中国社会信用システム研究で知識グラフを試作した実践報告

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April 28, 26

スライド概要

第9回ナレッジグラフ勉強会(2026/04/26)
https://kg-wakate.connpass.com/event/390156/

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ナレッジグラフ若手の会は、ナレッジグラフ関連の研究者の交流・情報交換の場です。 論文読み会やLT会、講演会などのイベントやオンラインでの知見の共有を行い、様々なドメインの研究者による「ナレッジグラフコミュニティ」の活性化を図っています。 年齢、組織、職種、在学の有無に関係なく、ナレッジグラフ関連分野に興味を持ち、若手の心を持った方のご参加を歓迎いたします。

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各ページのテキスト
1.

自己紹介 濱田圭吾 日本大学商学部5年生 高久保ゼミナール 日中比較経営学研究 R5日中関係学会 第12回宮本賞 特別賞 「胎動する日中協業の新しい形〜国を超えるオープンソースソフトウェア〜」 R6日中関係学会 第13回宮本賞 特別賞 「デジタル儒商インキュベーション施設に学ぶスタートアップエコシステム形成への示唆-重慶 漫調e 空間の創業支援を参考に-」 R7年度 日本大学商学部優秀卒業論文賞 「中国社会信用システムの制度アーキテクチャ分析―4軸による日中比較と日本の信用制度設計―」

2.

発見ではなく、整理だった scientific papers Itani的LBDを社会科学に持ち込んで何が変質したか 中国社会信用システム研究で知識グラフを試作した実践報告 social science KG 東大ナレッジグラフ勉強会 濱田圭吾 01

3.

trigger きっかけはItani論文だった 自然科学の「文献から候補を出す流れ」を、SCSレビューに持ち込めないか Itani et al. Twitterで “Large Language Models for Superconductor Discovery” を見かけた 文献 → DB → 候補探索 文献 → 構造化DB → 候補探索という研究支援の流れが刺さった 1月末提出の卒論に対して、1月に試し始めた SCS文献レビューで も 試せるのでは? 02

4.

why SCS / why KG なぜSCSで、なぜKGだったか 単一の物語に閉じない対象だった 行政記録 企業信用 中国社会信用システムは「国民スコア」だけでは説明できない 行政記録、企業信用、司法制裁、民間サービス、政策言説が重なる SCS 西側メディア、中国政府、実装現場で見え方が変わる 司法制裁 民間サービス 政策言説 一つの結論に畳む前に、多層性を保持できる表現がほしかった KGは、複数の見方を同時に置くための 器 03

5.

translation 何を移植したか 主線はItani論文、福田論文はKG設計の補助 Itani et al. 文献群を構造化DBへ変換 抽出結果を後段タスクへ接続 本研究での対応 SCS関連文献91件 SCS概念DB LLMを研究パイプラインに組み込む 国・制度軸・出典タグ 論点整理と比較軸確認 福田論文 説明文・同義語・上位下位関係の設計補助 04

6.

まず、こういうKGを作った 91文献から作ったSCS概念ネットワーク SCS関連文献をもとに概念 を抽出 国・制度領域・4軸タグ・ 出典を付与 概念間の参照、上位下位、 定義参照を接続 可視化して論点空間を眺め られるようにした これを作りました。ここから、どう作っ たか、何が効いたかを話します。 05

7.

pipeline 91文献からKGへ 文献レビューを、探索可能な概念ネットワークに変換する 1 2 収集 3 概念抽出 注意 4 DB化 5 関係補正 6 KG構築 可視化 関係抽出・手動補正・解釈には人間の読解が残る。ここは「完全 自動化」ではない。 06

8.

schema 概念DBの設計 KGの前に、概念を研究用スキーマへ落とす concept: SCS-0001 622 5 概念数 国タグ label 社会信用システム type data_system country CN definition 行政・司法・商業領域をまたぐ信用制度群 4 6 sources 文献ID / ページ / メモ 分析軸 主なタイプ four_axis governance / data_flow / incentive 単語リストではなく、あとから比較研究に使えるメタデー タ付きノードにした。 07

9.

result KG構築の結果 完璧ではないが、外部記憶として使える密度になった 622 846 102 16.4% nodes edges isolated isolation 孤立ノードの解釈 未接続の論点や、文献上の扱いが薄い領域を示す手が かりにもなりうる。 08

10.

epistemic layers 社会科学KGとして効いたところ 「何が事実か」だけでなく、「誰がどう見ているか」を置ける 西側メディア 中国政府言説 実装現場 AI監視・国民スコア・自動制裁 データ駆動型ガバナンス・信 用社会 低技術・人手依存・地域差 KGが自動発見したのではなく、どの文献がどの見 方を支えるかを整理する足場になった。 09

11.

transformation 自然科学のパイプラインは、社会科学で別物になった 発見ではなく、整理に変質した Itani論文 SCS研究 対象が比較的定義しやすい 制度概念の意味が文脈で変わる 何を予測するかが明確 何を発見と呼ぶか自体が難しい 候補発見というゴールが立てやすい 論点・出典・見方を整理する機能は強く効 いた 抽出 → 予測 → 発見 抽出 → 整理 → 見直し 定量化しにくい領域こそ、KGの整理機能が効く可能性がある。 10

12.

methodological finding うまくいかなかったことから分かったこと 橋渡し型の仮説生成は、そのままでは効きにくかった B 中間概念 A C 概念A 概念C 同じ概念でも、立場によって意味が変わる 例: 「監視」は、統治効率、権利侵害、制度運用のどれとして見るかで意味が変わる。 ノードの意味の揺れをスキーマに入れる必要がある。 11

13.

next 次の一歩: 4軸をノード属性に落とす KGを、概念の地図から制度アーキテクチャの表現へ近づける ノードに持たせたい比較軸 ガバナンス 追加するノード 誰が定義し、監督・是正できるか データフロー 何を集め、どこまで共有するか インセンティブ 誰の行動を、どの強さで変えるか 法令・政策 官民関係 法令 政策文書 制度運用 アクター 制度ノード アクター 企業行動 政府・地方・民間がどう分担するか 制度変更が、どの制度・主体・企業行動に波及するかを追 う 今までの知識グラフは概念をつなぐ"地図"だったけど、これを"制度の仕組みを表現する設計図"にレベルアップさせたい。 そのために、ノードに4つの属性を持たせ、新しい種類のノードも追加する 12

14.

closing まとめと、教えていただきたいこと とりあえず作ってみたら、社会科学にも使えそうだった Itani論文のLLM科学発見パイプラインを、SCS文献レビューに持ち込んだ 91文献から、622ノード・846エッジの研究用KGを試作した Discussion 多義性をスキーマでどう扱うべきか 自動発見よりも、概念整理、根拠確認、比較軸の管理に効いた 複数視点タグか、視点別ノード化か 次は、複数の見方、法令ノード、制度変数をどう設計するかを考えたい 正解ラベルを作りにくい領域で、関 連候補をどう評価するか ここからどう設計するとよいか、詳しい方に教えていただきたいです。 13