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March 13, 23
スライド概要
2022年3月13日(月)開催の神奈川R&D推進協議会での講演資料。
神奈川大学電力・エネルギーシステム研究室が有する技術シーズのうち,確率モデルと数理最適化を用いた処方分析技術について紹介しています。
神奈川大学工学部准教授。電力・エネルギーシステム研究室を主宰。電力システム工学,オペレーションズ・リサーチが専門。電力需給シミュレーションや再生可能エネルギーの発電運用最適化,エネルギーデータの確率モデリングに関する研究に従事。 研究室サイト:https://powersysgroup.jp/
2023.03.13 神奈川R&D推進協議会 カーボンニュートラルな エネルギー供給システムの実現に向けた 処方分析技術 神奈川大学工学部電気電子情報工学科 准教授 根岸信太郎 1
処方分析(Prescriptive Analytics) ビジネスフローにおいて予測と行動の最適化(計画)を同時に行う 分析フレームワーク[Ref. 1] • 予測・計画モデル一体型 • 予測・計画モデル分離型 例:価格決定最適化[Ref. 2] 大量にある商品の価格弾力性・ 交差弾力性と回帰項から小売業者の 利益が最大となる価格を決定 需要予測と価格決定プロセスの 一体化 電力・エネルギーシステムを対象とした 処方分析手法に関する研究を実施 2023/3/13 [Ref. 1] K. Lepenioti, A. Bousdekis, D. Apostolou, and G. Mentzas: International Journal of Information Management, 50, pp.57-70 (2020) [Ref. 2] S. Ito, and R. Fujimaki: Proc. of the 23rd ACM SIGKDD, pp.1833-1841 (2017) 2
講演概要 本研究室が有する電力・エネルギーシステムに対する 処方分析フレームワークの紹介 1. 長期的エネルギーミックス最適化システム ➢ 2050年カーボンニュートラル達成に向けた電源移行計画を 求めるための数理最適化モデル ➢ 長期電源計画モデルと広域的需給解析モデルを組み合わせることで 計画の実行可能性をチェック 2. 柔軟性資源を持つ需要家の確率論的アグリゲーション手法 ➢ 蓄電池やヒートポンプ給湯機などの柔軟性を持つ需要家の 需要行動を確率計画問題としてモデル化 3
長期的エネルギーミックス最適化システム ディスパッチシミュレーションの必要性 • 日本では2050年にカーボンニュートラルを達成することを宣言 2030年には,2013年比46%のCO2排出量削減 • 低炭素電源の代表である変動性再生可能エネルギー(VRE)中心の エネルギー供給体制の実現に向けてエネルギーミックスの 長期的な移行計画を立てる必要 ➢ VRE普及に伴って需給調整力の必要量が増加 ➢ DRやエネルギー機器の導入を含む需給運用対策について 経済的・環境的評価を行う必要性 細かい時間粒度で電力需給の一致を満たしていることを確認できる ディスパッチシミュレーションにより評価 4
長期的エネルギーミックス最適化システム エネルギーミックス最適化モデル 数年~数十年一括の発電機容量・発電量の最適化 ・・・ 2049 2050 発電機容量, RE容量 燃料価格・CO2排出量 2031 発電機容量, RE容量 燃料価格・CO2排出量 発電機容量, RE容量 燃料価格・CO2排出量 ・・・ 2030 発電機容量, RE容量 燃料価格・CO2排出量 2024 発電機容量, RE容量 燃料価格・CO2排出量 2023 発電機容量, RE容量 燃料価格・CO2排出量 シナリオ 発電機(原子力・火力・再エネ等)の新設・廃止 電化の進展 (EV・ヒートポンプ給湯機など) エネルギー・環境政策による制約 (原子力・RE・CO2排出量制約) 1日単位で詳細な発電機運用の最適化 詳細な電力需給解析で長期計画の実行可能性を確認 発電機の起動停止にかかるコストや詳細な系統運用制約も組み込み可能 広域的電力需給解析モデル 5 グローバルな制約 (CO2制約)とローカルな制約 (運用制約)の両方を考慮して検討可能
長期的エネルギーミックス最適化システム エネルギーミックス最適化モデル 数十年単位の期間の電源容量および運用を1時間粒度で最適化 CO2排出量削減目標を達成するための電源計画・運用の変化を評価可能 需給調整力の確保も明示的に盛り込んでいる点に特徴 目的関数 割引率付き評価期間内の総コスト(設備費+燃料費) → 最小化 汎用性の高い線形計画問題(LP)として定式化 制約条件 • 需給バランス制約 • 必要調整力(上げ/下げ)の 容量確保制約 • 出力上下限制約 • 予備力制約 • 年間設備利用率制約 • メンテナンス制約 • 年間CO2排出量制約 決定変数 • 各年の設備容量(火力機・原子力機・ 揚水機・再エネ・蓄電池 etc…) • 各種別の発電出力・充放電電力 • 発電機調整力提供量(上げ/下げ) • 太陽光・風力発電の出力抑制量 • CO2排出量 6
長期的エネルギーミックス最適化システム 広域的電力需給解析モデル 日本全国の発電機運用を1時間粒度,1台レベルで最適化 独自のモデリングで,求解精度を落とさずに最適化に必要な時間を大幅に削減 目的関数 1日の発電機運用コスト(燃料費+起動費) → 最小化 燃料費関数を線形化し,混合整数線形計画問題(MILP)として定式化 制約条件 • 需給バランス制約 • 必要調整力(上げ/下げ)の 容量確保制約 • 発電機出力上下限制約 • 起動停止変数制約 • メンテナンス制約 • マストラン制約 • 連系線運用制約 決定変数 • 発電機(火力機・原子力機・ 揚水機)発電出力 • 発電機調整力提供量(上げ/下げ) • 発電機起動停止変数 • 連系線計画潮流 • 連系線による調整力の地域間融通容量 • 地域間での調整力融通時における連系 線の最大潮流変化量 7
長期的エネルギーミックス最適化システム アウトプットイメージ • エネルギーミックス最適化モデル シナリオ別の設備容量 シナリオ別の年間CO2排出量 • 広域的電力需給解析モデル 詳細な電源設備運用計画 各電源種別の発電量あたりの収入 8
長期的エネルギーミックス最適化システム システムのユースケース シナリオに基づく 街づくりにおける 新規エネルギー技術の エネルギー供給システムの 事業性・政策評価 長期デザイン 9
需要家の確率論的アグリゲーション 需要家アグリゲーション • 需要家機器として設置されている蓄電池やヒートポンプ給湯機は必要に 応じて動作時間帯を変更できる電力需給運用の柔軟性資源 • 柔軟性資源をまとめて電力需給運用に活かすため, 需要家アグリゲーション技術の検討が進められている 課題 • 需要家のエネルギー(電気・熱)消費行動は確率的 • 需要家の効用を損ねない範囲で提供可能な柔軟性の量を見積もれない エネルギー消費行動の確率モデル化と確率計画モデルで 需要家の効用を損ねないアグリゲーションを可能に! 2021年度パワーアカデミー研究助成の援助を受けて開発中 10
需要家の確率論的アグリゲーション システム概要 一般家庭の電力需要・ 熱需要の消費プロファイルを 確率モデル化 エネルギー機器の 運転計画最適化(HEMS) アグリゲータの 需要計画や需給調整力計画の 作成支援 11
需要家の確率論的アグリゲーション 手法の特徴 • 各需要家の個別プロファイルを確率モデル化 ➢ 各需要家が提供可能な需給調整力量を算定可能(確度高) • 間欠性のある給湯需要のモデル作成を独自のアルゴリズム(非斉時 マルコフ連鎖をベース)で自動化 • 確率計画モデルにすることで,インバランスリスクや実行可能性の 高い需給調整力提供計画の作成が可能 抱えている課題 • 少数の需要家データしか有していないため,手法の汎用性や スケーラビリティの評価が困難 12
他にも多様な研究プロジェクトを実施中! 詳細は研究室Webページをご覧ください https://powersysgroup.jp/ 13