メロディの覚えやすさに関する分析

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October 11, 24

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日本大学 文理学部 情報科学科 北原研究室。 「Technology Makes Music More Fun」を合言葉に、音楽をはじめとするエンターテインメントの高度化に資する技術の研究開発を行っています。

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各ページのテキスト
1.

メロディの覚えやすさに関する分析 北原研究室 4年 増田航

2.

背景 • キャッチーな音楽とは何だろうか。 • catchy :a catchy tune or phrase is easy to remember • 覚えやすさや思い出しやすさに関する言葉であるが、どんなメロディが覚えやすい/ 思い出しやすいかは、明らかではない。

3.

目的 • メロディの「覚えやすさ」の定量化を目指し、メロディの特徴と「覚えやすさ」 の関係を明らかにすること。 • 実現できれば、近年急速に研究が進みつつある自動作曲の評価基準の1つとして 活用できると期待できる。

4.

関連研究 • メロディのキャッチーさを分析する試み(Grevler:2019) • メロディを記憶しやすくする特徴をメロディックフックと呼びボーカルメロディーのパ ターンに対して,それらがなぜキャッチーなのかを認知原理に基づいて説明 • メロディの認知を扱った研究(上田:2007) • メロディの輪郭の類型を 5 種類設定し,印象語評価および印象語と記憶の関係を検討 • メロディの学習・再認を扱ったもの(尾花:2004) • 音楽経験年数の高低が,メロディの学習の効果の持続性にどう影響するかを検討

5.

仮説 • メロディが覚えやすくあるためには、予想しやすい定型のパターン(親近性)と、 印象深さを生む定形外の要素(新奇性)のバランスが重要。 親近性 新奇性 裏拍 跳躍進行 ノンダイアトニック • 新奇性が適度に含まれるメロディと、新奇性をもたないメロディでは、前者の方 が覚えやすいメロディであると仮定。

6.

実験 - 概要 • 実験は記憶課題として実施する。 第一段階で聴いた曲 (6曲) 楽曲の聴取 (12曲) 計算問題(5分) 第一段階で聴いてない曲 (6曲) 第一段階 好意度評定 (メロディの記憶段階) インターバル 聴取と関係のない作業 第二段階 第一段階で聴いた曲か回答 (メロディの再認段階)

7.

実験 - 刺激 • メロディは、RWC研究用音楽データベース(ポピュラー音楽)より、サビ8小節 程度を切り抜いた24曲である。 • 24曲を8曲ずつ「裏拍」「跳躍進行」「ノンダイアトニック」の3つのグループに 分け、次の方法でメロディを加工した。

8.

実験 - 刺激「裏拍」 • 裏拍から始まる音を表拍から始まるようにずらす。 • 音符の数は変更しない。 加工前 加工後

9.

実験 – 刺激「跳躍進行」 • 4度以上の進行が現れないように、音階を維持しながら3度以下の進行のみになる ように音高を変更する。 加工前 加工後

10.

実験 – 刺激「ノンダイアトニック」 • ノンダイアトニックノートを近傍のダイアトニックノートに変更する。 • この際、前後の進行が4度以上なら4度以上のままに、3度以下なら3度以下のまま になるようにした。 加工前 加工後

11.

実験 - 刺激 • 実験参加者が各段階で聴取するメロディ • 「裏拍」:加工前2曲、加工後2曲 • 「跳躍進行」:加工前2曲、加工後2曲 • 「ノンダイアトニック」:加工前2曲、加工後2曲 • メロディの加工前と加工後を同一実験参加者が聴かない。 • メロディの聴取パターンを8群に分ける。 • 実験参加者にはランダムで1群が振り分けられる。

12.

実験 - 実験参加者 • 実験参加者は、クラウドソーシングサービス「ランサーズ」を用いて集められた 計162名であった。参加者募集にあたって年齢、性別、音楽的能力・経験は問わ なかった。 • 前述のメロディの群の割り当ては参加者ごとに独立に行うため、群ごとの参加者 にはばらつきがある(最大31名,最小9名)。

13.

実験結果 • 特徴の加工前と加工後の正答率に対して,有意水準 α = 0.05, 0.1 にて比率の差の 検定を行った.

14.

考察 - 「裏拍」グループ • 有意差がみられたメロディD、Fは、「符点八分音符+符点八分音 符+八分音符」というリズムが多用されており、これがすべて 「四分音符+八分音符+八分音符」に変更された。 • 加工前のメロディの方が正答率が有意に高かったことから,この リズムパターンが覚えやすさに寄与したものと考えられる。 • このリズムパターンは三連符に似ており,どちらも頻繁に用いら れる(例:メロディA,C,H).これらのメロディは正答率が高 かった。

15.

考察 - 「跳躍進行」グループ • メロディeは,加工前の正答率が最も高く、加工 前後で有意傾向が見られた.5度の上方向の跳躍 が4回あったことから、跳躍進行が覚えやすさに 寄与するとの我々の仮説を支持する結果となった。 • 音符の変更数(=跳躍進行の個数)と加工前正答 率に0.61の相関があった。これも我々の仮説を支 持する結果と言える。

16.

考察 - 「ノンダイアトニック」グループ • 有意差がみられたメロディ3は、ブルーノート (ルートの短3度上)が長音階の第三音に変更さ れた。 • ブルーノートはメロディのアクセントとしてよ く使われるため、合理性のある結果と考えられ る。

17.

まとめ・今後の展望 • 「裏拍」:「符点八分音符+符点八分音符+八分音符」というリズム • 「跳躍進行」: 跳躍進行の回数、5度の上方向の跳躍 • 「ノンダイアトニック」:ブルーノート • 以上の特徴を持つメロディは、「覚えやすさ」に寄与している可能性が高いという予 想ができる。 • 今後は、更なる調査を行い、メロディの「覚えやすさ」の定量化を目指す。

18.

ご清聴ありがとうございました。