事業のAI Transformationには無限の伸びしろがある

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September 12, 25

スライド概要

第33回 AWS SaaS CTO Community - AIを活用した開発以外での生産性向上での発表資料です
https://aws.amazon.com/startups/events/saas-cto-community-20250912

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各ページのテキスト
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事業のAI Transformationには無限の伸びしろがある 〜NewsPicksにおける開発以外でのAI活用〜 株式会社ユーザベース 執行役員 NewsPicks CTO 安藤裕紀 2025.9.12 第33回 AWS SaaS CTO Community - AIを活用した開発以外での生産性向上

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00 自己紹介 安藤裕紀 / Yuki Ando 株式会社ユーザベース 執行役員 NewsPicks CTO 2011年新卒で野村総合研究所に入社。10年以上エンジニア/アーキテクトと してアプリケーション開発/インフラ構築/クラウド活用コンサルティングな ど大企業の技術支援を行った後、2021年10月に株式会社ユーザベースに入 社。以来プロダクト開発組織のSREチームでインフラや開発基盤を担当。 シニアエンジニア、チームリーダー、シニアEMを経て、2025年1月から執 行役員NewsPicks CTOに就任。 休日は8歳娘・3歳息子と遊んで疲弊する、ちょっと疲れたお父さん(CTO) ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved.

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00 本日のアジェンダ 1. NewsPicksについて 2. NewsPicksにおけるAI活用の考え方 3. 具体的な取り組みの一覧と事例 4. まとめ ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved.

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01 NewsPicksについて

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01 ソーシャル経済メディア NewsPicksについて ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved.

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01 運営会社について ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved.

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01 NewsPicksのプロダクト開発チームとエンジニア組織の概要 NewsPicks事業 のエンジニア組織 Uzabaseグループ(約1,200名※業務委託を含む) Speeda事業 (約600名) NewsPicks事業(約400名) NewsPicks事業 プロダクトチーム (約80名) プロダクト開発エンジニア (10チーム約60名) 個人課金事業 開発チーム 広告事業 開発チーム 法人事業 開発チーム プロダクト マネージャー デザイナー カスタマー サポート ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved. 横断技術チーム Platformチーム SREチーム モバイルチーム 機械学習チーム Corporate他 (約200名)

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01 プロダクト開発エンジニアは、ユーザーにはプロダクトを通じて、事業部に対しては 社内システムの提供を通じて直接的・間接的に事業に価値提供している ユーザー 特集記事 NewsPicks 各事業部 (300名以上) プロダクトチーム モデレーション UI/UX・ 機能性etc 番組 … 編集部 コミュニティ チーム スマホ・Web アプリ 社内システム プロダクト開発エンジニア ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved. ニュース 動画制作 編成チーム アプリやWebサービスだけではなく、 事業全体のエンジニアリングをする

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02 NewsPicksにおけるAI活用の考え方

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01 ユーザー・事業部・プロダクトチームの体験はUX/EX/DXと整理することができる AIを活用して事業価値を向上する取り組みもこれら3つの体験改善に分類できる UX: User eXperience(ユーザー体験) ユーザー 特集記事 NewsPicks 各事業部 (300名以上) プロダクトチーム モデレーション UI/UX・ 機能性etc 番組 … EX: Employee eXperience(従業員体験) 編集部 コミュニティ チーム スマホ・Web アプリ 動画制作 社内システム DX: Developer eXperience(開発者体験) プロダクト開発エンジニア ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved. ニュース 編成チーム

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02 NewsPicksにおけるAI活用の3つの分類 1. ユーザー価値提供(UXの改善) AIを活用してユーザーに価値を提供 レコメンド、パーソナライズ、サマリー、ニュースの論点提供...etc 2. 事業部の生産性向上(EXの改善) AIを活用して事業部の生産性を向上 営業リサーチ効率化、商談のヒアリング精度向上、提案資料作成自動化、ユーザー分析...etc 3. プロダクト開発の生産性向上(DXの改善) AIを活用してプロダクト開発の生産性を向上 コード生成、テスト自動化、要件定義支援、デザイン作成支援...etc ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved.

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02 ユーザベースのバリューとして「ユーザーの理想から始める(Thrill the user)」という 価値観・行動指針がある。これに照らせばAIの活用もエンジニアだけにはとどまらない ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved.

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02 CTOとして「どうすればユーザーに価値を提供できるか」の手段としてAIを活用するよう NewsPicksのエンジニアに対してもメッセージし、AI活用の投資・予算を検討している 1. ユーザーへの価値提供(UXの改善) AIを活用してユーザーに価値を提供 レコメンド、パーソナライズ、サマリー、ニュースの論点提供...etc 2. 事業部の生産性向上(EXの改善) AIを活用して事業部の生産性を向上 営業リサーチ効率化、商談のヒアリング精度向上、提案資料作成自動化、ユーザー分析...etc 3. プロダクト開発の生産性向上(DXの改善) AIを活用してプロダクト開発の生産性を向上 コード生成、テスト自動化、要件定義支援、デザイン作成支援...etc ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved. 開発支援AIエージェントを導 入するなどは当たり前で、特 に事業的な論点ではない 必 ず こ の 優 先 度 で 考 え る

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NewsPicksは経済メディア事業のビジネス特性として労働集約的な側面があり、 事業部メンバーの業務の生産性の伸びしろは特に大きく、重要度が高いと考えている 02 記者・編集者・ディレクター 広告営業・クリエイティブ 企画・運営・マーケティング • 情報収集・取材・撮影 • クライアント開拓・商談 • 有識者キャスティング • 記事執筆・編集・入稿 • 提案書・企画書作成 • イベント企画・運営 • 校正・ファクトチェック • スポンサードコンテンツ制作 • モデレーション • 新たな特集/番組の企画 • 効果測定・レポーティング • 施策立案・データ分析 全方位で人的リソースに依存した業務がサービス提供価値の根源。スケールには課題がある →同業・競合サービスも業務をゼロにはできないため、圧倒的な生産性が競争優位の源泉になりうる エンジニアがコーディングAIエージェントをどれだけ使いこなして生産性を上げたところで、 事業部メンバーの生産性が上がらなければコンテンツも作れず広告も売れず集客もできず事業は伸びない ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved.

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03 具体的な取り組みの一覧と事例

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02 ● ● ● ● ● ● MIT CISRのエンタープライズAI成熟度モデルは、AI活用のステージとROIについて 財務パフォーマンスが実証されているため、AI活用の取り組みをこの枠で整理 Stage 1 Stage 2 Stage 3 Stage 4 実験と準備 パイロット・機能構築 AI前提の働き方へ AIの未来に備える AIに関する従業員教育 許容される使用ポリシーの 設定 データへのアクセスを可能 にする取り組み 意思決定にデータを活用す る 人間が関与すべき場所を特 定する 個人やチーム単位での散発 的な取り組み 利益:業界平均に対して -9.6pp ● ● ● ● ● ● プロセスの簡素化と自動化 の開始 ユースケースの作成 API経由でAIとデータ共有 コーチを活用し、マネジメント スタイルを伝える LLMを使用して作業を拡張 する 部門単位での組織化された 取り組み -2.2pp ● ● ● ● ● ● プロセス自動化の拡大 テストと学習を重視した働き 方への変更 再利用のためのアーキテク チャ 学習済みモデルを業務に組 み込み、独自のAIモデルの 使用を調査 自律エージェントの探索 全社横断的な戦略的活用 ● ● ● ● 意思決定とプロセスにAIを 組み込む AIを活用したビジネスサービ スの開発と販売 従来のAI、生成AI、エージェ ントAI、ロボットAIを組み合 わせる AI-Nativeな組織文化 8.7pp 721社の調査データに基づく実証済みモデル(The MIT CISR Enterprise AI Maturity Model: 2024) https://cisr.mit.edu/publication/2024_1201_EnterpriseAIMaturityModel_WeillWoernerSebastian ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved. 10.4pp

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02 ユーザーへの価値提供はもちろんのこと、事業部の生産性向上のための業務効率化と 業務プロセス改革(AX: AI Transformation)にはとにかく無限の伸びしろがある 成熟度Stage 2.事業部の生産性向上 3.プロダクト開発の生産性向上 ● (Confidential) ● AIチャットボットによるユー ザー分析・コメント分析 ● ネガティブコメントチェック ● 初回商談準備資料の自動生成 ● MCP Serverを利用したデータ 分析の自動化(Text to SQL等) Stage 2: パイロット・機能構築 ● パーソナライズフィード ● ニュースのタグ・カテゴリ編成 ● 法人研修企画書案の自動生成 ● 広告掲載事例とのマッチングに よる課題仮説・提案精度向上 ● 商談AI議事録→自動アサイン ● デザインシステムとプロダクト UI開発の統合(Figma DevMode/MCP Server) Stage 3: AI前提の働き方へ ● 週間レポート(法人限定機能) ● ニュースの企業・業界分類 ● ● ● ● 商談前企業リサーチのAI生成 商談での紹介コンテンツ選定 学びのコレクション自動選定 組織別コレクション自動選定 ● コーディング支援AIエージェン ト(IDE・CLI) Stage 1: 実験と準備 Stage 4: AIの未来に備える ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved. 1. ユーザーへの価値提供 Stage.3〜が業界平均を超える 財務パフォーマンスをもたらす ため、Stage.3以上のAI活用の 取り組みをどれだけ作れるか が、事業にとっては重要

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02 事例:NewsPicksの広告事業・法人事業に共通する商談前リサーチの課題 これからクライアントへの往訪だけど、 過去NewsPicksに出稿されたスポンサー 事例やお客様の業界に関連する記事のリ サーチを急いでやらないと! 広告事業セールス NewsPicksにあるどんなコンテンツを紹 介したら、お客様企業の社員が NewsPicks法人プランを利用することに 魅力を感じてもらえるだろうか 法人事業セールス ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved. 【目的】 顧客企業の業種/事業内容/関心事/ 課題仮説に基づいて、NewsPicksのソ リューション(広告商品・法人プラン 機能)で提案できるコンテンツの事例 を商談で訴求したい 【課題】 従来はGoogle/Perplexityで顧客企業 を調べ、NewsPicksのWeb検索をして Notionページにまとめるといったデ スクトップリサーチが主体で、商談ご とに一定の工数がかかっていた

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02 解決策:NewsPicksのおすすめコンテンツをAIチャットボットに回答させる これから商談する顧客企業向けに紹介できる NewsPicksのコンテンツをAIに教えてもらおう〜 代わりに調べておきますね NPおすすめ コンテンツ APIサーバー プロンプト AIチャットボット (Slackアプリ) なんらかのLLM NewsPicks コンテンツ 業務の目的と課題を理解していれば、ちょっとしたAPI・プロンプト・データのつなぎこみをする だけで大幅に事業部の業務を改善できる余地が多くあるとわかった。AI活用の効果は大きい ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved.

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エンジニアがAI活用で問題解決をするために必要なのは業務の理解と課題の発見 02 重要なのはObserve(観察)から入ること ● 事業部メンバーの近くの座席に座る ● 事業部の定例に参加する・録画を見る ● 商談に同席する・録画を見る ● オフィスで雑談する・ランチに行く プロダクトマネジメントの文脈でも Observe (観察) 現場業務の 実態把握 OODA ループ Orient (状況判断) AI活用施策の 実装・検証 Act (実行) エスノグラフィー調査に近い手法 「商談前のリサーチ効率化」で一周回したら 「実は商談の後にも課題があって・・・」 といった問題がぼろぼろでてきて発見が多い ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved. Decide (意思決定) AI活用の導入判断 課題の 整理・分析

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「なんでエンジニアがそこまでやらないといけないのか」に対する回答: →AI時代、エンジニアの仕事はコードを書くことから問題解決にシフトしていく 02 生成AI時代における人間の役割(参考: 世界標準の経営理論がいまほど必要な時代はない) ● 「両利きの経営」における深化と探索の役割 ○ 「知の深化」(既存の最適化・効率化)はAIに任せる ○ 「知の探索」(新しい価値創造・イノベーション)は人間が担う ● 人間にしかできない3つの役割 ○ 現場での「空気感」や非デジタルな情報の収集 ○ 正解のない世界での意思決定 ○ 結果に対する責任を取ること ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved.

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04 まとめ

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04 「開発以外でのAI活用」は変わったテーマではなく、一丁目一番地 エンジニアが業務の課題・AIの特性を理解して適用することで企業の生産性をバクアゲできる ● NewsPicksは経済メディア事業というビジネスの特性から労働集約的な事業部の業務が多くある。 プロダクト開発エンジニアはアプリやWebサービスを開発するだけでなく、事業全体をエンジニアリ ングすべく、業務の課題を発見し、問題を解決する。これをCTOとしても強くメッセージしている ● MIT CISRのエンタープライズAI成熟度モデルによると「AI前提の働き方」にシフトするStage.3以降 の企業の利益は業界平均より高いという学術的な裏付けも出ている。これをエンジニアだけではなく 全社横断的に広げていくことが、事業の成長にコミットする経営幹部たるCTOの使命だと捉えている ● エンジニアが事業部の業務の課題をAI活用によって解決していくために、業務の理解と課題の発見に 自発的に取り組めるようになることが重要。「ドメイン知識がないのでわからない」という状態か ら、とにかく事業部メンバーとの接点を作り・観察するといったOODAループを回していくこと、 それがAI時代のエンジニアに必要な仕事であることを伝えていく。私自身も実践していく ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved.

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ご清聴ありがとうございました! ©Uzabase, Inc. All Rights Reserved.