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October 04, 26
スライド概要
Amazon の論文「Regionalize and Scale」(Sinha et al., 2026) を解説するスライドです。
全米を1つで運用していた配送網を8つの地域に分け、注文ごとに地域内の倉庫を優先して選ぶようにした設計を紹介します。
Regionalize and Scale: Amazon’s Fulfillment Network Design for Faster and Cheaper Delivery ashphy @[email protected] 2026年10月2日 01
今日紹介する論文 Regionalize and Scale: Amazon's Fulfillment Network Design for Faster and Cheaper Delivery 地域に分けて拡大する:より速く安い配送のための Amazon のフルフィルメント・ネットワーク設計 Sinha et al.(Amazon の研究者ら31名) INFORMS Journal on Applied Analytics 56(1):23–41, 2026 https://doi.org/10.1287/inte.2025.0295 Benefits of Reevaluating Real-Time Order Fulfillment Decisions リアルタイムの受注処理決定を再評価する利点 Xu, Allgor, Graves Manufacturing & Service Operations Management 11(2):340–355, 2009 https://doi.org/10.1287/msom.1080.0222 02
全国どこからでも 出荷できる柔軟さが、 複雑さを生んだ 米国で年10億個以上、数百の倉庫 (2021年末) 全米が 1つのネットワーク。どの 倉庫からでも出荷できる 成長とともに複雑さが非線形に増えた 同じ都市に出荷する倉庫の組み合わせが 大きくばらつく → コスト増・配送の遅れ 倉庫(FC) 配送先の都市 03
どのように解決する? 全国の倉庫から出荷 倉庫 トラックが多い 1台の荷物が少ない 配送先 地域の倉庫から出荷 倉庫 配送先 トラックが少ない 1台の荷物が多い・走る距離が短い 04
Amazonの注文プロセス 05
Amazon における顧客の購買プロセス 商品ページ お届け予定日を 表示 割り当てが変わりうる期間(数時間〜数日) 割り当て → 注文確定 見直し 待ち行列に → 倉庫と経路を → 何度でも 入る 決める → ピッキング → 出荷〜配達 ここで確定 購入前に、届けられる経路を1つ確かめてお届け予定日を約束する 注文確定後、その時点の情報だけで倉庫と経路を割り当てる ピッキングまでの待ち時間に、割り当てを何度でも見直せる 06
後から見直すと、分かれた荷物を1つにまとめられる 注文順にその場で割り当て → 6出荷 まとめて見直し → 4出荷 注文4 カメラ・DVD 注文3 CD 注文4 注文2 倉庫1 倉庫2 ・本 CD 本 注文2 おもちゃ 注文1 本 倉庫3 → 注文1(本)→ 倉庫3 の最後の1冊を確保 注文2(本・おもちゃ)→ 倉庫3 に本がない 本は倉庫 注文 2、おもちゃは倉庫3 の2回に 注文3(本CD)→ 倉庫2 注文 注文 注文4 注文 → 倉庫1 と倉庫本・ 2 の2回に カメラ・ 本・おもちゃ 1 4 3 CD 倉庫1 CD DVD 倉庫2 2 倉庫3 出荷1回に約 $5 の固定費※ → 出荷を減らせば送料が下がる 見直しの対象は分割注文。1個だけの注文と入れ替えて、1つの倉庫にまとめる ※ 2004年の UPS 料金 07
後から見直すだけで、送料を大きく減らせる 2004年の実注文での検証(未出荷 約90万件のうち、分割注文は 3.6〜3.9%) 40〜50% 分割による余分な出荷を削減 (1回の見直しで 1.5万〜2万回) 年 $270万〜 $1,460万 送料の削減見込み (論文の試算。1回 $1〜2 と仮定) 08
荷物は3つの拠点を経て届く 直行便:SC を通らず DS へ FC SC 倉庫 仕分けセンター 在庫の保管・梱包 行き先別に仕分け・積み替え Fulfillment Center Sortation Center Middle Mile (中継):トラック・航空機 DS 配達拠点 顧客 Delivery Station 配達バンに積み替え Last Mile (配達):配達バン 荷物は FC で梱包され、SC で行き先別に仕分けられ、DS から配達される SC を通らず、FC から DS へ直行する便もある 09
どの倉庫から出荷すれば良いか? FC1 処理能力 5人分 FC2 注文 2人 処理能力 5人分 待ち時間 4 注文 8人 > 処理能力 5人分 顧客10人(0〜10 に均等に住む) 0 2 4 7.5 10 顧客が住む位置(倉庫からの距離 = 輸送時間) 位置 7.5 の顧客は FC1 なら 輸送 7.5 / FC2 なら 待ち 4 + 輸送 3.5 = 7.5 → どちらでも同じ 各注文は、配送時間(待ち+輸送)が最も短い倉庫を選ぶ(貪欲法) 最初は近いほうを選ぶので、FC2 に注文が集中する 処理しきれない分が待ち状態になる どんどん遠い倉庫が選ばれるようになってしまう 10
担当を固定すると 40% 速くなる FC1 処理能力 5人分 FC2 処理能力 5人分 待ち時間 0 注文 5人 0 FC1 注文 5人 が担当 4 5 FC2 各倉庫の処理能力に合わせて、担当する顧客の範囲を決める 0〜5 は FC1、5〜10 は FC2 に固定 負荷=能力 → 行列が生まれず 平均配送時間 3 地域化:需要と能力を釣り合わせて分け、その中で割り当てる が担当 10 11
容量制約付きクラスタリング 地域 A 上限 5 割り当て 5 地域 B 上限 5 割り当て 5 境目に近い点は、A と B への距離の差が小さい 郵便番号(小さい点)を、需要の上限つきで地域(大きい点が中心)に分ける 近いほうだけで決めると、人口の多い地域が上限を超える 点ごとに、1番目と2番目に近い中心までの距離の差を計算する 差が大きい点から割り当て、上限を超えた分は2番目に近い地域に回す 12
郵便番号を使って地域を分ける 郵便番号区域(2020年国勢調査)の中心点 32,657 個(本土のみ) 13
全米を8つの地域に分け、 各地域に倉庫を割り当てる 2023年の見込み能力で 8〜10 地域が妥当 郵便番号を点として、 容量制約付きクラスタリング 結果は手作業で大きく調整 Northwest Northwest Northeast Northeast Great Lakes Great Lakes Midwest Midwest Mid-Atlantic Mid-Atlantic Southwest Southwest Texas Texas 小さい地域 速い 品揃えが減る Southeast Southeast 大きい地域 品揃えが増える 遅い 14
売れ筋は地域ごとに、売れにくい商品は全国へ )い速どほ下(間時送配均平 地域に分けると配送は速いが、 全体で持つ在庫が増える 商品を売れ行きで 10段階に 分けてシミュレーション 売れ筋は地域、売れにくい商品は 全国 「複数地域」単位は地域単位より 劣る 同じ在庫量でも速くできる 同じ在庫量 より速く届く 全国のみ 地域・複数地域・全国 地域・全国 平均在庫量 → 15
注文ごとに「①遅れない ②安い」の順で倉庫を選ぶ 注文:商品 A と B。各倉庫の出荷候補から、A と B がそろうように選ぶ 出荷する商品 ① 約束日からの遅れ ② コスト FC1 A 1日 $2.00 FC2 A 0日 $1.00 FC3 AとB 0日 $3.00 FC4 B 0日 $1.00 FC5 AとB 0日 $3.50 コスト:倉庫の作業費、配送料など 注文割り当てモデル(OAM)が、新規注文の 90% 以上を1秒未満で解く ① 約束日に遅れる FC1 を除く ② 残りから最安 → FC2 + FC4($1 + $1 = $2) ただし2出荷。② は出荷ごとの料金の合計で、トラックの費用を正しく表せない 16
「少し高くても地域内の倉庫」を選ばせる仕組み 出荷する商品 コスト FC1 FC2 FC3 地域外 FC4 FC5 地域内 A $2.00 A $1.00 AとB $3.00 B $1.00 AとB $3.50 コスト緩和:コストが一定割合高くなるのを許す 1. 既存の層:出荷数を減らす 50% 許容($3 まで) → FC3 から1出荷 2. 地域化で追加した層:出荷数を増やさずに地域内を優先 100% 許容($4 まで) → 地域内の FC5 ※ 許容幅は論文の例 17
本番に切り替える前に、2つの シミュレーションで確かめた ① 地域内に収まるか。本番の割り当てに並走させ、1か月分で設計どおりの地域内率を確認 ② どれだけ速くなるか。地域化の有無で配送速度を比較 地域化による配送速度の向上 +38% +32% +25% +17% +10% 30% 20% 15% 10% 倉庫の処理能力の余裕(右ほど余裕が少ない)→ 余裕が少ないほど、地域化の効果が大きい 5% 18
2地域のパイロットから、予定より1か月早く全国展開 2021年 部門横断チームを結成 1.5年かけて検討 2023年1月 北東部・中部大西洋岸の 2地域でパイロット 3週間後 配送コストと速度の 改善が明らかに 2023年3月 全国展開 (予定より1か月早い) 大きな壁の1つは現場の考え方の転換 「一番近い倉庫」ではなく「担当地域の倉庫」を使う理由を、モデルとシナリオ分析で説明 19
距離は15%減り、1個あたりの 配送コストが2018年以来初めて下がった 米国 −15% 倉庫と顧客の距離 世界全体・全社 2018年以来初 1個あたりの配送コストが減少(2023年) 62% → 76% −$0.45 以上 地域内の倉庫だけで完結する注文 (2023年上半期) 1個あたりの配送コスト (前年比) 70億個 → 90億個 当日・翌日配送の個数(2023年 → 2024年、いずれも以上) 20
まとめ 地域化は定着し、ほかの分野にも応用できる 論文の結論 地域化は成功し、米国の配送網の通常の構成になった。入庫網の組み直しなど、改善は 続いている 地理的な制約の中で、資源をリアルタイムに割り当てる分野に応用できる 小売の受け取り方法、救急車・ライドシェアの配車、クラウドのサーバー割り当て 大規模なリアルタイム小売網の研究はまだ少なく、未解決の問題が多い 目先の最善を積み重ねても、全体の最善にはならない 21
参考文献 22
参考文献 Sinha et al. (2026) Regionalize and Scale: Amazon’s Fulfillment Network Design for Faster and Cheaper Delivery. INFORMS J. Appl. Analytics 56(1):23–41. https://doi.org/10.1287/inte.2025.0295 Xu PJ, Allgor R, Graves SC (2009) Benefits of Reevaluating Real-Time Order Fulfillment Decisions. Manufacturing Service Oper. Management 11(2):340–355. https://doi.org/10.1287/msom.1080.0222 O’Neill S (2023) Sizing down to scale up: How Amazon reworked its fulfillment network to meet customer demand. Amazon Science. 23