生成AIを活用した震災復興支援への応用例 ~岩手県野田村での歴史学習会と未来企画

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July 02, 24

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No.26 gasg 2024.6.25 生成AIを活用した震災復興支援への応用例 ~岩手県野田村での歴史学習会と未来企画~ 岩手県ILC普及解説員 佐藤清忠 [email protected] 概要 1 東日本大震災と野田村への支援 2 「未来企画に向けた関係づくり」への生成AI導入 3 イベント参加者の反応と今後の期待

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東日本大震災とさまざまな支援活動 GenerativeAI study group 第26回研究会資料 2024.6.25, 産総研AITeC 野田村の被災状況 ・家屋の被害 515棟(全壊311棟) ・犠牲者 37名(村民28名) ・津波は最大約18m 当時、一関高専で復興事業の企画、実 施、報告等をしていました。さらにNPOで 復興支援活動に参加していました。 今回は地域活動報告です 写真は陸前高田市小友小の校庭 2011.4.11 復興支援センター(遠野) 全国からIT開発者が集結(遠野) NPO起業支援(復興ぞうきん事業盛岡)

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岩手県野田村との関わり GenerativeAI study group 第26回研究会資料 2024.6.25, 産総研AITeC 「大きな物語」 としての復興支援 野田村シャレット支援:東京都立大・弘前大・八戸高専、他 。2011.8 専門性を重視した 大規模化、事業化が 支援の目標 個人的には県の事業でEVパワートレイン教材を開 発。走行状況に従った燃料消費シミュレーター。その 後、高専の授業、いわき市の事業、海外へ展開しま した。 仮設入居者向けの生業作り。市民共同発電所の建設と運用支援。2012.6 これをさらにJC08モード 評価などに拡張可能 電気自動車を使ったSTEM教育実施(EV High School)。環境省事業2015

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野田村への「小さな物語」の導入 GenerativeAI study group 第26回研究会資料 2024.6.25, 産総研AITeC 「大きな物語」は専門スキルが求められ、専門家のハンズオンを中心に取組みます。 その後は、村民による自主管理が求められます。 仮設住宅から通い設備点検を行う市民共同発電所の場合、大工さん等の仕事をしていた70歳後半の方々がテスターを片手に 点検作業をすることになります。そのため太陽光発電とは何かなど、「寺子屋」方式で学習会を始めました。以下がその一例です。 ・ロケットストーブの製作体験 ・地層に見る津波襲来の記録 ・子供向け太陽光玩具の工作会 ・貝殻LED照明器の製作と販売 ・中学生向け独立型電源キット製作実験 ・小学生向け炭でんち工作会 ・野田の歴史を学ぶ ロケットストーブ製作体験 「炭でんち発電」の工作教室(小4~中学生) 太陽光発電でオルゴール工作(幼児) 「炭でんち」は別名、廃棄予定電池の再利用を する「もったいない電池」の名があります。最近 はPIC制御による「ヒメボタル」も使われていま す。 寺子屋学習会には「小さな物語」スタイルを持ち込みました。 この方法だと、テーマの多様性が広がり、誰でも参加ができます。 この延長で実施したのが、生成AI応用イベントです。

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イベントのテーマ「塩の道」の資料 「野田」と言えば岩手では「塩屋さん」と連想するほど野田村は塩生産と交易で有名です。 GenerativeAI study group 第26回研究会資料 2024.6.25, 産総研AITeC その商品だけ着目するとこじんまりとしますが、300年以上前の塩生産では、近くに豊富な森林、塩釜の鉄素材(直煮方式の素材)の生 産基地、運搬目的の牛も多くいました。塩製品ほど表にでてこないこれらの地域資源があって交易商品の塩だったのです。港の近くであ り海運の道、船舶交易もありました。その雰囲気を感じ取るため、県の観光パンフを編纂した民俗研究家に講演を依頼し、参加者による AIを応用した未来に向けた提案 をすることをめざしました。 観光パンフレットの一部 geminiはマルチモーダル型生成AIです。 写真画像を読み込ませ、それをRAG(Retrieval-Augmented Generation)の ように使うことができます。何度か実験をしましたが、文書を正確に読み とっておらず結局はプロンプト文として読み込ませました。プロンプト文を 以下に示します。 #野田村の歴史を学ぶイベントがあり、下記の事前学習に関する質疑を 繰り返します。 あとで回答する者(先生や牛など)を特定し、質問の指示します。 #条件 ・この入力には、回答はしないでください。 #事前学習 """ 昔、岩手では牛と共に峠を越える、内陸と沿岸を結ぶ二つのルートがありました。「塩の道」は、くらしに不可欠の塩を、生産地 である海岸地域から内陸へと運んだ交易路です。塩を下ろした復路には、内陸の米などの穀類や、木材、時には鉱物資源を沿岸に 運ぶ役割を果たしました。 「塩の道」とは言いながらも、内陸と沿岸とを結ぶ交易路として機能したのです。こういった道は、例えば日本海側の糸魚川市から大 町、安曇野を経て松本、塩尻へと至る千国街道。愛知県岡崎市から足助、浪合、飯田、駒ケ根、伊那、辰野を経て塩尻へ至る足助 三州街道など全国各地に存在します。ここ岩手でも、複数の塩の道が人々の暮らしを支え続けてきたのです。 野田塩の道:「いわて塩の道」の中で特に有名なのが、野田塩の産地・野田村から盛岡に至る道です。 三陸沿岸は切り立った地形と冷涼な気候のため、一般的な入浜式塩田が発達せず、鉄釜を使った直煮…以下略。 引用:https://drive.google.com/file/d/1d7BHRY3Cht51gydZ0u981d8_BWILOsUr/view?usp=drive_link

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イベントでの生成AIの紹介 GenerativeAI study group 第26回研究会資料 2024.6.25, 産総研AITeC https://docs.google.com/presentation/d/1DA_cFXqjM3FuScZUUPOJr06iJ9BY2xsf/edit?usp=drive_link&ouid=10545639108372573 8100&rtpof=true&sd=true

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運用方法1 生成AIの操作デモ GenerativeAI study group 第26回研究会資料 2024.6.25, 産総研AITeC 野田村の将来に向けた活発な 提案の場づくりをめざし、 わざとらしい質問のデモをしました。 最初は小学校の先生を回答者にし、子どものような質問をしました。プロンプト例は以下の通りで。 #あなたは小学校社会の先生です。下の条件に沿って質問に答えてください。 ・名前はゆうこ先生。自己紹介をし「皆さん、質問を」と挨拶してください。 #条件 ・「塩の道」に関係した話を してください。 ・質問はステップバイステッ プで受け付けます。 ・回答は400字程度にまとめ 難しい言葉は使わないでく ださい。 ・最後「次の質問、何でしょ う」で終わってください。 この後、最初のデモとして次 の質問をします。 ゆうこ先生、塩の道は塩で できていましたか? この回答が右の図になります。 この質問と回答への共感が後 に続く運用に影響します 。

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運用方法2 イベントの本番 生成AI応用イベントは、ここからが本番です。 GenerativeAI study group 第26回研究会資料 2024.6.25, 産総研AITeC 最初「塩の道」が塩でできている?面白い質問だね!と持ち上げてくれたことを確認します。 普通の講演だと講師が怒り出す場面かもしれませんね。しかしこんな質問にも、生成AIはちゃんと対応すると参加者は認識します。 運用担当者から「ほら、どんな質問でも大丈夫。脇にある用紙に質問を書きましょう」「わからないときは近くの人と 相談しましょう」 と促し、作業させます。 相談しながら用紙に書込む姿 *が今回の生成AIイベントを象徴しています。用紙は小学校の先生への質問、牛さんへの質 問、200年前の牛方さんへの質問などが並んでいます。まさか?と思うような質問でも思いつくまま書き込み運用スタッフはその中 からひとつ選んで生成AIに質問しました。 *参考:SECIモデル場での個々人の連結と相互浸透 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsrpim/34/1/34_19/_pdf/-char/ja 左上に児童がおります。おそらくこの子が「しおのみちはえいごでなんていうの?」 を書いたと思われます。この質問は、 生成AIを介入したからできた成果 です。 普通の講演はこまかい理解を促す質疑になります。それとは違い「20年後の野田村民」向けに「野田村は100万人の大都市に なっていますか?」は、SECIでいう共同化・表出化・連結化を促すことになります。 質問がもっとも多かったのは荷物を運んだ牛さん向けでした。参加者のこうした反応は予め計画できません。対応できたのはス タッフの理解とコーディネートスキルがあってできることです。

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運用方法3 牛さんに聞いてみる GenerativeAI study group 第26回研究会資料 2024.6.25, 産総研AITeC 質問は、言葉を話せない牛さんだけでなく、「塩の道」の道路さん、森の詩人、 20年未来の野田に住んでいる人からも、回答を聞きたすことができます。 「塩の道」を起点にいろいろな視点から参加者がアクセスできるようにしむけることができます。 以下、サンプルを紹介します。 #あなたは200年前、塩を運んだ牛さんです。条件に沿って質問に答えてください。 ・名前はワガサ。自己紹介をし「ベゴです。何でも聞いて。モゥー」と挨拶してください。 #条件 ・「塩の道」に関係した話をしてください。 ・質問にはステップバイステップで受け付けます。 ・回答は400字程度で、ひらがなでしゃべってください。 ・最後は「モォーいいかな。次どうぞ」と声をあげてください。 メモ書きで作成した質問 塩は重かったですか?疲れた時はどうしました? 牛さんからの回答: モォー、塩は本当に重かったよ。 当時、ぼくたちが運んでいた塩は、1頭あたり約100kgもあったんだ。 それは、今の牛で言えば、およそ2人分の重さだよ。険しい山道や、深い川を渡る時には、その重さに足がすべったり、よろけ たりすることもあったよ。でも、牛方さんたちが励ましてくれたり、荷物を軽くするために工夫してくれたりして、何とか乗り越える ことができたんだ。例えば、荷物を2つに分けて運んだり、牛同士で助け合ったりしたんだ・・・(以下、略) この他に、回答に対し会場から飛び入りの質問があり「野田塩は味はいい」という回答に対し 野田塩の味のデータは、どうやって知ったのですか? と問い合わせると即刻、ウェブサイト調査等々をし、元素成分はこうなっていたと回答してきました。

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参考資料と参加者からの感想 GenerativeAI study group 第26回研究会資料 2024.6.25, 産総研AITeC 参考まで質問用紙に記載があった文書全部を使って質問した事例を紹介します。 1.最初に発表した生成 AIの紹介(ppt説明資料) https://docs.google.com/presentation/d/1DA_cFXqjM3FuScZUUPOJr06iJ9BY2xsf/edit#slide=id.p1 2.質問文(プロンプト文、テキストファイル) https://drive.google.com/file/d/1d7BHRY3Cht51gydZ0u981d8_BWILOsUr/view 3.白い用紙に書き込まれた質問への回答例( word資料) https://docs.google.com/document/d/1KdgEoUqZtC-hAu4ouhCezq0r7Bmp9KAl/edit?usp=drive_link&ouid=105456391083725738100&rtpof=true&sd=true 同じ質問文でも、3.でみるように、生成AIの回答内容がずいぶん変わります。 使った時点での回答と全く同じ回答はないので、ダウンロードして保存することを申し添えることが大事です。 この特性は絵の生成も同じで、できるだけ消去せず、保存しておくとよいと思います。 参加者からの感想ですが、この生成AIでどんな講習をしたいですか?と尋ねました。 ・郷土料理講習などはとてもよいと思います ・絵や地図を出力してみたら 塩の道はどこを通っているかわかりやすいです。 野田塩に関する写真などありますか ・音声入力を使ってみたら? ・子供向けのAIがあるとよい。キャラクター化すれば操作しやすいのでは? との回答がありました。最後の感想はあたらしいヒューマンインターフェース開発を暗示しています。

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イベント案内と新聞報道 未来のための歴史セミナー ~野田村はスマホのルーツとつながっていた?~ 2024年6月16日(日)10時~12時 アジア民族造形館内庵日形井 岩手県九戸郡野田村大字野田6-62 講師:岩手県立大学・松本博明特命教授 報道 岩手日報2024.6.18掲載。

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まとめ1 GenerativeAI study group 第26回研究会資料 2024.6.25, 産総研AITeC 「小さなものがたり」の導入 東日本大震災を契機に大きな物語(太陽光発電事業等)に加え学習を目的にした「小さなものがたり」を 追加し、継続的に復興支援を行ってきました。 ・ロケットストーブ製作教室 ・幼児向け太陽光玩具の製作会 ・独立型電源キットの説明と製作 ・炭でんちの工作会・・・ 今回の生成AIイベントは「小さなものがたり」導入の事例です。目標は場の共有による参加者の変容 で、生成AIとのやりとりを縁に、集まった人同士の新しい関係を築くことを狙いました。思いもかけぬ 新しい関係構築を経済学では新結合と呼びますが、ここでは新組織の構築を目指しました 。 *参考:平田、イノベーションと組織的知識創造 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsrpim/34/1/34_19/_pdf/-char/ja ・生成AI応用イベントの特徴 ・コストがかからない ・子どもでも参加可 ・準備が簡単にできる ・奇想天外な面(画像生成含)も楽しめる ・生成AI応用イベントの課題 ・専門家グループには敬遠(形式に沿わない、知見(証拠)が得られない等) ・プロンプトの設定や質問の仕方にコツがいる ・ネットや表示機器準備や操作が必要

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まとめ2 GenerativeAI study group 第26回研究会資料 2024.6.25, 産総研AITeC 1.「生成AIによる小さな新結合」の導入を ・人口流出が止まらない地域は、 現存する地域資源と生成AIを合体させ地域が主体的に運用する「新 結合」が大事です。地域資源は豊かな資源、景観や歴史だけでなく、今いる人々のもつ可能性も大きな資 源です。その可能性を、予想もしなかった200年前の牛さんが教えてくれるかもしれません。 ・地方の事業企画は一般に同調圧力、忖度圧力が強いものです。限られた経費、時間で安全確実に実施す ることが期待されているからです。見方を変えれば実績のある 既存団体向けに率先して生成AIを紹介 できないか、 IT運用側の新しいマネジメントが求められています。 *参考:場の運用とコーディネートの重要性 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsrpim/34/1/34_19/_pdf/-char/ja 2.これに似たイベント、全国にありませんか? ・生成AIは地域を活発にしたいワークショップに適しています。専門家・経費主体の大きな物語ではなく、 新し い小さな出会いと発見による人どうしの新結合が期待できます。 ・ビジネス面では、主催者の趣旨に沿う 独自プロンプトの開発、提供、会場で機器操作サービスを担う 新しい業務の登場が期待できます。 ・昔話ですが、昭和時代、活動写真を地方の公民館で上映する イベントがありました。映写機材設置や操作をする専門業者が おり、今回のイベントはこれに似ていると思いました。野田村の 事例は、その昭和時代の映写サービスの再現をしているのか な?と振り返っていました。 塩の道で歌われていた「牛追歌」の鑑 賞と解説 ご清聴、ありがとうございました