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October 08, 24
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Generative Ai Study Group Master
GenerativeAI study group 第32回研究会資料 2024.10.1 産総研AITeC No.32 gasg 2024.10.1 生成AIの社会実装にむけた取組み事例 ~公開イベントへの生成AI導入~ 一関工業高等専門学校 特命教授 佐藤清忠 [email protected] 概要 1 生成AI(gemini)を導入した公開イベント 2 個人・組織・社会向け生成AIの実装 3 生成AIの社会実装までの業務の流れ
野田村での公開イベントの事例 ●「塩の道」の歴史を学び未来の地域を考える Gasg No.26参照: https://youtu.be/t0eKRL9biTk ●歴史セミナー実施概要 ・パンフレット作成者による歴史講演会実施 ・参加者からの質問や提案(ワークショップ) ・講演は1時間、生成AIによる質疑は40分 ・想定外の質問があり、好評であった ・「生成AIは難しい。わからない」の声もあった GenerativeAI study group 第32回研究会資料 2024.10.1 産総研AITeC ここで「公開イベント」とは、参加者全員が同一スク リーンを眺め講演を聞き、生成AIの回答も全員が眺め 意見交換する催しである。この目的で生成AIを加える ことを社会実装と呼んでいる。
GenerativeAI study group 第32回研究会資料 2024.10.1 産総研AITeC 野田村での社会実装までの流れ ●準備段階 どの生成AIを使うか(個人実装の段階) Googel gemini は無料で使用可能。画像入力可能。 PC所有者に協力要請ができること 使うのは画像データか文章か ●協力者への手配(組織実装の段階) この絵が意味するものは 何か。誰が何に対し調べ ているのか。 スタッフにRAG(画像や文書)を提供し実験体験 イベントの台本企画と準備品の用意(シート) イベント当日の運営支援 ●イベント成果目標の設定(制作企画) 新参者には難しい歴史・民俗学へ参加 小学校の先生、200年前の牛さん等を設定 質問作成の行動に注目(開示と共有) 具体的な小道具は何か みんなで映画を見ている イベントで俳優はだれか。 俳優の応答を皆で見て いるという想定。 ●実施結果と事例(社会実装の段階) 歴史学講演だったが、質問は幅広かった 「牛さんがどう答えるのか」という興味 AIに抵抗を感じ、参加しない人もいた 実際のイベント会場
GenerativeAI study group 第32回研究会資料 2024.10.1 産総研AITeC 大学での公開イベント(演習)の事例 ●地球環境問題の解決 に向けて国際交渉を行う ・学生は特定の国の代表者になり 他国との交渉により自国のGHG 削減目標を定める。 ・国の担当を決め、議長国の指示 で意見交換を行う。 ・成果目標は、自国スタンスカード (右がその例)をもとに相手国の 了承を得ること。2,3種類の案も 準備し要望に沿い修正する。 ●GHG削減に向けた ロールプレイング スタンスカードの例 ・GHG削減に関する専門用語や交 渉経緯の学習しておく必要がある ・各国の原案を基礎に、要望に応じて小さな変更が行われると想定しておく ・目標値が数%変化しただけで国家予算が数十兆円変化する現実もある ・自国の森林資源(LULUCF)を交渉に持ち出すかどうか準備しておく ロールプレイ実践ができる知識は、イベント前に紹介している
GenerativeAI study group 第32回研究会資料 2024.10.1 産総研AITeC 大学での社会実装までの流れ ●準備段階 どの生成AIを使うか(個人実装の段階) Googel gemini は画像入力が可能 教員向けに協力要請ができること ●協力者との打合せ(組織実装の段階) GHG交渉の歴史を概観 生成AIを使い疑似プレーヤーを企画 何度か試行実験を行い改良を加える 参照する資料が膨大。 生成AIに要約させたり 論点の整理を行った。 デジカメが大活躍した 準備では資料調査が大変であった ●成果内容とエビデンス(企画目標) ワークショップでは国別に振り分け スタンスカードを2種類以上作成させる 議長国のルール(提示順等)に沿って 提案させ受領させる。必要に応じ修正 ●実施結果と事例(社会実装の段階) 従来1種類だけの提案が3種類に増加 GHG交渉は貿易交渉に似た活動だと認識 交渉時のアイデアは生成AIで検索できた 参加者全員が生成AIを駆 使し各国事情によるGHG 削減計画を提出した 最後は議長国からの挨拶で終了
「生成AIを社会実装する」を形式化 GenerativeAI study group 第32回研究会資料 2024.10.1 産総研AITeC 「個人実装、組織実装、社会実装」の考え方を記号を使って表現してみる まず生成AIイベントで登場する「人間、生成AI、生成AIに設定した疑似的機能」の 3つの要素と、その要素のノードとエッジによる表現形式を提案する。 記号 定義内容 人間:H, Human 生成AI:G, Generative AI 企画した疑似的機能: P, Pseudo Player 疑似機能Pの例:「200年前の牛さん」、「COP29の議長さん」 Pは運用側の台本で設定したイベント時の役者の働きをする
GenerativeAI study group 第32回研究会資料 2024.10.1 産総研AITeC 生成AIの個人向け実装の形式 個人向けの実装で人間の興味に従って 気まぐれに実施。以下の機能に着目し て選択した。 H ● 自分のスキルに見合うもの G1 ChatGPT G2 Copilot G3 Gemini Coplitot, ChatGPT, Google gemini ● 画像や文章が扱えること イベントで使うRAGの作成に便利 Claude, Open AI_o1など… ● 無料生成AIであること スタッフへの協力依頼ができる o1 個人向け生成AIは刻々と変化 G3 G1 AIの進化は激しい。個人レベルでは 期待・幻滅・普及サイクルで実装し ている。この中からユーザー向けに 適切なモデルGを選択し、組織とし て共有するよう呼び掛けた。 Level-1程度はPC 内蔵の形で定着? AGI G2 ASI 個人実装ではHype cycleに似た使い方になる
GenerativeAI study group 第32回研究会資料 2024.10.1 産総研AITeC 生成AIの組織向けの実装の形式 ●イベントの魅力的な運用のために 個人 参加者が主体的に介入できること。 それを誘引する役者Pを設定すること。 G3 H1 ●創造力の発揮 イベント全体のシナリオがあり、 そこに登場する独特なPがいる。 イベントの目標に沿ったPが 参加者と触れ合うようにする。 H2 P スタッフ ●キャラを決めると準備機材が決まる H3 PCは会場の都合で1台だけ。 一斉に質問できない等の制約条件も発生する。 スタッフが質問シートを拾い読みする支援も必要。 参加者同士が相談でき、遠慮なく開示・共有できること。 ●この案でイベント目標が達成できるかシミュレーションする 多様な参加者がいると想定し、Pの回答内容を倫理的な面で評価する。 運営側が、「この場に参加して何がおもしろいか」を感じることが必要。 その結果、疑似的機能要素Pがどれだけあればよいか定める。 「200年前の牛さん」等は、組織実装の段階で了承することが必要
GenerativeAI study group 第32回研究会資料 2024.10.1 産総研AITeC 生成AIの社会実装の形式 イベントで想定した「社会」 ●何度か練習して本番実施 参加者の状況により想定シナリオが 変化することもある。事前に多様な質 問で安全性(極端な回答にならない) を確認することが大事。 牛さん P1 未来人 先生 P3 P2 AIと離れ ている人 もいる H7 ●参加者Hどうしのコミュニケーシ ョンやPの回答変化も大事 PやHも「歴史」は初めて。Hはこんな 質問は大丈夫かと相談しあう。Pも 入力された質問でH側の変化を学ぶ。 その関係の中でHとPは知識を共有 していく。 H4 H6 H3 参加者 H5 スタッフ H2 ●社会実装の場ではHもPも自己変容に向かう 野田村も大学もPからの回答内容でHは「こういう考え方もある」と視野を広げていく。 それはPも同様である。この関係性を構築するなら人間ではないPも「社会要員」と みることができる。Hがこの関係に没入しPにもっと聞きたい(学びたい)と、誘うこと がでれば、イベント成果のひとつといえる。 没入感の中で、疑似的機能PとHが対等な社会関係を築くと想定する
GenerativeAI study group 第32回研究会資料 2024.10.1 産総研AITeC 社会実装に至る運用側の実作業の量 野田村と大学の授業はどちらも似た作業パターンであった。主観的な量になるが個 人・組織・社会実装に至るプロセスの作業割合を数値で示すと図のようになる。 過程 項目 野田村 大学 具体的な対策 作業割合 1 イベント目的 地域の歴史勉強会で、参加者からの質問に 生成AIをGHG削減計画の議長国とし受講生 目的を確認し、過程2以降の準備を行った の確認 回答する生成AIを披露すること から熟慮した計画案を提出させること 1 2 管理主体の確 イベントの実行委員会の方針に従った 認 管理主体の希望やルールに基づく企画案の 作成を実施 2 3 生成AIへの期 初心者、老若男女が参加し、積極的な関わり 生成AIの回答に対し好奇心を持ち、さらに深 自分自身が被験者となり、期待に沿うか実験 待 合いをすることを期待した く調査することを期待した をした 20 4 塩、鉄、また現在に伝わったことがらは何か、 地球環境問題の対策の経緯と国際交渉の記 準備した資料 資料確認のたびAIに質問し回答を確認。その 等。著作数10冊以上、民謡DVD等の参照 録の調査。著作数10冊以上を参照(2024.4~ (RAG作成) 経験をプロンプト文の作成に役立てた (2023.10~2024.3) 2024.6) 50 5 組織運営の支 事前練習で確認し、それをカバーできる生成 授業なので全員生成AIが使用できることが必 一人だけの運用は難しい。全体の流れの説 援体制づくり AI体験者に支援を要請した 須。使用できるネット環境の動作確認が必要 明や支援の重要性を説明する必要がある 20 6 運用ツールの 生成AI役者づくり、「200年前の牛方さん、牛 GHG削減幹事国や政策提案国の役割設定。 学生が画像処理できないスキル面の課題が 工夫(gemini) さん」の設定と質問シート作成 順次、発言させるプロンプト文を準備 あり、臨機に対応する準備をした 4 7 実施成果の例 参加者の質問文が成果である。幼時の質問 学生からのGHG削減計画が成果。生成AIが 生成AIを介在したゲームの様相であった。と もあり生成AIならではの成果であった 相手なので3つ作成できた はいえ深い意見交換ができた 2 8 教育効果確認 専門分野を超えて想像力を発揮し、参加者の 実際の交渉担当者に少しでも近いGHG削減 生成AIはある種の「現実世界」。その体験に 好奇心を培った 計画の作成ができた より社会的な役割が実感できた 1 授業シラバスのディプロマポリシに従った 手がかかる過程4の作業は、現在の生成AIでは対応が難しい
「生成AIの社会実装」を振り返って GenerativeAI study group 第32回研究会資料 2024.10.1 産総研AITeC ・公開イベントに生成AIを導入するには運用上、補助資料(RAG)整備は必須であった。 ・野田村では地図データ、昔の産業、民謡に残る伝統など調査を行った。また大学では京 都議定書パリ協定、IPCCやCOPなどの経緯、これまでの交渉内容を調査した。このRAG 作成のための調査活動に作業量が集中した。 ・その結果の一部を補助資料として入力し、実際に質問をし、まずまず対応できることを確 認した。この作業は図書館の資料調査、民謡CDの分析等を行い、2つの事例いずれも 実質2か月以上かかった。作業内容は、ほぼアナログ的作業である。 ・その資料整備により生成AIとの質疑を繰り返す中で、社会実装に向けて生成AIが演じる べき疑似機能、「塩の道を歩いた牛さん」「COP29議長」の役者を思い付き、公 開イベントにむけ、その疑似機能の登場の台本作りを行った。その結果、公開イベントは スムースに運営ができ、生成AIの魅力発信ができたと思われる。 ・ただし疑似機能Pの配役は公開イベントの質や参加者に対するストレスを引き起こす。こ の予想もし多様な疑似機能を構想し実際に生成AIで試験した。この作業もかなり時間が かかる。これらの作業を全自動化するツールもあるかもしれないが、現時点では手作業 で調査して企画するしかない。 疑似的機能Pの提案は映画の配役、台本作りを連想した
まとめ GenerativeAI study group 第32回研究会資料 2024.10.1 産総研AITeC ・生成AIを社会実装、公的なイベントに役立てるには、独特の準備作業が必 要であった。 ・まず生成AIは「個人・組織・社会」の活用レベルがあり、それぞれ独特のつ ながりがあり、それをイメージ(図式化)し、取り組んだ。 ・生成AIを「200年前の牛さん」「COP議長国」という疑似的機能に使った。ま るで映画の俳優、ゲームのキャラのようであった。運用面でその役者に何 をさせるのか台本作りなどアナログ的な作業をすることが多かった。 ・ビジネス面では「200年前の牛さん」のようなキャラの人気がでてくるかもし れない。今後登場する高性能な生成AIを使えば、ドラえもんのようなスター キャラが開発できるかもしれない。そのキャラが、寅さんのような映画シ リーズに登場するのに似たビジネスがあるかもしれない。 生成AIを俳優のように使うのは運営側としては便利であった。しかし台本が固定化し 思いもよらぬ展開を起こすわけではない。無難にイベント運営するにはよいが、その目 的ではないイベントもある。生成AIによる疑似機能Pの導入は、会話ができる映画作り やゲーム作りに似て、ある種のショーのようなものになる。
意見交換の提案 GenerativeAI study group 第32回研究会資料 2024.10.1 産総研AITeC Pseudo Playerはハルシネーションである 疑似機能Pは生成AIで問題視されているハルシ ネーションである。現実世界に存在しない、して いなかった架空の創作物になる。 ハルシネーションは課題だと議論される。しかし 社会実装では牛さんのように参加者を誘う場面 が作れる。チャップリンなど映画俳優も決して現 実を演じておらず、台本に従うハルシネーション の一種であった。演技により感動、共感、変容を 呼びかけていた。 社会実装でPseudo Playerを導入する意義 企業等の組織はハルシネーションにより導入をためらっている。ハルシネーションのな い回答とは組織や上司と同意見を意味することが多い。一方、Pseudo playerはトリック スター(善悪二面性を持つ脇役)のように演じる。時に組織を混乱させる。しかし硬直し た組織によい変化をもたらす存在にもなる。 生成AIはTransformer機能がある限りハルシネーションは避けられない。むしろこれ を積極活用する目的で、着目した社会、地域や企業、友人集団や家庭等に出現しても らいたいトリックスターを提案してはどうか。従来、こうした発想はなかった。生成AIはこ の目的で誕生したのかもしれない。