルに基づきます。 軸受温度が10〜15°C上昇するごとに、グリースの補給間隔・ 潤滑寿命は半減します 9

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概論 b. 電子機器の冷却手法(伝導)1/3 10 近年は、電子機器の小型化、高密度実装が進んでおり、その熱設計が性能を左右します。 具体的な冷却手法として次の手法があります。 1. 伝導冷却 (Conduction Cooling) ✓ 絞り抵抗 : 小さな熱源(ジャンクション)から大きな物体(チップ)へ熱が広がる際に生 じる幾何学的な抵抗を考慮します。 ✓ ヒートフレーム : 高出力基板に厚い金属板を取り付け、熱を基板端のコールドプレートへ 逃がす手法です。 ✓ 熱伝導モジュール: IBMが開発した技術で、バネ付きピストンとヘリウムガスを用いて チップから効率的に吸熱します。 2. 空冷 (Air Cooling) ✓ 自然対流と放射: 低電力機器に適した手法で、PCBを垂直に配置し、適切な間隔を空ける ことで空気の流れを最大化します。 ✓ 強制対流: ファンを使用して冷却能力を高めます。 ✓ ファンの選定: 筐体の流動抵抗とファンの特性曲線(静圧 vs 風量)の交点(動作点)に 基づいて選定します。 3. 液冷と浸漬冷却 (Liquid and Immersion Cooling) 注:今回は取り扱わない ✓ 液冷: 水などの液体をコールドプレート内に循環させる間接冷却です。 ✓ 浸漬冷却: 部品を誘電体液(フッ素系不活性液体など)に直接浸します。沸騰に伴う極め て高い熱伝達率を利用できるため、超高出力の機器に適しています。

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概論 b. 電子機器の冷却手法(空冷)2/3 11 空冷は、主に「自然対流と放射」および「強制対流」の2つのフェーズに分けて 議論されます。 1. 冷却手法の選択(判断基準) ⚫ 自然対流: 低電力(一般に基板あたり約5W以下、または0.02 W/cm²以下)のシ ステムに適しています。可動部がなく信頼性が高いため、可能な限り優先されます。 ⚫ 強制対流: 自然対流では不十分な高電力密度のシステムで採用されます。ファンを 使用することで熱伝達率を最大10倍程度まで高めることができます。 2. 自然対流と放射による冷却の流れ 低電力機器において、ファンを使わずに熱を逃がすプロセスです。 ⚫ 熱移動の開始: コンポーネントで発生した熱が周囲の空気を温め、密度差(浮力) によって空気の上昇運動が始まります(自然対流)。 ⚫ 筐体の設計: 理想的には下部から吸気し、上部から排気します。 ⚫ 基板の配置: 対流を最大化するため、PCBは垂直に配置し、空気の流れを妨げない よう約2 cmの間隔を空けるのが理想的です。 ⚫ 放射の寄与: プラスチックや塗装面など放射率の高い表面では、対流と同程度の放 熱効果を持つことがあります。

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概論 b. 電子機器の冷却手法(空冷)3/3 12 3. 強制対流による冷却の流れ ファンを使用して強制的に空気を循環させ、大量の熱を奪い去るプロセスです。 ⚫ エネルギーバランス: 機器が消費する電力(冷却負荷)のすべてが空気に吸収されると仮定 し、流量と温度上昇の関係(𝑄 = 𝑚𝐶 ሶ 𝑝 Δ𝑇)から必要な風量を算出します。 ⚫ 設計目標: 一般的な設計指針として、空気の温度上昇( 𝑇𝑜𝑢𝑡 − 𝑇𝑖𝑛 )を10°C以内に抑え、 出口温度を70°C以下に保つことが推奨されています。 気流の制御: • 内流(Internal flow): 回路基板間の狭い通路を通り抜ける流れ。 • 外流(External flow): トランジスタなどの個別の部品上を通り過ぎる流れ。 4. 効率的な空冷のための設計指針 空冷の効果を最大化するための実務的な流れは以下の通りです。 ⚫ ファンの配置: 通常は吸気側に設置します。これにより筐体内を陽圧に保ち、隙間からの埃 の侵入を防ぎます。 ⚫ 部品のレイアウト: 最も熱に敏感な(重要な)部品を、空気が最も冷たい入口付近に配置し ます。逆に、高電力だが熱に強い部品は出口付近に置きます。 ⚫ 流動抵抗の低減: 急な曲がり角や急拡大・縮小を避け、スムーズな気流路を確保してファン の負荷を減らします。

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伝導冷却 13

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1.チップレベルの熱伝導 14 電子部品の内部(チップおよびパッケージ内部)で発生した熱が、外部へ流出す るまでの一連の伝導熱移動について解説します 1. 発熱部 : 熱が小さな接合部(ジャンクション)から大きなチップ本体へ広がる際に生 じる幾何学的な抵抗(絞り抵抗)を考慮する必要があります。 2. 熱流路: 熱はチップからボンディング材、リードフレーム、そしてケース材料を通って リード線へと流れます。多くの場合、プラスチックケースなどの低熱伝導率材料が最 大の熱抵抗源となります。 ジャンクション Junction ケース 熱伝導グリース heat flows Fin Bond wires Case chip Lead frame Leads 周囲温度 Bond heat flows

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1.1 パワートランジスタの熱伝導 15 パワートランジスタのデータシートには、半導体チップ内部の発熱部(Junction)から パッケージの外表面(Case)へ熱が伝わるときの熱抵抗が示されています。一般的に 𝑅𝜃𝐽𝐶 や 𝑅𝑡ℎ 𝑗−𝑐 と表記され、単位は [°C/W] または [K/W] です。 • トランジスタの発熱量:q • ケース温度:𝑇𝑐 • ジャンクション–ケース間熱抵抗: 𝑅t(𝑗−𝑐) • 求めるもの: トランジスタ内部の接合部温度: 𝑇𝑗 q 𝑇𝑗 q 𝑇𝑐 𝑅t(j−c) 𝑇𝑗 = 𝑇𝑐 + q × 𝑅t(j−c) 𝑇𝑗 ジャンクション 𝑇𝑐 ケース

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1.1 パワートランジスタの熱伝導 パワートランジスタのデータシートの例 パワートランジスタの接合部は、金属製の筐体 によって保護されています。パワートランジス タの熱伝達特性は通常、自然対流と放射熱伝達 の両方を考慮した「筐体-周囲熱抵抗」として メーカーによって規定されています。 𝑇𝑎 環境温度 𝑇𝑐 ”Thermal Resistance,Junction to Case” 16

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例題 1.2 例題:接合部温度 1/4 17 外部から測定したケース表面の温度とメーカー指定の熱抵抗値を用いて、直接測定する ことが困難な素子内部のジャンクション(接合部)温度を算出する問題です 1. 問題の設定(条件) • トランジスタの発熱量(消費電力) q: 3 W • ケース温度𝑇𝑐 : 50∘ C • ジャンクション–ケース間熱抵抗 𝑅t(𝑗−𝑐) : 15∘ C/W • 求めるもの: トランジスタ内部の接合部温度 𝑇𝑗 𝑇𝑗 q 実際には困難な仮定だが、ケースを50℃に冷却できたとして、その時の許容損失qDを計算する q 𝑇𝑐 𝑅t(j−c) 50℃ 2. 計算プロセスと結果 定常状態において、ジャンクションからケースへと流れる熱量と温度差の関係は以下の熱抵抗 の式で表されます 𝑇𝑗 − 𝑇𝑐 q= 𝑅t(j−c) この式を求たいジャンクション温度𝑇𝑗 について整理します 𝑇𝑗 = 𝑇𝑐 + q × 𝑅t(j−c)

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1.2 例題:接合部温度 2/4 例題 与えられた数値を代入して計算します 𝑇𝑗 = 50∘ C + 3 W × 15∘ C/W = 50∘ C + 45∘ C = 𝟗𝟓∘ C したがって、ケース温度が 50∘ Cで保たれているとき、内部のジャンクション温度は 95∘ Cに達 していることがわかります 3. 物理的な意味とポイント • ジャンクション: 電流が流れて実際に熱が発生する半導体素子内部の回路領域であり、素 子の中で最も高温になります。 • 実務上の役割: ジャンクション温度を直接熱電対などで測定するのは困難ですが、ケー ス表面の温度を測定し、メーカーのデータシートに記載されている熱抵抗値を適用する ことで、内部回路が安全動作限界(シリコン素子では通常 125∘ C以下)に収まっている かを判定できます q ジャンクション ケース パワートランジスタ の熱損失(発熱) 𝑇𝑗 𝑅t(j−c) 𝑇𝑐 18

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1.2 例題:接合部温度 3/4 例題 19 実際の設計では、これに「グリス」と「ヒートシンク」の熱抵抗を足して、チップ 温度が定格を超えないか計算します ヒートシンクを取り付けると、チップから発生した熱を効率よく外気へ逃がすことができるようになり、 デバイスの許容損失を劇的に増やすことができます。 𝑅𝑡(𝑗−𝑐) ℃Τ𝑊 :チップからケースまでの熱抵抗 𝑅𝑡(𝑐−𝑠) ℃Τ𝑊 :接触熱抵抗 (ケースとFin) 𝑅𝑡(𝑠−𝑎) ℃Τ𝑊 :Finから大気への熱抵抗 全熱抵抗は 𝑇𝑗 Case 𝑇𝑐 q 𝑅𝑡(𝑗−𝑐) q 周囲温度 Fin 𝑇𝑠 𝑅𝑡(𝑐−𝑠) 𝑇𝑎 𝑅𝑡(𝑠−𝑎) 𝑅𝑡(𝑡𝑜𝑡𝑎𝑙) = 𝑅𝑡(𝑗−𝑐) + 𝑅𝑡(𝑐−𝑠) + 𝑅𝑡(𝑠−𝑎) ℃Τ𝑊 ジャンクション q パワートランジスタの熱損失(発熱) 𝑇𝑗 ケース 𝑇𝑐 熱伝導グリース 𝑇𝑠 Fin ヒートシンク 𝑅𝑡(𝑗−𝑐) 𝑅𝑡(𝑐−𝑠) 𝑅𝑡(𝑠−𝑎) 周囲温度 𝑇𝑎 ジャンクションからヒートシンクまでの熱経路

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例題 1.2 例題:接合部温度 4/4 ヒートシンクの効果(計算例) 𝑇𝑗 (条件:Tj=125℃、 Ta=50℃、 Rt(j-c)=15℃/W) q q Case 𝑇𝑐 𝑅𝑡(𝑗−𝑐) 20 周囲温度 Fin 𝑇𝑠 𝑅𝑡(𝑐−𝑠) 𝑇𝑎 𝑅𝑡(𝑠−𝑎) ⚫ ヒートシンクなしの場合 大気への熱伝導が非常に悪いため、 全熱抵抗はパッケージによりますが Rt(all)=50℃/W 程度になります。 𝑇𝑗(𝑚𝑎𝑥) − 𝑇𝑎 125 − 50 q𝐷 = = = 1.5𝑊 𝑅𝑡(𝑡𝑜𝑡𝑎𝑙) 50 (この辺りは不確かです) ⚫ ヒートシンクありの場合 高性能なヒートシンク(例: 2℃/W)とシリコングリス(例: 0.5℃/W)を使用 𝑅𝑡(𝑡𝑜𝑡𝑎𝑙) = 𝑅𝑡(𝑗−𝑐) + 𝑅𝑡(𝑐−𝑠) + 𝑅𝑡(𝑠−𝑎) = 15 + 0.5 + 2 = 17.5 ℃Τ𝑊 q𝐷 = 𝑇𝑗(𝑚𝑎𝑥) − 𝑇𝑎 125 − 50 = = 4.29𝑊 𝑅𝑡(𝑡𝑜𝑡𝑎𝑙) 17.5 扱える電力 約4.3W となり、約3倍程度のパワーを扱えるようになります。

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Table 3–4 各種ヒートシンク 周囲との間の自然対流 および放射による 熱抵抗の合計値例 縦置き 横置き 21 Cengel, Yunus A., Sanford Klein, and William Beckman. Heat transfer: a practical approach. Vol. 141. Boston: WBC McGraw-Hill, 1998.

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1.3 ICパッケージの熱伝導 22 DIPパッケージは樹脂ボディ自体の熱伝導率が低いため、発生した熱の多くは金属リード (ピン)を経由してプリント基板の銅箔へ伝わります。 ⚫ DIP(Dual In-line Package)などのスルーホール型ICパッケージでは、ヒート シンク(放熱器)を取り付けずにICパッケージ表面から周囲の空気へ直接放熱 することが多いです。 ⚫ 熱はチップからボンディング材、リードフレーム、そしてケース材料を通って リード線へと流れます。多くの場合、プラスチックケースなどの低熱伝導率材料 が最大の熱抵抗源となります。 Junction heat flows Bond wires Case chip Lead frame Leads Bond heat flows

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例題 1.3 ICパッケージの熱伝導 1/4 23 あるチップが、12ピンのリード線を持つDIPパッケージ内で0.6 Wの熱を放散しています。この電子部品の 各部分の材質および寸法は、下表のとおりです。リード線の温度が40℃の場合、チップの接合部の温度は どのくらいでしょう。 Junction Bond wires 𝑞 = 0.6 W Case heat flows chip Lead frame Leads DIP-ICの内部構造図 および断面図 Bond heat flows 1. 各層のパラメータ セクションおよび材料 熱伝導率 (Thermal Conductivity, W/m·°C) 厚さ (Thickness, mm) 熱伝達面積 (Heat Transfer Surface Area) Junction constriction — — 直径 0.4 mm Silicon chip 120† 0.4 3 mm × 3 mm Eutectic bond 296 0.03 3 mm × 3 mm Copper lead frame 386 0.25 3 mm × 3 mm Plastic separator 1 0.2 12 × 1 mm × 0.25 mm Copper leads 386 5 12 × 1 mm × 0.25 mm Cengel, Yunus A., Sanford Klein, and William Beckman. Heat transfer: a practical approach. Vol. 141. Boston: WBC McGraw-Hill, 1998.

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1.3 ICパッケージの熱伝導 2/4 例題 𝑞 = 0.6 W 𝑇𝑗𝑢𝑛𝑐𝑡𝑖𝑜𝑛 𝑃 = 0.6 𝑊 DIP-IC(12ピン) 𝑞 𝑅𝑐𝑜𝑛𝑠𝑡𝑟𝑖𝑐𝑡𝑖𝑜𝑛) 𝑅𝑐ℎ𝑖𝑝 (図はピン数が違うが) 𝑅𝑏𝑜𝑛𝑑 𝑅𝑙𝑒𝑎𝑑 𝑓𝑟𝑎𝑚𝑒) 𝑇𝑙𝑒𝑎𝑑𝑠 𝑅𝑝𝑙𝑎𝑠𝑡𝑖𝑐 12 × 𝑅𝑙𝑒𝑎𝑑 電子デバイスの接合部で発生した熱は、熱抵抗 が最も小さい経路を流れる 左図デバイスの熱抵抗ネットワーク Cengel, Yunus A., Sanford Klein, and William Beckman. Heat transfer: a practical approach. Vol. 141. Boston: WBC McGraw-Hill, 1998. 24

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例題 1.3 ICパッケージの熱伝導 3/4 25 2. 各層の熱抵抗計算 熱は、発生源であるジャンクションからリード線に向かって直列に流れていきます。それぞれの熱抵抗を求めていきます。 ① 絞り熱抵抗(𝑅𝑐𝑜𝑛𝑠𝑡𝑟𝑖𝑐𝑡𝑖𝑜𝑛 ) 𝑅𝑐𝑜𝑛𝑠𝑡𝑟𝑖𝑐𝑡𝑖𝑜𝑛 = 熱が非常に小さなジャンクション(直径0.4 mm ) から、それよりも大きなチップ全体へ広がって いく際に生じる抵抗 1 1 = = 5.88 ℃Τ𝑊 2 𝜋𝑑𝑘 2 𝜋 0.4 × 10−3 120 ② シリコンチップ本体の伝導抵抗( 𝑅𝑐ℎ𝑖𝑝 ) 𝑅𝑐ℎ𝑖𝑝 = 𝐿 1 = = 0.37 ℃Τ𝑊 𝑘𝐴 120 9 × 10−6 ③ 接着層の伝導抵抗(𝑅𝑏𝑜𝑛𝑑 ) 𝑅𝑏𝑜𝑛𝑑 = 𝐿 1 = = 0.01 ℃Τ𝑊 𝑘𝐴 296 9 × 10−6 ④ 銅製リードフレームの伝導抵抗(𝑅𝑙𝑒𝑎𝑑 𝑓𝑟𝑎𝑚𝑒 ) 𝐿 0.25 × 10−3 𝑅𝑙𝑒𝑎𝑑 𝑓𝑟𝑎𝑚𝑒 = = = 0.07 ℃Τ𝑊 𝑘𝐴 386 9 × 10−6 ⑤ プラスチックセパレーターの伝導抵抗(𝑅𝑝𝑙𝑎𝑠𝑡𝑖𝑐 ) この層は、熱伝導率の極めて低いプラスチックで できており、12本のリード線接続部にそれぞれ挟 まれています。12箇所へ並列に熱が分散して流れ るため、断面積は12倍として合成計算します ⑥ 銅製リード(ピン本体)の伝導抵抗(𝑅𝑙𝑒𝑎𝑑 ) 𝐿 0.2 × 10−3 𝑅𝑝𝑙𝑎𝑠𝑡𝑖𝑐 = = = 66.67 ℃Τ𝑊 𝑘𝐴 1 12 × 0.25 × 10−6 𝐿 5 × 10−3 𝑅𝑙𝑒𝑎𝑑 = = = 4.32 ℃Τ𝑊 𝑘𝐴 386 12 × 0.25 × 10−6 同様に12本のリード線接へ並列に熱が分散して流れるた め、断面積は12倍として合成計算します Cengel, Yunus A., Sanford Klein, and William Beckman. Heat transfer: a practical approach. Vol. 141. Boston: WBC McGraw-Hill, 1998.

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例題 1.3 ICパッケージの熱伝導 4/4 26 3. 合成熱抵抗と接合部温度の算出 すべての抵抗は直列接続のため、合計の熱抵抗( 𝑅total )はこれらを単純に足し合わせることで得られます 𝑅𝑡𝑜𝑡𝑎𝑙 = 𝑅𝑐𝑜𝑛𝑠𝑡𝑟𝑖𝑐𝑡𝑖𝑜𝑛 + 𝑅𝑐ℎ𝑖𝑝 + 𝑅𝑏𝑜𝑛𝑑 + 𝑅𝑙𝑒𝑎𝑑 𝑓𝑟𝑎𝑚𝑒 + 𝑅𝑝𝑙𝑎𝑠𝑡𝑖𝑐 + 𝑅𝑙𝑒𝑎𝑑 = 5.88 + 0.37 + 0.01 + 0.07 + 66.67 + 4.32 = 77.32 ℃Τ𝑊 この合計熱抵抗と消費電力(𝑞 = 0.6 W)を用いて、リード温度𝑇𝑙𝑒𝑎𝑑𝑠 = 40∘ C を基準とした 接合部温度( 𝑇𝑗𝑢𝑛𝑐𝑡𝑖𝑜𝑛 )を計算します 𝑇𝑗𝑢𝑛𝑐𝑡𝑖𝑜𝑛 = 𝑇𝑙𝑒𝑎𝑑𝑠 + 𝑞𝑅𝑡𝑜𝑡𝑎𝑙 = 40℃ + 0.6 𝑊 77.32 ℃Τ𝑊 = 86.4℃ 4. 考察(設計への応用) この例題の計算結果は、熱設計の実務において非常に重要な示唆を与えてくれます。 • 最大のボトルネック: プラスチックセパレーター層の熱抵抗(66.67 ∘ C/W)が、全体の熱抵抗 (77.32 ∘ C/W)の約86%を占めています。 • 改善のアプローチ: もし接着層やリードフレームの金属をさらに高価で高伝導なものに変えた としても、そこは元々抵抗が小さいため、全体の温度低下にはほぼ貢献しません。パッケージ 全体の放熱性能を高めたい場合は、ボトルネックであるプラスチック層の厚みを薄くするか、 熱伝導率の高いセラミックなどの代替材料に変更するのが最も効果的であることが、この解析 から一目でわかります。 運用の安全限界とされる125∘ C に対して、今回の結果( 86.4∘ C )は十分に安全な範囲内に収まっています Cengel, Yunus A., Sanford Klein, and William Beckman. Heat transfer: a practical approach. Vol. 141. Boston: WBC McGraw-Hill, 1998.

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発熱部(絞り抵抗) 27 熱が小さな熱源から大きな体積へと「広がりながら」伝わるときの、熱抵抗 → 絞り抵抗 (𝑅𝑐𝑜𝑛𝑠𝑡𝑟𝑖𝑐𝑡𝑖𝑜𝑛 ) 𝑑 Junction 𝑹𝒄𝒐𝒏𝒔𝒕𝒓𝒊𝒄𝒕𝒊𝒐𝒏 = 1 𝜋𝑑𝑘 𝑘 ∶ 熱伝導率 𝑊 Τ 𝑚 ∙ 𝐾 chip 絞り抵抗: 接合部(junction)からチップ 本体へ熱が広がる際の抵抗 ⚫ 接合部で発生した熱はチップ全体に広が Junction heat flows Bond wires Case chip Lead frame Leads り、チップの厚さ方向へと伝導されます。 Bond heat flows ⚫ 熱の伝播を1次元的に近似すると、大き な本体上の直径dの小さな発熱領域の場 合、絞り抵抗は上式で与えられます

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1.3 ICパッケージの熱伝導 28 By Gemini 1. Rconstriction(絞り抵抗)の意味 この抵抗は、熱が非常に小さな領域(この場合は電子回路のジャンクション)から、それよりも大きな物 体(チップ本体)へと流れ込む際に、熱流の経路が狭められることによって生じる抵抗です。熱が点に近 い小さな熱源から大きな体積へと「広がりながら」伝わるため、通常の平面壁の熱抵抗(𝐿/𝑘𝐴)とは異な る計算が必要になります。 2. 𝜋 が現れる理由 次の式 𝑅𝑐𝑜𝑛𝑠𝑡𝑟𝑖𝑐𝑡𝑖𝑜𝑛 = 1 𝜋𝑑𝑘 における 𝜋 は、熱源の幾何学的形状に由来する定数です。 •形状の影響: この数式は、半無限の物体表面にある円形の熱源から熱が拡散する様子を、伝熱方程式 を用いて数学的に解析(理論解の導出)した結果に基づいています。 •面積と半径の関係: 円の面積 Aは𝜋𝑟 2で表されますが、拡散(広がり)のプロセスは、熱源の面積その ものよりも、その「代表的な長さ(半径や直径)」に依存します。面積 A を用いて一般化して表すと、 拡散抵抗は 1/ 𝑘 𝐴 の形を含むことが多く、これを直径 D を用いて書き換える過程で 𝜋 という係数 が現れます。 結論として、 𝝅 は「点に近い小さな熱源から大きな物体へ熱が拡散する」という物理現象を幾何学 的に正しく評価するために必要な理論的係数であると言えます。

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例題 1.4 ICパッケージの強制空冷 1/4 29 PCB上に実装された16ピン、1.2 WのプラスチックDIPパッケージに対して、30°C、風速 200 m/minの空気をファンで吹き付けています。図のデータを用いて、この電子デバイ スの接合部温度を求めます。また、ファンが故障した場合、接合部温度はどの程度になる でしょう。 チップキャリアメーカーが提供する特性データを用いて、冷却用ファンの有無がチップ 接合部の温度に与える影響を評価する問題です 1. 前提条件とパラメータ ⚫ 冷却対象: 16本のリード線を持つプラスチック 製DIP2 30℃ ⚫ 発熱量(消費電力) q: 1.2W ⚫ 周囲の空気温度 𝑇𝑎𝑚𝑏𝑖𝑒𝑛𝑡 : 30∘ C ⚫ 冷却風速: 通常動作時: 200 m/min(強制対流) ファン故障時: 0 m/min(自然対流) 𝑓𝑎𝑛 Cengel, Yunus A., Sanford Klein, and William Beckman. Heat transfer: a practical approach. Vol. 141. Boston: WBC McGraw-Hill, 1998.

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1.4 ICパッケージの強制空冷 2/4 例題 30 2. 計算プロセス ① 通常動作時(ファン動作時) ファンによって200 m/min の風が送られている状態では、熱抵抗グラフから16本のリード線を持 熱抵抗 Average thermal resistance ℃Τ𝑊 つDIPの接合部-周囲空気間熱抵抗(𝑅𝑗𝑢𝑛𝑐𝑡𝑖𝑜𝑛−𝑎𝑚𝑏𝑖𝑒𝑛𝑡 )を下図から読み取ります (Motorola Semiconductor Products, Inc. ) 70℃/W 55℃/W 風速 Airflow velocity 𝑚Τ𝑚𝑖𝑛 図 回路基板上に実装されたプラスチック製DIPデバイスの接合部と周囲空気との間 の総熱抵抗を、空気流速およびリード本数に対する関数として示したもの Cengel, Yunus A., Sanford Klein, and William Beckman. Heat transfer: a practical approach. Vol. 141. Boston: WBC McGraw-Hill, 1998.

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例題 1.4 ICパッケージの強制空冷 3/4 31 1. 空気流速200 m/minに相当する16リード線のデバイスの接合部 から周囲への熱抵抗は、前図から、次のように求められます 𝑅𝑗𝑢𝑛𝑐𝑡𝑖𝑜𝑛−𝑎𝑖𝑟 = 55 ℃Τ𝑊 𝑞 𝑇𝑗𝑢𝑛𝑐𝑡𝑖𝑜𝑛 𝑞 𝑇air 𝑅𝑗𝑢𝑛𝑐𝑡𝑖𝑜𝑛−𝑎𝑖𝑟 2. そして、接合温度𝑇𝑗𝑢𝑛𝑐𝑡𝑖𝑜𝑛 は次のようになります 𝑇𝑗𝑢𝑛𝑐𝑡𝑖𝑜𝑛 = 𝑇𝑎𝑖𝑟 + 𝑞𝑅𝑗𝑢𝑛𝑐𝑡𝑖𝑜𝑛−𝑎𝑖𝑟 = 30℃ + 1.2 𝑊 55 ℃Τ𝑊 = 96℃ ② ファン故障時(風速が 0 m/min に低下したとき) 1. ファンが完全に停止すると風速は 0 m/min (自然対流条件)となり、熱が周囲に逃げ にくくなります。同様に、グラフの縦軸(風速0)における16本リード線の曲線から、 自然対流時の熱抵抗を読み取ります 𝑅𝑗𝑢𝑛𝑐𝑡𝑖𝑜𝑛−𝑎𝑖𝑟 = 70 ℃Τ𝑊 2. そして、接合温度は次のようになります 𝑇𝑗𝑢𝑛𝑐𝑡𝑖𝑜𝑛 = 𝑇𝑎𝑖𝑟 + 𝑞𝑅𝑗𝑢𝑛𝑐𝑡𝑖𝑜𝑛−𝑎𝑖𝑟 = 30℃ + 1.2 𝑊 70 ℃Τ𝑊 = 114℃ Cengel, Yunus A., Sanford Klein, and William Beckman. Heat transfer: a practical approach. Vol. 141. Boston: WBC McGraw-Hill, 1998.

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例題 1.4 ICパッケージの強制空冷 4/4 32 3. 考察 この例題の結果は、熱管理の設計における「安全マージン」と「フェイルセーフ」の重 要性を示しています。 ⚫ 急激な温度上昇: ファンが故障するだけで、接合部温度は 18∘ C も急上昇( 96∘ Cから 114∘ C )します。 ⚫ 隠れた二次リスク: この計算ではファン故障後も周囲温度が 30∘ C のままであると仮定 していますが、現実の密閉されたコンピュータ筐体内などでは、空気循環が止まるこ とで周囲の空気自体も急速に温まります。これにより、シリコンチップの安全動作限 界温度である 125∘ C を超えて熱破壊を引き起こすリスクが極めて高くなります。 ⚫ 設計上の教訓: 高い信頼性が要求される電子機器の設計では、ファンによる空冷のみ に頼るのではなく、異常を検知して自動的に出力を抑える、あるいはシステムを遮断 する「サーマル・カットオフ(熱遮断スイッチ)」などの保護機能を備えるのが実務 上不可欠です。

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2.プリント回路基板 (PCB) の熱伝導 33 電子部品で発生した熱が、プリント回路基板 (PCB) の伝導、ヒートフレーム を通 して、外部へ流出するまでの一連の伝導熱移動について解説します 電子部品 100𝑚𝑚 𝐸𝑝𝑜𝑥𝑦 100𝑚𝑚 𝑷𝑪𝑩 0.16𝑚𝑚 𝑘1 𝑞 𝑷𝑪𝑩 0.04𝑚𝑚 𝐶𝑜𝑝𝑝𝑒𝑟 20∘ C 20∘ C Heat frame Cold plate 12 cm Cold plate 𝑘2 ⚫ プリント回路基板 (PCB) の伝導: ✓ PCBの材料(ガラスエポキシ)は熱の不良導体であるため、銅クラッド(銅張積層板)を追加 して面方向の熱伝導を改善します。 ✓ 複数の層がある場合は、それぞれの熱伝導率と厚さの積から有効熱伝導率 (𝑘𝑒𝑓𝑓 ) を算出して 解析します。 ⚫ ヒートフレーム (Heat Frames): ✓ 高出力チップが実装された基板では、厚みのある金属板(銅やアルミニウム)を基板に取り付 け、熱を基板の端(コールドプレート)まで逃がします。この際、温度分布は中央で最も高く 端で最も低い放物線状になります。 Cengel, Yunus A., Sanford Klein, and William Beckman. Heat transfer: a practical approach. Vol. 141. Boston: WBC McGraw-Hill, 1998.

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2. 1 銅箔が貼られたプリント基板の熱伝導 1/2 例題 34 片面に銅箔が貼られたプリント基板(PCB)に沿って熱が伝導されます。PCBの長さは100mm、幅は 100mmであり、銅層とエポキシ層の厚さはそれぞれ0.04 mmと0.16 mmです。側面からの熱伝達を 無視して、銅層(k1)およびエポキシ層(k2)に沿った熱伝導の割合を求めましょう。 𝑘1 = 386 𝑊 Τ 𝑚 ∙ 𝐾 100𝑚𝑚 𝐸𝑝𝑜𝑥𝑦 100𝑚𝑚 𝐶𝑜𝑝𝑝𝑒𝑟 𝑷𝑪𝑩 0.16𝑚𝑚 𝑘1 𝑞 0.04𝑚𝑚 𝑘2 = 0.26 𝑊 Τ 𝑚 ∙ 𝐾 この例題は、熱伝導率が極めて低いガラスエポキシ基板に、 わずかな銅の薄膜(銅クラッド)を積層することで、基板全 体の熱の伝わりやすさ(有効熱伝導率)がどれほど向上する かを定量的に示すものです 求めるもの: 𝑘2 ① 銅層とエポキシ層それぞれを流れる熱量の割合(%) ② 基板全体の有効熱伝導率 𝑘𝑒𝑓𝑓 1. 各層を流れる熱量の割合 基板の長さ方向に沿って熱が流れるとき、銅層とエポキシ層の長さ 、幅 および両端の温度差は共通です。 したがって、各層を流れる熱量は、それぞれの「熱伝導率𝑘 × 厚さ 𝑡」(𝑘𝑡 積)に比例します • 銅層の𝑘𝑡積: • エポキシ層の𝑘𝑡積: 𝑘𝑡 𝑒𝑝𝑜𝑥𝑦 = 𝑘2 𝑡2 = 0.26 × 0.16 × 10−3 = 0.04 × 10−3 𝑊 Τ℃ • 基板全体の𝑘𝑡積: 𝑘𝑡 𝑐𝑜𝑝𝑝𝑒𝑟 = 𝑘1 𝑡1 = 386 × 0.004 × 10−3 = 15.44 × 10−3 𝑊 Τ℃ 𝑘𝑡 𝑃𝐶𝐵 = 𝑘𝑡 𝑐𝑜𝑝𝑝𝑒𝑟 + 𝑘𝑡 𝑒𝑝𝑜𝑥𝑦 = 15.44 × 10−3 + 0.04 × 10−3 = 15.48 × 10−3 𝑊 Τ℃ Cengel, Yunus A., Sanford Klein, and William Beckman. Heat transfer: a practical approach. Vol. 141. Boston: WBC McGraw-Hill, 1998.

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例題 2. 1 銅箔が貼られたプリント基板の熱伝導 2/2 35 この比率から、それぞれの熱伝導割合を求めます。 • エポキシ層を流れる熱の割合: 𝑘𝑡 𝑒𝑝𝑜𝑥𝑦 0.04 × 10−3 = ≈ 0.0026 𝟎. 𝟐𝟔% 𝑘𝑡 𝑃𝐶𝐵 15.48 × 10−3 • 銅層を流れる熱の割合: 100% − 0.26% = 𝟗𝟗. 𝟕𝟒% 熱の実に99.74%が、全体の厚さのわずか20%に過ぎない極めて薄い銅の層を流れています 2. 基板全体の有効熱伝導率𝒌𝒆𝒇𝒇 基板全体の厚さは 0.20 × 10−3 mです。 この基板全体を「単一の均一な材料」とみなしたときの 有効熱伝導率は、以下の式で求められます。 𝑘𝑡 𝑃𝐶𝐵 15.48 × 10−3 W/∘ C 𝑘𝑒𝑓𝑓 = = = 𝟕𝟕. 𝟒 W/m ⋅∘ C 𝑡𝑃𝐶𝐵 0.20 × 10−3 m 3. まとめ 本来、熱をほとんど通さないガラスエポキシ基板であっても、わずか 0.04mmの銅を積層するだ けで、基板全体の有効熱伝導率は、元の約300倍も向上します。 これが、密閉型電子機器や軍用 電子機器などの熱設計において、伝導冷却を促すために銅クラッドやメタルコアが多用される強力 な理由です Cengel, Yunus A., Sanford Klein, and William Beckman. Heat transfer: a practical approach. Vol. 141. Boston: WBC McGraw-Hill, 1998.

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3.ヒートフレームによる伝導冷却 3.1 ヒートフレームによるPCBの伝導冷却 3.2 LTspiceによる熱抵抗ネットワーク解析 電子部品 20∘ C 𝑷𝑪𝑩 20∘ C Heat frame Cold plate 12 cm Cold plate 36

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3.1 ヒートフレームによるPCBの伝導冷却 1/5 37 電子部品が実装された基板の熱を、空気に直接さらすことなく、金属製の熱拡散板(ヒート フレーム)を伝わせて効率的に外部へ逃がす設計をモデル化した、伝熱計算問題です 電子部品 20∘ C 𝑷𝑪𝑩 20∘ C Heat frame Cold plate 12 cm Cold plate 1. 前提条件と各部のパラメータ クランプ(固定部)によって両端がヒートシンク( 20∘ C )に冷やされている、対称な基板構造を考 えます ⚫ 基板全体の寸法: 幅 10cm、長さ 12cm ⚫ 総発熱量: 24W(1cm 幅のストリップ12本から、それぞれ 2W ずつ均一に熱が発生していると みなします) ⚫ 冷却条件: 左右対称のため、片側の固定端( 20∘ C)へ流れる右半分(6cm 分、発熱量 12W) のみをモデル化します 対称面(中心)から順に、ストリップを「6→5→4→3→2→1」と番号付けし、 各部の熱抵抗を計算します Cengel, Yunus A., Sanford Klein, and William Beckman. Heat transfer: a practical approach. Vol. 141. Boston: WBC McGraw-Hill, 1998.

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3.1 ヒートフレームによるPCBの伝導冷却 2/5 例題 右半分(6cm 分、発熱量 12W) のみのモデル化 60𝑚𝑚 10𝑚𝑚 10𝑚𝑚 10𝑚𝑚 10𝑚𝑚 10𝑚𝑚 10𝑚𝑚 5𝑚𝑚 5𝑚𝑚 1.2𝑚𝑚 2𝑊 2𝑊 2𝑊 2𝑊 2𝑊 38 𝑘1 = 386 𝑊 Τ 𝑚 ∙ 𝐾 𝑘2 = 0.26 𝑊 Τ 𝑚 ∙ 𝐾 2𝑊 𝑘3 = 1.8 𝑊 Τ 𝑚 ∙ 𝐾 Epoxy board Epoxy adhesive Heat frame 𝑇7 𝑅𝑒𝑝𝑜𝑥𝑦 2𝑊 4𝑊 𝑇6 𝑅𝑐𝑜𝑝𝑝𝑒𝑟 𝐼 𝑇5 𝑅𝑐𝑜𝑝𝑝𝑒𝑟 𝐼𝐼 6𝑊 𝑇4 8𝑊 𝑇3 10𝑊 𝑇2 熱抵抗ネットワーク 12𝑊 𝑇1 𝑇0 = 20℃ 部材と材料 熱伝導率 (W/m·°C) 厚さ (mm) 面積(mm) Epoxy board 0.26 0.8 10 × 100 Epoxy adhesive 1.8 0.13 10 × 100 386 0.6 10 × 100 386 10 1.2 × 100 Copper heat frame, ⊥ (normal to frame) Copper heat frame, || (along the frame) ⚫ 24 W発熱する10cm × 12cmの回路基板を、厚さ1.2mmの銅製ヒートフレーム(k1)で10cm × 14cmのサイ ズで伝導冷却します。 ⚫ エポキシ積層板(k2)の厚さは0.8 mmであり、図に示すように、厚さ0.13mmの導電性エポキシ接着剤(k3) を用いてヒートフレームに貼り付けられています。 ⚫ PCBは、端部の幅5mmの部分を両端からヒートシンクにクランプすることで、ヒートシンクに取り付けられます。 この時点でのヒートフレームの温度は20°Cです。 ⚫ PCB上では、1cm × 10cmの帯状領域あたり2Wの熱が均一に発生しています。 ⚫ 対称性を考慮してPCB基板の半分のみを対象とし、PCB上の最高温度およびヒートフレームに沿った温度分布を 求めます。

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3.1 ヒートフレームによるPCBの伝導冷却 3/5 39 2. 熱抵抗の算出 ① 基板からヒートフレームへの垂直方向の熱抵抗( 𝑅𝑣𝑒𝑟𝑡𝑖𝑐𝑎𝑙 ) 熱が発生源(PCB表面)から接着剤層を通り、ヒートフレーム(厚みの半分 6mmを代表長さ)へと垂直に逃げる際の 合算熱抵抗です。伝熱面積A はストリップ1本分(1cm × 10cm = 0.001m2 )とします 1. エポキシ基板の伝導抵抗 (𝑅epoxy ) 𝐿 0.8 × 10−3 𝑅epoxy = = = 3.077 ℃Τ𝑊 𝑘𝐴 0.26 0.01 × 0.1 2. エポキシ接着剤層の伝導抵抗 (𝑅𝑎𝑑ℎ𝑒𝑠𝑖𝑣𝑒 ) 𝐿 0.13 × 10−3 𝑅𝑎𝑑ℎ𝑒𝑠𝑖𝑣𝑒 = = = 0.072 ℃Τ𝑊 𝑘𝐴 1.8 0.01 × 0.1 3. 銅製ヒートフレームの伝導抵抗 (𝑅𝑐𝑜𝑝𝑝𝑒𝑟⊥ ) 𝐿 0.6 × 10−3 𝑅𝑐𝑜𝑝𝑝𝑒𝑟⊥ = = = 0.002 ℃Τ𝑊 𝑘𝐴 386 0.01 × 0.1 これらを直列に合算すると、垂直方向の総熱抵抗は以下の通りになります 𝑅𝑣𝑒𝑟𝑡𝑖𝑐𝑎𝑙 = 𝑅epoxy + 𝑅𝑎𝑑ℎ𝑒𝑠𝑖𝑣𝑒 + 𝑅𝑐𝑜𝑝𝑝𝑒𝑟⊥ = 3.077 + 0.072 + 0.002 = 3.151 ℃Τ𝑊 ② ヒートフレーム内の水平方向(面方向)の熱抵抗(𝑹𝒇𝒓𝒂𝒎𝒆 ) 熱がヒートフレーム内を横方向へ1cm 進むときの、セクションあたりの熱抵抗です(断面積𝐴 = 厚さ 1.2 mm × フレーム幅 10 cm = 0.00012 m2 ) 𝐿 0.01 × 10−3 𝑅𝑓𝑟𝑎𝑚𝑒 = = = 0.216 ℃Τ𝑊 𝑘𝐴 386 0.0012 × 0.1 Cengel, Yunus A., Sanford Klein, and William Beckman. Heat transfer: a practical approach. Vol. 141. Boston: WBC McGraw-Hill, 1998.

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3.1 ヒートフレームによるPCBの伝導冷却 4/5 40 3. 温度分布と最高温度の算出 ① ヒートフレーム上の温度分布 クランプ端 𝑇0 = 20∘ C を起点として、各セクションを通過する合算熱量(流れる熱流)を考慮しながら順に温度を求め ていきます ⚫ T1: 右半分すべての発熱(12W)が通過します。 𝑇1 = 𝑇0 + 𝑄1→0 ⋅ 𝑅frame = 20∘ C + 12 W × 0.216 ∘ C/W = 𝟐𝟐. 𝟓𝟗∘ C ⚫ T2:セクション2〜6の発熱(10W)が通過します。 𝑇2 = 𝑇1 + 10 W × 0.216 = 𝟐𝟒. 𝟕𝟓∘ C ⚫ T3:セクション3〜6の発熱(8W)が通過します。 𝑇3 = 𝑇2 + 8 W × 0.216 = 𝟐𝟔. 𝟒𝟖∘ C ⚫ T4:セクション4〜6の発熱(6W)が通過します。 𝑇4 = 𝑇3 + 6 W × 0.216 = 𝟐𝟕. 𝟕𝟖∘ C ⚫ T5:セクション5〜6の発熱(4W)が通過します。 𝑇5 = 𝑇4 + 4 W × 0.216 = 𝟐𝟖. 𝟔𝟒∘ C ⚫ T6(対称面・中心部):自身の発熱(4W)が通過します。 𝑇6 = 𝑇5 + 2 W × 0.216 = 𝟐𝟗. 𝟎𝟕∘ C Cengel, Yunus A., Sanford Klein, and William Beckman. Heat transfer: a practical approach. Vol. 141. Boston: WBC McGraw-Hill, 1998.

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3.1 ヒートフレームによるPCBの伝導冷却 5/5 ② PCB表面の最大温度(T7)の算出 熱的に最も厳しいのは、フレーム温度が最も高い中心部( 𝑇6 = 29.07∘ C )の真上にあるPCB表面です。ここから 垂直方向の熱抵抗 𝑅vertical を通って自身の発熱(2W)がフレームへと流れるため、最高温度 T7は以下のように なります。 𝑇7 = 𝑇6 + 𝑄strip6 ⋅ 𝑅vertical = 29.07∘ C + 2 W × 3.151 ∘ C/W = 𝟑𝟓. 𝟑𝟕∘ C 4. 設計実務への示唆 ⚫ 優れた冷却パフォーマンス: PCBの部品が冷却空気に直接触れていない「密閉型」の構造 であるにもかかわらず、最大温度が35.37∘ C (温度上昇わずか15.37∘ C )に抑えられてい ます。これは、熱伝導率の極めて高い銅製ヒートフレームが優れた熱のバイパス経路を形 成しているためです。 ⚫ ボトルネックの所在: 垂直方向の熱抵抗(3.151 ∘ C/W)のうち、約98%をエポキシ基板そ のものの厚み方向の伝導抵抗が占めています。接着剤やフレーム側の金属特性を向上させ ても効果は薄く、さらに冷却性を高めたい場合は、「基板に銅の詰め物(サーマルビア) を施す」などの手法が極めて有効であることが、この数値的な裏付けからも分かります。 垂直方向と面方向の熱抵抗を分けて多次元的にネットワーク化する手法は、複雑な基板の熱予測に 非常に役立ちます。 このような抵抗回路網のシミュレーションはLTspiceが得意な例です。 次頁ではLTspiceで解析します。 41

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3.2 LTspiceによる熱抵抗ネットワーク解析 LTspiceによる熱抵抗ネットワーク解析 電子部品 20∘ C 𝑷𝑪𝑩 20∘ C Heat frame Cold plate 12 cm 熱抵抗ネットワーク回路をLTspice でシミュレーションする Cold plate 42

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3.2 熱抵抗ネットワーク解析(LTspice) LTspiceによるPCB基板の 熱抵抗ネットワーク解析 (右半分のみのモデル化) 発熱:2W Epoxy board Epoxy adhesive Heat frame PCB基板の熱抵抗ネットワーク DC Operating Point(直流動作点解析) Epoxy board Epoxy adhesive Heat frame heatFrame.asc 43

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3.2 熱抵抗ネットワーク解析(LTspice) LTspiceによる実行結果 DC Operating Point(直流動作点解析) 44 (もちろん既出の解析結果と同じ) 𝟑𝟓. 𝟑𝟕∘ C 𝟐𝟗. 𝟎𝟕∘ C 𝟐0∘ C heatFrame.asc

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3.3 熱抵抗ネットワーク解析(断線故障) ヒートフレーム1ヶ所の熱抵抗が大きくなった(断線など)のシミュレーション 𝟐𝟑𝟒. 𝟗𝟒∘ C PCB温度:234℃ ヒートフレームの一部 (R4)断線とした 0.216 ℃Τ𝑊 100 ℃Τ𝑊 DC Operating Point(直流動作点解析) heatFrame_Error1.asc 45

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3.3 熱抵抗ネットワーク解析(不良故障) 46 ヒートフレーム: 1ヶ所の熱抵抗が大きくなった(不良)のシミュレーション (ヒートフレームの一部(R4)の熱抵抗が不良となったとした) DC Operating Point(直流動作点解析) 40. 𝟗∘ C 54. 𝟗∘ C 94. 𝟗∘ C 𝑹𝟒 = 𝟑 ℃Τ𝑾 𝟒𝟎. 𝟗∘ C 𝑹𝟒 = 𝟏𝟎 ℃Τ𝑾 𝟓𝟒. 𝟗∘ C 正常では 𝑅4 = 0.216 ℃Τ𝑊 𝟑𝟓. 𝟑𝟕∘ C 𝑹𝟒 = 𝟑𝟎 ℃Τ𝑾 𝟗𝟒. 𝟗∘ C

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3.4 熱抵抗ネットワーク解析 (まとめ) 47 ヒートフレームは、密閉筐体内の高出力PCBにおいて、熱を基板の端(外部冷却部)まで 効率的に導くための金属製背骨のような役割を果たします。 1. ヒートフレームの構造 ✓ ヒートフレームは、主に伝導冷却を目的とした厚みのある熱伝導用プレートで,プリント回路基板 (PCB)に直接取り付けられます。一般に、銅やアルミニウムなどの熱伝導率が高い金属が使用され ます。 ✓ チップで発生した熱は、まず「回路基板」および「エポキシ接着剤」を通り、ヒートフレームへと伝 わります。その後、熱はヒートフレームに沿って基板の端へと運ばれ、そこにクランプされた冷却板 などの外部ヒートシンクから除去されます。 2. 主な特性 ✓ 薄い銅クラッド(銅張積層板)よりもさらに熱抵抗が低く、大量の熱を効率的に基板端へ逃がすこと ができます。 ✓ 温度分布の形状は、 PCB上に熱負荷が均等に分散している場合、ヒートフレームおよびPCB沿いの温 度分布は放物線状になります。 ✓ ヒートフレームを厚くするほど熱抵抗が下がり、基板中央と端の温度差を小さく抑えることが可能で す。 3. 設計上の工夫 ✓ PCBのエポキシ層は熱の不良導体であるため、基板の厚み方向の抵抗を下げるために銅の充填物(銅 ピンなど)を埋め込み、チップからヒートフレームへ熱を素早く逃がす設計が取られることがありま す。

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空冷 (Air Cooling) 4. Finからの放熱 4.1基礎方程式 4.2各種モデルの計算式 4.3補正長近似 4.4例題:Finからの放熱 4.5フィンの有効度(𝜺𝒇 ) 4.6フィンの効率( 𝜼𝒇 ) 4.7配列フィンによる放熱 5.フィンの熱抵抗 5.1配列したフィンの熱抵抗解析 5.2例題:最大許容発熱量 5.3例題:ヒートシンクの選定 5.4例題:Finの冷却効果 48

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4.1 基礎方程式 1/2 49 Finからの放熱:基礎方程式 1. Finの微小部分での熱流量の釣合い 𝑞𝑐𝑑,𝑥 = 𝑞𝑐𝑑,𝑥+∆𝑥 + 𝑞𝑐𝑣 伝導 𝑞𝑐𝑣 = ℎ P∆𝑥 𝑇 − 𝑇∞ 周長 𝑃 = 2 𝑤 + 𝑡 断面積 𝐴𝑐 = wt 対流 対流 𝑞𝑐𝑣 𝑞𝑐𝑑,𝑥+∆𝑥 − 𝑞𝑐𝑑,𝑥 + ℎP 𝑇 − 𝑇∞ = 0 釣合い ∆𝑥 𝑑𝑞𝑐𝑑 + ℎP 𝑇 − 𝑇∞ = 0 𝑑𝑥 2. 熱伝導の方程式 𝑑𝑇 𝑞𝑐𝑑 = −𝑘𝐴𝑐 𝑑𝑥 𝑇𝑏 𝐴𝑐 𝑞𝑐𝑑,𝑥 ∆𝑥 → 0 放熱面積 P∆𝑥 𝑡 𝑞𝑐𝑑,𝑥+∆𝑥 𝑇0 𝑥 𝑥 ∆𝑥 𝑤 𝐿 伝導 上記2つをまとめると、次の熱流量の方程式が得られる 3. Finでの熱流量の方程式 (断面積と熱伝導率が一定とする) 𝑑 𝑑𝑇 𝑘𝐴𝑐 − ℎP 𝑇 − 𝑇∞ = 0 𝑑𝑥 𝑑𝑥 𝑑2 𝑇 ℎP − 𝑇 − 𝑇∞ = 0 𝑑𝑥 2 𝑘𝐴𝑐 Theodore L. Bergman, Adrienne S. Lavine, Frank P. Incropera, David P. DeWitt , Fundamentals of heat and mass transfer. John Wiley & Sons, 8th Edition 2018

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4.1 基礎方程式 2/2 50 Finでの熱流量の方程式を一般形とし、その解を求める 2 𝑑 𝑇 ℎ𝑝 − 𝑇 − 𝑇∞ = 0 𝑑𝑥 2 𝑘𝐴𝑐 特性値: 2 𝑑 𝜃 − 𝑚2 𝜃 = 0 2 𝑑𝑥 Finでの熱流量の方程式 𝑚2 = ℎ𝑝 𝑘𝐴𝑐 𝜃 = 𝑇 − 𝑇∞ 一般形 𝑇∞ ℎ 4. この方程式の一般解 𝐵𝐶: 𝐹𝑖𝑛𝑏𝑎𝑠𝑒 𝐵𝐶: 𝐹𝑖𝑛𝑏tip 𝜃 𝑥 = 𝐶1 𝑒 𝜃 0 = 𝑇𝑏 − 𝑇∞ = 𝜃𝑏 𝑑𝜃 ℎ𝜃 𝐿 = −𝑘 ቉ 𝑑𝑥 𝑥=𝐿 𝑚𝑥 + 𝐶2 𝑒 𝑇𝑏 −𝑚𝑥 𝜃𝑏 = 𝐶1 + 𝐶2 𝑞𝑓 ℎ 𝐶1 𝑒 𝑚𝐿 + 𝐶2 𝑒 −𝑚𝐿 = 𝑘m 𝐶2 𝑒 −𝑚𝐿 − 𝐶1 𝑒 𝑚𝐿 (Tipでの放熱量と伝導熱量は等しい) 5. 境界条件より解は 𝜃 cosh 𝑚 𝐿 − 𝑥 + ℎΤ𝑚𝑘 sinh 𝑚 𝐿 − 𝑥 = 𝜃𝑏 cosh 𝑚𝐿 + ℎΤ𝑚𝑘 sinh 𝑚𝐿 (C1,C2を消去する) 6. Fin基部からの伝熱量 𝑞𝑓 = −𝑘𝐴𝑐 𝑑𝜃 ቉ 𝑑𝑥 𝑥=0 𝑞𝑓 = ℎP𝑘𝐴𝑐 𝜃𝑏 𝑥 sinh m𝐿 + ℎΤm𝑘 cosh m𝐿 cosh m𝐿 + ℎΤm𝑘 sinh m𝐿 𝐿

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4.2 各種モデルの計算式 51 断面一様な直線フィンの場合の具体的な計算式(Table 3.4*) フィンの形状が一定(断面積 𝐴𝑐 および周長 𝑃が一定)の場合、上記の方程式を解くことで、 先端(𝑥 = 𝐿)の境界条件に応じた具体的な放熱量 𝑞𝑓 の公式が導かれます 特性値: 注* 𝑚= ℎP 𝑘𝐴𝑐 基準熱量: 𝑀= ℎ𝑃𝑘𝐴𝑐 𝜃𝑏 𝜃 = 𝑇 − 𝑇∞ sinh 𝑚𝐿 + ℎ/𝑚𝑘 cosh 𝑚𝐿 cosh 𝑚𝐿 + ℎ/𝑚𝑘 sinh 𝑚𝐿 Case A: 先端に対流熱伝達がある場合 (一般的な実用モデル) 𝑞𝑓 = 𝑀 Case B: 先端が断熱されている場合 (𝑑𝜃/𝑑𝑥|𝑥=𝐿 = 0) 𝑞𝑓 = 𝑀 tanh 𝑚𝐿 Case C: 先端の温度が指定されている場合 (𝜃 𝐿 = 𝜃𝐿 ) 𝑞𝑓 = 𝑀 Case D: 無限に長いフィンの場合 (𝐿 → ∞, 𝜃 𝐿 = 0) 𝑞𝑓 = 𝑀 = cosh 𝑚𝐿 − 𝜃𝐿 /𝜃𝑏 sinh 𝑚𝐿 ℎ𝑃𝑘𝐴𝑐 𝜃𝑏 Theodore L. Bergman, Adrienne S. Lavine, Frank P. Incropera, David P. DeWitt , Fundamentals of heat and mass transfer. John Wiley & Sons, 8th Edition 2018

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4.3 補正長近似 52 現実のフィンは「先端対流 Case A 」の状態ですが、双曲線関数を含む複雑な式を解く 必要があります。そこで、「先端断熱モデルCase Bの式を使いつつ、長さをLcに置き換 える」という手法が編み出されました。 補正長近似 補正長を用いた近似とは、計算を簡略化するために「フィンの先端からの放熱」を「フィンの長さを少 しだけ伸ばすこと」で代用する手法のことです。これは、先端を断熱と仮定して、その分フィンの物理 的な長さを少し長く設定することで、実態に近い放熱量を簡単に算出できるようにします。 ⚫ 補正長 Lcは一般的に次のように定義されます。 𝐿𝑐 = 𝐿 + 𝐴𝑐 P 先端面積: Ac , 周長: P 𝑡 ① 平らな長方形フィン (厚さ t) 𝑡 𝐿𝑐 = 𝐿 + 2 𝐿 𝐴𝑐 𝑝 𝐴𝑐 = 𝑤𝑡 P = 2w + 2t ≈ 2w 断 熱 ② 円柱状(針状)フィン (直径 D) 𝐿𝑐 = 𝐿 + 𝐷 4 𝐴𝑐 = 𝜋Τ4 𝐷 2 P = π𝐷 𝐿𝑐

53.

4.4 例題:Finからの放熱 1/4 例題 53 直径5 mmの非常に長い棒の一端を100°Cに保っている。棒の表面は、対流熱伝達係数が 100 W/m²・Kである25°Cの周囲空気中にさらされている。①棒に沿った温度分布を求め よ。②棒からの熱損失率はどれくらいか、③棒を「無限長」とみなす場合その長さはどれ くらい必要か、推定せよ。 1. 問題設定と物性値の整理 • 幾何形状:非常に長い丸棒(ピンフィン) ✓ 直径 𝐷 = 5 mm = 0.005 m • cold 𝑇𝑏 = 100℃ 𝑇∞ = 25℃ ℎ = 100 𝑊 Τ 𝑚2 ∙ 𝐾 温度条件: ✓ 基部(端部)温度 𝑇𝑏 = 100∘ C ✓ 周囲空気温度 𝑇∞ = 25∘ C • 流動条件:対流熱伝達率 ℎ = 100 W/m2 ⋅ K • 比較する材料(平均温度 62.5℃における熱伝導率 ): 𝐷 = 5𝑚𝑚 𝑘 円柱 ✓ 純銅 (Cu): 𝑘 = 398 W/m ⋅ K ✓ 2024アルミニウム合金 (2024 Al): 𝑘 = 180 W/m ⋅ K ✓ AISI 316ステンレス鋼 (316 SS): 𝑘 = 14 W/m ⋅ K Theodore L. Bergman, Adrienne S. Lavine, Frank P. Incropera, David P. DeWitt , Fundamentals of heat and mass transfer. John Wiley & Sons, 8th Edition 2018

54.

4.4 例題:Finからの放熱 例題 2/4 54 2. 各材料の温度分布と熱損失率 𝑞𝑓 ① フィン特性パラメータ m の算出 フィン表面からの対流熱伝達と内部の熱伝導の比率を表すパラメータ m は、次式で定義されます 各材料における計算結果は以下の通りです。 • 純銅: 𝑚 = 14.2 𝑚−1 • アルミニウム合金: 𝑚 = 21.2 𝑚−1 • ステンレス鋼(316 SS): 𝑚 = 75.6 𝑚−1 𝑚= ℎ𝑃 = 𝑘𝐴𝑐 4ℎ 𝑘𝐷 ② 温度分布 𝑻 𝒙 の比較 「無限に長い棒」と仮定した場合、基部からの距離x における温度分布は指数関数的に減少します 𝑇 𝑥 = 𝑇∞ + 𝑇𝑏 − 𝑇∞ 𝑒 −𝑚𝑥 = 25 + 75𝑒 −𝑚𝑥 特徴: • 熱伝導率 が極めて低いステンレス鋼(mが大 きい)は、熱が先端まで伝わりにくいため、 基部からわずか 50 mm 程度進むだけで温度 が周囲空気温度(25℃)付近まで急激に低下 します。 • これに対し、熱伝導率の高い銅やアルミニウ ム(m が小さい)は、棒の遠くまで熱が伝わ りやすく、温度低下が緩やかです。 Theodore L. Bergman, Adrienne S. Lavine, Frank P. Incropera, David P. DeWitt , Fundamentals of heat and mass transfer. John Wiley & Sons, 8th Edition 2018

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4.4 例題:Finからの放熱 例題 3/4 55 ③ 熱損失率(放熱量) 𝒒𝒇 の算出 無限長フィンの放熱量 𝑞𝑓 は、以下の公式(Case D)より求められます。 𝑞𝑓 = ℎ𝑝𝑘𝐴𝑐 𝑇𝑏 − 𝑇∞ = ℎ𝑝𝑘𝐴𝑐 𝜃𝑏 各材料における計算結果は以下の通りです。 • 純銅: 𝑞𝑓 = 100 × 𝜋 × 0.005 × 398 × • アルミニウム合金: 𝑞𝑓 = 100 × 𝜋 × 0.005 × 180 × • ステンレス鋼: 1Τ2 𝜋 × 0.0052 100 − 25 = 8.3 𝑊 4 1Τ2 𝜋 × 0.0052 100 − 25 = 5.6 𝑊 4 1Τ2 𝜋 𝑞𝑓 = 100 × 𝜋 × 0.005 × 14 × × 0.0052 100 − 25 = 1.6 𝑊 4 3. 「無限長フィン」とみなせる最小長さ𝑳∞ の推定 先端に対流がある実際の有限長さのフィンにおいて、無限長近似が妥当(誤差がわずか)であると 判断できる数学的条件は、 tanh 𝑚𝐿 ≥ 0.99 (すなわち𝑚𝐿 ≥ 2.65 )を満たすことです。 𝐿∞ ≥ 2.65 𝑚 Theodore L. Bergman, Adrienne S. Lavine, Frank P. Incropera, David P. DeWitt , Fundamentals of heat and mass transfer. John Wiley & Sons, 8th Edition 2018

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4.4 例題:Finからの放熱 例題 • 純銅: 𝐿∞ ≥ 2.65/14.2 ≈ 𝟎. 𝟏𝟗 m 190 mm • アルミニウム合金: 𝐿∞ ≥ 2.65/21.2 ≈ 𝟎. 𝟏𝟑 m 130 mm • ステンレス鋼: 𝐿∞ ≥ 2.65/75.6 ≈ 𝟎. 𝟎𝟒 m 40 mm 4/4 56 4. コメント:温度分布まで正確に近似したい場合 放熱量の予測(99%の一致)だけでなく、「温度分布𝑇 𝑥 そのもの」も無限長近似で正確 に一致させたい場合、より厳しい条件(先端温度が周囲温度とほぼ等しくなる条件 𝜃 𝐿 /𝜃𝑏 = 𝑒 −𝑚𝐿 < 0.01 → 𝑚𝐿 > 4.6)が必要となります。 この基準を適用すると、必要な 長さ𝐿∞ は純銅で約 330 mm、アルミニウムで約 230 mm、ステンレス鋼で約 70 mm と なり、温度分布グラフの挙動と一致します。 Theodore L. Bergman, Adrienne S. Lavine, Frank P. Incropera, David P. DeWitt , Fundamentals of heat and mass transfer. John Wiley & Sons, 8th Edition 2018

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4.5 フィンの有効度(𝜺𝒇 )1/2 57 フィンの有効度( 𝜀𝑓 )は、フィンを取り付けることによって、取り付けない場合と 比べて熱伝達がどれだけ促進されたかを定量的に評価するための指標です 1. フィンの有効度の定義 フィンの有効度 𝜀𝑓 は、「フィンからの実際の放熱量( 𝑞𝑓 )」と、「フィンを取り付けず、その 基部断面積( 𝐴𝑐,𝑏 )から直接対流によって放熱させた場合の放熱量」の比として定義されます 𝜺𝒇 = 𝒒𝒇 𝒒𝒃𝒂𝒔𝒆 = 実際の熱流量 フィンがない場合の熱流量 𝑇∞ ℎ 𝑇∞ 𝑇𝑏 ℎ base 𝑇𝑏 𝐴c,𝑏 = 𝑤 × 𝑡 (a) Finなし その基部断面積(𝐴𝑐,𝑏 )から 直接対流によって放熱 𝑡 𝐴𝑓 𝑞𝑓 𝐿 𝑤 (b) Finあり Finの境界条件で Case A〜 Case Dがある

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4.5 フィンの有効度(𝜺𝒇 )2/2 58 a. Finがない場合の熱流量 有効度とは 「わざわざフィ ンを付ける意味 がある?」 ニュートンの冷却法則に基づき、以下のように表されます 𝑞𝑏𝑎𝑠𝑒 = ℎ𝐴c,𝑏 𝑇𝑏 − 𝑇∞ = ℎ𝐴c,𝑏 𝜃𝑏 のこと b. 断面が一定 𝑨𝒄,𝒃 = 𝑨𝒄 で非常に長いフィンの場合 𝐿 →∞ 最も単純なモデルであるCase D (無限に長いフィン)を例にとる 𝑞𝑓 = 𝑞𝑙𝑜𝑛𝑔_𝑓𝑖𝑛 = ℎP𝑘𝐴𝑐 𝑇𝑏 − 𝑇∞ 2. フィンの有効度𝜀𝑓 𝜀𝑓 = 𝑞𝑓 𝑞𝑏𝑎𝑠𝑒 = ℎP𝑘𝐴𝑐 𝑇𝑏 − 𝑇∞ = ℎ𝐴c,𝑏 𝑇𝑏 − 𝑇∞ 𝑘P ℎ𝐴𝑐 CaseDの 場合 一般的に、εf>2 でない限り、フィンの意味がない フィンを設置したことで、むき出しの壁面と比べて何倍の熱を逃がせるようになったか」という 比(フィンの有効度 𝜺𝒇 )

59.

4.6 フィンの効率( 𝜼𝒇 )1/4 59 フィン効率( 𝜼𝒇 )は、取り付けたフィンが熱的にどれだけ理想的に機能しているかを 評価するための指標です フィンの有効度(𝜀𝑓 )がフィンを付けること自体のメリットを測るのに対し、フィン効率(𝜂𝑓 ) は設置したフィンの形状や材料の使い方がどれだけ優れているかを評価します ⚫ フィン効率の定義 𝜼𝒇 = 𝒒𝒇 実際の熱伝達 = 𝒒𝒎𝒂𝒙 理想的な熱伝達率 0 ≤ 𝜂𝑓 ≤ 1 熱はフィンの根元から先端へと伝導しながら、表面から対流によって周囲の流体へ逃げていきま す。このとき、熱伝導の抵抗があるため、根元から離れるほどフィンの温度は低下していきます。 もし、フィンの材料の熱伝導率が無限大(𝑘 → ∞)であれば、フィン全体が根元と同じ温度になり、 最大の対流放熱性能を発揮します。実際のフィンは根元より温度が下がるため、放熱性能は低下 します。「実際の放熱性能(𝑞𝑓 )が、この理想的な最高放熱性能(𝑞max )に対して何割に達して いるか」を示すのがフィン効率です。 a. 理想状態の熱伝達率:フィン全体が根元温度Tbであった場合 𝑞𝑚𝑎𝑥 = ℎ𝐴𝑓 𝑝 𝑇𝑏 − 𝑇∞ = ℎ𝐴𝑓 𝜃𝑏 ニュートンの冷却法則 𝑞𝑓 𝑞𝑓 𝜂𝑓 ≡ = 𝑞max ℎ𝐴𝑓 𝜃𝑏 ℎ:対流熱伝達率 𝐴𝑓 :フィンの全表面積

60.

4.6 フィンの効率( 𝜼𝒇 ) 2/4 60 b. 断面一様な直線フィンの効率公式 フィンの厚みや直径が一定(断面一様)で、先端が断熱されている 理想的なモデル(Case B)の場合 𝑞𝑓 𝑞𝑚𝑎𝑥 = 𝑇∞ ℎ ℎ𝑝𝑘𝐴𝑐 𝑇𝑏 − 𝑇∞ tanh m𝐿 tanh 𝑚𝐿 = ℎ𝐴𝑓 P 𝑇𝑏 − 𝑇∞ 𝑚𝐿 (𝑃: フィンの周長、𝐴𝑐 : フィンの断面積) 𝑚 = 𝑇𝑏 ℎP 𝑘𝐴𝑐 𝑡 𝐴𝑓 𝐿 𝑤 • 𝑚𝐿が小さい場合(短いフィン、または熱伝導率 𝑘が極めて高い場合): 温 度低下がほとんどないため、 𝜂𝑓 は 1(100%) に近づきます。 • 𝑚𝐿が大きい場合(長いフィン、または熱伝導率 𝑘が低い場合): 先端部が 周囲温度と同じになって放熱に寄与しなくなるため、𝜂𝑓 は 0に近づきます

61.

4.6 フィンの効率( 𝜼𝒇 ) 3/4 61 c. 実用的な近似:「補正長近似(𝑳𝒄 )」の活用 実際のフィンは先端からも対流によって熱が逃げていくため、境界条件の計算(Case A)が 複雑になります。そこで、実用設計では先端の対流放熱面積分だけ「仮想的にフィンを少し 長くした」修正フィン長さ( 𝐿𝑐 )を導入し、上記のシンプルな先端断熱の式をそのまま適用 する手法が用いられます tanh 𝑚𝐿𝑐 𝜂𝑓 ≈ 𝑚𝐿𝑐 ① 平らな長方形フィン (厚さ t) 𝐿𝑐 = 𝐿 + 𝑡 2 𝑡 𝐴𝑐 = 𝑤𝑡 𝐿 P = 2w + 2t ≈ 2w 𝐴𝑐 P ② 円柱状(針状)フィン (直径 D) 𝐷 𝐿𝑐 = 𝐿 + 4 断 熱 𝐴𝑐 = 𝜋Τ4 𝐷2 P = π𝐷 𝐿𝑐 この近似による誤差は、フィン内部の温度変化のしやすさを表すパラメータ(ℎ𝑡/𝑘 など)が十分 小さい(≤ 0.0625)実用的な設計範囲において、無視できるほど小さく、正確です

62.

4.6 フィンの効率( 𝜼𝒇 ) 4/4 d. 断面が一様でない(不均一)フィンの効率 材料の重量やコストを最小限に抑えつつ放熱量を最大化するため、先端に向け て細くなる幾何学形状(不均一断面)のフィンがよく使われます ⚫ 三角形フィン / 放物線フィン(Triangular & Parabolic Profiles): 先端部に行く ほど温度が下がるため、先端部の体積(肉厚)を減らすのは合理的です。三角形フィ ンは、長方形フィンと比べてはるかに少ない材料(体積)で同等の放熱効率を実現で きるため、軽量化設計において非常に魅力的です11。 ⚫ 環状フィン(Annular Fins): 丸いパイプの外側に取り付けられる円盤状のフィンで す5。外側に行くほど放熱面積(外周)が広がるため、数学的には変形ベッセル関数を 用いた複雑な式になりますが、設計ではグラフ(Figure 3.20)や専用の相関式から効 率(𝜂𝑓 ≈ 90 ∼ 95% など)を容易に得ることができます。 Triangular Fin Parabolic Profiles fin Annular Fin 62

63.

4.7 配列フィンによる放熱 1/3 63 配列したフィン(ヒートシンクなど)からの放熱特性を評価・解析するプロセスは、単一 のフィンの性能評価とは異なり、フィンが取り付けられている「拡張表面」と、フィンと フィンの間にある「露出したベース表面」の両方から同時に熱が放出される現象を考慮す る必要があります。以下に、フィンアレイ全体の放熱解析の基本的な考え方と、その具体 的な数式モデル、等価熱抵抗回路による表現について詳細に解説します。 1. アレイの表面積の整理 アレイ全体の表面積を以下の3つに分類します ① Af : 1枚のフィンの表面積 ② Ab : フィンが取り付けられていない、露出した ベースの面積 𝐴𝑏 = 𝐴𝑡 − 𝑁𝐴𝑓 ③ At : アレイ全体の総表面積(N 枚のフィンがあ る場合) 𝐴𝑡 = 𝑁𝐴𝑓 + 𝐴𝑏 𝑇∞ ℎ 𝑇𝑏 𝐴𝑓 𝑞𝑡 S 𝑇𝑏 𝑡 𝐴𝑓 L w

64.

4.7 配列フィンによる放熱 2/3 64 2. 総放熱量 𝒒𝒕 と総合表面効率 𝜼𝒐 フィンアレイ全体からの総放熱量𝑞𝑡 は、すべての対流熱伝達率 ℎがフィン面と ベース面で均一であると仮定すると、各流路からの放熱量の和として表されます 𝑞𝑡 = 𝑁𝜂𝑓 ℎ𝐴𝑓 𝜃𝑏 + ℎ𝐴𝑏 𝜃𝑏 𝑇∞ ℎ 𝜂𝑓 は単一フィンの効率 𝜃𝑏 = 𝑇𝑏 − 𝑇∞ 𝑇𝑏 この実際の総放熱量 𝑞𝑡 と、「アレイ全体が理想的に基部 温度 𝑇𝑏 (熱抵抗が完全にゼロ、すなわちフィン全体の温 𝐴𝑓 𝑞𝑡 S 𝑇𝑏 度が根元と等しい状態)に保たれた場合の最大可能放熱 量」との比として、総合表面効率(Overall surface efficiency, 𝜂𝑜 )が定義されます 𝜂𝑜 ≡ 𝑞𝑡 ℎ𝐴𝑡 𝜃𝑏 𝑡 𝐴𝑓 L w

65.

4.7 配列フィンによる放熱 3/3 上の 𝑞𝑡 の関係式を代入し、𝐴𝑏 = 𝐴𝑡 − 𝑁𝐴𝑓 を用いて整理すると、総合表面効率 𝜂𝑜 を 求めるための実用的な式が得られます 総合表面効率: 𝜂𝑜 = 1 − 𝑁𝐴𝑓 1 − 𝜂𝑓 𝐴𝑡 この 𝜂𝑜 を用いることで、アレイ全体の総放熱量は以下のようにシンプルに表現で きます アレイ全体の総放熱量: 𝑞𝑡 = 𝜂𝑜 ℎ𝐴𝑡 𝜃𝑏 65

66.

フィンの効率(𝜂𝑓 )と有効度(𝜀𝑓 )の比較 66 比較項目 フィン効率(𝜂𝑓 ) フィンの有効度(𝜀𝑓 ) 評価の目的 設計したフィンが熱的にどれだけ無駄な く機能しているかを評価する フィンを取り付ける価値(放熱促進のメ リット)がどれだけあるかを評価する 物理的意味 (比較の基準) 「実際の放熱量」と、「フィン全体が根 元と同じ温度(熱伝導抵抗ゼロ)だと仮 定した理想状態の最大放熱量」の比 「フィン付きの実際の放熱量」と、 「フィンを取り付けず、その根元の面積 から直接対流させた場合の放熱量の比 定義式 𝜂𝑓 = 𝑞𝑓 ℎ𝐴𝑓 𝜃𝑏 𝜀𝑓 = 𝑞𝑓 ℎ𝐴𝑐,𝑏 𝜃𝑏 値の範囲と 設計基準 0 ≤ 𝜂𝑓 ≤ 1(0 ∼ 100%)(短いフィンや 高熱伝導率の材料ほど 1に近づく) 通常は 1以上(実用上は εf ≥ 2が設置を 正当化する目安) 向上させるための 指針 ①フィンを短くする(材料を削る)②熱 伝導率𝑘 を高くする ③対流熱伝達率 ℎ を低くする ①熱伝導率 𝑘の高い材料(アルミ等)を 使う ②「薄く、密に配置された」フィ ンにする(𝑃/𝐴𝑐 を大きくする)③気体中 など、対流 ℎが低い環境で使う

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5. フィンの熱抵抗 67 伝熱解析において、フィンを熱抵抗(Thermal Resistance)としてモデル化することは、 複雑なシステムを単純な電気回路のように直感的に評価・計算できるため、非常に強力な手 法です。以下に、単一フィンの熱抵抗について解説します。 ⚫ 単一フィンの熱抵抗(𝑅𝑓 ) 𝑅𝑓 = 𝑇∞ ℎ ∆𝑇 𝑇𝑏 − 𝑇∞ 𝜃𝑏 = = 𝑞𝑓 𝑞𝑓 𝑞𝑓 𝑇𝑏 𝑞𝑓 次に、簡単な場合での例を示します ① Finがない場合の熱抵抗Rf,b 𝑞𝑓 = 𝑞𝑛𝑜_𝑓𝑖𝑛 = ℎ𝐴c,𝑏 𝑇𝑏 − 𝑇∞ = ℎ𝐴c,𝑏 𝜃𝑏 𝑇𝑏 𝑇𝑏 − 𝑇∞ 1 𝑅𝑓,𝑏 = = 𝑞𝑓 ℎ𝐴c,𝑏 ② 断面が一定で非常に長いフィンの場合の熱抵抗Rf,longf (Case D) 𝑞𝑓 = 𝑞𝑙𝑜𝑛𝑔_𝑓𝑖𝑛 = 𝑅𝑓,𝑙𝑜𝑛𝑔𝑓 = ℎP𝑘𝐴𝑐 𝑇𝑏 − 𝑇∞ 𝑇𝑏 − 𝑇∞ = 𝑞𝑓 1 ℎP𝑘𝐴𝑐 𝑞𝑓 𝑅𝑓 𝑇∞ フィンの形状によって 𝒒𝒇 は異なり、熱抵抗 𝑹𝒇 は違う

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5. フィンの熱抵抗 68 この熱抵抗は、フィンの効率や有効度を用いることで、幾何学寸法や対流条件を組み込んだ実 用的な式に書き換えることができます。 ① フィン効率(𝜼𝒇 )を用いた表現 実際の放熱量 𝑞𝑓 は、フィン全体が根元温度 𝑇𝑏 に保たれた場合の 最大放熱量 𝑞max = ℎ𝐴𝑓 𝜃𝑏 に、フィン効率𝜂𝑓 を掛けることで得ら れます 𝑅𝑓 = 𝜃𝑏 𝑞𝑓 𝑞𝑓 = 𝜂𝑓 ℎ𝐴𝑓 𝜃𝑏 𝑅𝑡,𝑓 = 1 𝜂𝑓 ℎ𝐴𝑓 • • • • • ℎ: 対流熱伝達率 [W/m2 ⋅ K] 𝐴𝑓 : フィンの全表面積 [m2 ] 𝐴𝑐,𝑏 :フィン基部の断面積[m2 ] 𝜂𝑓 : フィン効率 𝜀𝑓 :フィンの有効度 𝑅𝑡,𝑓 :フィンの熱抵抗 K/W 𝑅𝑡,𝑏 :フィンがないベース面 の対流熱抵抗 K/W ② フィンの有効度(𝜺𝒇 )を用いた表現 フィンの有効度 𝜀𝑓 は、フィン基部表面の直接対流熱抵抗𝑅𝑡,𝑏 = 1/ ℎ𝐴𝑐,𝑏 とフィンの熱抵抗 𝑅𝑡,𝑓 の比率としても解釈されます 𝜀𝑓 = 𝑅𝑡,𝑏 1 = 𝑅𝑡,𝑓 R t,𝑓 ℎ𝐴𝑐,𝑏 𝑅𝑡,𝑓 = 1 𝜀𝑓 ℎ𝐴𝑐,𝑏 𝑇∞ ℎ base 𝑇𝑏 面積:𝐴c,𝑏

69.

5.1 配列したフィンの熱抵抗解析1/5 69 1. 配列したフィンの熱抵抗解析 実際のヒートシンクのように、基板に複数のフィンが並んでいるシステムでは、熱が 「露出しているベース面」と「複数のフィン」という2つの並列な経路を同時に流れる ため、並列の熱抵抗回路としてモデル化します。 ① アレイの表面積の整理 アレイ全体の表面積を以下の3つに分類します a. 𝐴𝑓 : 1枚のフィンの表面積 b. 𝐴𝑏 : フィンが取り付けられていない、露出 したベースの面積 𝑇∞ ℎ 𝑇𝑏 𝐴𝑓 𝑞𝑡 S 𝑇𝑏 𝐴𝑏 = 𝐴𝑡 − 𝑁𝐴𝑓 c. 𝐴𝑡 : アレイ全体の総表面積(𝑁 枚のフィン がある場合) 𝐴𝑡 = 𝑁𝐴𝑓 + 𝐴𝑏 𝑡 𝐴𝑓 L w

70.

5.1 配列したフィンの熱抵抗解析2/6 70 ② 並列熱抵抗回路の構築 温度差 𝜃𝑏 に対し、熱は以下の2つの独立した経路に分かれて周囲へ放出されます a. 露出したベース面からの直接対流(経路1): フィンのない面(面積 𝐴𝑏 = 𝐴𝑡 − 𝑁𝐴𝑓 )からの放熱に対する熱抵抗は次の通りです。 𝑇∞ ℎ 1 1 𝑅𝑏𝑎𝑠𝑒 = = ℎ𝐴𝑏 ℎ 𝐴𝑡 − 𝑁𝐴𝑓 𝑇𝑏 𝐴𝑓 𝑞𝑡 S 𝑇𝑏 b. 𝑁枚のフィンを通る対流伝熱(経路2): 1本のフィンの抵 抗 𝑅𝑡,𝑓 が𝑁 本並列に並んでいるため、フィン群全体の 合成熱抵抗は次のようになります 𝑅𝑓𝑖𝑛𝑠 = 𝑅𝑡,𝑓 1 = 𝑁 𝑁𝜂𝑓 ℎ𝐴𝑓 𝑡 𝐴𝑓 L w

71.

5.1 配列したフィンの熱抵抗解析 3/5 71 接触抵抗なし ③ 一体型(接触抵抗なし)のアレイ全体の総合熱抵抗(𝑅𝑡,𝑜 ) フィンがベース壁と一体成型されている場合、境界での接触抵抗はゼロです。このとき、上記2 つの経路の合成抵抗として、アレイ全体の有効熱抵抗 𝑅𝑡,𝑜 は総合表面効率(𝜂𝑜 )を用いて極めて シンプルに表現できます。 𝑅𝑡,𝑜 = 1 𝜂𝑜 ℎ𝐴𝑡 𝜂𝑜 = 1 − 𝑁𝐴𝑓 1 − 𝜂𝑓 𝐴𝑡 ここで、総合表面効率 𝜂𝑜 は既に計算済です 𝑁𝜂𝑓 ℎ𝐴𝑓 𝑞𝑓 𝑇𝑏 𝑇𝑏 𝑞𝑏 𝒒𝒕 𝑇∞ ℎ 経路2: 並列フィン −1 𝑇∞ 𝑁𝑞𝑓 𝑇𝑏 𝑞𝑏 ℎ 𝐴𝑡 − 𝑁𝐴𝑓 ⚫ −1 経路1: ベース面 フィンが一体となって 機械加工された場合 𝑞𝑡 𝜂0 ℎ𝐴𝑡 −1 𝑇∞

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5.1 配列したフィンの熱抵抗解析 4/5 72 接触抵抗あり ④ 接合部を伴うアレイ解析(接触抵抗の考慮) フィンが一体成型ではなく、機械的に接合、接着、またはハンダ付けなどで取り付けられている場合は、 ベースとフィンの境界に熱接触抵抗(𝑅𝑡,𝑐 ′′)が発生します。この場合、フィンアレイ全体の等価回路は以 下のように変化します 𝑅 ′′ • フィン群側の経路(経路2)に対して、接触抵抗分( 𝑡,𝑐 )が直列に加わります。 • これにともない、接触抵抗を考慮したアレイ全体の総合熱抵抗 𝑅𝑡,𝑜 𝑐 は以下の式で定義されます。 𝑁𝐴𝑐,𝑏 1 𝑅𝑡,𝑜 𝑐 = 𝜂𝑜 𝑐 ℎ𝐴𝑡 𝑅𝑐′′ Τ𝑁𝐴𝑐𝑏 𝑅𝑐′′ 𝑞𝑓 𝑇𝑏 𝜂𝑜 𝑐 = 1 − 𝑇𝑏 𝑞𝑏 𝒒𝒕 𝑇∞ ℎ 𝑁𝜂𝑓 ℎ𝐴𝑓 𝑁𝐴𝑓 𝜂𝑓 1− 𝐴𝑡 𝐶1 −1 経路2: 並列フィン 𝑇∞ 𝑁𝑞𝑓 𝑞𝑏 このときの、接触抵抗による性能 低下を考慮した総合表面効率 𝜂𝑜 𝑐 は次のように修正されます ⚫ フィンを金属接合また は接着接合によって壁 に取り付けた場合は、 熱接触抵抗Rcが生じる。 𝑇𝑏 ℎ 𝐴𝑡 − 𝑁𝐴𝑓 −1 経路1: ベース面 𝑅𝑐′′ : 接触熱抵抗 𝑚2 ∙ 𝐾 Τ𝑊 𝑞𝑡 𝜂0(𝑐) ℎ𝐴𝑡 𝑇∞ −1

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5.1 配列したフィンの熱抵抗解析 5/5 ただし、補正係数 𝐶1 は以下の通りです 𝐶1 = 1 + 𝜂𝑓 ℎ𝐴𝑓 𝑅𝑡,𝑐 ′′ 𝐴𝑐,𝑏 この解析モデルから、接合部分の接触抵抗 𝑅𝑡,𝑐 ′′が増大すると 𝐶1 が大きくなり、 最終的にアレイ全体の有効熱抵抗 𝑅𝑡,𝑜 𝑐 が大幅に上昇(放熱性能が低下)するこ とが定量的に評価できます 73

74.

5.2 例題:最大許容発熱量1/2 例題 74 このパワートランジスタの最大許容発熱量の例題は、電子部品の熱抵抗と動作温度 限界に基づいて、素子が安全に散逸できる最大許容電力を算出する問題です 1. 問題の背景 電子部品の故障率は動作温度の上昇に伴って指数関数的に増大するため、信頼性を確保するには動作 温度を安全なレベル以下に維持する必要があります。ここで用いられる重要な経験則として、「接合 部(ジャンクション)の動作温度を 10°C 下げるごとに故障率は半減する」という原則(10°Cルー ル)が紹介されています 2. 与えられた条件 • • • ケースの最大許容温度 (𝑇case ): 85∘ C 周囲の空気温度 (𝑇∞ ): 25∘ C ケースから周囲空気への熱抵抗 (𝑅case−ambient):20∘ C/W 3. 計算プロセスと結果 熱抵抗ネットワークの基本式(Δ𝑇 = 𝑄 ⋅ 𝑅)を適用し、最大許容発熱量 𝑄を求めます 85∘ C − 25∘ C 𝑄= = =𝟑W 𝑅𝑐𝑎𝑠𝑒−𝑎𝑚𝑏𝑖𝑒𝑛𝑡 20∘ C/W 𝑇𝑐𝑎𝑠𝑒 − 𝑇∞ したがって、ケース温度を 85∘ C以下に保つためには、このトランジスタを 3 W を超える発熱量(電力) で動作させてはならないという結論が導かれます

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5.2 例題:最大許容発熱量2/2 例題 4. 設計上の示唆 素子単体(ヒートシンクなし・自然対流)の条件では許容できる発熱量はわずか 3 W です が、より高い電力で動作させたい場合には、熱抵抗 𝑅c𝑎𝑠𝑒−𝑎𝑚𝑏𝑖𝑒𝑛t を減らす対策が必要となり ます ⚫ 対策 • ヒートシンクの装着: 伝熱表面積を拡大することで熱抵抗を低減させる。 • ファンの利用(強制空冷): 対流熱伝達率 ℎを向上させることで熱抵抗を低 減させる 75

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5.3 例題:ヒートシンクの選定 1/2 例題 76 例題 (ヒートシンクなしでは 3 W に制限される問題)を受けて、本例題ではヒートシン クを装着して 60 W の発熱量を安全に放熱するための具体的な選定手順を示しています 1. 問題の設定(条件) • • • • トランジスタの発熱量 (𝑄): 60 W ケースの許容最高温度 (𝑇𝑐𝑎𝑠𝑒 ): 90∘ C 周囲の空気温度 (𝑇∞ ): 30∘ C 目的: 市販のヒートシンクデータ(Table 3–4)から、ケース温度を 90∘ C以下に保てる適切なモデルを選定する 2. 計算プロセス 1. 許容される最大熱抵抗 (𝑅) の算出: ケースから周囲空気までの温度差(Δ𝑇 = 𝑇𝑐𝑎𝑠𝑒 − 𝑇∞ )と発熱量 (𝑄) から、必要な熱抵抗の上限を求めます 𝑇𝑐𝑎𝑠𝑒 − 𝑇∞ 90∘ C − 30∘ C 𝑅= = = 𝟏. 𝟎∘ C/W 𝑄 60 W 2. 選定基準の決定: トランジスタのケース温度を 90∘ C以下に維持するためには、ヒート シンクの熱抵抗が 1.0∘ C/W以下 でなければなりません

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5.3 例題:ヒートシンクの選定 2/2 例題 3. ヒートシンクの選定 市販ヒートシンクのデータ(Table 3–4)*に記載されている各モデルの熱抵抗値 (自然対流と放射の複合値)と比較します *掲載済 • HS 5030: 0.9∘ C/W(垂直配置) / 1.2∘ C/W(水平配置) • HS 6071: 1.1∘ C/W(垂直配置) • HS 6105: 1.8∘ C/W(垂直配置) • HS 7030: 2.9∘ C/W(垂直配置) Table 3–4 を確認すると、要求条件である 1.0∘ C/W以下を満たせるのは、垂直配置 における HS 5030(0.9∘ C/W)のみであることがわかります 4. 実務・設計上のポイント • 大幅な放熱能力の向上: 適切なヒートシンクを選定して装着することで、素子単体(3 W) の 20倍にあたる 60 W の発熱を安全に処理できるようになります。 • 設置向き(姿勢)の重要性: HS 5030 は垂直に配置すると 0.9∘ C/Wですが、水平に配置す ると上昇気流が妨げられて熱抵抗が 1.2∘ C/Wに悪化し、要求条件を満たせなくなります • ヒートシンク選定においては、モデルだけでなく筐体内でどちらの向きに設置するかまで 考慮することが不可欠です 77

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例題 5.4 例題:Finの冷却効果 1/6 78 図のようなエンジンシリンダーがある。通常の運転条件下では、対流熱伝達係数 h のもと、 シリンダーから周囲温度T∞の空気へ qt の熱が伝達される。シリンダー温度を下げるため、 等間隔に配置された10枚の環状フィンがシリンダーと一体鋳造されている。フィンを使用 することで、シリンダーの温度をどの程度低下させることができるか。 1. 問題設定と与えられた条件の整理 この例題は、拡張表面(フィン)を用いることで実用上どれだ け冷却効果(温度低下)が得られるかを定量的に示す問題です ⚫ シリンダーの仕様 ✓ 材質:アルミニウム合金(熱伝導率𝑘 ≈ 186 W/m ⋅ K ) ✓ 高さ 𝐻 = 100 mm ✓ シリンダー外径 𝐷 = 2𝑟1 = 50 mm ⚫ 動作条件 ✓ 総放熱量 𝑞𝑡 = 2 kW = 2000 W ✓ 周囲空気温度 𝑇∞ = 300 K 27℃ ✓ 対流熱伝達率 ℎ = 75 W/m2 ⋅ K 𝑘 (2024-T6 Al alloy) 𝑞𝑡 𝑇𝑏 S 100 mm ⚫ フィンの仕様(環状フィン) ✓ 1シリンダーと一体成型 ✓ 枚数 N=10 枚(等間隔) ✓ 厚さ𝑡 = 4 mm ✓ 長さ𝐿 = 20 mm →フィン外半径 𝑟2 = 𝑟1 + 𝐿 = 45 mm t ℎ L 𝑇∞ r1 r2 Theodore L. Bergman, Adrienne S. Lavine, Frank P. Incropera, David P. DeWitt , Fundamentals of heat and mass transfer. John Wiley & Sons, 8th Edition 2018

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例題 5.4 例題:Finの冷却効果 2/6 79 2. 計算プロセスと解説 【ステップ 1】フィンがない場合の表面温度 𝑻𝒃,𝒏𝒐 𝒇𝒊𝒏 の算出 フィンを全く取り付けない場合、シリンダー外表面から空気への熱伝達は、 シリンダー側面の対流のみとなります。 1. フィンなし時の放熱表面積 𝐴𝑛𝑜 𝑓𝑖𝑛 A𝑛𝑜 𝑓𝑖𝑛 = 2𝜋𝑟1 𝐻 = 2𝜋 × 0.025 × 0.100 ≈ 0.0157 𝑚2 2. ニュートンの冷却法則による表面温度 𝑞𝑡 = ℎ𝐴𝑛𝑜 𝑓𝑖𝑛 𝑇𝑏,𝑛𝑜 𝑓𝑖𝑛 − 𝑇∞ 𝑇𝑏,𝑛𝑜 𝑓𝑖𝑛 = 𝑇∞ + 𝑞𝑡 2000 = 27℃ + = 1725℃ ℎ 2𝜋𝑟1 𝐻 75 × 2𝜋 × 0.025 × 0.100 コメント: アルミの融点(約660∘ C)を遥かに超えており、フィンなしでは エンジンが一瞬で融解してしまうことを意味します。 Theodore L. Bergman, Adrienne S. Lavine, Frank P. Incropera, David P. DeWitt , Fundamentals of heat and mass transfer. John Wiley & Sons, 8th Edition 2018

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例題 5.4 例題:Finの冷却効果 3/6 80 【ステップ 2】フィンを取り付けた場合の幾何学的寸法(各表面積)の算出 フィンを取り付けた場合の、伝熱面積を整理します。 1. 個々の環状フィンの表面積 𝐴𝑓 : フィンの先端(厚み部分)からの対流放熱を考慮するため、 修正外半径 𝑟2𝑐 = 𝑟2 + 𝑡/2を使用します 𝑟2𝑐 = 0.045 𝑚 + 0.002 𝑚 = 0.047 𝑚 フィンは表裏の2面があるため、式は以下のようになります。 2 𝐴𝑓 = 2𝜋 𝑟2𝑐 − 𝑟12 = 2𝜋 × 0.0472 − 0.0252 ≈ 0.00995 𝑚2 全フィン(10枚)の総面積は: 𝑁𝐴𝑓 = 10 × 0.00995 𝑚2 ≈ 0.0995 𝑚2 2. 露出したシリンダーベース面積 𝐴𝑏 : フィンがシリンダー表面を覆う厚みの合計は 𝑁𝑡 = 10 × 0.004 m = 0.04 𝑚 よって、露出するベース部分の高さは 𝐻 − 𝑁𝑡 = 0.06 𝑚 となります。 𝐴𝑏 = 𝜋𝐷 𝐻 − 𝑁𝑡 = 𝜋 × 0.05 𝑚 × 0.06 𝑚 ≈ 0.0094 𝑚2 3. 全体の総表面積 𝐴t : 𝐴𝑡 = 𝑁𝐴𝑓 + 𝐴𝑏 = 0.0995 𝑚2 + 0.0094 𝑚2 ≈ 𝟎. 𝟏𝟎𝟗 𝑚𝟐 Theodore L. Bergman, Adrienne S. Lavine, Frank P. Incropera, David P. DeWitt , Fundamentals of heat and mass transfer. John Wiley & Sons, 8th Edition 2018

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例題 5.4 例題:Finの冷却効果 4/6 81 【ステップ 3】フィン効率𝜼𝒇 と総合表面効率 𝜼𝒐 の決定 1. フィン効率 𝜼𝒇 の推定: 環状フィンの効率グラフ(Figure 3.20)を使用するため、 以下のパラメータを計算します。 𝐿𝑐 = 𝐿 + 𝑡/2 = 0.022 m 𝐴𝑝 = 𝐿𝑐 𝑡 = 0.022 m × 0.004 m = 8.8 × 10−5 m2 ℎ 𝑘𝐴𝑝 1/2 横軸値: 3/2 𝐿𝑐 半径比: 𝑟2𝑐 /𝑟1 = 47/25 ≈ 1.88 = 0.022 1.5 75 × 186 × 8.8 × 10−5 0.5 ≈ 0.22 これらを Figure 3.20 にあてはめると、フィン効率 𝜂𝑓 ≈ 0.96(96%) と読み取れます。 次頁 2. 総合表面効率 𝜂𝑜 の計算: フィンアレイ全体の効率を求めます 𝜂𝑜 = 1 − 𝑁𝐴𝑓 0.0995 1 − 𝜂𝑓 = 1 − 1 − 0.96 ≈ 0.963 96.3% 𝐴𝑡 0.109 Theodore L. Bergman, Adrienne S. Lavine, Frank P. Incropera, David P. DeWitt , Fundamentals of heat and mass transfer. John Wiley & Sons, 8th Edition 2018

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例題 換算表:矩形断面を有する環状フィンの熱効率 82 𝜂𝑓 = 0.96 Figure 3.20 Efficiency of annular fins of rectangular profile. Theodore L. Bergman, Adrienne S. Lavine, Frank P. Incropera, David P. DeWitt , Fundamentals of heat and mass transfer. John Wiley & Sons, 8th Edition 2018

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例題 5.4 例題:Finの冷却効果 5/6 83 【ステップ 4】フィンがある場合の表面温度 𝑻𝒃,𝒇𝒊𝒏 の算出 アレイ全体の伝熱方程式から、フィンを取り付けたときの実際のシリンダー 表面温度 𝑇𝑏,𝑓𝑖𝑛 を計算します。 𝑞𝑡 = ℎ𝐴𝑓 1 − 𝑁𝐴𝑓 1 − 𝜂𝑓 𝐴𝑡 𝑇𝑏,fin − 𝑇∞ 𝑇𝑏,fin について求めると 𝑇𝑏,fin = 𝑇∞ + 𝑞𝑡 𝑁𝐴𝑓 ℎ𝐴t 1 − 1 − 𝜂𝑓 𝐴𝑡 この式にこれまで求めた値を代入して計算する 𝑇𝑏,𝑓𝑖𝑛 = 27℃ + 2000 10 × 0.00995 75 × 0.109 1 − 1 − 0.96 0.109 = 282℃ Theodore L. Bergman, Adrienne S. Lavine, Frank P. Incropera, David P. DeWitt , Fundamentals of heat and mass transfer. John Wiley & Sons, 8th Edition 2018

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5.4 例題:Finの冷却効果 例題 6/6 84 3. 結論 フィンを追加したことによるシリンダー温度の低下量 Δ𝑇𝑏 は: Δ𝑇𝑏 = 𝑇𝑏,𝑛𝑜 𝑓𝑖𝑛 − 𝑇𝑏,𝑓𝑖𝑛 = 1725℃ − 282℃ = 𝟏𝟒𝟒𝟑∘ C フィンの設置により、シリンダーの動作温度を融点(約660°C)を遥かに下回る安全 な作動温度(約282°C)にまで劇的に低下させることができます。フィンがいかに強 力な冷却デバイスであるかを理解するのに最適な例題です。 r1 𝑘 𝑞𝑡 (2024-T6 Al alloy) 𝑞𝑡 𝑇𝑏 S 100 mm ℎ 𝑇∞ t ℎ 𝐴 = 2𝜋𝑟1 𝐻 L 𝟏𝟕𝟐𝟓℃ 𝑇∞ r1 𝟐𝟖𝟐℃ r2 Theodore L. Bergman, Adrienne S. Lavine, Frank P. Incropera, David P. DeWitt , Fundamentals of heat and mass transfer. John Wiley & Sons, 8th Edition 2018

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つづく 85 ⚫ 今回は熱解析です。コンピュータ、電子機器、モータなど各種メカトロ機器は熱の問題を 抱えています。機器の破壊は熱によるものがほとんどでしょう。特に近年は、小型化、高 出力化、高密度実装が進んでおり、熱設計がその機器の性能を決めると言っても過言では ないと思います。 ⚫ 昔、禁じ手ですがモータドライバに手を加えて、大電流でロボットハンドを高速動作させ ていました。限界は手で触れての温度管理、時間制限動作ですね。電流制限を解除した モータは本当に凄い高性能です。これは熱が性能上限を決めている一例です。 ⚫ part2ではメカトロニクス関係者にとって少し身近な電子機器の冷却に焦点を当ててみまし た。内容としてはそれほど示唆に富むものではありませんがご容赦ください。 ⚫ さて、今回はpart1から時間が大分経過してしましました。これは家内の健康がすぐれず、 いろいろなことで心身ともに余裕がなかったためです。今回の内容もほぼpart1の時には出 来ていたものです。期間が開きすぎると問題なため、区切りをつけました。 ⚫ 機械回路について、これから記述したいことは多くあるのですが、果たしてすべてできる かな、、、、。 ⚫ アナロジーは形式的なもので、物理的意味はない、という意見もあります。どうなので しょうか、私も知りたいところです。

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参考文献 86 中田孝:工学解析(技術者のための数学手法),オーム社,1972、総頁572.

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参考文献 教科書的に大変参考にさせてもらいました ⚫ Theodore L. Bergman, Adrienne S. Lavine, Frank P. Incropera, David P. DeWitt , Fundamentals of heat and mass transfer. John Wiley & Sons, 8th Edition 2018. ⚫ Cengel, Yunus A., Sanford Klein, and William Beckman. Heat transfer: a practical approach. Vol. 141. Boston: WBC McGraw-Hill, 1998. 今回利用したpythonおよびLTspice schematicファイル(.asc) は下記に置きました https://github.com/m4881shimojo/heat .ascファイルが正しくDLできない問題 GithubをZIPファイルとしてdownloadするのをお勧めします。 GitHubリポジトリ全体をダウンロードする場合は、 緑の 「Code」→「Download ZIP」 を選び、 展開すれば正しい形式の.ascファイルが含まれています。 87

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補足:中田孝氏について 中田 孝(1908- 2000):日本の機械工学者。東京工業大学名誉教授。 元日本機械学会会長。元計測自動制御学会会長。元日本学士院会員。日本 学士院賞受賞。 https://ja.wikipedia.org/wiki/中田孝 中田孝先生は、大学院時代に私が所属した研究室の前教授でした。著書「転位歯車」は 修論では大変お世話になりました。しかし、いろいろな逸話などは聞くことはありまし たが、中田先生にはお会いしたことは残念ながらありませんでした。先日、同期で研究 室を引き継いだ北條さん(東工大名誉教授)に会った時、その話をしたところ、中田先 生の講義ビデオを送って頂き、初めてその肉声に触れることができました。感謝します。 そのビデオを見ながら、中田先生は、歯車の研究で日本学士院賞を45歳で受賞したのを はじめ、自動制御、NC工作機などの分野も手掛けた非常にエンジニアリングセンスの高 い方であり、また数学や電気電子工学に対する造詣も大変深い方だと認識を新たにしま した。またビデオの中で“歯型理論にはあまり手を付けたくなかったが電気回路理論の 応用に興味を持っていたので研究を進めた”とのあたりは、非常に親近感を感じました。 中田孝先生の紹介記事です【日本の工作機械を築いた人々】 大河出版「応用機械工学」1988年4~5月号掲載、 https://www.sme-japan.org/library5.pdf 中田先生のNC工作機械を開発したのときの開発談が語られています。大変面白い内容ですのでお勧めです。 88

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補足(私の卒論・就職・修論) 1/2 89 【卒研】卒業研究では、電通大の梶谷研究室で歯車加工用ホブ盤の制御回路を作成しました。開発する制御 回路は、ホブ盤主軸の回転角度を計測して電気油圧パルスモータを制御するものです。このモータは、歯車 切削工具を駆動するもので、電気パルスモータの出力をプランジャー形油圧モータでトルク増幅する仕組み です。初めて実物のホブ盤を見たときの印象は「巨大な鉄の塊」で、制御ミスによってこのパワフルな油圧 モータを暴走させてしまったらどうなるかと、恐れを抱いたのを覚えています。 (なお、このホブ盤は東 工大石川研究室にありました) 試作した制御回路は、単純な論理素子(TTL)を組み合わせたものです。当時は論理素子の黎明期で、詳し い解説書もほとんどない時代でした。初歩の初歩から学び始め、テキサス・インスツルメンツ( TI )社の 分厚いデータブックで論理素子の細かい仕様をチェックしながら、連日連夜、回路を組んではオシロスコー プで動作を確認して設計を進めていました。なお、スペースが無いため作業は先生の居室に実験机を置いて、 一人黙々と行っていました。今振り返っても本当に充実した楽しい時間でした。ご指導いただいた梶谷誠先 生には心から感謝しております。 しかし、いざ試作機で歯車切削実験に臨むと、結果は散々でした。起動時の主軸回転速度変化に工具軸が追 従できず、パルスモータが脱調を起こして失敗。「卒研レベルで解決できるのだろうか」と途方に暮れ、か なり落ち込んだ記憶があります。さらに電気ノイズ問題も厄介で「大学実験室の電気アースは安易に信用し てはならない」という教訓を身をもって学びました。 こうしたトラブルに対して必死に改良を重ね、ついにホブ盤が正常に動いた瞬間、そして削り出された美し い歯車を目にしたときの感激は、今なお鮮明に記憶に残っています。 一方で、試作歯車には「歯すじ誤差」という技術的課題が残りました。これは切削負荷の増加によって工具 軸に回転遅れが生じることが原因であり、すなわち電気油圧パルスモータの長所である「開ループ制御」の 本質的な限界を示していました。後年、ファナックが開ループから閉ループ制御へと舵を切った際も、当時 の実体験から「当然の決定だ」と納得したものです。(追記、後に中田孝先生が電気油圧パルスモータの開 発に深く関わっておられたことを知り、奇妙な技術的縁を感じました)

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補足(私の卒論・就職・修論)2/2 90 【就職】卒業後は富士通に就職しました。理由は富士通の子会社であるファナック社でのロボット開発に関 心があったためです。ファナックは1972年に富士通のNC部門が分離独立し、富士通ファナックとして発足 しましたが、当時入社には富士通に就職する必要がありました。(←私の記憶では。ちなみに私は1972年 度学部卒業です) 幸い入社時の実習先は希望通りファナックとなり、昼休みなどにパルスモータの試験現場を見学できたこと などは貴重な経験でした。しかし、その後の本配属先は富士通本社の部署となったため、すぐに退職して東 工大院石川研(中田孝研の後継研究室)へ進学することにしました。この際も梶谷先生にはご迷惑をお掛けし たにも関わらず、親身にお世話をしていただき、心から感謝しております。 退職理由として「本社配属となり、子会社への配属希望が通らなかった」は常識から外れたところもあり、 また当時の「石の上にも三年」という価値観が強い時代でしたので、周囲からはいろいろ言われました。人 生に「 if 」はつきものですが、ファナックに入っていたら、全く違う人生を送ったようにも思います。 【修論】修論では習得した論理回路の設計技術を用いて、自動歯車精度測定機の開発に係り、歯形計算回路 と測定機の制御回路の開発を行いました。また修士2年の頃、当時の先進機器であるミニコン(HP-21MX) が納入されたので、データ処理(Fourier解析など)に利用することにしました。 それからは、ミニコンと歯車測定機とのinterface回路設計から始めて、各種ソフトウェア作りと正月返上 で没頭する日々でした。何より大変だったのは、そのミニコンが紙テープベースの開発環境だったことです。 コンパイラやライブラリ、リンカも、毎回ソフトウェアを紙テープで読み込ませる必要があり、コンパイル 結果も紙テープ経由でテレタイプ(110 baud rate)に出力するという、現在では考えられないほど手間のか かる気の遠くなるような作業環境でした。(※DOS: Disk Operating Systemは凄い!) 実は、修論のためには無理にミニコンを利用する必要はなかったのですが、好奇心からお願いして無謀にも 利用したのが真実です。これらの成果は機械学会誌に論文として掲載できました。そして修了後は、合格し ていた国家公務員試験を使って国立研究機関(現在の産総研)へ就職いたしました。 大学時代に、昼夜を忘れて一心不乱に打ち込んだ、論理回路設計や計算機工学、そしてそれらを試作機へ 実装した経験は私のかけがえのない財産になったように思います。