研究疑問とマッチした研究計画・統計解析の選び方

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1.

ダウンロード用QRコード https://www.docswell.com/s/icer/KRXGNN-20230624 研究疑問とマッチした 研究計画・統計解析の選び方 奥村泰之 一般社団法人臨床疫学研究推進機構 代表理事 第119回日本精神神経学会 2023/6/24 (土) 8:30~10:10 パシフィコ横浜ノース4F G401 精神神経学雑誌に掲載される論文の書き方 (研究計画と統計について)

2.

目次 ◼研究疑問の3分類 ◼記述の留意点 ◼予測の留意点 ◼因果の留意点 3

3.

3つの研究疑問 ① ある治療を受けた人と,その治療 を受けていない人の生存率は違う か? ② ベースラインの特性を基に,生存 率を予測できるか? ③ もしある治療を受けると,その治 療を受けない場合と比べて,平均 して生存率が長くなるか? Fox MP et al: Am J Epidemiol. 2020 Apr 2;189(4):261-264. doi: 10.1093/aje/kwz233. 4

4.

研究疑問の3分類 分類 目的 研究デザイン 記述 • • • • • 予測 • • • 横断研究 • コホート研究 • 質的研究など 有病率 発症率 診療実態 疾病負担 自然経過 リスク/予後予測 診断 • コホート研究 • 症例対照研究 • 横断研究など 因果 • 治療効果 • 無作為化比較試験 • 原因 • コホート研究 • 治療効果のメカニズム など Kamper SJ: J Orthop Sports Phys Ther. 2020 Aug;50(8):468-469を基に改編 5

5.

子供における精神疾患による急性期病院 への入院のトレンド(記述の事例) Arakelyan M et al: JAMA 2023 Mar 28;329(12):1000-1011. doi: 10.1001/jama.2023.1992. 6

6.

研究疑問 要素 概要 目的 2009年から2019年の間における子供の 精神疾患による入院トレンドを記述する データ源 2009・2012・2016・2019年の米国小児 急性期入院データベース 研究法 反復横断研究 対象集団 3~17歳,4,767,840入院 アウトカム (1) 精神疾患による入院件数 (2) 全入院に占める精神疾患の入院件数 Arakelyan M et al: JAMA 2023 Mar 28;329(12):1000-1011. doi: 10.1001/jama.2023.1992. 7

7.

精神疾患による入院件数が25.8%増加 Arakelyan M et al: JAMA 2023 Mar 28;329(12):1000-1011. doi: 10.1001/jama.2023.1992. 8

8.

全入院に占める精神疾患の入院件数が 11.5%から19.8%に増加 Arakelyan M et al: JAMA 2023 Mar 28;329(12):1000-1011. doi: 10.1001/jama.2023.1992. 9

9.

在宅の認知症高齢者における死亡の予測 (予測の事例) Deardorff WJ et al: JAMA Intern Med. 2022 Nov 1;182(11):1161-1170. 10

10.

研究疑問 要素 概要 目的 在宅の認知症高齢者における死亡を予測す るモデルの構築・検証する データ源 (1) 1998~2016年の米国住民 (2) 2011~2019年のメディケア加入者 研究法 コホート研究 対象集団 (1) 在宅65歳以上の認知症4267名 (2) 同・2404名 予測因子 年齢,性別,BMI,喫煙,ADL,IADL,歩 行,運動,糖尿病,心疾患,がん,肺疾患 アウトカム 死亡 Deardorff WJ et al: JAMA Intern Med. 2022 Nov 1;182(11):1161-1170. 11

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良好な判別能 AUC 時点 モデル作成コホート モデル検証コホート 全体 0.76 NR 1年後 0.73 0.73 2年後 0.73 0.72 5年後 0.75 0.74 10年後 0.84 NR AUC = area under the receiver operating characteristic curve; NR = not reported Deardorff WJ et al: JAMA Intern Med. 2022 Nov 1;182(11):1161-1170. 12

12.

死亡予測のWebアプリケーション 患者の特性を入力 死亡予測の出力 ePrognosis (https://eprognosis.ucsf.edu/dementia.php) 13

13.

死亡予測の入力・出力例 予測因子 患者A 患者B 年齢 80~84歳 80~84歳 BMI 18.5 to <25 18.5 to <25 性別 男性 男性 歩行困難 いいえ はい 精力的な運動の参加 いいえ いいえ 介助が必要なADLの数 0 5 介助が必要なIADLの数 5 5 喫煙 過去の喫煙者 過去の喫煙者 糖尿病 あり あり 心疾患 なし なし がん なし なし 肺疾患 あり あり 評価項目 患者A 患者B 1年後の死亡率 22% 42% 死亡予測の中央値 (四分位範囲) 2.3年 (1.1~3.9年) 1.2年 (0.6~2.2年) ePrognosis (https://eprognosis.ucsf.edu/dementia.php) 14

14.

妊娠中の抗うつ薬処方による子の学力へ の影響(因果の事例) Christensen J et al: JAMA. 2021 Nov 2;326(17):1725-1735. 15

15.

研究疑問 要素 概要 目的 妊娠中の抗うつ薬処方による子の学力へ の影響を評価する データ源 デンマークの医療出生レジストリ (処方/患 者レジストリとリンケージ) 研究法 コホート研究 対象集団 7~17歳の子供575369人 曝露 妊娠中の抗うつ薬処方 アウトカム 国語と算数の共通テスト Christensen J et al: JAMA. 2021 Nov 2;326(17):1725-1735. 16

16.

妊娠中に抗うつ薬の処方がある人は,抗うつ薬処方 がない人と比べて,国語は0.1点,算数は2.2点低い 要修正 注: 共通テストの得点は0~100点の範囲である。性別,学年,出生年,妊娠した年齢,初産, 周産期の精神疾患の既往,母親の学歴,親の所得,周産期の他の向精神薬の処方の影響を調 整した平均値差 Christensen J et al: JAMA. 2021 Nov 2;326(17):1725-1735. 17

17.

小括 ◼研究疑問が,記述・予測・因果のど れにマッチするか明確にする 18

18.

記述の留意事項 19

19.

良い記述のための指針 Lesko CR et al: Am J Epidemiol. 2022 Nov 19;191(12):2063-2070. doi: 10.1093/aje/kwac115 20

20.

目的では,4点明確にする ① 標的集団(人,場所,時間) ② 要約する健康状態 ③ 統計量(有病率,発症率,イベント発生まで の平均時間など) ④ 必要な場合,補助変数とその役割 (層別要因/調整変数) Lesko CR et al: Am J Epidemiol. 2022 Nov 19;191(12):2063-2070. doi: 10.1093/aje/kwac115 21

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事例 ⚫ What was the prevalence of viral suppression on December 31, 2019, among adults living with HIV who had been linked to HIV care (i.e., saw a clinician who was aware of their HIV status and had the ability to prescribe antiretroviral therapy) in the United States? ◼ 標的集団 ◆ 米国において [場所],2019年3月31日に [時間],HIV を有し治療中の成人 [人] ◼ 要約する健康状態 ◆ ウイルス抑制 ◼ 統計量 ◆ 割合 ◼ 補助変数 (層別要因/調整変数) ◆ なし Lesko CR et al: Am J Epidemiol. 2022 Nov 19;191(12):2063-2070. doi: 10.1093/aje/kwac115 22

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粗死亡率(1970年の米国・白人女性) アラスカに住む方が安全か? 地域 死亡率 (千人-年) マイアミ アラスカ 8.92 2.67 Kaufman JS: Am J Law Med. 2017 May;43(2-3):193-208. doi: 10.1177/0098858817723659. 23

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年齢別死亡率 死亡率は同程度 地域 年齢別死亡率 (千人-年) マイアミ アラスカ 0~14歳 1.19 1.59 15~24歳 0.71 0.90 25~44歳 1.56 1.13 45~64歳 7.12 6.02 65歳以上 39.11 39.00 Kaufman JS: Am J Law Med. 2017 May;43(2-3):193-208. doi: 10.1177/0098858817723659. 24

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人口構成 アラスカは高齢者が少ない 地域 人口 マイアミ アラスカ 0~14歳 114350 37164 15~24歳 80259 20036 25~44歳 133440 32693 45~64歳 142670 14947 65歳以上 92168 2077 Kaufman JS: Am J Law Med. 2017 May;43(2-3):193-208. doi: 10.1177/0098858817723659. 25

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粗死亡率の解釈 ◼アラスカはマイアミより高齢者が少な いので粗死亡率が低い ◼「年齢別死亡率が同等である以上,高 齢者が多いだけで,マイアミの死亡率 が高いと評価するべきではない」と価 値判断するか Kaufman JS: Am J Law Med. 2017 May;43(2-3):193-208. doi: 10.1177/0098858817723659. 26

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年齢調整死亡率(直接法) 年齢調整死亡率= {観察集団の年齢別死亡率×基準人口集団の年齢階級別の人 口の総和}/基準人口集団の総人口 年齢 地域 死亡率 全米人口 死亡率×人口 0~14歳 マイアミ 1.19 23961000 28497560 15~24歳 マイアミ 0.71 15420000 10951295 25~44歳 マイアミ 1.56 21353000 33284053 45~64歳 マイアミ 7.12 19609000 139642139 65歳以上 マイアミ 39.11 10685000 417926233 0~14歳 アラスカ 1.59 23961000 38039474 15~24歳 アラスカ 0.90 15420000 13853064 25~44歳 アラスカ 1.13 21353000 24166060 45~64歳 アラスカ 6.02 19609000 118071185 65歳以上 アラスカ 39.00 10685000 416699567 年齢調整 死亡率 分子 分母 630301280 91028000 6.92 610829350 91028000 6.71 Kaufman JS: Am J Law Med. 2017 May;43(2-3):193-208. doi: 10.1177/0098858817723659. 27

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年齢調整死亡率の解釈 ◼マイアミとアラスカの年齢構成が, 全米の年齢構成と等しい仮想の世界 における死亡率 ◼マイアミとアラスカの死亡率は概ね 等しく,どちらの地域が危険という 訳ではない ◼年齢を死亡格差の正当化できる原因 と考える場合,粗死亡率よりも,年 齢調整死亡率が妥当な指標となる Kaufman JS: Am J Law Med. 2017 May;43(2-3):193-208. doi: 10.1177/0098858817723659. 28

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数学の成績 教育政策を評価する上で人種などの影響 を調整した後の成績を評価すべきか 州平均と比べた成績 (学習月) 地域 調整前の成績 調整後の成績* テキサス -0.2 (29位) 5.6 (3位) ルイジアナ -8.6 (47位) -1.2 (27位) ミシガン -2.2 (37位) -5.7 (44位) カリフォルニア -6.4 (45位) -6.3 (46位) *性別,人種,給食費の減免,英語力,特殊教育,年齢など Chingos M: Breaking the Curve: Promises and Pitfalls of Using NAEP Data to Assess the State Role in Student Achievement (https://www.urban.org/sites/default/files/publication/72411/2000484-breaking-the-curvepromises-and-pitfalls-of-using-naep-data-to-assess-the-state-role-in-student-achievement_1.pdf) 29

29.

調整後の成績の解釈 ◼地域間の人種構成などが同じ仮想の世 界では,テキサスはミシガンより成績 が大きく上回る ◼ただし仮想世界は,現実から乖離する ◼各州は,人種に係わらず居住者に対す る教育義務を負っている ◼人種を成績格差の正当化できる原因*と 考えるか? *道徳的・倫理的な価値判断を伴う Kaufman JS: Am J Law Med. 2017 May;43(2-3):193-208. doi: 10.1177/0098858817723659. 30

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小括 ◼目的では,標的集団・要約する健康状 態・統計量・補助変数を明確にする ◼道徳的・倫理的な価値判断を基に,正当 化できない格差の原因を調整しない(調整不 要な場合が多い) Kaufman JS: Am J Law Med. 2017 May;43(2-3):193-208. doi: 10.1177/0098858817723659. Lesko CR et al: Am J Epidemiol. 2022 Nov 19;191(12):2063-2070. doi: 10.1093/aje/kwac115 31

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予測の留意点 32

32.

良い予測のための指針 Moons et al: Ann Intern Med. 2019 Jan 1;170(1):W1-W33. 33

33.

患者の特定には,3点留意する ◼予測値を正しく求められる研究デザ イン(コホート研究など)を選択し,症例対 照研究を使わない ◼既にアウトカムを発現している患者 は含めない ◼標的集団の予測精度を変えうる特定 の下位集団を除外しない Moons et al: Ann Intern Med. 2019 Jan 1;170(1):W1-W33. 34

34.

急性心筋梗塞の予測モデル 要素 概要 目的 コスタリア共和国の成人における急性心筋梗 塞を予測するモデルの構築・検証する セッティング 1994年~2004年のコスタリア居住者 研究法 症例対照研究 アウトカム (1) 調査参加病院で2名の循環器医により特定 された非致死的な初回の急性心筋梗塞 (2) 国勢調査から,年齢・性別・居住地をマッ チさせた居住者 予測因子 不健康なダイエット,身体活動量の低下,喫 煙,ウエスト/ヒップ比,アルコール摂取など Aslibekyan S et al: J Nutr. 2011 Jul;141(7):1375-80. 35

35.

急性心筋梗塞の予測モデルの問題 要素 概要 目的 コスタリア共和国の成人における急性心筋梗 塞を予測するモデルの構築・検証する 予測値を求められない セッティング 1994年~2004年のコスタリア居住者 研究法 症例対照研究 (1) 調査参加病院で2名の循環器医により特定 された非致死的な初回の急性心筋梗塞 (2) 国勢調査から,年齢・性別・居住地をマッ 致死例を対象外として チさせた居住者 アウトカム 予測することは不自然 予測因子 不健康なダイエット,身体活動量の低下,喫 煙,ウエスト/ヒップ比,アルコール摂取など Moons et al: Ann Intern Med. 2019 Jan 1;170(1):W1-W33. 36

36.

予測における症例対照研究の問題 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ 研究者の主観的判断を伴うマッチング法となる (マッ チングの基準,構成比など) 学習に用いるデータは,マッチング法やデータベース のバイアスにより,標的集団と乖離することがある アウトカム発現の直前の情報を使うことで,アウトカ ム発現の前兆を予測因子として含むことがある 症例群と対照群の構成比が標的集団と異なることで, 予測精度が楽観的になる 予測値が真のリスクから乖離する 予測モデルを臨床応用する明確なポイントがない Reps JM et al: J Big Data 8, 108 (2021). https://doi.org/10.1186/s40537-021-00501-2 37

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小括 ◼症例対照研究を使わない ◼適格基準は標的集団を反映するよう にする Kaufman JS: Am J Law Med. 2017 May;43(2-3):193-208. doi: 10.1177/0098858817723659. Lesko CR et al: Am J Epidemiol. 2022 Nov 19;191(12):2063-2070. doi: 10.1093/aje/kwac115 38

38.

因果の留意点 39

39.

社会経済的要因による健康への影響 要因 調整前の オッズ比 最終学歴 (中学 vs それ以外) 2.43 職業 (単純労働者 vs それ以外) 2.79 所得 (下位3分の1 vs それ以外) 2.48 職業 所得 健康状態 最終学歴 Green MJ, Popham F: BMC Public Health. 2019 Jan 3;19(1):10 40

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因果構造の想定で推定値の解釈が異なる 要因 調整前の 解釈 オッズ比 最終学歴(中学 vs それ以外) 2.43 ①総合効果 職業(単純労働者 vs それ以外) 2.79 ②総合効果 (学歴が交絡) 所得(下位3分の1 vs それ以外) 2.48 ③総合効果 (学歴と職業が交絡) 職業 ② 所得 最終学歴 ③ 健康状態 ① Green MJ, Popham F: BMC Public Health. 2019 Jan 3;19(1):10 41

41.

学歴と職業を調整すると解釈が変わる 要因 調整後の 解釈 オッズ比 最終学歴(中学 vs それ以外) 1.64 ①直接効果 (職業を介さない効果) 職業(単純労働者 vs それ以外) 2.33 ②総合効果 (学歴の交絡を考慮) 所得(下位3分の1 vs それ以外) --- 職業 --- ② 所得 最終学歴 健康状態 ① Green MJ, Popham F: BMC Public Health. 2019 Jan 3;19(1):10 42

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3変数を調整すると解釈が変わる 要因 調整後の 解釈 オッズ比 最終学歴(中学 vs それ以外) 1.44 ①直接効果 (職業と所得を介さな い効果) 職業(単純労働者 vs それ以外) 1.99 ②直接効果 (所得を介さない効果, 学歴が交絡) 所得(下位3分の1 vs それ以外) 1.68 職業 ③総合効果 (学歴と職業の交絡を 考慮) ② 所得 最終学歴 ③ 健康状態 ① Green MJ, Popham F: BMC Public Health. 2019 Jan 3;19(1):10 43

43.

個々の社会経済的要因の相対的影響を比 較をするには3つのモデルが必要 要因 調整前の オッズ比 2変数調整の 3変数調整の オッズ比 オッズ比 最終学歴(中学 vs それ以外) 2.43 --- --- 職業(単純労働者 vs それ以外) --- 2.33 --- 所得(下位3分の1 vs それ以外) --- --- 1.68 Green MJ, Popham F: BMC Public Health. 2019 Jan 3;19(1):10 44

44.

Table 2 Fallacy: 1つのモデルから個々の 推定値を類似のものと解釈する誤り 要因 調整後の 正しい解釈 オッズ比 誤った解釈 最終学歴(中学 vs それ以外) 1.44 ①直接効果 ①総合効果 職業(単純労働者 vs それ以外) 1.99 ②直接効果 ②総合効果 所得(下位3分の1 vs それ以外) 1.68 ③総合効果 ③総合効果 職業 ② 所得 最終学歴 ③ 健康状態 ① Westreich D, Greenland S: Am J Epidemiol. 2013 Feb 15;177(4):292-8. Green MJ, Popham F: BMC Public Health. 2019 Jan 3;19(1):10 45

45.

蔓延するTable 2 Fallacy ◼整形外科領域の7雑誌に2019年に掲載 された,多変量解析を使った論文の うち67% (129/193論文)[1] ◼歯科領域の4雑誌に2013年から2018年 に掲載された,因果に関する論文の うち45% (189/421論文)[2] ◼Nature誌に掲載されたCOVID-19の死 亡リスクファクター[3,4] [1] Ponkilainen VT et al: Osteoarthritis Cartilage. 2021 Jul;29(7):939-945. [2] Akinkugbe AA et al: Community Dent Oral Epidemiol. 2021 Apr;49(2):103-109. [3] Williamson EJ et al: Nature. 2020 Aug;584(7821):430-436. [4] Westreich D et al: Epidemiology. 2021 Jan;32(1):e1-e2. 46

46.

心不全患者における肥満による死亡の影響 普通体重よりも肥満の患者の方が 死亡リスクが低い? BMI n 調整後ハザード比 (95%信 頼区間)注 <18.5 (低体重) 160 1.21 (0.95~1.53) 18.5~24.9 (普通体重) 2583 reference 25.0-29.9 (過体重) 3084 0.88 (0.80~0.96) ≥30.0 (肥満) 1940 0.81 (0.72~0.92) 注) 年齢,性別,左心駆出率,心不全の重症度,急性心筋 梗塞の既往などを調整したハザード比 Curtis JP et al: Arch Intern Med. 2005 Jan 10;165(1):55-61. 47

47.

Obesity Paradox 心不全を有する患者に限定化することで(restriction) 合流点バイアスが生じる(collider bias) 肥満 心不全 死亡 未測定の要因 (遺伝・生活習慣要因) Banack HR, Kaufman JS: Epidemiology. 2013 May;24(3):461-2. 48

48.

合流点バイアス: 2変数から影響がある変数を 調整*することで生じるバイアス *マッチング,限定化,層化,多変量解析 A B C ダイエット 法 認知機能 追跡脱落 Holmberg MJ, Andersen LW: JAMA. 2022 Apr 5;327(13):1282-1283. 49

49.

曝露とアウトカムが専門科受診を誘発する場合 受診者に限ると合流点バイアスが生じる 痛風群: 4/400 = 1% 非痛風群: 96/9600 =1% 痛風 関節 リウマチ 痛風群: 4/380 = 1% 非痛風群: 96/1046 =9% 痛風 関節 リウマチ Weiskopf NG et al: J Am Med Inform Assoc. 2023 Apr 19;30(5):971-977. リウマチの 診療所 50

50.

小括 ◼Table 2 Fallacyに陥らない ◼合流点を調整しない 51

51.

Take-home Messages ◼研究疑問を,記述・予測・因果に分類する ◼記述では,多くは調整不要 ◼予測では,症例対照研究を避ける ◼因果では,Table 2 Fallacyと合流点に留意 ◼着想の初期段階からメンターに相談する ダウンロード用QRコード 臨床疫学研究推進機構: https://icer.tokyo/ 臨床研究・ピアサポートグループ: https://community.camp-fire.jp/projects/view/187310 奥村泰之: https://www.docswell.com/s/icer/KRXGNN-20230624 52