【閲覧用】出向起業の手引き

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May 12, 23

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【入門】『出向起業の手引き』で知る、大企業の新規事業の新しい創り方(https://flag.jissui.jp/n/n07851703b6fa)にて紹介しています。

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ver.2021/6

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⽬次 1. はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・3 2. 出向起業を知る ・・・・・・・・・・・・・5 1 • 出向起業の概要 • 出向起業のメリット 3. 出向起業をやってみる はじめに ・・・・・・・・15 • 出向起業のお悩みチェックポイント +対策tips ① 事業テーマ ② 出向⼈材 ③ 契約 ④ ルール(法令・社内規定等) 4. 出向起業事例集 ・・・・・・・・・・・・・29 5. 巻末付録 ・・・・・・・・・・・・・・・・37 • 出向起業とは別の経験 「スタートアップ 出向」 2 3

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1. 本⼿引きに込める思い -ウィズコロナ/アフターコロナにおけるイノベーションを後押しするために- ⽇本経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により、(持ち直しの動 きが⾒られるものの、)依然として厳しい状況にある。GDPの観点では、 経済の⽔準はコロナ前を下回った状態にとどまり、経済の回復は未だ途上 にある。[※1] また、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣⾔等の 影響により、多くの企業が減収減益に直⾯した。[※2]その結果、企業はリ ソースの多くを既存事業の守りに充てざるを得ず、新規事業創出に係るイ ノベーション活動が縮⼩したとのデータもある。[※3] 2 ⼀⽅で、新たな時代への変化に対応する新規事業の創出の重要性が⾼ まっている。コロナ禍において、変化する消費者のニーズを捉え、新しい 価値を提供するようなイノベーションを起こす「攻め」の姿勢が、企業の 持続的成⻑には不可⽋であると考えられる。[※4] 出向起業を知る 現在、経済産業省は、新規事業創出に係るリソースの⼀つである⼈材に 着⽬して、⼤企業等の⼈材が新規事業創出に挑戦することができる「出向 起業」を後押しするための⽀援を⾏っている。「出向起業」は社員のセー フティーネット(収⼊、福利厚⽣等)が確保された状態で新規事業創出に 従事することができる仕組みであり、同時に⼤企業等としても外部資⾦を 活⽤して新規事業を試すことができる点にメリットがある。 本⼿引きには、「出向起業とは何か」を紹介するとともに、「出向起 業」を⾏うにあたり想定される懸念点、その解決策、先⾏事例等を記載し ている。 本⼿引きを通じて、読者が「出向起業」に関する理解を深め、新規事業 創出に挑戦することにより、イノベーション創出の⼀助となることを期待 している。 [※1] 「国⺠の命と暮らしを守る安⼼と希望のための総合経済対策」(2020年12⽉8⽇閣議決定) 「第13回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査」(東京商⼯リサーチ)によると、2021年1⽉期は アンケート回答企業7,007社のうち70.4%が前年割れ(減収)と判明した。 [※3]「Withコロナ時代のイノベーション戦略⼤企業等300名アンケート」(デロイトトーマツベンチャーサポート株式 会社、2020年5⽉)によると、イノベーション活動及び投資活動を昨年⽐30%以上減少させる企業が50%を超え ていることが分かった。また、「ウィズコロナ/アフターコロナにおけるスタートアップ環境と今後の政策⽅針 について」(経済産業省)によると、2020年第⼀四半期から第⼆四半期にかけて事業法⼈による投資額が⼤幅に 減少したことが⽰されている。 [※4]「Roaring Out of Recession」(ハーバードビジネススクール)によると、4,700社以上のデータを基に⾏った分析 結果から過去の経済危機後に最も⾼い成⻑を実現していたのは、危機時に攻めと守りの両⽅を重視した企業であ るということが分かった。 [※2] 4 5

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2. 出向起業 知 出向起業の概要 ‒出向起業とは?- 2. 出向起業 知 出向起業のメリットとは n 出向起業とは、⼤企業等の⼈材が、所属企業を辞職することなく外部VC からの資⾦調達や個⼈資産の投下によって起業し、起業したスタート アップに⾃ら出向・研修派遣等を通じてフルタイムで新規事業を開発す ることである。 n 出向起業は、既存企業に在籍する社員が辞職することなく起業をできる という特徴があり、出向元企業及び出向社員は、従来の出向や辞職起業 にはないメリットを享受することができる。 n 出向起業のメリットを主体別に整理した図が、以下の通りである。 n 出向起業の特徴の⼀例としては、以下のような点を挙げることができる。 1. 新規事業創造を⾏うために、⼤企業等に所属する⼈材が、所属企業以外の資本を 主として[※]活⽤し会社を設⽴している。 2. ⼤企業等に所属する⼈材が、⾃ら設⽴した新会社へ出向等によりフルタイムで経 営者として新規事業創造に係る実務に従事している。 3. 設⽴した新会社および出向等により従事する経営者に対しては、そのまま独⽴す る、または所属企業へ戻る(買い戻す)計画・オプションが設定されている。 出向起業のメリット 出向元企業 ① 新規事業創出 実現 ② 経営⼈材・社内新規事業⼈材 育成 ③ 会社 PR ④ 社員 向上 出向社員 ① ② 新規事業創出 挑戦 機会 ⾃⾝ 獲得 能⼒向上 起業+出向 出向先 出向元企業 ⼀定期間経過後 ①:帰任 ②:買戻 ( 出向元企業 企業 ) 出向先 ③:独⽴ [※] 普遍的な基準があるわけではないが、令和2年度の出向起業補助⾦についての補助要件は出向起業する スター トアップの株式のうち、所属企業(出向元企業)の保有率が20%未満であることを設定している。 6 7

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2. 出向起業 知 出向元企業のメリット 2. 出向起業 知 出向元企業のメリット ①新規事業創出の実現 ②経営⼈材・社内新規事業⼈材の育成 n 出向起業は、既存の⼤企業等の社内新規事業としては事業化に踏み切れ ない新規事業案を、⼀時的に外部資本を活⽤して事業化を実現する有効 な⼿段の⼀つである。特に社員の離職やアイデア(知財・ビジネスモデ ル等)の流出を回避しながら、新規事業を創出できることに強みがある。 n 新規事業を⾏うに当たって必要な経営要素は、既存事業のそれとは異な る。特に「ヒト」に着⽬すると、求められる要件は全く異なってくる。 n ⼤企業において新規事業創出が難しい理由の⼀つには、⼤企業ガバナン スの存在にある。具体的には、本業とのシナジーを求められる、⾮常に ⾼い売上⽬標を求められる、確実性を求められる等、⼤企業等の既存事 業の評価基準が適⽤されることにより、新規事業案の事業化を阻害する 場合がある。 n 出向起業を通じて、社員はスタートアップの起業や経営を経験すること ができるため、「イノベーション⼈材」の育成につながる。 既存事業と新規事業に必要な経営要素 新規事業 既存事業 n その点、出向起業を活⽤した場合、⼤企業のガバナンスを低減した形で 新規事業創出に挑戦することができる。実際に、出向起業に関わる⼈々 からは、以下のような出向起業ならではの新規事業創出へのポジティブ な影響が挙げられている。 評価 短期利益 ⽂化 失敗 悪、 不確実性 危機 評価 ⽂化 将来価値 係 意思決定 品質確保 重視、 経験 元 判断 速 n 2021年3⽉時点で、経済産業省が主導する「出向起業等創出⽀援事業」を 通じて、複数の出向起業事例が実現している。 堅実 、 社内政治⼒ 早 進 最善策 出向起業が新規事業創出に与える影響 ① 資⾦投下・⼈材投下・契約締結等 ② 事業 試⾏回数 増 ③ 広報 ⾃由度 ⾼ ④ 意思決定 迅速 ⾏ ⼩ 専⾨家 重視、 登⽤ 失敗 ⽅ 情熱・愛嬌、 社内外政治⼒ 出所)株式会社野村総合研究所「平成30年度産業経済研究委託事業−イノベーション経営の普及 に係る調査研究」から抜粋し、経済産業省にて⼀部編集 n 実際に、出向起業に社員を送り出した⼤企業の担当からは、 「独⽴系スタートアップで、⾃ら実⾏したい事業案をフルタイムで追求 する機会は、座学の研修に⽐べると、⽐較にならない成⻑を⽣じさせる と⾒込んでいる」との声がある。 出向起業で⽣まれた企業(例) n また、実際に出向起業をした社員は、「既存事業と⽐べて、100倍ほどの 裁量があり、会社が潰れるか否かが、すべてCEOの⾃分次第、という重 いプレッシャーを常に感じている。(が、楽しい。)」との声がある。 8 9

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2. 出向起業 知 出向元企業のメリット 2. 出向起業 知 出向元企業のメリット ③会社のPR ④社員モチベーションの向上 n 出向起業は、既存の⼤企業等の社員にとっては、働き⽅の新しい選択肢 の⼀つである。そのため、出向起業に社員を送り出すこと⾃体が、新卒 採⽤市場等への前向きなメッセージとなり、新卒⼈材等への訴求効果に つながる可能性がある。 n 出向起業は、社員に対して、新しいチャレンジの場を提供することがで きる。 n 株式会社YOUTRUSTが2020年9⽉に実施したアンケート結果によると、 回答者の64.3%が、副業を認める企業の魅⼒度が向上したと回答した。 ⼀⽅で、63.0%が、副業を認めない企業の魅⼒度が低下したと回答した。 今後は多様な働き⽅を許容する会社が選ばれることを⽰唆している。 n 特に、新規事業創出等の取り組みに関⼼が強い社員にとっては、 出向起業を、新規事業創出に係るチャレンジの出⼝の⼀つとして位置付 けることができるようになるため、モチベーション向上にも寄与すると 考えられる。 実際に出向起業を⾏った社員の声 出向起業 環境 。 ⼤企業 中 楽 、⾃分 全部決 責任感 緊張感 味 経験 。 、 、 社員A ⼀会社員 時、 事業 作 過 中 、⾃分 ⼈⽣ ⾃分 実感 出来事 直⾯ 不満 抱 、⾃分 能⼒ 持 気 。 社員B 10 11

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2. 出向起業 知 出向社員のメリット 2. 出向起業 知 出向社員のメリット ①新規事業創出にフルタイムで挑戦する機会の獲得 ②⾃⾝の能⼒向上 n 出向起業は、⾃分で製品やサービスを開発して世の中に打ち出したいと 考えている社員にとって、新規事業創出を⾏う際の選択肢の⼀つとなる。 n 出向社員は、ゼロからの新規事業の創造に挑戦する機会を得るだけでは なく、現状と全く異なる環境に⾝を置くことで、新しいスキルや考え⽅ を⾝に着けることができる。 n 出向起業の場合、離職を前提とした独⽴と違い、収⼊や福利厚⽣等の⼀ 定のセーフティーネットが確保された状態で思いきりチャレンジするこ とができる。 n NPO法⼈クロスフィールズが実施した調査結果によると、出向を通じて、 「考えの異なる相⼿の意⾒を受け⼊れる⼒」、「物事を良い⾯も悪い⾯ も含めて多⾯的に⾒る⼒」等を得ることができたとの回答がある。 ある出向起業を希望する⼤企業社員の声 辞職起業 考 ⾃ 実⾏ 新規事業 、収⼊ 観点 、家族 実⾏ ⽌ 越境活動・経験により得られたスキル 。 出向(資本関係有) n 既存の⼤企業等に所属している場合、そもそも新規事業に携わることが できる社員の数は限られる上に、新規事業に携われたとしても、既存事 業と同様の評価基準の適⽤等により、得られる経験は限定される場合が あるが、出向起業を⾏うことで、⼤企業等に所属していることで課せら れる多くの制約から⼀定の距離を置き、スピード感を持って新規事業創 出を⾏うことができる。 出向(資本関係無) 1.考 異 相⼿ 意⾒ 受 ⼊ ⼒ 1.相⼿ 2.物事 良 ⾯ 悪 ⾯ 含 多⾯的 ⾒ ⼒ 2.物事 含 ⼒ 良 ⾯ 悪 ⾯ 多⾯的 ⾒ 3.相⼿ 理解 物事 伝 3.考 意⾒ 異 相⼿ 受 ⼊ ⼒ ⼒ 理解 物事 伝 ⼒ 兼業・副業(起業含) 1.好 嫌 様々 持 ⼒ 、 関⼼ 2.何事 取 組 進 ⾏動 ⾃ 3.何事 挑戦 失敗 ⼒ 恐 ⼒ 出所)株式会社マクロミルとNPO法⼈クロスフィールズの協働調べ 「2019年 組織外の活動・経験に関する調査」から抜粋し、経済産業省にて⼀部編集 n また、兼業や副業ではなく、出向という形式を取っていることから、出 向社員は全ての時間・リソースを新規事業創出に充てることができる。 ある出向起業を希望する⼤企業社員の声 既存事業 時間 副業 、⾃ 実⾏ 、既存事業 忙 。 新規事業 追求 新規事業 投下 12 13

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3 出向起業をやってみる 14 15

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3. 出向起業 3. 出向起業 出向起業のお悩みチェックポイント ①事業テーマ 出向起業に悩むポイントは? n 出向起業を⾏う際に、懸念されることが多い点は、以下の通りである。 次⾴以降では、各お悩みチェックポイントへの対策tipsを提⽰する。 出向起業 出向起業のお悩みチェックポイント ① 事業 ② 出向⼈材 ③ 契約 ④ [※] (法令、 社内規程等) [※] ✓ 出向起業に送り出す事業をどう選べば良い? ✓ 出向⼈材はどのように選べば良い? ✓ 出向後、離職してしまう可能性はない? ✓ 知的財産権に関してどのように整理すべき? ✓ 事後処理や出⼝戦略の選択肢は何か? ✓ 利益供与に該当する可能性はない? ✓ 寄附⾦課税の可能性はない? ✓ 兼業・副業規程に抵触する可能性はない? ✓ 個⼈資産を投下した企業へ出向することは可能? ✓ 売却益を得た場合、他社員との不平等感はない? 送 出 事業 選 良 ? 既に社内新規事業プログラム・社内ベンチャー制度等の公募制度等に よって、さまざまな事業アイデアが検討されているが、「確実に成功 する⾒込みがある」事業アイデアが⾒つかっていないため、出向起業 実⾏に踏み切れない。 対策tips 投資家等の社外専⾨家の評価も加味し、既存事業とは異なる判断軸に て評価すべき。 過去の事例では、社内公募制度等で「本業とのシナジーが⾒られない」「事業 の不確実性が⾼い」等の理由によって落選した事業アイデアが、外部エンジェル 投資家や外部ベンチャーキャピタルから⾼い評価を得たことがある。このように 社内判断と外部判断が異なる要因は、社内で予算を確保する判断基準と、外部で 資⾦を投資する判断基準が異なるためであると考えられる。 出向起業のメリットは、事業の成功だけではなく、出向起業を通した⼈材育成 や出向元企業のPRに資するという点もある。また、出向起業は、あくまで新規事 業創出の選択肢の⼀つであり、「確実に成功する⾒込みがある」事業アイデアが 存在する場合には、社内事業として進めることが理想である。そのため、事業成 功の予⾒性のみを判断基準とするのではなく、既存事業における判断軸とは異な る判断軸を⽤いて、様々な観点から、事業アイデアを評価すべきである。 その際、社内判断で落選した事業アイデアであっても、外部投資家から資⾦を 調達できる可能性があるため、「投資家等の社外専⾨家の評価も加味して評価す ること」や「業務の⼀環として、新規事業を実⾏したい社員に、外部投資家に事 業案をピッチさせる機会を設けること」等の⽅法が考えられる。 法令や社内規程等に基づく課題は、いずれも適切な整理や出向者との合意等によって解決・ 回避可能であり、出向起業の実施そのものを妨げる”障害”となるものではない。 16 17

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3. 出向起業 3. 出向起業 出向起業のお悩みチェックポイント ②出向⼈材 出向⼈材 選 出向起業のお悩みチェックポイント ②出向⼈材 良 ? 出向後、 離職 可能性 ? 出向先スタートアップでの⾃由な組織⾵⼟に感化され、そのまま離職 する、あるいは帰任後に離職するおそれがあり、出向起業を希望する 社員を送り出せない。 出向に適した社員の選抜⽅法が分からない。 対策tips 対策tips ⾃ら出向起業を希望する社員の意思を尊重する社内公募制や、選抜時 に、外部の投資家等の有識者を活⽤することも⼀案である。 事前の取り決め次第で良好なパートナーシップを築くことができる。 出向起業の実⾏に向けた⼈材選定にあたっては、従前の社内評価制度における 「優秀さ」のみを評価するのではなく、特定の社会課題を⾃らが解決したいとい う明確な⽬的意識、新規事業に対する強い想いや⾃発性、経験したことの無い局 ⾯を前向きに打開できる能⼒等、幅広い視点で評価することが重要である。 そのため、⾃ら出向起業を実⾏したいとする提案姿勢を前向きに評価する社内 公募制を採⽤することが選択肢の⼀つとなる。 ⼀般的には、スタートアップの成功確率は低いため、撤退・清算を通じて、経 営スキル等を体得した社員が帰任する可能性が⾼いことを、出向元企業は認識す る必要がある。 その上で、出向前に、出⼝の認識合わせとして、出向起業スタートアップの事 業が成功した場合を織り込んで、⼤企業と社員個⼈の間(必要に応じて出向起業 スタートアップも加えた三者間)での覚書等によって、事業継続の可否の判断時 期や判断基準、⼀定期間後の出向社員の帰任の有無、出向社員が出向先スタート アップの株式を取得していた場合の当該株式の処理⽅法等を整理しておき、後々 の紛争を可能な限り回避しておくことも⼀案である。 また、新規事業に対する強い想いや⾃発性については、企業内で候補者の内発 的動機の有無を判断することは難しいため、外部の有識者との⾯談を活⽤するこ とも⼀案である。 【適切な出向⼈材の要素】 • • • • 従前 社内評価制度 「優秀 」 新規事業 対 強 想 ⾃発性 特定 社会課題 ⾃ 解決 経験 無 局⾯ 前向 打開 公募制 追加的 、外部 ⼀定程度担保可能。 投資家等 有識者 評価 辞職 しないか? 明確 ⽬的意識 能⼒等 踏 、 →出⼝の認識合わせが必要 担保可能。 出向元企業 <事例:選抜時に外部有識者による⾯談を活⽤> 出向先 社内選抜にて⺟集団となる候補者をある程度絞り込んだ後、最終候補者を選抜 する際に、外部の投資家等の有識者の意⾒を取り⼊れた事例がある。 外部の有識者の豊富な知⾒に基づく⼈物評価のための⾯談を設定することで、 ⾃社内では評価できなかった観点が評価可能となる。 18 19

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3. 出向起業 3. 出向起業 出向起業のお悩みチェックポイント ③契約 出向起業のお悩みチェックポイント ③契約 (続き) 特許権 整理 知的財産権 ? 取 扱 スタートアップが出向元企業の知財を利⽤するための契約形態(⼀例) 出向元企業が保有する知的財産権を活⽤したい場合、どのように契約 を結ぶのか。 出向中に発明等された知的財産権の帰属はどのように整理されるのか。 出向起業スタートアップ におけるメリット 出向起業スタートアップ におけるデメリット 権利譲渡 契約 • 知財の⾃由な活⽤が可能 となるため、事業拡⼤の ⾃由度が⾼い • ⽀払対価が⼤きくなり がち • 交渉が難航・⻑期化する 可能性がある ライセンス 契約 • (譲渡と⽐較して)出向 元企業との交渉の妥結が 容易 • スタートアップ側に知財 が帰属していないことで、 事業の制約要因となる可 能性がある 現⾦ • 出向元企業との交渉の妥 結が容易 • スタートアップ設⽴直後 等の⼿元資⾦が乏しい時 期には対応が難しい 株式・ 新株予約権 • スタートアップの成⻑が 双⽅のメリットになるた め、継続的な協⼒関係の 構築につながる • 契約先との調整・交渉が 必要になる オプション 契 約 ⽅ 法 対策tips 事業のコアとなる知財については、権利譲渡とライセンス付与等の契 約形態の選択肢等を検討・判断すべき。出向先で発明等された知財は、 出向先の帰属とすることが基本。 【前提となる考え⽅】 スタートアップにとっては、知財は競争⼒の源泉である。出向元企業は、この 点を認識した上で、出向起業の⽬的を達成するためにどのような⼿段があり得る かについて、スタートアップ(出向者)と柔軟に協議することが適当である。 ⽀ 払 対 価 【出向元企業の知財の活⽤に関する契約】 出向起業スタートアップが出向元企業の知財を利⽤するための契約には多様な 形態があり、⼀例として、以下のような整理ができる。スタートアップにとって は、事業のコアとなる知財は譲渡を受ける⽅が、事業拡⼤の⾃由度の向上(事業 の制約要因の排除)や、資⾦調達可能性の向上等の観点から、望ましい場合もあ る。他⽅、対価の⽀払いについては、現⾦や株式・新株予約権の選択や、⼀括・ 分割等の選択肢から検討することになる。当初はライセンス契約とし、⼀定期間 後に権利譲渡を⾏うという選択肢もあり得る。 【出向中に発明等された知財の帰属に関する契約】 出向先で発明等された知財は、発明者主義に基づいて基本的に出向先スタート アップの帰属となるものであり、契約上も同様とすべきである。ただし、出向元 企業のノウハウが出向先での発明等に貢献することが想定される場合には、発明 等に対する貢献度合いに応じて協議する整理とすることも⼀案である。 20 21

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3. 出向起業 3. 出向起業 出向起業のお悩みチェックポイント ③契約 起業 選択肢 出向起業のお悩みチェックポイント ④ルール(法令、社内規程等) 出⼝戦略 、 利益供与 該当 ? 対策tips 対策tips 会社法上の懸念点はない 事業継続・撤退・関連会社化等の多様な選択肢が存在。 出向起業実⾏前に撤退基準を設けておき、出向起業開始2~3年後に、 継続か撤退かを判断することも⼀案。 会社法において禁⽌されている「利益の供与」は、株式会社が、その株主の権 利の⾏使に関し、財産上の利益を供与することをいう(会社法120条)。 この点、まず、出向元企業が出向者の給与を負担することは、株式会社(出向 先スタートアップ)が利益を提供するものではないため、会社法上の「利益の供 与」には該当しない。 また、出向先スタートアップが出向者に役員給与を⽀払うことも、あくまで役 務提供の対価として役員給与を⽀払うものである以上、株主の権利の⾏使に関し て⽀払われるものではないから、同じく会社法上の「利益の供与」には該当しな い。 出⼝戦略としては、例えば以下が考えられる。 撤退・清算 出向社員による事業の継続(出向期間の延⻑・出向の解消及び独⽴等) 事業は継続するものの出向社員は帰任 出向元企業が株式の⼀部⼜は全部を取得 出向元企業が吸収合併等を⾏う 給与負担⾦等の名⽬で、出向先スタートアップが出向元企業に⼀定の⾦銭を⽀ 払うことも、出向者が出向先スタートアップに対して⾏った役務提供の対価(役 員報酬)を、出向先スタートアップが出向元企業を介して間接的に⽀給するため のものであるため、「株主の権利の⾏使に関し」⾏われたものとは解されない。 したがって、その観点からも、「利益の供与」には該当しない。 いずれの出⼝を選択するか、また、どの時点で、どのような基準に応じて判断 するかについて、出向起業実⾏前に定めておくと、後々の紛争が⽣じる可能性を 低減できる。 例えば「●年●⽉●⽇までに、売上⾼が●万円/⽉を超える場合には、●●とす る。ただし、事業の状況に応じて協議の上、売上⾼の判断の基準時点を●か⽉延 ⻑することができる。」等の覚書を締結し、出⼝戦略を合意することが考えられ る。 ガバナンス 出向者の給与 →事前に、撤退基準を取り 決めておくことも⼀案 利益供与か? 出向元企業 出⼝戦略? 出向元企業 ? 出向元企業が出向先スタートアップの株主である場合、出向者の給与 の⽀払いやその⽀払⽅法が、会社法において禁⽌されている「利益の 供与」に該当する可能性はないか。 どのような出⼝戦略があり得るのか、事前にどのように準備しておけ ば良いのか分からない。 ① ② ③ ④ ⑤ 可能性 →利益供与には該当しない 出向先 出向先 22 労務提供 出向者 23

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3. 出向起業 3. 出向起業 出向起業のお悩みチェックポイント ④ルール(法令、社内規程等) 出向起業のお悩みチェックポイント ④ルール(法令、社内規程等) (続き) 出向元企業 、寄附⾦課税 適⽤ しかし実際には、出向期間中も出向者と出向元企業との間には雇⽤契約が継続 するため、出向元企業の給与条件に基づき給与の⽀払がされることがある。出向 が出向元企業の業務に関連して⾏われる場合には、出向先スタートアップの給与 条件以上の負担を出向先スタートアップに強制できないため、出向元企業が給与 条件の差を補填することとなる。 そして、この出向元企業が給与条件の差を補填するために出向者に対して負担 した⾦額は、出向元企業と出向者との間の雇⽤契約を理由とする⽀出であるため、 出向元企業の給与として取り扱うこととされている(法⼈税基本通達9-2-47)。 原則としてこの給与は寄附⾦に該当しないことから、寄附⾦課税の適⽤は無いも のとされる。 可能性 ? 出向起業した社員の給与を出向元企業が⽀払うことに対して、税務上 寄附⾦として取り扱われ、出向元企業に課税が発⽣するのではないか。 対策tips 出向元企業が補填⾦を負担する場合(⼀例) 出向元/出向先スタートアップとの給与条件の差を補填するために出 向元企業が負担する⾦額には、寄付⾦課税の適⽤はされない。 原則として、出向元企業が負担する 給与の補填⾦は損⾦算⼊される 給与は、労務の提供を受けた企業が対価として⽀払うものであるため、原則と して労務の提供を受ける出向先スタートアップが負担をする必要がある。 この点、労務の提供を受けていない出向元企業が合理的な理由もなく給与を負 担した場合、その実態は出向先スタートアップに対して給与相当の⾦銭を⽀出し ていることと同義であり、税務上は寄附⾦の⽀出と取り扱われる。この寄附⾦は、 法⼈税法において損⾦算⼊の限度額が定められており、限度額を超過した部分は 出向元企業で課税される(法⼈税法37条)。 出向元企業 労務提供 出向者 出向元企業が給与を全額負担する場合(⼀例) 出向先 出向先 給与 ※出向先スタートアップを経て⽀給した場合も同様 負担に合理性が無い場合、 全額の損⾦算⼊が認められない 可能性がある 出向元企業 出向者の給与※ (給与条件の補填) 出向者の給与※ (出向元企業が全額負担) 労務提供 出向者 ※出向先スタートアップを経て⽀給した場合も同様 24 25

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3. 出向起業 3. 出向起業 出向起業のお悩みチェックポイント ④ルール(法令、社内規程等) 兼業・副業 係 社内規程 抵触 出向起業のお悩みチェックポイント ④ルール(法令、社内規程等) 可能性 ? 出向起業 個⼈資産 出向元企業が、就業規則において社員の兼業・副業を制限する規程を 設けている場合には、出向起業の実⾏は、当該規程に抵触するのでは ないか。 、社員 投下 出向先 問題 ? 社員が起業時に個⼈資産を投下し、株式を取得することは、出向元企 業の社内規程に抵触するおそれはないのか。 対策tips 対策tips 兼業・副業に係る社内規程との関係で問題が⽣じることはない。 他社の株式を取得することとの関係で、社内でどのような制約が存在 するかを確認することが適当 ⼀般的に、出向は、会社の⼈事権⾏使の⼀環として⾏われるものであるため、 会社の⼈事権と離れて⾏われるものである兼業・副業には該当しない。この点は、 出向起業のように起業を伴うものであっても、形式的には出向元企業が出向とい う形で労働者を送り出すものである以上、同様である。 (なお、兼業・副業そのものを禁⽌する法令は基本的に存在していないため、会 社が許容するのであれば、社内規程との関係ではいずれにしても問題は⽣じな い。) したがって、出向起業と兼業・副業規程との抵触を懸念する必要はない。 なお、所属企業から出向起業に挑戦した社員がいることを認知した他の社員が、 所属企業において兼業・副業が解禁されたと誤認する可能性がある場合には、事 前に、出向元企業内の他の社員向けに、出向起業の仕組みや実⾏の背景を共有す る等の対応も考えられる。 ①およそ他社の株式を取得することについて制約があるかという点と、②仮に、 起業した出向先スタートアップが出向元企業から出資を受け、⼀定の資本関係が ある場合に、当該スタートアップの株式を取得することについて制約があるか、 という2つの観点から、社内規程等を確認する必要がある。 ①の点については、多くの企業では、制約が存在しないと思われる。また、② の点については、インサイダー取引回避の観点から⼀定の制約が課せられている 可能性等が考えられる。 上述の確認の結果、いかなる制約にも抵触することがない事が確認された場合 には、出向先スタートアップに出向者⾃らが個⼈資産を投下して、株式を取得す ることも問題ないこととなる。 個⼈資産を 投下して起業 社内規程に 抵触するか? 出向先 出向元企業 →社内規程を確認する 26 27

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3. 出向起業 出向起業のお悩みチェックポイント ④ルール(法令、社内規程等) 出向社員 ⽣ 売却益 得 場合、他社員 不平等感 ? 出向起業の実⾏後、Exitを通じて、出向社員が莫⼤な売却益を得た場 合、他の社員との不平等感が⽣まれるおそれがあり、出向起業への⼈ 材拠出に踏み切れない。 4 対策tips 出向起業事例集 起業に伴うリスク許容へのリターンとして整理可能である。 ⼀般論として、出向社員が得た売却益は、個⼈資産を投下して投資・起業した というリスクを負った⾏為に基づくリターンであることから、出向社員が事業の 成功時にリターンを得ることは、妥当な考え⽅であると⾔える。 個別企業の社内⽂化として、他社員との不平等感が⽣まれる可能性は否定でき ないが、当該不平等感を理由に出向起業の実⾏を控えるのではなく、出向起業や 新規事業への従事、個⼈資産の投資等の機会を、社員に広く与え、社員間の競争 を誘起することにより、企業全体の創造性の活性化・新規事業創出の加速化を狙 うという考え⽅もある。 出向先 給与+ 出向元企業 Exitによ る売却益 給与 既存社員 不平等感の 発⽣? →起業リスクの対価として整理 出向者 28 29

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4. 出向起業事例集 4. 出向起業事例集 事例②: トゥッティ・ミュージック・エンターテインメント株式会社 事例①:株式会社休⽇ハック 基本情報 基本情報 出向先スタートアップ 事業内容 出向元企業 出向社員業務 株式会社休⽇ハック 出向先スタートアップ 体験型サービスの企画、開発、販売 事業内容 ⾮公開 出向元企業 出向前:営業担当 出向後:代表取締役社⻑ 出向社員業務 出向スキーム クラシック⾳楽コンサート専⾨の定額制動画配信 サービス スカパーJSAT株式会社 出向前:新規事業開発 出向後:代表取締役社⻑ 出向スキーム 出向 出向元企業 トゥッティ・ミュージック・エンターテインメント 株式会社 出向 スカパーJSAT 株式会社 ⼈材・事業アイデア 出向社員の声 ⼈材・事業アイデア 出向社員の声 細川 晃良⽒ 代表取締役社⻑ (出向前:新規事業開発担当) ⽥中 和貴⽒ 代表取締役(出向前:営業担当) 所属元企業の社内アクセラレーションプログラムへ応募したのがきっかけで起 業。「出向起業」という⽅法であれば、動いてみてから判断するということが できた。 放送業界全体として、“配信事業”は注⼒すべき分野である⼀⽅で、最近は版権 元が⾃ら配信事業をやっていることもあり、どうしても本業とのバッティング が起きてしまう。 外に出てやった⽅が、⾃由度が⾼く検討が進められると考えた。 出向元企業にとっては、私が初の「出向起業者」になるため、⾊々と相談に 乗ってくれたり、提携先を紹介してくれたりと、協⼒的であり、応援してくれ ている。 社内広報誌で紹介していただいたこともあるので、社員の⽅も“休⽇ハック”の 今後の進展に期待している。 今までの新規事業は、⼤企業の資本⼒に下⽀えされていたものであったが、今 回は、⾃分たちがマーケットを切り開かないといけないため、当然ながら状況 が違う。ただ、出向という⽴場をとらせてもらっていることで、必要以上の悲 壮感は感じていない。⾃分の得意領域で、挑戦しようという前向きな気持ちで ある。 30 31

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4. 出向起業事例集 事例③:株式会社ポンデテック 4. 出向起業事例集 事例④: SpoLive Interactive株式会社 基本情報 基本情報 出向先スタートアップ 事業内容 出向元企業 出向社員業務 出向先スタートアップ 株式会社ポンデテック 事業内容 再⽣PCを⽤いたICT環境構築事業 出向元企業 関⻄電⼒株式会社 出向前:CVC運営業務 出向後:副社⻑ 出向社員業務 出向スキーム バーチャル観戦プラットフォーム事業 エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社 出向前:新事業スペシャリスト・管理職 出向後:代表取締役CEO 出向スキーム 出向 関⻄電⼒ 株式会社 SpoLive Interactive株式会社 出向 エヌ・ティ・ティ・ コミュニケーションズ株式会社 ⼈材・事業アイデア 出向社員の声 ⼈材・事業アイデア 出向社員の声 岩⽥ 裕平⽒ 代表取締役CEO / 共同創業者 (出向前:新事業スペシャリスト・管理職) 栗⼭ 裕和⽒ 副社⻑(出向前:CVC運営業務担当) ⼤企業の社内で進めたほうが良い新規事業もあれば、スタートアップエコシス テムの中で進めたほうが良い新規事業もあると感じていた。事業の形態と⼤企 業のリソースとの結合次第ではあるが、少なくとも⼤企業側にノウハウがない ような最新のビジネスであれば、出向起業によってスタートアップ化すること で、スピード感が上がると感じた。 まずは⼩さく・素早くやってみて、早めに失敗して気付く。 この経験⾃体が、⼤企業の中では経験できないものであり、⾮常にやりがいを 感じている。 ⼤企業の中にいると、そもそも新規事業に携わることができる⼈は限られてお り、その⼈が得られる経験も限られてしまうのが実情である。 やはり、本当の意味でリーンスタートアップを⾏うには、⼤企業側から切り離 す必要があるのかなと思う。 出向起業という制度は、社内起業家にとっては辞めるか、残るか、この2択以外 の選択肢が増えたということなのかなと思う。普通に起業することに⽐べて セーフティネットもあるし、アイデアはあって、まだ始められていないという ⽅は、損するものでもないのでガンガンやっていった⽅がいい。 32 33

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4. 出向起業事例集 事例⑤:TRUSTART株式会社 4. 出向起業事例集 事例⑥:株式会社TRULY 基本情報 基本情報 出向先スタートアップ 事業内容 出向元企業 出向社員業務 出向先スタートアップ TRUSTART株式会社 不動産業界DXによるビジネスモデル変⾰事業 事業内容 三菱UFJ信託銀⾏株式会社 出向元企業 出向前:新規事業開発部署所属 出向後:代表取締役 出向社員業務 出向スキーム ⼥性の「更年期や閉経」に寄り添う、オンライン 相談プラットフォーム ⾮公開 出向前:ビジネスプロデューサー 出向後:CEO 出向スキーム 出向 三菱UFJ信託銀⾏ 株式会社 株式会社TRULY 出向 ⼈材・事業アイデア 出向元企業 出向社員の声 ⼈材・事業アイデア 出向社員の声 ⼤江 洋治郎⽒ 代表取締役 (出向前:新規事業開発部署所属) ⼆宮 未摩⼦⽒ CEO(出向前:ビジネスプロデューサー) 出向起業した後も出向元からは、販路開拓に協⼒してもらい、まだ実績もない シード期のスタートアップにも関わらず、業界最⼤⼿のトップにいきなり会え るように繋いでもらえる。 ⼤企業の外に出ていながら、⼤企業に籍を置いていることの強みの⼀つだと感 じている。 社内での新規事業創出スキームがなかなか定まらない中、共同事業先として提 案した投資会社から「あなた⾃⾝が経営者になってやればいいのでは」といっ た提案をいただいたところ、所属先からは出資ではなく、⼈材を投資するとい うことで話がまとまり、結果的には「出向起業」としてやってみようというこ とになった。 出向起業をしたことで、⾃分で全部決められるという環境にある。 もちろん責任感や緊張感もあるが、⼤企業の中にいては味わえない経験ができ ているし、めちゃくちゃ楽しい。 この「出向起業」の取組は着想も素晴らしいし、それがVCなど投資家にも理解 の浸透が進めば、ファイナンスも上⼿く廻り、国内スタートアップの創出が拡 がっていくと思う。⼈材を出す企業にとっても、起業⼈材を現場で育成できる メリットがあるのではないか。 34 35

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5 巻末付録 36 37

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5. 巻末付録 出向起業とは別の形の経験「スタートアップ出向」 5. 巻末付録 スタートアップ出向で得られるものは? n スタートアップ出向とは、社員が在籍する企業を辞職することなく、出 向等の形式で、既存のスタートアップに参画し、当該スタートアップの 業務に従事するものである。 n スタートアップ出向では、 「①⾃律的に⾏動し結果を出すためのマインド」、 「②未知なものに挑戦するマネジメント⼿法の知⾒」、 n スタートアップ出向と出向起業の違いは、起業を伴うか否かという点に あり、スタートアップ出向では起業を伴わない。 「③多様な関係者とのネットワーク形成」等 n そのため、スタートアップ出向では新規事業の創出を第⼀義的な⽬的と せず、⾃社の社員をスタートアップで勤務させ、そこで働くことでしか 得ることができない経験を獲得させることを⽬的とする場合が多い。 を得ることができる。 ①⾃律的に⾏動し結果を出すためのマインド 得 看板 外 個 経験 ⼒・経営資源 、現場 外部 活⽤、他社 前例 曖昧 得 ⼿触 気 感 認知⼒(個⼈・⾃社 圧倒的 共創 、不安 組 否定 合 、会社全体 ⼒、巻 ⾃分 考 ⾏動⼒ 闘 強 込 把握) ⾒ 視点 ⼒ ⼒・胆⼒、現状 突破 起業+出向 出向先 出向元企業 ②未知なものに挑戦するマネジメント⼿法の知⾒ 得 ⼀定期間経過後 無駄 意思決定 知⾒ 排除( 等) ・即時性 働 ⽅ ⽣産性・⾃主性 事業開発 変化 重視 重視( 許容、⾏動・失敗 等) 評価 ⽂化 帰任 出向元企業 出向先 ③多様な関係者とのネットワーク形成 ü 出向 、出向先 、 成 、他 、⾏政機関等 新 形 。 出所)「レンタル移籍による⼈材育成・組織開発プログラム」(株式会社ローンディール) 38 39

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5. 巻末付録 スタートアップ出向時の悩み・障壁ポイントは? スタートアップ出向 モデル契約書 n 出向制度を取り⼊れている⼤企業や出向⽀援企業へのヒアリング調査の 結果として、スタートアップ出向利活⽤の検討に際して、出向元企業に おける不安や悩み・障壁となるポイントは、以下の通り整理された。 n 先述の通り、スタートアップ出向を進める際には「知的財産」や「労務 管理」等の点で留意すべき事項が存在する。そのような背景から、初め てスタートアップ出向を実⾏される⽅が円滑に進められるよう、モデル 契約書を作成した。 出向元企業における悩み・障壁ポイント n 本モデル契約書は、⼤企業の⼈材が、スタートアップに在籍型出向をす るケースを前提に、出向元企業(⼤企業)と出向先スタートアップとの 間で締結する出向契約において定めておくべき主な条項について、条項 例を⽰すとともに、各条項の留意点等に関する解説を記載したものであ る。 ⾃社従業員が有する⾃社ノウハウ・秘匿情報の流出が ないか不安がある。 l 新たに開発された成果物の知財の帰属などについて、 どのように整理できるのか知りたい。 l 知的財産 5. 巻末付録 モデル契約書(イメージ) 既存事業への影響の懸念から、⼈材を出向させることに 現場からストップがかかってしまう。 l スタートアップ出向を推進したいが「既に社内ビジネス コンテストも、MBA留学制度もある」と⾔われ、スター トアップ出向の必要性が組織として腹落ちできない。 l 本当に効果があるのかを社内で説明し切れない。 l 既存事業 既存制度 折 合 労務管理 ⼈材育成・ ⼈事 l 出向契約 主 条項 スタートアップと出向元企業の労務管理⽅法が異なるこ とから、どのように出向者を管理すべきか悩ましい。 各条項 記載。 出向に適した社員の選抜⽅法が分からない。 ⼈事制度上の公平性をどのように担保できるか不安がある。 スタートアップの魅⼒に触れ、出向者が退職するおそれが ある。 l 出向から戻った後に適正な配置・アサインができない。 l 出向から戻った社員が受け⼊れた組織の中で浮いてしまう。 定 記載。 留意点等 関 解説 l l l モデル契約書のダウンロードは下記URLより可能 https://co-hr-innovation.jp/rubric 出所)「令和元年度戦略的基盤技術⾼度化・連携⽀援事業 (新規事業創出の促進に向けた⼤企業⼈材の流動化に係る調査)報告書」 (株式会社野村総合研究所,2020年3⽉) 40 41

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改訂履歴 版番 発⾏⽇ 改訂内容 Ver. 2021/3 2021/3 初版発⾏ Ver. 2021/6 2021/6/4 本⽂体裁 更新 本⼿引きは、経済産業令和元年度「⼤企業⼈材等新規事業創造⽀援事業費補助⾦(中⼩企 業新事業創出促進対策事業)」に係る事業の⼀環として、⼀般社団法⼈環境共創イニシア チブが実施主体として、業務の⼀部を株式会社野村総合研究所に委託のうえ、作成したも のです。 なお、専⾨的な内容については、以下の有識者の監修のうえ作成しています。 東京⼋丁堀法律事務所 弁護⼠ ⽩⽯紘⼀ 森将也 公認会計⼠・税理⼠事務所 公認会計⼠・税理⼠ 森将也 42